映画:た行
2011年01月03日
dekodekoman at 18:05 Permalink
第9地区-映画:2011-1-


監督:ニール・ブロンカンプ
出演:シャルト・コプリー、デイウィッド・ジェームズ、ジェイソン・コープ、ヴァネッサ・ハイウッド、シルヴェイン・ストライク
評価:85点
新人監督に無名の俳優、完全オリジナル脚本にも関わらず口コミで人気に火が付いたSF映画。日本では去年の4月に公開されたようだけど知らなかった。
斬新な設定と強引なストーリー展開で楽しませてくれたうえ、むやみやたらに余韻を残したエンディングもなかなか秀逸。
狙っているとしか思えない笑いの箇所もよかったし、戦闘シーンの迫力も大作映画と遜色ない。
話題になるのもわかる気がする映画だった。
南アフリカのヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が出現するのだが、宇宙船が故障してエイリアンが困り果て、地球に降りてきて難民化するという設定がまず凄い。
これまで様々な映画で畏怖の対象であったエイリアンが、掘立小屋に押し込められ、悲惨な生活を強いられているのだ。
グロテスクな見た目と「エビ」という蔑称に加えて、猫缶が好物って・・・。
全宇宙人権連盟とかがあったら(人権と呼ぶのかどうかは知らんが)、一発で訴えられそうな扱いだ。
エイリアンが押し込められた第9地区でトラブルが頻発したことから、エイリアン(180万人!)を移住させることになって事件がいろいろ起こるのだけれど、最後はそれなりに様々な問題提起をしてエンディング。よかったんじゃないだろうか。
それにしても、猫缶サギとか、エイリアンの小屋をノックして訪問し立ち退き承諾書にサインもらうとか、なんだかよくわからんけど笑ってしまったぞ。ロボコップ風味も出てきて大いに暴れていたし。
いろんな意味で凄い映画だった。
2010年12月11日
dekodekoman at 12:44 Permalink
チェ 39歳 別れの手紙−映画:2010−


監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ、カルロス・バルデム、デミアン・ビチル、ヨアキム・デ・アルメイダ、エルビラ・ミンゲス、フランカ・ポテン
評価:85点
DVDをレンタルしてからほぼ2週間放置。
なかなか観る気持ちになれなかった。
前作と違い、こちらはキューバ革命を成功させたチェ・ゲバラが、ボリビアに潜入してゲリラを組織し革命を起こそうとするもの、失敗に終わり処刑されるまでを描いた作品。
自分の中の英雄が志し半ばで殺されてしまうところを観るのは、映画とはいえ気が重いものだ。
予想通り、映画の最初から最後まで、チェは苦しめられ続けていた。
キューバ革命のときのように農民たちの支持を得ることができず、カストロのバックアップも暴露されて孤立し、食料も武器も医療品も底をつく。
アメリカの援助を受けたボリビア軍事独裁政権の容赦ないジャングルでのゲリラ掃討作戦に徐々に追い詰められていく様子は見るに忍びない。
だが、チェの強い信念と人間を信じる思いが画面から感じられ、心揺さぶられたのは事実。
虐げられた農民の生活を変えるためには、軍事独裁政権に武力闘争で立ち向かうことが当時の唯一の解決手段だったのだろう。
ただ、いくつもの共産主義国家が崩壊した現代、どんな国家形態がいいのか私にはもはやよくわからん。
全人類が楽しく幸せに暮らす世界はまだまだできなさそうだ。
というか、人間の能力というものは、地球で全人類が平和に暮らす方法を考えだして実行するには少し足りないのだろう。たぶん。
2010年11月20日
dekodekoman at 20:36 Permalink
Dr.パルナサスの鏡


監督: テリー・ギリアム
出演: クリストファー・プラマー, ヒース・レジャー, ジョニー・デップ, コリン・ファレル, ジュード・ロウ
評価:80点
ヒース・レジャーの遺作となった作品。
映画制作途中で亡くなったため、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が加わって4人で一役を演じて完成させた。
ダブルキャストならともかくこれだけ存在感のある4人がどうやって一人を演じるのだろうと不思議に思っていたのだが映画を見て納得。
全く違和感もないし、逆にその変化が楽しいのだ。
テリー・ギリアムらしい独特の幻想的な世界。
未来世紀ブラジルを学生時代に観て以来ファンなのだが、今回もたっぷり不思議な世界観と難解なストーリーで楽しませてくれた。
説明を必要以上に省略してわかりにくくしているようにも感じるのだが、観ているうちにまあいいかと思ってくる。ラストに向けて混沌を綺麗に収束させ、ちょっぴり切ないエンディング。
楽しめました。
リリー・コールの存在感もなかなか。
この映画で本格的銀幕デビューらしいけれど、180センチの長身でダイナマイトバディながら人形チックな童顔。
決して美人ではないと私は思うのですが、どうにも目が離せません。
今後の活躍が楽しみ。
2010年10月26日
dekodekoman at 22:25 Permalink
チェ/28歳の革命-映画:2010-


監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、ジュリア・オーモンド
評価:90点
キューバ革命を率いた伝説の革命家、チェ・ゲバラの生涯を描く2部作の前編。
過剰に美化されることなく、しかしチェの崇高な精神とほとばしり出る情熱がヒシヒシと伝わってくる作品。
ベニチオ・デル・トロの演じるチェがとにかくカッコイイ。
革命と聞くだけで血沸き肉躍るもののつまるところはエセ左翼の私にとって、映画でチェの生きざまをトレースできることはこの上ない幸せだ。
寄せ集めの革命軍が組織化され大きくなり、政府軍を破っていく様子と、革命成功後の国連総会でチェがインタビューを受ける様子が交互に映し出される。
最初は切り替えに少し戸惑うが、次第に2つのシーンがなじみ始める。インタビューでチェが答える内容が、革命時のチェの心情を表し、そして革命後に同志と思っていた同じ中南米諸国からの冷たいコメントが、革命の難しさも伝えてくれる。
戦闘シーンは派手ではない。
しかし、その坦々とした地味な描写が、逆にリアリティを持って迫ってくる。
世界を変えた彼の情熱を少しでも見習いたい。
そう思いながら続編がDDMドッドコムから届くのを待っています。
2010年10月04日
dekodekoman at 23:06 Permalink
タイタンの戦い−映画:2010−


監督:ルイ・レテリエ
出演:サム・ワーシントン、ジェマ・アータートン、マッツ・ミケルセン、アレクサ・ダヴァロス、ジェイソン・フレミング、レイフ・ファインズ、リーアム・ニーソン
評価:80点
ギリシャ神話なんて全く興味がないのに、なんでこんなDVDを借りてしまったんだろうと見始めてしばらくは激しく後悔していたが、派手なCGとスリリングな展開、予想外にグロイモンスター達にいつのまにか見入ってしまった。
神様たちが妙に意地悪でプライドだけ高く、むかつくところがまたいいです。ゼウスなんて最悪。人間の女性に不貞を働き、半神の息子を産ませるってどういうこと?
酷いもんだ。というよりギリシャ神話恐るべし。一度色々と読んでみると面白いかもしれない。
中途半端に光っている神様たちはなんとも胡散臭いだけだが、魔女やメビウスや最後のでっかいラスボスの姿は魅力的だった。
最高の山場であるラスボスをメビウスで倒すところも結構あっさりしていて、逆に好感が持てるほど。
残念だったのは、ヒロインがあまり美しくなかったことでしょうか。
正統派アドベンチャー。色もののように見えるけど実はかなり面白い映画でした。
<ムービーウォーカーより>
神と人類が共存していた神話の時代、神々は己の欲望を叶えるためには手段を選ばず、激しい権力争いを繰り返していた。そんな神に対して、ある日、人間の王が反旗を翻す。人類の創造主で、神々の王であるゼウス(リーアム・ニーソン)は、人類に対し激怒する。そして人類を滅ぼすため、冥界の王ハデス(レイフ・ファインズ)を解放する。人間たちは、恐ろしい魔物の脅威にさらされるようになる。ゼウスには、人間であるアルゴス前国王アクリシウスの妻ダナエーを姦通して生まれた息子ペルセウス(サム・ワーシントン)がいた。ペルセウスは人間として育てられて、人間の世界で生きていたので、ハデスの力で家族を奪われる。失うものがなくなったペルセウスは、ハデスを倒し、人類を滅亡の危機から救うという危険な任務を進んで引き受ける。命知らずの戦士たちとともに、ペルセウスは危険な旅に出る。その行く手には、海の底に閉じ込められている巨大な魔物クラーケンや、髪の毛が毒蛇でできたメデューサ、1つの目を共有するグライアイ3姉妹、人間の女性の頭を持つ怪鳥ハーピー、巨大なスコーピオンなど、強力な悪魔や恐ろしい獣たちが待ち構えていた。ペルセウスが生き残るためには、神としての力を受け入れ、自分の運命を切り開かなければならない。
2009年09月24日
dekodekoman at 21:11 Permalink
チェンジリング−(映画:2009年)−


