2009年02月22日

誘拐<五十嵐貴久>−(本:2009年26冊目)−

誘拐
誘拐
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# 出版社: 双葉社 (2008/07)
# ISBN-10: 4575236268

評価:79点

一般市民による北朝鮮工作員に見せかけた総理大臣孫娘の誘拐。
この奇想天外な設定がなかなか面白く、ぐいぐいと読ませてくれる。
普通のサラリーマンが政治家・官僚・警察を混乱に落としこんでいく様子は痛快。それは多くの読者が誘拐犯である秋月サイドにたって小説世界に入り込んでいくからだろうし、実際に構造改革のあおりをうけて、苦しみを実感している人が多いこともあるだろう。
ただし、諸悪の根源を国の政策に持ってくるような短絡的な考え方で誘拐側の登場人物の行動が統一されているのはどうなのか。
そんな単純なものではないだろう。
構造改革、だって5年程前には賛成者のほうが多かったはずであって、小泉さんを選挙で大勝させたのは私達だ。
えっと、そんな話ではなかった。
だが、著者の思いがそういうところに透けてくるのはあまりよろしくない。

読んでいる私の視点が完全に秋月サイドなので、中盤は犯行がうまくいくようにひたすら祈りながら読み続けていく。
で、終盤のあの展開はかなり不満だ。
結局株価が戻って、健全性について総理のお墨付きがだされてしまえば、トキワ銀行への復讐なんてなにもできてないではないか。

あとはあれだけ完璧に動いていた主人公の詰めの甘さが信じられん。
免許証を送った宅配便に氏名をかいていたのもそうだが、マンション賃貸人名義と株式口座名義くらい別にしておけばいいのに。
売買だって、最初に信用売り立てをして少しづつ買い戻していくとか、もうちょっと考えればどないでもなるだろうに。
もっともそれで犯行がばれなければ著者も物語を締めることができずに困るのだけれど。

最後のドンデン返しはなんとなく想像の範囲。
誘拐途中で監禁状態に不自然に言及しなさすぎだ。

文句はいろいろ言ったが、設定のユニークさも含めて十分に楽しめました。好きな作家なので、自然とこちらのハードルも高くなっているのでしょう。

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