人間の5000年の歴史を見ていると、人口が減って栄えた国も地域も社会も、1つとしてないことに、改めて気付かされる。その意味で、子どもがなかなか生まれない日本の将来は、大変に心配ではある。

ところで、子どもを産みやすい国≒出生率が上がっている先進国と言えば、誰しもフランスを思い浮かべるだろう。オランド大統領も4人の子持ちである。この背景には、俗に「シラク3原則」と呼ばれる骨太の理念に立脚した整合的な政策パッケージの存在がある。シラク3原則は、次の通りである。

①子どもを持つことによって新たな経済的負担が生じないようにする
②無料の保育所を完備する
③(育児休暇から)3年後に職場復帰するときは、その3年間、ずっと勤務していたものとみなし、企業は受け入れなくてはいけない

①は大変に分かりやすい。即ち、経済的な理由で赤ちゃんを断念することがないように、子どもの数に応じて傾斜配分的な支給を行うということである。わが国の人工妊娠中絶の実数は21万人を超えるが(2010年、厚生労働省)、その内、経済的な理由が相当な部分を占めているのではないだろうか。

②は、わが国では待機児童問題として、取り上げられる場合が多い。保育所の待機児童数は、ここ数年来、横ばいの5万人弱の水準で推移しているが、これは氷山の一角に過ぎず、潜在的な待機児童数は、控え目に見ても、優に数倍以上の規模に達するのではないかと言われている。外国人からは、90兆円規模の予算を持ち少子化に悩む大国が、なぜ待機児童数を直ちにゼロに出来ないのか、と訝られている。確かに、待機児童数がワーストであった横浜市が、林市長の肝入りで、待機児童数ゼロに向けて着々と進んでいるのを見ると、要はリーダーシップの問題ではないかと思わざるを得ない。

私見では、通勤の実態を勘案すれば(企業内に設置するよりも)、通勤途上にあり移動のロスの少ない最寄り駅やターミナル駅に病児保育を含めた24時間保育所を設置することがより望ましいと考える。インセンティブとして、そのような保育所を新設した駅に対しては、特例として建ぺい率や容積率を大幅に緩和したり、場合によっては建設費用を補助したりしてはどうか。そうすれば、保育所の保育料等を低く抑えることも可能になるだろう。

③は、①と②に比べて、一見地味で、うっかりすると見過ごされがちだが、実は最も重要な施策ではないかと思われる。例えば、産休前に人事評価がトップであった人が、産休を取ると、わが国では往々にして、この1年間は働かなかったのだから実績がない等の理由で、ランクが下げられてしまいがちである。これが2年、3年と続くと、復帰した時点では、ボトムからまた這い上がらなくてはならなくなってしまうケースが多々ある。社会の共通の宝である子どもを産み育てることは、仕事以上に大切なことである。外国に留学に行っていたのと同じだと考え、産休前と同じステータスで職場復帰ができると定めたことこそ、シラク3原則の神髄だと考える次第である。

振り返って見れば、2006年に谷家さんから、保険会社を創りましょう、とお誘いを受けた時、先ず最初に調べたのは、わが国の所得の実態であった。 


平均年収



この表を見て、「この20代、30代の所得水準では、安心して赤ちゃんを産めるはずがない。インターネット販売を行うことによって、保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産み育てる社会を創りたい」と考え、ライフネット生命プロジェクトがスタートしたのである。

(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)