監督:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、コルム・フィオール、ジェイソン・バトラー・ハーナー、エイミー・ライアン、マイケル・ケリー
評価:91点
信じ難い実話を、適度な演出で心に染み入る誠実な映画に仕上げてある。
まずはクリント・イーストウッドに敬服。
1920年〜30年代のロスを実際に知っているわけではないが、セットも服装も全てにきちんと手が掛けられてあることが画面から見て取れる。手抜きをすれば観客にはわかるものだが、どのブログでも感想を読んでもそのあたりは褒め言葉だったから、ほぼ完璧だったのだろう。電話交換台で働く女性達がローラースケートで移動しているのは笑ったけど。普通に歩いたほうが早くないか、あれは。
映画が始まって早々に主人公のクリスティンは息子を失う。
いなくなった息子を必死で探そうとしても24時間以内は対応してくれない警察。挙句の果てに息子でない誰かを息子が発見されたとして押し付けられる。
そんなありえない理不尽な状況が腐敗した国家権力によって事実へと歪められていく様子は恐ろしい。民主主義の本家のような顔をしているアメリカでほんの80年前にこんな事実があったのだ。
警察は逆らうものは精神病院に放り込んで口を封じる手段にでるが、どんなに抑圧されようとも真実を口にして戦うクリスティンの強さは素晴らしい。
だが、国家権力の前では個人は無力。見ているうちにこちらはクリスティンに同化してくるのでフラストレーションは最高潮に高まっていく。
終盤になってそのフラストレーションが浄化されるのだが、これがお決まりのハッピーエンドパターンでないところがツボ。
見つかったらよかったのになあ。ほんとに。
アンジェリーナ・ジョリーの鬼気迫る演技は非常によかったが、唯一気になったのはあの化粧だ。
いくらなんでも、あれでは「クチビルゲ」だ「バロムワン」だ「タケシとケンタロウのバロムクロス」だ。気持ち悪い・・・。
やつれた様子を見せるために痩せすぎていたのも災いしたか。それにしてもあんなに真っ赤な口紅を塗らなければよいのに。あれもあの時代のアメリカなのだろうか。
2009年01月11日
dekodekoman at 00:33 Permalink
地球が静止する日−(映画:2009年2本目)−


監督:スコット・デリクソン
出演:キアヌ・リーブス、ジェニファー・コネリー、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス、キャシー・ベイツ
評価:77点
1951年に上映された古典SFのリメイク作品。
ふうむ、なるほど。50年以上も前に、人類が地球を滅ぼすであろう危機は認識されていたのだ。
キアヌが演じる宇宙人は地球を救うためにやってきた。
「地球」を救うためであって、「人類」を救うためではない。
箱舟でできる限り多くの種を地球外に運び出し、それから人類を滅亡させて地球をリセットするというのだ。
なるほどとも思うけど、そこまで文明の進んだ宇宙人ならもう少し違う方法があるだろうに。
「地球のために人類を滅ぼすよ」
「え、ちょっと待って、今から頑張るから」
「ダメダメ、さっき最後のチャンスあげたのに言うこと聞かなかったでしょ」
「ええっ、待ってよ待って!今度はちゃんとやるから!お願い!」
「ダメダメ、絶対にダメ」
という押し問答が続く。
人類は愚かなので、そんな瀬戸際に立たされていることにも気づかない。
なんとかして力で宇宙人と対抗しようとして、ボコボコにやられ、ついに地球上の全てのものを分解してしまう大量の甲虫(のようなもの)の攻撃が始まっていく。
「瀬戸際にたたされたら、変われるんだっ!だから待ってくれっ!」と何度も叫んでいる人類をみていると往生際が悪いとしか思えなかった。
もちろん私も人類ではあるが、宇宙からみたら本当にやっかいな生物だろう。地球の歴史から見ると極小の時間で最大の汚染を広げてしまっている。
いつかは本当に地球を滅ぼすのかもしれない。時には真面目に反省せねば。
ま、そんなあまり聞きたくもないありきたりの説教が続くところもあるけれど、SFとしての映像はなかなか素敵だった。
いまどきあんな人型のロボットなんて逆に新鮮だったけど、あの型はリメイクされる映画から引き継がれているようだ。なるほど。
キアヌの演技はマトリックスと同じ。無機質な感じは結構好きです。
ジェニファーコネリーは相変わらず美しい。あんな細い鼻で息ができるのかと見ていて心配になったりする。
キアヌは何に感動して人類を救うことに決めたのか。
あんな親子愛のシーンを今まで見たことがなかったのか。そうなのか。
2008年12月09日
dekodekoman at 21:47 Permalink
ドラゴン・キングダム−(映画:2008年65本目)−

監督:ロブ・ミンコフ
出演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー、マイケル・アンガラノ、コリン・チョウ
評価:73点
ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の競演ということで騒がれた映画。
騒がれた?と疑問符がつくところなのかもしれないが、少なくとも子供のころからジャッキーの映画を見て育ち、ジェット・リーのかっこよさにもあこがれているおっさんにとってみれば少しは騒ぎたくなる映画。
あまりにもわかりやすすぎるストーリーと、相変わらずワイヤー使って飛びまくるアクションには少々辟易としたものの、二人の絡みを見ているだけで十分に楽しめる映画だった。
ジェット・リーの孫悟空なんて面白すぎる。
孫悟空としては当たり前のイタズラ猿っぽい表情や仕草も、ジェット・リーが演じているのだと思うとなかなか感慨深かった。
ジェット・リーの二役はすぐにわかるが、ジャッキー・チェンの二役は最初わからなかった。
あまりにも違和感のない老人役。
本人の年齢を考えると、カンフーアクションで暴れまわっている役よりは、この爺さんの方が似合って楽に演じられるのかもしれないなあ。
そんなことをボーっと思いながら、楽しんでいるうちにあっというまに終わってしまった。
話は現代のボストンから始まる。質屋の老主人がストリート・ギャングに銃で撃たれ、質屋の客であったジェイソンが如意棒を持ってギャングから逃げる途中にビルから転落。彼が気づくとそこは古代中国だったという設定。
その如意棒を持ち主に返す旅の途中で仲間が増えていくのだが、それは古代中国をの世界を救うための旅でもあった。
最後にまた時空を越えて現代に帰るというラストまで、完全にお約束の世界なのだが、それが決して「つまらなさ」になっておらず、安心感につながって映画を見ることができるというのは、やっぱり主役の存在感だろうか。
そうそう、序盤で酔拳が登場します。他にもいろいろと。
うー、懐かしい!
2008年11月30日
dekodekoman at 20:22 Permalink
D-WARS ディー・ウォーズ−(映画:2008年63本目)−


