2010年09月23日

砂漠<伊坂幸太郎>-本:2010-40-

砂漠 (新潮文庫)
砂漠 (新潮文庫)
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# 出版社: 新潮社 (2010/6/29)
# ISBN-10: 4101250251

評価:94点

決して大学生活を振り返って感傷的になるわけではないけれど、この小説を読んでいて、あの4年間はなにものにも代えがたい貴重なものだったのだと改めて感じさせられた。
充実していたかというと決してそうでもなく、無駄なことに時間をどっさり浪費していたけれど、ありあまる時間のなかでいろいろ感じ、考えられたのは事実。
そんなことを思い出させながら、小説の面白さ自体にもどっぷりハマらせてくれる内容だ。

舞台は仙台。おそらく東北大学がモデルで、そこに入学した5人の主人公たちの繰り広げる青春物語。新歓コンパから始まるあたりがなんともリアルでうれしくなる。
語りは「北村」という少し冷めた青年なのだが、なんといっても「西嶋」が最高。
見た目はぱっとしないのだが、いつも自信に満ち溢れ、空気を読まず持論を滔々と展開し、やらない善よりやる偽善を選択し、ひたすらに前進し続ける。世の中は平和であるべきだと、麻雀では平和(ピンフ)しか上がろうとしない。
とにかく変な奴なんだが、実に魅力的です。
自分の学生時代の友人に、西嶋によく似たやつがいたので思わず重ねあわせてしまった。西嶋が絶世の美女、東堂に惚れられたのと同じように、私のその友人の奥様も綺麗です。
なるほど、時代は西嶋タイプなのかもしれない。
そんなことはないか。

小説なのであり得ない展開も結構出てくるが、根本に流れる「真面目な怠惰さ」と「単純な好奇心」が学生時代の雰囲気をうれしくなるくらい忠実に醸し出していて、思わず手を打ちうなずくようなことも多い。
楽しく、そして胸を熱くしながら読める本だった。

最後の卒業式の場面、学長の言葉に著者の警告も込められていてハっとさせられた。
「学生時代を懐かしむのはいいけれど、学生時代はよかったなどと後ろを振り返るような人生を送るな」というようなセリフ。そうだよなあ。

受験生の娘が大学に入ったら読んでもらいたい本です。

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