2007年09月03日

ラッシュライフ<伊坂幸太郎>−(本:2007年91冊目)−

ラッシュライフ

出版社: 新潮社 (2005/04)
ISBN-10: 4101250227

評価:90点

ううむ、面白い。
交錯する5つの物語を、時間軸をバラバラにして緻密に組み立てた構成は、見事としかいいようがない。
しかも、そのさじ加減が絶妙なのだ。
単純すぎず、かといってマニアックに複雑にもならず、適度に伏線を混ぜ合わせてある。
いくつかの物語が交じり合うときには必ず驚きも与えてくれる。
犬の首輪や、強盗を働こうとする老人の話や、駅前で漢字を書いてもらっている外国人女性。
直接ストーリーに関係ないような彼らの話が、物語をつなぎとめるポイントになっている。
さらには、動き回る死体や、郵便局強盗や、挟みを持って犬を襲おうとする狂った女性もそうだ。表から見たこの話しは、裏から見ればあの話なのだ。

そしてなんといっても、ひとつひとつの物語がきちんとミステリーになっている。
それぞれのエンディングも、希望を抱かせるものから、やるせないもの、少し胸がぎゅっとなるものと、多様な味わいだ。

誰もが善人ではなく、様々な罪を犯して未来へと進んでいく。
必ずしも全てがハッピーエンドではないのになぜか爽快感を感じる。
これは金が全てという傲慢な画商・戸田の誘いを、落ちぶれた無職の男・豊田がきっぱりと断り前に進むところで終わっているからだろう。うまいなあ。

ちょっと簡単に拳銃が手に入りすぎたり、人を簡単に殺しすぎたりするところもあるけど、まあ小説だからいいのだ。

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