監督:シム・ヒョンレ
出演:ジェイソン・ベア、アマンダ・ブルックス、ロバート・フォスター
評価:45点
公式サイト
ある意味凄い映画だった。
強烈なB級の腐敗臭がする映画。
そこはかとなく漂うB級の香り、などというものではない。B級がグダグダになって醗酵しまくり、手に負えない状態だ。
唯一、ロス市街に戦車をいれて撮影もされたという、怪獣軍団と米軍の戦いは迫力満点だ。
プテラノドンをモチーフにしたような空飛ぶ怪獣軍団と戦闘用ヘリコプターの激しい空中戦。トリケラトプスをさらに太らせたような怪獣は、なぜか背中に大砲がついていて(これが結構近代的な大砲)、戦車を圧倒する勢いでミサイルを放ちまくる(いったいどこでミサイル補充しているんだろう、エネルギー源は何なのだ?)。ご丁寧に歩兵もいて、あらゆる弾丸を跳ね返す盾と鎧で守られているので、警官や軍隊が銃を撃ちまくっても歯がたたない。
この戦闘シーンに45点。
あとはゼロ点。というか問題なくマイナス評価。
舞台は米国だが韓国映画だという。確かに序盤で昔の韓国の伝説(蛇が龍になるために女性が必要。世界の鍵を握るその女性は500年に一度現れる)が説明されていた。それを強引にロスに持ち込んでくるところがなんとも凄い。あの怪獣たちの塊はアメリカのいったいどこに潜んでいたのだ?
セリフでストーリーを説明させていく冗長な展開。
妙に動きが早かったり、不自然にヒロインを襲うのをためらったりする悪役(大蛇)の首尾一貫しない行動。
CG以外は徹底的に金をケチったからだろうか、あまりにもチープな感じのする米国国防総省の設定。
ヒロインと一緒に逃げるだけだった男性のペンダントから、最後になって突然発せられる強力な攻撃。
戦闘シーンとこれらのアンバランスさをどう評価すればいいというのか、困ってしまう。
もう少し、なんとかならなかったものか・・・。
2008年09月13日
dekodekoman at 22:45 Permalink
ダークナイト−(映画:2008年50本目)−


監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー、ゲイリー・オールドマン、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、モーガン・フリーマン
評価:96点
恐ろしいまでの完成度。
2時間30分が瞬く間に過ぎてしまう。
なんとも凄い映画だった。
ヒース・レジャーの遺作となった作品ということで注目もされていたが、まずは彼の鬼気迫る演技に圧倒される。
凄い。
ジャック・ニコルソンを超えているのではないか。
実際、ニコルソンがジョーカーを演じたときの「バットマン」と比べて街並みもストーリーも全ての設定が現代に随分と寄り添ったものになっているので、ジョーカーのリアルさがより強烈に感じられる。
化粧ひとつとっても、ニコルソンのジョーカーはあくまでもマンガだったが、ヒースのジョーカーは狂人そのものの崩れた化粧になっている。
その分、変質者っぽい迫力が増して非常に怖い。
そしてあのしゃべり方。
看護師に化けたときのコミカルな歩き方。
冷徹で悪を楽しみかつ非常に頭の切れる設定と合わさって、完璧な悪役だった。
もはやいうことはない。
バットマンの設定も負けず劣らずかっこいい。
さりげに驚くべきハイテク装置を随所に見せてくれるし、周囲を固めるマイケル・ケイン、モーガン・フリーマンという名優たちの演技もこれまた素晴らしいのだ。
こういった演技とキャラ設定に加えて、脚本もよかった。
「正義と悪」という奥深いテーマ。人間の心の2面性を炙り出すと同時に、終盤のフェリー爆弾事件では人間の良心の尊さも見せ付けてくれる。
レイチェルとデントがああなってしまうなんて!というかなり予想外の展開に進んでいき、最後はバットマンらしく美しく締めくくり。
ゴッサムシティの雰囲気は普通に現代社会っぽくなっていて、リアルな反面少々さびしかったがこれはこれでいいのだろう。
ダラっと観ていたが、その重厚さと迫力に思わず圧倒され居住まいを正してしまった。
もう一度みたい、そう思わせる映画。
ヒースの死はあまりにも残念だ。
2008年05月06日
dekodekoman at 00:21 Permalink
つぐない−(映画:2008年38本目)−


監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ブレンダ・ブレシン
評価:95点
公式サイト
(ネタバレあります)
多感な少女のついた嘘が、愛し合う男女の仲を引き裂いた。
少女は生涯をかけて、その罪を償うことに決めた。
粗筋だけを読めば、基本的なテーマはこの程度だろうと想像できる。
ところが実際は多様なテーマがぎっしりと映画の中に凝縮され、かつ登場人物たちの心理描写が緻密かつ巧みに表現されていて素晴らしい。
全ての動き、会話、音楽、映像、あらゆるシーンが過不足なくひとつの物語を感動的に構成している。
これぞ映画だと、見ている途中からなんともいえない感動を覚えてしまった。
映像として圧巻だったのは、軍人として出征していた主人公のロビーが、味方とはぐれて生き延びやっとの思いでたどり着いたダンケルク海岸のシーン。
長回しでとられたこのシーンには鳥肌が立った。
本国に帰る術もなく諦観と憤りを露にする軍人たち。海に向かい希望の合唱を続ける軍人たち。傷つき倒れた軍人たちと壊れた船や戦車。そしてとおくであがる煙と意味もなく回り続ける観覧車・・・。
ひとつの言葉もなく、戦争の現実を見るものに突きつけ、しかも芸術的なカメラワークと映像美を魅せてくれる。
ああ、なんて素晴らしいんだ。
これがテーマの一部分に過ぎないというのだから凄い。
少女だったブライオニーが、姉セシーリア(キーラ・ナイトレイ)の恋人であったロビーを、嘘の証言で犯罪者にしてしまうまでの経緯の表現もまたよかった。
ひたすらにまっすぐで、強い正義感をもつ少女が、自分の初恋が叶わないという事実と、ロビーの手紙や姉とロビーの密会現場を見たことで自分の中にある真実を捻じ曲げてしまう。
この、ブライオニーの持つ潔癖さは、映画の冒頭でタイプライターの音にあわせてカクカクと動き回る律儀な歩き方から瞬時に観客に理解させられる。
このあたりの演出もあまりに見事。
かといって、セシーリアとロビーの唯一無二の愛への感動が薄れてしまうかと言えばそうでもない。
こちらも計算されつくされ、書き込まれている。
まあ、後半部分は妄想であったわけではあるが・・・。
ラストで老いたブライオニーがテレビインタビューで真実を語る部分は、いい意味で衝撃だった。
もう何も言うことはない。
時間軸の適度な入れ替えもまったくわかりにくくないどころか、登場人物たちの行動の裏側にある心理を見事にあらわす憎いテクニックとなっている。
何度でも見たい、名作だ。
2008年02月11日
dekodekoman at 17:34 Permalink
東京ゾンビ−(映画:2008年12本目)−


監督:佐藤佐吉
出演:浅野忠信、哀川翔、奥田恵梨華、松岡日菜、古田新太
評価:70点
「ばっかじゃないの」
子役のセリフじゃないけれど、見た誰もがそう思う、馬鹿馬鹿しくかつ脱力度250%のオバカ映画。
でも面白い。
あらゆるゴミが不法投棄されて出来上がった黒富士。
そこは人間の死体も次々と埋められている場所だった。
などと文字だけ見ればひょっとしてシリアスな設定に見えるがとんでもない。
フジオ(浅野)とミツオ(哀川)は町外れの工場で柔術の練習に没頭しており、そこにあらわれた本社の藤本。
藤本を消火器で殴り殺してしまったふたりは当然のように黒富士に埋めにいくが、そのとき黒富士では埋められた数々の死体がゾンビになって復活し始めていた。
ゾンビから逃げる二人だが、途中ミツオはゾンビに噛まれて自ら姿を消してしまう。
生き残ったフジオは、金持ち達が作り上げた安全地帯で行われているゾンビの格闘ショーでゾンビファイターとして戦って生きているのだった。
淡々と勝ち進むフジオ。
そしてフジオの前に現れた最強ゾンビとは・・・。
ゾンビのぬるさ。
フジオとミツオの会話のぬるさ。
毒のある設定ながら、毒気の欠片も感じられない弛緩しきった展開。
まともな大人なら見ていて怒り出すんじゃないかと心配してしまうくらい。
唯一、きっつい女の子の役ででている奥田恵梨華がなんとか映画を引き締めており、1時間30分映画がもったものも、彼女のおかげにちがいない。
哀川のハゲヅラはうまいことできていたなあ。
浅野の演技達者なボケぶりもいい感じだし、どのシーンも思わずニヤニヤしてしまう。
そして1ヶ月間特訓したというっだけあって、柔術のワザも美しく見事だった。
ガードポジションから体を入れ替えての足関節への移行などホレボレとするほど。
柔術を教える哀川のセリフにいちいち頷いてしまったほどだ。
ま、こういうのもたまにはあり、ということで。
ロシアへ行こう!ヒョードルが待っている!
2008年02月04日
dekodekoman at 23:50 Permalink
テラビシアにかける橋−(映画:2008年11本目)−


