文学作品
2010年08月23日
![]() | 功名が辻〈1〉 (文春文庫) 文藝春秋 2005-02 売り上げランキング : 118645 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■ 書評 ■
戦国時代、夫婦が手を取り合ってついには土佐一国の大名の地位を得た。山内一豊と妻千代を題材にした司馬遼太郎氏の長編歴史小説。数年前にNHKの大河ドラマでやっていて、彼女(今の妻)と一緒に見たのが懐かしい。結婚後、長浜城や千代出生の地に一緒に行ったのも良い思い出。
最近では、一緒に”龍馬伝”を見ている。今度は息子も連れて土佐に行こうと話している。
▼ 赤ペンチェック (印象に残った言葉など) ▼
・経験が多いということも、しょせんは否定的な意見を豊富にいえるというだけのことで、だからどうしようという案を思いつくに至らぬ。とすれば、未熟と五十歩百歩か
■ アクションリスト ■
□ 司馬作品からはいつも元気をもらえる。年に最低一作品は読むことにしよう
2010年08月11日
![]() | 1Q84 BOOK 3 村上 春樹 新潮社 2010-04-16 売り上げランキング : 93 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■ 書評 ■
以前の記事で村上作品をケチョンケチョンにけなしてしまったものの、やっぱり最後が気になって読んでしまった。3巻で終わってくれてよかった(汗)。村上作品って結局のところ、3つの要素があるために”純文学”と勘違いされている。つまり、
・メタファー(隠喩)
・エロス
・(主に精神)障害者
さらにミステリーの要素があれば読者はホイホイついてくる。ちなみにミステリーの要素がないのが大江健三郎作品。もっともバタ臭さは大江作品の方がずっと上。昔の翻訳本のようなお固く読みづらい文体がそれを助長している。一方、村上作品は読みやすい分、大衆&通俗的。
ところで、本作品の主人公の一人”青豆”のような存在が私にもいた。小6の夏、好きだった女の子の手を偶然握ってしまった時の感覚は今でも鮮明に覚えている。お互い好きだったはずなのに、幼さからか、それ以上は進めず別々の中学に進学してしまった。おぉ、彼女の名前はうちの娘と同じだ! マジで今気づいた。
■ アクションリスト ■
□ 村上春樹を読むのは本作品で終わりにする
2009年11月15日
![]() | 1Q84 BOOK 1 新潮社 2009-05-29 売り上げランキング : 86 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■ 書評 ■
「村上春樹作品はもう読まないだろうなぁ」と思ったのが10年ほど前のこと。それでも、この『1Q84』ほど話題になっていると、ついつい読んでしまうのが人の性(さが)。
で、1&2巻を読んだ感想は「やっぱ読むほどのこともなかった」。確かにストーリーは面白いと思う。彼の作品は文学というよりミステリー小説に近いところがあって、先が気になってどんどん読める。でも所詮は大江健三郎の二番煎じ。”さして意味も無い(と私は思う)メタファー”と”官能”の2つの要素を混ぜ込めば、とりあえず(バタ臭い)文学作品のできあがりっ、というわけだ。あとは、読む人が勝手に解釈して、勝手に論じてくれということね。
だから、こんな解説本まで竹の子のようにニョキニョキ出てくる。
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そういえば本郷キャンパスに通っていた頃、文学部の友人に「村上春樹の作品ってどう? まだ読んだこと無いんだけど面白い?」と聞いたことがある。彼はこんなことを言った。「とりあえず、3〜4作品読んでみたら? それだけ読めば村上春樹はもうわかっちゃうよ。僕は今さら村上春樹は読む気がしないね。」
その後、数作品読んで私も同じ感想を持った。そしてそれは今回も同じだった。
第3巻は2010夏刊行予定らしい。これだけ酷評していても先が気になって、読んでしまうかも。。。
■ アクションリスト ■
□村上春樹を読むのは本作品で終わりにする
2009年05月24日
![]() | 悩む力 (集英社新書 444C) 姜 尚中 集英社 2008-05-16 売り上げランキング : 804 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は夏目漱石と社会学者ウェーバーの類似性に気づいたとき”ゾクゾク”したという。このゾクゾク感は本書を読むことでも体験できて、読後しばらく興奮冷めやらなかった。久しぶりの感覚だ。
現代人の抱く「閉塞感」は、100年前に彼らが体験済みだというのだ。なので、現代人の抱く苦悩も既に体験済み。これは、時代背景が現代と当時で似ているから。「変化のスピード」という点においてだ。
・現代 : 情報流通の高速化やグローバリゼーション
・100年前の日本 : 脱亜入欧のスローガンのもとで邁進させられた近代の幕開け
ともに文明が急速に前進している。しかし自由が増える一方で、個人の責任や孤独感も急激に増している。そんな中、漱石たちは世の中をある距離感を持って冷静に眺め、時代の本質や人のあり方を徹底的に考え悩み抜いていた。
それに気づいた著者は非常に独特な試みを展開する。現代人の抱く苦悩や普遍的な問いかけに対するヒントを漱石作品に見出そうというものだ。
生きる意味、死の意味、愛する意味などといった普遍的な問いかけを、漱石作品を紐解きながら考えていく。人間の行く末を見据えていた漱石の炯眼には驚愕させられるばかり。
過去のエントリー「迷作と名作のあいだ:『三四郎』」、「痛快!名作こき下ろし:『「こころ」は本当に名作か』」で漱石批判を展開してしまったが、本書を読んで、また別の視点で漱石作品を読んでみたくなってきた。
2009年05月17日
![]() | 三四郎 (新潮文庫) 夏目 漱石 新潮社 1948-10 売り上げランキング : 10085 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
恋愛小説と思って読むと、一向に面白くない。時代背景その他が私と異なりすぎていて、たいして感情移入できないのだ。これは『「こころ」は本当に名作か』で主張されている通り。
一方、今ちょうど『悩む力
漱石は自我の問題に徹底的にこだわりぬいて、生涯それだけを書き続けたと思えば、感じる部分がそれなりにある。
そういう目でみると、高等学校の教師である広田先生との関わりは興味深い。彼の言葉を通して、人のあり方を分析的に捉えようという漱石の試みが伺える。
例えば、広田先生が言うに、文明がある段階に到ると”偽善を行うに露悪を以てする”人種が出てくる。つまり
昔の偽善家はね、何でも人に善く思われたいが先にたつんでしょう。ところがその反対で、人の感触を害する為めに、わざわざ偽善をやる。横から見ても縦から見ても、相手には偽善としか思われない様に仕向けていく。相手は無論厭な心持がする。そこで本人の目的は達せられる。実際こういう人種の棲む時代になってきたと思う。偽善を施して、「それは偽善だ」という批判をわざと誘発させるのもそう。
例えば、「弱者を助ける政策が必要だ!」と主張して、「いや、弱者が甘えすぎだ」というネット論争に火をつけ、我が真意を得たりとほくそ笑む政治家がいないと言えるだろうか?
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ところで、巻末にある柄谷行人氏による解説が一級品。『三四郎』を一読して抱いた”もやっとした”印象が見事に明文化されている。文芸評論家って案外良い仕事してくれるんだな。あと、彼も小谷野敦と同様、ガリバー旅行記は大人のために書かれたもので、読むべき作品に挙げている。今度、読んでみよう。














