2005年08月15日

本を読んだ-砂漠の船<篠田節子>-

砂漠の船双葉社(2004/10/12)
ISBN 4-575-23507-5

評価:70点(100点満点)

篠田節子にしては、ひねりもなんもなく、まっすぐそのままだった。

父と母が出稼ぎ労働者であった淋しい家庭に育ったが故に、家族が一緒に暮らす平凡な家庭をつくることを第一に生きてきた幹朗。
仕事よりも家庭を選び(その行く末がリストラなのだが)、地域を大切にし、子供には人の心の痛みをわかってほしいと願って福祉への道を勧める。そんな父の思いは家族にとってはわずらわしい重荷でしかなく、地域には悪意に満ちた人間関係だけが残り、すべてはことごとく空回りして、家族は徐々に壊れていく。

家族から個人へと生活形態が変わっていく世の中のことを考えれば、こんな話は当たり前。
過去のトラウマからか、家族という形態に妄想を抱いてしがみついている幹朗の様子は情けないだけだ。
個人を尊重できないところに、まともな人間関係は築かれない。
自分の考えを押し付けるだけの父親像を描くことで、壊れいく家族というものを象徴しようとしてるのかもしれないが、あまりにもよくある話になりさがっていて、新鮮味や驚きがなにもない。

それとも著者はもっと違うことを言いたかったのか?

でもまあ、篠田節子ですから、ところどころミステリ仕立てにしてあり、坂を転げ落ちるように家族が崩壊していく様子の描写はさすがにうまかった。

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5. 『砂漠の船』 篠田節子 双葉社  [ 活字中毒日記! ]   2005年08月20日 11:52
砂漠の船篠田節子著出版社 双葉社発売日 2004.10価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)ISBN  4575235075勝手なことをしあって、家族も地域も、解体していく。砂粒のような個人が、それぞれの苦しみや悲しみを抱えて、死に向かって歩いていく−。静かに崩壊していくものへのレクイ...
4. 『砂漠の船』 篠田節子 双葉社  [ 活字中毒日記! ]   2005年08月20日 11:49
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3. 砂漠の船/篠田節子  [ ひまさえあれば ]   2005年08月18日 20:10
一気読みです。 同年代の主人公が登場すればおのずと感情移入も強くなる。 やっぱ育った環境はその人の人生を大きく左右するのかと…。
2. 篠田節子 『砂漠の船』  [ 猫は読書の邪魔をする ]   2005年08月17日 16:08
砂漠の船 篠田 節子 家族というものの崩壊の一例。 妻や娘にもそれぞれの価値観があるということを、理解あるふりをしながらほとんど念頭に置かず、自分の信念に沿って生活してきた幹郎。 家族はとにかく一緒に、そして娘には平凡でも人の役に立つ職業に就いてほしい...
1. 砂漠の船 篠田節子  [ IN MY BOOK by ゆうき ]   2005年08月15日 23:45
砂漠の船篠田 節子 双葉社 2004-10-12by G-Tools ★★★☆☆ 崩壊していく家族の物語です。父親は温かい理想の家庭に1人こだわって空回りを続け、妻は子離れができずに浮気をし、娘は反抗的で自分の事だけを考えている。誰にでも心あたりがありそうな、痛いところをつ...

この記事へのコメント

2. Posted by デコデコマン   2005年08月16日 08:56
こんにちは。コメントありがとうございます>ゆうきさん

確かにおっしゃるとおりですね。
ゆうきさんの世代にしてみれば、幹郎の考え方や思いは知らない部分も多いでしょうから、新鮮さが感じられますよね。
逆に、幹郎世代の人が読めば、自分のスタンスの確認や、若い人(娘)や妻の考え方の勉強になっているのかもしれません。
私はちょうどその真ん中で、中途半端に両方の考え方がわかってしまう世代なのでしょう。
世代によって感じ方の違いって確かにありますね。特にこういう家族を扱う小説ではそうなのかもしれません。
1. Posted by ゆうき   2005年08月16日 03:58
こんにちは。確かに、ある程度の年齢に達している人には、当たり前で新鮮味のない話だと思います。でも、もう少し若い人になってくると、違う読み方になると思います。私は、デコデコマンさんよりちょうど一回り年下なのですが、親世代の視点や時代背景は、知識として知っている事とはいえ、新鮮というか、勉強になるなあと、思いましたよ。私よりさらに若い人なら、もっとそう感じるかもしれません。篠田さんの読者層って、けっこう幅が広いので、色んな人が色んな感想を持てる本なんじゃないかな?と、思います。TBありがとうございました♪

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