監督:ガボア・クスポ
出演:ジョシュ・ハッチャーソン、アンナソフィア・ロブ、ズーイー・デシャネル、ロバート・パトリック、ベイリー・マディソン
評価:80点
公式サイト
(ネタバレあります)
いじめっこだったけど、他人の痛みがわかって優しくなった上級生の女の子。
いい味を出してましたが、トロルにすることはないような・・・。
いくら優しそうな顔をしたトロルにしたところで、あれでは喜ばないでしょう。
というところは本筋とは関係なし。
女兄弟に囲まれ、逼迫した家計のせいで父親には心のゆとりがなくかまってもらえず、学校ではいじめの対象になってしまう少年・ジェスが主人公。
運動もできて絵もうまく、ちょっとしたきっかけでクラスの人気者になれそうな感じなのに、そのユニークなキャラが災いしてか、友だちもできない。
そんなジェスのクラスにかわいい女の子・レスリーが転校してくる。
彼女もまた変わり者で、クラスに溶け込むことができなかった。
隣同士だったこの二人が仲良くなり、空想の王国を作り上げていく様子は見ているこちらが童心に帰っていくようで楽しい。
仲良くなったきっかけがよくわからなかったが、まあそんなものはどうでもいいのだろう。
空想のキャラクターはCGを使ってよくできてるが、それが空想の世界だとわかるまでは、レスリーが実は魔女なのかと思ったりしてしまった。
現実の世界からの逃避のための王国ではなく、現実の世界を強く生きるための王国。そんな前向きの空想世界は美しいし、誰もが子供時代に持っていたもの。
だからこそ、突然の悲劇には本気でショックを受けてしまう。
あまりにいきなりでびっくりしすぎだ。
女教師にちょっと見とれたからといって罰が重過ぎるじゃないか。
ということで、穢れなき美しき幼少時代を過ごしたという自負が少しでもある人がみれば涙もの。たぶん。
決してゴテゴテのファンタジーではなく、少年時代の心の成長が素直に感じられるところがいいのだ。
2008年01月22日
dekodekoman at 23:28 Permalink
大日本人−(映画:2008年7本目)−


監督: 松本人志
出演: 神木隆之介、竹内力、UA、松本人志、板尾創路
評価:70点
んん?神木隆之介ってどこにでてた?
あの赤ん坊怪獣か?
松本人志の初監督作品と言うことで期待して見たのだが、結論から言えばDVDレンタルにしておいてよかったというところだ。
もちろん笑いどころは結構あるし、個人的にはツボにはまりまくる場面も多かった。
それぞれのシーン、ひとつひとつのセリフについて松本が必死に想いを込めて作りこんでいる姿が目に浮かぶ。
徹底的にシュールでボケまくる内容は決して飽きることはない。
でもなあ、やっぱりコントなんだよな。
テレビのコントの世界なら、松本ほど命を削るような思いで作品を作る人は少ないだろう(だからこそ、ごっつええ感じは番組の取扱で揉めて中止になった)。
だけど、映画の世界ならそんなこと当たり前にちかいんじゃないか。
松本のこだわりなんて、映画の世界では大佐藤が巨大化したときに腰にロゴを入れるかどうか程度でしかないのだ。たぶん。
何を書いているかわからないわからない文章になってきたが、それはこの映画が何をかいているかわからないようなものだから仕方もあるまい。
現代の日本をもあらわしている、などということをどこかのインタビューで話していたようだが怪しいものだ。
松本をバカにするわけではないけれど、北朝鮮へのストレートな嫌悪感と、アメリカに対して感じる胡散臭さって、ありきたりでわかりやすぎないか。
怪獣を退治するヒーローが本当にいたら、こんな粗末な扱いになって肩身が狭いんじゃないかという切り口も、そんなに突飛なアイデアではない。
ただ、細かい笑いはうまいのだ。
赤い怪獣の容赦ない踏みつけ攻撃なんて、「お前はシウバか」とツッコンでしまったし、大佐藤が変身したときの気持ち悪いからだのバランスも絶妙。
名古屋で営業活動したあとにスナックのママの家に泊まってしまうなんていう生臭い設定もうまいよなあ。
上質で見ごたえのあるコントだったが、映画未満じゃないのだろうか、やはり。
そうそう、ウルトラマン?が電車でいきなりどついたのは、俺は面白かったぞ。
2008年01月12日
dekodekoman at 07:51 Permalink
ティファニーで朝食を−(映画:2008年2本目)−


監督:ブレイク・エドワーズ
出演:オードリー・ヘップバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、ミッキー・ルーニー
評価:70点
これまた超久しぶりに見た名作。
見所の半分はオープニングとエンディングシーンじゃないだろうか。
誰もいない早朝のニューヨーク5番街。
名曲「ムーン・リバー」が流れる中、タクシーから降りてきたオードリー・ヘップバーンが、ティファニーのウインドウを覗き込みながら、手にしたパンとコーヒーの朝食をとる。
なんともゾクゾクするオープニング。
溢れ出る郷愁のようなものをビシビシかんじて、このシーンだけで「もういいです、ありがとう」と言いたくなってしまうほどだ。
そしてラスト・シーン。
ブラジル行きをやめ、雨の中タクシーから飛び出すオードリー。
探していたずぶぬれの猫を見つけて抱きかかえ、愛に溢れた顔でジョージ・ペパードを見つめて微笑む。
全身雨に濡れながら、猫を二人の間に挟み込んでのキス・シーン。
コールガールとして生きてきて、これまで誰かに世界から救い出してもらうことしか考えていなかったオードリーが、初めて「自分の力で生きていこう。この人と一緒に歩いていこう」と心に決めるシーンだ。
こうなることを知ってみていても、それでもジーンと心に響く。
いい映画だった。
真ん中がどうかというと、オードリーにコールガールをさせるという奇抜な設定はともかくとして、笑えるような笑えないような中途半端なドタバタが延々と続く。
脚本としてはとても秀逸とは言いがたい。
日本人キャラもまあ笑えるが、果たしてあれでいいのか微妙なところ。
ただオードリーのかわいさは何もかも超越しているから凄い。
コールガールらしく粗野で無教養っぽく振舞っていても、自然と現れてくる人間的美しさは見るものの眼をひきつける。
さすが、としか言いようがないのだ。
何もかも完璧だったローマの休日と比較すると完成度は今ひとつだが、だからこそ、オープニングとエンディング、そしてオードリーの凄さが印象に残る映画になっているのかもしれない。
2007年12月02日
dekodekoman at 20:03 Permalink
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン−(映画:2007年135本目)−


監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー、樹木希林、小林薫、内田也哉子、冨浦智嗣、田中祥平、谷端奏人、松たか子、伊藤歩、平山広行、勝地涼、荒川良々
評価:93点
いい原作をいい役者が演じれば、やっぱりいい映画になるのだ。
2時間20分、堪能させてもらった。
母親の息子に対する愛情、息子の母親に対する愛情。
無償の深い愛が、静かに感動的に溢れ出ている。
どこがポイントだった、というわけではなかったのだが、いろんな場面で涙腺が緩んだ。
小さな、ほんとに些細なシーンにも思いが込められているからだろう。
主人公が親もとを離れるときに、潔いくらいにその決断を尊重し、きちんと背中を押してくれる母親。
最近は子の親離れ以上に子離れできない母親が増えているだけに、その素晴らしさが際立った。
時折でてくる手紙がまたいいのだ。
なんとも美しく品のある文字で、息子の身を案じ、励ましていて、手紙のシーンはどれも泣けるのだった。
私自身も若いころはおかんがうっとおしかったときがある。いや、今でも帰省すれば喧嘩してしまうのだから離れていてちょうどいいくらいか。
それでもこの映画を見ていると、親孝行せねば、という思いが湧いてくる。
リリー・フランキーのオカンは幸せものだった。
そしてそんなオカンに愛されたリリー・フランキーも幸せものだった。
自分のオカンに、リリーのオカンの10分の1ぐらいは幸せを味あわせてあげたいものだ。
役者達も素晴らしかった。
オダギリジョーの雰囲気ある演技もよかったし、樹木希林や小林薫はさすがの貫禄を見せてくれる。松たか子もよかった。
内田也哉子は樹木希林の実の娘。なるほど似ている。無理のない役者の流れだった。
それ以外にも、チョイ役でかなり豪華なキャストが出ていて楽しめる。
小泉今日子、宮崎あおい、松田美由紀、柄本明などなど。そうそう、荒川良々はいつみても楽しい役者だ。画面に彼が出ているだけで、なんだか笑えてくるからなあ。
ということでまた原作を読み返したくなったのだった。
2007年10月06日
dekodekoman at 18:55 Permalink
鉄コン筋クリート−(映画:2007年111本目)−


監督:マイケル・アリアス
声の出演:二宮和也、蒼井優、伊勢谷友介、宮藤官九郎、本木雅弘、田中泯
評価:90点
公式サイト
(ネタバレあります)
松本大洋原作の漫画を映画化したもの。
漫画は何回か読んだことがあり、その独特の世界観が興味深くて惹かれるものがあったので映画を見たが、これがなかなか面白かった。
ただのアクション暴力漫画+下町人情物語なのかと思っていたが、予想よりも暴力シーンは少ない。あれくらいなら年齢制限いらないだろうし、ドラゴンボールのほうがもっとえげつない、と言えるくらいだ。
かといって、開発から取り残された義理と人情の街、宝町をめぐる涙物語かというとそればかりでもない(ネズミと木村のやりとりで、グッとくるシーンはいくつもあったが)。
たぶん主題は、クロの精神世界を描き出す、かなり哲学的なものなんだろう。
頭がちょっと弱いが天真爛漫なシロと、シロを守ることが生きる意味となっているクロ。
小さな悪事を働きながらお金を奪って生活している彼らは、決して善良な市民でもなんでもないのだが、どこか憎めず感情移入してしまう。
街中をどんどんと飛びまわるヒーローっぽい佇まいや、なんとなく強くて悪い大人をやっつけてくれるというイメージがうまく植えつけられてしまうようだ。
(よく考えれば結構えげつないことをしてるんだけど)
そんなシロとクロが、宝町を子供のカジノに変えてしまおうというヤクザの計画に立ち向かう。
シロを奪われて、精神に破綻をきたしてしまうクロ。
クロの精神世界に潜む、もうひとりのダークなクロ=イタチ。
クロの危機を助けるため、クロの意識の中に入っていくシロ。
ここらあたりの描写は圧倒的で、ハラハラドキドキワクワクバリバリグヌグヌでした。
しかし、私にとっての一番のポイントは、なんといっても蒼井優ちゃんの声でございます。
ちょっと頭が弱いと言う設定なので、シロのセリフはどれもこれも独特。
ちょっと甘えた声だったり。面白おかしいセリフだったり。とてもかわいい。
蒼井優ちゃんがこんなしゃべり方をしてるのだと思うと、映画の間ずっと興奮が収まらず眩暈のしっぱなしでした。
ああ、よかった。たまらなかった。最高。
蒼井優ちゃんの声だけで、満点つけてもいいくらい。
もう1回見ようかな。
2007年09月23日
dekodekoman at 23:48 Permalink
デス・プルーフ in グラインドハウス−(映画:2007年106本目)−


監督・製作・脚本・撮影:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン、ヴァネッサ・フェルリト、シドニー・タミーア・ポワチエ
評価:80点
公式サイト
The Endが画面に出たときには大笑いしてしまった。
そんな終わりかたってありなのか。
試乗していた車はどうしたんだろうなあ。
カートラッセルから財布でも取って弁償したのかな。
いやもうムチャクチャな凄い映画で楽しませてもらった。
クエンティン・タランティーノ監督のこの作品は、ロバート・ロドリゲス監督との共同企画「グラインドハウス」の1本。グラインドハウスとは、1970年代に米国にあった、チープなB級エログロバカ映画を2、3本立てで上映する映画館のこと。
タランティーノにはいろんな思い入れがあるのだろう、当時をわざとらしく再現しながら、微妙に計算された仕組みになっているところがなんとも笑える。
妙にざらついた画面や、傷の多いフィルム。途中でぷっつり切れてしまったり、白黒が突然カラーになったり・・・。
そこにタランティーノの趣味が満載になって加わっている。
足フェチ丸出しというか、腰から下の女性のショットがしつこいまでにでてくる。おまけにみんな足がきれい。なのに途中のアクシデントでは思いきっり足をぶっ飛ばしてくれたりもする。
酒場や車の中では、登場人物全員がアルコールとドラッグに脳味噌を溶かされているかのような、無意味な会話が延々と続く。
そこに伏線も何もないのが凄い。
全てのセリフに何かしら意味があって展開の速い現代のハリウッド映画からは考えられない脚本だ。
カメラワークを見ていると、もの凄く長回しの場面もでてきて、よくこんなの撮れるなと関心してしまうくらい。
なんちゅうか、どこかの映画同好会が楽しんで作ってるなあと思わせるのだ。
一転、カーアクションは迫力満点だ。
「デス・プルーフ」とう名前のカースタント用の頑丈な車に乗った変態殺人鬼のカートラッセルが、前半では一発勝負の大クラッシュを引き起こす。このインパクトは強烈。
後半では、カートラッセルがまたも女性達の乗った車を襲うのだが、今度は返り討ちにされてしまう。
このラスト20分のカーアクションがまた凄いのだ。
最後のボコボコはいい音させてました。
ヴァンダレイ・シウバでもあんな強烈な踏みつけはするまい。
面白かったが、決して万人受けはしないだろうなあ。こんな映画が興行として成り立つというのもなんだかよくわからないが、こんな映画を作る人がいるのも大事なことなのだ。たぶん。

2007年08月27日
dekodekoman at 01:03 Permalink
TAXi 4−(映画:2007年92本目)−


監督:ジェラール・クラヴジック
出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディファンタール、ベルナール・ファルシー、エマ・シェーベルイ=ヴィークルンド、エドュアルド・モントート、ジャン=クリストフ・ブヴェ
評価:68点
公式サイト
(ネタバレあります)
プジョー407が、超高速仕様に変身していくところは最高にかっこいい。
そのままロボットになって戦い始めるのじゃないかと思ったほどだ(それはトランスフォーマー)。
時速300キロ超で街中をぶっとばし、サッカー場の芝生の上に滑り込んでいくところもたまらない。
しかし、スーパータクシーが運転で見せてくれるのはこの冒頭部分でほとんど終わり。
いくらなんでもこれじゃタイトルに偽りありで寂しい限りだ。
あとはベルギーから連行された国際指名手配中の凶悪犯人を護送するというマルセイユ警察の仕事が、ドタバタに巻き込まれていくという完全なコメディ。
次から次へと、ゆるゆるでグダグダの笑いの連続。そのお約束的なボケと突っ込みの連続は、吉本新喜劇のフランス版みたいでもあった。
署長ってあんなにバカだったっけ。
それにしても感想をかけといってもこれでは書きようがないじゃないか。
「おかあちゃん、読書感想文かかれへんねんけど」
「あんた、まだやってへんかったんか!今日で夏休み終わりやで!どないすんの!」
「だって、読んだけど、おもろなかったし」
「ほんならおもろないってかいときなさい」
「うーん、ちょっとはおもろかってんけど」
「ほんならちょっとはおもろかったって書いときなさい」
「それでええの」
「しゃあないやろ。どこがおもろかったかわからへんねんやろ」
「うん、ちょっとはおもろかってんけど、どこがって言われたらようわからん」
「ほんなら粗筋だけかいて、まあまあ面白かったです。って書いときなさい。続きがあれば読みたいです。って」
「続きは別にええわ」
「ごちゃごちゃいいな!リュックベンソンも製作・脚本で頑張ってるんや!」
個人的には、カーアクションがほとんどなかったことで大きく減点。
それが楽しみだったのに。
映画の雰囲気そのものは嫌いじゃないんだが。
2007年08月24日
dekodekoman at 21:56 Permalink
デジャブ−(映画:2007年90本目)−


監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン、ヴァル・キルマー、ジム・カヴィーゼル
評価:92点
公式サイト
(ネタバレあります)
結局はタイムトラベルになってしまってガックリとひっくり返ったけど、それを差し引いてもかなり面白かった。
今年の5月に出張で行ったばかりのニューオリンズが舞台だったので、懐かしさから甘めの点数にはなってはいますが。
フェリーでの楽しいパーティが、車に仕掛けられた爆弾によって一転大惨事へと変わってしまう。
500名以上の命を一瞬で奪った事件にデンゼルワシントンが関わっていくが、途中で特別捜査班に加えられることとなる。
冒頭から颯爽と活躍するデンゼルはなんともかっこいい。こんな風に仕事ができたらなあ・・・。
特別捜査班でデンゼルが目にしたのはもの凄い装置だった。
いくつもの衛星監視カメラの映像をつなぎ合わせて、4日と6時間前の様子をストリーミングで再現できる装置なのだ。
これがなんともカッコイイ。映像も素晴らしい。
ターゲットの周りを視点がグルグルとまわり、アップもひきも自由自在。おまけに壁まで透視してしまう。
デンゼルは、爆破を装って殺された女性がカギを握ると判断し。彼女の行動をこの装置で逐一監視することにしたのだった。
しかし、映像は4日前のもの。
過去の映像を見ながらどうやって実際に起きた事件を解決するのだろうと興味深くみていのだが・・・。
やっぱりそれでは話が膨らまなかったのだった。
過去の映像の再現と言うのは嘘で、装置は4日前の過去と現在に橋をかけ、過去そのものを今映し出しているのだ。
そっか、ずっとつながったままのタイムマシンなのだ。
これはこれで面白い。
ゴーグルで過去の映像を見ながら現在の道路でカーチェイスをするところなどかなり斬新だった。
終盤は、ううむ。
デンゼルやはりそうしてしまったか・・・。
物質は無理だとあれだけ言ってたのになあ。
しかし、過去に行ってからも縦横無尽の大活躍が続き、そして現在の映像とつながるコネタがいろいろでてきて面白い。
最後は予定通りの大団円だが、それなりにタイムパラドックスもきっちりと片付けていてすっきりとした心地よさを感じさせてくれる。
支流が本流を飲み込んだってまあいいんじゃないだろうか。
ヒロインのクレアを演じるポーラ・パットンはかなり魅力的。
他に何かでてたかなと思って調べてみたけど、主役級の映画はこれが初めてなのだな。
今後に注目です。
2007年07月29日
dekodekoman at 00:09 Permalink
トランスフォーマー−(映画:2007年84本目)−


監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
出演:シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、ジョン・ヴォイド
評価:68点
公式サイト
(ネタバレあります)
そうか、日本発ロボットアニメが海外でブレイクし、それが実写化されて日本に再上陸したということなのか。
例えればなんだ、寿司がアメリカにわたり、カリフォルニアロールが開発されて、日本の寿司屋でも定番メニューになっているという状況か。
ううむ、ちょっとよくないな。
この映画の原作が日本でテレビ放映されていたのが1985年だそうだ。
そのころは高校3年生だからなあ。さすがにロボットアニメは知らない。
Wikiを読むと、アニメになる前に、日本で発売されていた変形ロボット玩具がアメリカにわたって人気爆発トランスフォーマーズになり、それが逆輸入されてアニメになったらしい。
ということはさらにそれがアメリカにわたり、そして時を経て実写化ということか。
なんとも壮大なスケールじゃないか。
おもちゃや漫画やアニメというのは、国境も世代も簡単に越えてしまうのだ。凄いな。人類が共存繁栄していくヒントがどっかに隠れてるんじゃないのだろうか。
この映画の話をしてない。大変だ。
映画の序盤は、緊迫感のあるアクションSFのような立ち上がり。
砂漠で未知の生命体に突然米軍が襲われるが、こいつが極端に強い。
どんな形にもすぐに変形できる上に、動きも異常に素早く、また銃くらいではびくともしない。
こいつらが何匹も押し寄せてきて人類と戦うだけでも十分に一本の映画になると思うのだが、話のメインは全く別。
アメリカのダメダメ高校生サムが、冒険家であった祖父のメガネをたまたまインターネットオークションにかけたことから大騒動に巻き込まれる。
サムを助けようと結集するいいものロボットと、地球の破壊を目論見る悪者ロボット。中盤にそれぞれ登場してドタバタが繰り返されるところは完全にコメディ。
いったい序盤の緊迫感はなんだったんだ、と思わせる展開。
そうしておいて、終盤はド迫力の戦闘シーンが続く。
車や戦車や飛行機から、ロボットへと凄いスピードで変形していく様子はもの凄くよくできていてカッコイイ。
カッコイイけど動きが早すぎて、動体視力の衰えが最近目立つおっさんには、何がなんだかもうついてもいけない。
ロボット同士の市街戦なんて、どっちがどっちで、誰が誰だか。もはや私はロボットの区別ができる年齢ではないのだった。
30歳まで、じゃないかこれを面白くみられるのは。
私にとってのロボットは、マジンガーZだけなのだ!
2007年07月05日
dekodekoman at 00:33 Permalink
ダイ・ハード4.0−(映画:2007年73本目)−


監督:レン・ワイズマン
出演:ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クリフ・カーティス、ケヴィン・スミス、マギー・Q,ティモシー・オリファント
評価:85点
公式サイト
(ネタバレあります)
たたかうハゲは美しい。
確か有名な詩人がそんなことを言ったはずだ。
あれから何年たったのかわからないが、復活したジョン・マクレーンは、相変わらず美しき闘うハゲだった。
あんなハゲならいつでも喜んでなってみたい。
違うハゲになってしまっていることが悲しいのであるが。
などとハゲだけをネタにダラダラと書き始めてしまうのがハゲのダメな所なのかもしれない。
でも、今回は映画の中でもブルースのハゲをイジってネタにしたシーンもあったのだからいいのだろう。
つまりはハゲは美しいということだ。
今回のジョン・マクレーンはサイバーテロ軍団と闘うことになる。
偶然に事件に巻き込まれていくという強引さはこれまでのシリーズとよく似た展開。
悪役が偉そうな理念みたいなものを述べながら、実はカネだけが目的という底の浅い奴だという設定もこれまでと同じ。
そして今回人質になるのは、いつものオクサマではなくて、ジョンの娘という設定。
この娘がまた(精神的に)むっちゃ強くてジョンそっくりの性格なのだ。
サイバーテロなんて、肉体派刑事のジョンそのままでは対応不可能。
ということで、サイバーテロの駒として扱われた、オタク系SE?がジョンのパートナーとなり、システム系統は一手に引き受ける。
こうなればジョンは後は暴れるだけだ。
アクションはシリーズの中でも最高レベル。
ヘリコプターを車で打ち落とすあたりでも結構強烈だったが、戦闘機に直接狙われるシーンなんて、もはやありえない漫画のヒトコマのようだった。
緊張感タップリでのめりこんでみてしまう。
さらに、倒しても倒しても起き上がってくるアジア系女性悪役は、中ボスとしては最高のキャラ。
惜しむらくはボスキャラが弱すぎる!
悪役としての魅力に欠けすぎだ。
シリーズ1作目2作目の悪役の強烈な顔って、今でも思い出せるが、さっき見たこの映画の悪役の顔は、もうぼやけてきているほど。
もう少しなんとかならなかったものか。
ジョンの頑張りぶりがもっと引き立ったはずなのになあ・・・。
2007年05月17日
dekodekoman at 22:06 Permalink
時をかける少女−(映画:2007年57本目)−


監督:細田守
声の出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、垣内彩未、谷村美月、原沙知絵
評価:83点
公式サイト
あれはあれでよかったけど、これはこれでいいなあ。
エンディングはお決まりの別れだけど、チアキの最後のセリフがゾっとするくらいかっこよかった。
でも二人が会えるのはいったい何年先の話なんだろう。
筒井康隆原作の名作。
原田知世がヒロインになって映画化されたのはどれくらい前だか忘れてしまった。
去年、実写版を見直してみてやっぱりいいなあと感じただけに、アニメ版に過大な期待をするまいと思って観たのだが、さすがに日本アカデミー賞最優秀作品賞、これもよかったのだった。
原作とは全く違う話になっているものの、原作の芳山君はたぶん美術館で働く主人公の叔母さん。
清楚な美しさを湛えた佇まいは、製作サイドのどこかに原田知世のイメージがあったに違いない。
主人公のタイムリープシーンは笑いと泣きを織り交ぜて見事なもの。
バカのように何度も同じ失敗を繰り返し笑を誘い、しかしタイムリープの結果は必ずしもハッピーエンドでなくて悲しい場面につながっていく。
単純な笑いの奥に、教訓めいた話を含ませて、そして全体は高校生の青春ラブストーリーでしっかりつつんであるのだった。
なんとなく、「生徒諸君!」の雰囲気もあったようななかったような・・・。
主人公が突如ガハハハ笑いの漫画顔になったり、あまりにも美しい憂い顔を見せたり、アニメだからできる見事なエンタメ味はさすがです。
楽しみ、ちょっとシンミリさせられ、日本のアニメ技術ってやっぱり凄いなって思い、90分はあっというまに終わってしまったのでした。
そういえば、キャッチボールのシーンもよくできていたなあ。
チアキたちがボールを投げるフォームは実に綺麗で、逆にマコトのちょっとぎこちない腕の動きも実にリアル。それをちゃんと「女投げ」って呼んだりしてた。
後は物語のメインステージとなるあの坂。
アニメだから作れる迫力あるセットだった。
あれを登るのは大変だと思うけど。
2007年05月12日
dekodekoman at 18:56 Permalink
25ミニッツ−(映画:2007年53本目)−


監督:ラオリツ・モンク・ペターセン
出演:トーマス・ボー・ラーセン、ポウ・ヘンリクセン、ヘレ・ファグラリズ
評価:86点
(ネタバレあります)
2005年のデンマーク映画。
黄色い救急車が失踪しているDVDジャケから、ちょっと変わったカーアクション映画なんだろうという程度の気持ちで何の期待もせずにレンタルしたが、これが結構拾い物だった。
最後までデンマーク映画ってわからなかったけど・・・。
心臓の鼓動画面のオープニングは何か厳かで、一気に見るものを期待させる。
期待させておいて、ドジな兄弟の銀行強盗からスタート。
見るからにドンクサイ役割の弟と、どこか屈折した兄。癌にかかって余命2週間の母親の手術代を稼ぐために銀行強盗を思いついたのだった。
当然すぐに通報され、用意しておいた車にも乗れず、近くに停めてあった救急車で逃走する。
街中を駆け回りなんとか森の中に逃げ込んだ兄弟だったが、その救急車には心臓発作を起こして運び込まれた瀕死の患者と、女性救急隊員が1名乗っていたのだった。
展開はドタバタコメディ。
次から次へと難題が降りかかり、ボケと突っ込みのような兄弟のやり取りで進んでいく。
しかし、命というテーマが映画にきっちりと重みを与え、兄弟たちの母の元に急ごうとする気持ちと、今、自分達が運命を握っている命への責任感の葛藤がヒシヒシと伝わってきた。
映画を通じて兄は悪者になっているが、彼の屈折した母親への気持ち、愛情に飢えていた過去が最後になってわかるところがまた切ない。
ラストは少し悲しくやりきれなかった。
でも、あれしかないだろうな。
2007年02月24日
dekodekoman at 22:32 Permalink
チーム★アメリカ ワールドポリス(2回目)−(映画:2007年26本目)−


監督:トレイ・パーカー
声の出演:トレイ・パーカー、マット・ストーン
評価:前回評価+1点
ついつい2回目を見てしまったが、やっぱり面白かった。
今回は、ストーリーというよりはメイキングをじっくり楽しんで見た。随所に感心させられた。
とにかくアナログだ。
もてる限りの技術とたっぷりの金と時間をつぎ込んだ、アナログの最高峰人形劇。
なんといっても糸でつるしてあって上から動かすんだもの。
顔の表情だって、内側にいろんな機械が入っているものの、操縦はリモコンで人間が行うのだ。
車もロケットも建物もエッフェル塔も、すべてセットを作りこんでの撮影。CGなんて一切ない。
人形の大きさが60センチ程度なので、セットといってもかなり大きい。
さらにセットの中でも細かな遊びが随所に施してある。
バーに置いてあったやしの木の葉が米ドル札で作られてあったり、部屋のインテリアにチーズオロシ器が使ってあったり、一回見ても絶対にわからないようなところで遊びまくっているのだ。
何回も出てくる爆発のシーンも、全て本当にセットをぶち壊しているし、アクションシーンも秀逸。
ううむ、面白かった。
バカバカしくて皮肉たっぷりのやりたい放題の内容は、何回見ても笑える。
ただ、展開がわかっているだけにスピード感のなさが少し気になったかも。
人形のセックスシーンもゲロゲロシーンも期待通りでした。
また2年位したら見てみようかな。

2007年02月18日
dekodekoman at 09:34 Permalink
ドリームガールズ−(映画:2007年24本目)−


監督:ビル・コンドン
出演:ジェイミー・フォックス、ビヨンセ・ノウルズ、エディ・マーフィ、ジェニファー・ハドソン、アニカ・ノニ・ローズ、ダニー・グローヴァー
評価:92点
公式サイト
(ネタバレあります)
最高!
圧倒的な迫力で繰り広げられる歌の数々に身を任せているうちに、あっというまに2時間10分が終わってしまう。
これはたまらん。
もともとミュージカルは舞台も映画も大好きで、突然セリフを歌いだすのも私的には全く違和感がない(ミュージカルが嫌いな人はあれがたまらなく嫌らしいね)。
ただ、この映画は音楽がテーマなので、歌のシーンは、ショーやリハーサルやレコーディングの場面にうまくはめ込んであって、ミュージカル映画ということを忘れてしまうほど。セリフが歌になるのは2箇所くらいだったろうか。
歌のシーンはどれもこれも楽しく感動的でカッコイイ。
雰囲気たっぷりの酒場での歌も、華やかなステージでの歌も、緊張感漂うスタジオでの歌も、全部に魅了された。
もともとは1981年にNYのブロードウェイでミュージカルとして公演されていたもの。モデルはダイアナロス率いる「シュープリームス」だというが、「シュープリームス」自体、私はよく知らない。
最初は抜群の歌唱力を持つジェニファー・ハドソンをメインボーカルとした田舎(デトロイト)の売れないグループだったが、人気スターのバックコーラスグループから始まり、メインボーカルをビヨンセに変更してから大ブレイク。その後は裏切りや嫉妬や謀略でドロドロになりながら、最後は感動的なラストに。
ジェニファー・ハドソンはアカデミー賞の最優秀助演女優賞にノミネートされているが、これは獲るんじゃないだろうか。それぞれの歌がもの凄い迫力だったし、強烈に頑固な女性を好演していた。演技もうまいのだ。
エディ・マーフィーがあんなに歌がうまいのは驚いた。口パクじゃないのかと思わず口元を凝視してしまったくらいだ。
ビヨンセは、美しさはもちろんのこと、歌も演技も素晴らしい。
最初は控えめに登場し、メインを任されてからはオーラ爆発。そしてレコーディングスタジオで自分の本心を歌いきるところなんて思い出しただけで鳥肌もの。
歌以外で言えば、憎たらしい役どころのジェイミー・フォックスもなかなかでした。まあでもこれくらいなら誰でもできそう。ジェイミー・フォックスである必然性はなかったかも。
ミュージカル映画の中では、「シカゴ」「オペラ座の怪人」と並んでマイベスト3に入る映画。
サントラ絶対に買おうっと。
2007年02月10日
dekodekoman at 23:36 Permalink
チェケラッチョ!!−(映画:2007年19本目)−


監督:宮本理江子
出演:市原隼人、井上真央、平岡祐太、柄本佑、玉山鉄二、KONISHIKI、伊藤歩、山口紗弥加、柳沢慎吾、川田広樹、ゴリ、陣内孝則
評価:76点
公式サイト
(ネタバレあります)
私が高校生の頃はラップなんて知りもしなかったけれど、ついに高校生がラップを歌う(歌うでいいのか?動詞がわからん)青春映画ができるまでになってしまった。
高校生の青春に関しては、野球やラグビーのスポーツから(卓球もあったな)、ロックやジャズやシンクロナイズドスイミングまで映画になって、ついにラップだ。
後はなんだろう、アニメ研究部が学園祭にかける青春とか、料理研究部が世界大会に出場とか、無線部が人工衛星を作る青春とか、ぐらいしかないか。あ、最後のはもう映画になっていた。
ラップ、が題材だからというわけでもないだろうが、主人公の高校生達は相当にオバカ。その親達も相当にオバカ。
オバカなんだがいいやつばかりで、笑い泣き傷つき苦しみ喜び、と多感な青春を全身で表現してくれて実に爽やかだった。
市原隼人の演技は下手糞で、見ていてハラハラしたけれど、その分、平岡祐太がうまかったなあ。
ほぼ原作どおりの脚本にも不満はない。
ただ、キャラの強すぎる脇役達の演技が少し鼻について、映画というよりはお手軽なテレビの2時間ドラマのイメージから抜け出せなかったことが残念だ。
柳沢慎吾はジャマだったし、陣内孝則もミスキャストっぽい。
平田満も大島さと子もなんだかなあ・・・。
ガレッジセールの二人はさすがに沖縄出身だけあって、なんだかハマっていた。
「自分探しは土日にしろ!平日は働け!」っていいセリフだ。
ついでに言えばKONISHIKIは太りすぎだよいくらなんでも。
まともに歩けなくなっているじゃないか。
誰か強制的にダイエットをさせてやってくれ。
ついでに俺も。
dekodekoman at 21:44 Permalink
デッド・オア・アライブ−(映画:2007年18本目)−


監 督:コーリー・ユン
キャスト:デヴォン青木、ジェイミー・プレスリー、ホリー・ヴァランス、ナターシャ・マルテ、サラ・カーター、ケイン・コスギ
評価:58点
公式サイト
(ネタバレあります)
デッド・オア・アライブといってもバブル期に日本で人気があったイギリスのバンドではない。根強い人気のある3D格闘技ゲームだ。
これはそのゲームが映画化されたもの。
格闘技ゲームだから格闘シーンばかりだが、どうも美少女キャラやグラマー女性格闘家キャラが人気のゲームのようで、映画の中も完全に女性が主役だった。
それならそれでいいけれど、もうちょっとかわいい女優とか有名どころをだすとか、もっと強烈なアクションシーンを入れるとか、なにか工夫ができなかったものか。
デボン青木が主役のひとりという時点で、マイナス30点。
忍者という設定だがそれもどうなのか。
あのひしゃげた顔は、オヤジの経営するベニハナの鉄板に顔面を押し付けられでもしたのか。
他の女優たちもパッとしない。
特に青い髪の毛の「あやね」なる女性はなんなんだ。
日本の忍者という設定ならせめて日系人を使ってくれよう。
ストーリーに工夫などあるわけもない。
格闘ゲームなんだから、格闘するというシチュエーションをつくるだけ。
参加者達は突然飛んでくるDOAという名前入りの手裏剣のようなもので出場を要請される。
あれはいったいどこから飛んでくるのじゃ。
集められた16人のファイター(性別も体重も無差別)は、1千万ドルの優勝賞金を目指して闘いを始める。
ルールは武器を使わないこと。
これじゃあ女性が不利じゃないのか、なんて思っていたらその辺りに置いてあるものは使っても反則にならないようだった。
一応格闘技大会の意図は別にあり、黒幕というか悪者がお約束どおりにでてくるんだがインパクトが薄い。
あまりの退屈さに寝そうになる映画だった。
ケイン・コスギはそこそこ頑張っていたかも。
このゲームが好きな人にはたまらんのだろうか。私はこんな映画を見てしまった自分がたまらなく嫌になった。
dekodekoman at 01:50 Permalink
とかげの可愛い嘘−(映画:2007年17本目)−


監督:カン・ジウン
出演:チョ・スンウ、カン・ヘジョン、カン・シニル、チョン・ソファン
評価:81点
公式サイト
(ネタバレあります)
チョ・スンウが走っていると、「マラソン」がどうしても被ってしまう。
カン・ヘジョンの表情は、「トンマッコル」の不思議ちゃんそのものだ。
でも、この二人の演技って嫌味がないし、とてもうまい。
クドイように見えてくどくなく、しっかりと味付けがしてあるのだ。
香味屋のビーフシチューみたいなものか。
わからんってそれでは。
この二人は私生活でもつきあっているらしい。
恋人同士でありながら、映画でも恋人を演じるって、照れくさくないんだろうか。昔は三浦友和と山口百恵なんていうのがあったがなあ。
なんにしてもカン・ヘジョンはむっちゃかわいい。
超美人、とは思わないが、生き生きとした表情には魅了される。
オールド・ボーイをまた見たくなったなあ。
子供の頃から「私に障るとたたりがある」と言って人を自分から遠ざけ、胸ポケットにはトカゲを入れて先生からも敬遠されてきた女の子、アリ(カン・ヘジョン)。
「自分は宇宙人」などとよくわからないかわいいうそをつき続けたうえ、唯一友達となったジョガン(チョ・スンウ)の前からも姿を消してしまう。
アリが再びジョガンの前に姿を現したのは、高校生になってからだった。
キスをした次の日に、アリはまた姿を消してしまう。懸命にアリを探すジョガンの前に再びアリが現れたとき、ジョガンは銀行員として働いていた・・・そして・・・。
定期的に消えるアリ。人から自分を遠ざけるアリ。
謎を残して映画は進んでいくのだが。そのあたりはほとんどネタバレ状態だ。それでも彼女に起こった不幸が実際にわかるところでは思わず涙ぐんでしまう。
これまでの彼女の行動のひとつひとつに込められた意味にジーンと来てしまうのだ。
よく考えればストーリーにヒネリがないし、最後もなんだか椅子からずり落ちそうなオチなんだけど。
ほんとに?UFOあわられたの?そんなのでいいのか?
カン・ヘジョンだからまあ許すことにしよう。
子役の演技が素晴らしい。
明るく元気で健気に頑張る子を見事に演じている。凄いもんです。
2007年01月21日
dekodekoman at 00:31 Permalink
ディパーテッド−(映画:2007年8本目)−


監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ベラ・ファーミガ、マーク・ウォールバーグ、マーティン・シーン、ジャック・ニコルソン
評価:80点
公式サイト
(ネタバレあります)
名作、インファナル・アフェアのリメイク。
マット・デイモン、レオナルド・デカプリオ、ジャック・ニコルソンって凄い顔ぶれだけど、たぶん製作サイドがこれくらいの面子じゃないとオリジナルは超えられないと感じていたんじゃないだろうか。
そして、やっぱり残念ながら、オリジナルのときに感じた画面から溢れ出るようなトニー・レオンとアンディ・ラウの色気、そして緊張感がたりなかったように感じた。
オリジナルが好きだから、偏見が入ってしまうのかもしれないが。
ただ、ジャック・ニコルソンは凄い。
存在感もあそこまでいけば化けもんだ。
ストーリーはほぼ原作に沿っている。
マフィアから警察に潜入したマットと、警察からマフィアに潜入したレオを中心とした、警察とマフィアの行き詰る攻防。
だけど、なんかカッコよくないんだよなあ。
屋上でトニー・レオンとアンディ・ラウが対峙するときなんてゾクゾクした覚えがあるが、レオとマットはなんだかバタバタして凄みのかけらもない。それだけリアリティがあるといえばあるんだろうけどね。
ラストは予想外だった。
これでは続編が作れないじゃないか。
悪人が残ってなんとも言えない余韻を作ったオリジナルとは違い、落ち着くべきところに落ち着く、常識的なまとめかただった。
それはそれでいいか。
もうひとつ弱かったのはカウンセラーの女医の存在。
もっと重要な役どころだったような気もする。オリジナルではレオが警官であることを知っていたはずだし、レオと寝るなんてこともなかったと思うんだが、あれではただの色恋三角関係になってしまい、精神的な支えが果たせない。
妊娠の報告を受けたマットが、「え、俺はパイプカットしてるのに」とか言えば面白くなったんだけど、そんなわけにもいかないか。
とはいえ2時間半飽きることなく見れたのは、やっぱり面白かったんだろう。
私がオリジナルにこだわりすぎているのかもしれないな。
2007年01月14日
dekodekoman at 18:27 Permalink
デスノート the Last name−(映画:2007年6本目)−


監督:金子修介
出演:藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、片瀬那奈、鹿賀丈史
評価:85点
公式サイト
(ネタバレあります)
今頃ではありますが、デスノ後編です。
Lの異様なメイクと不自然な立居振る舞い(含む異常な甘味摂取)と、突然人間界に現れた死神(とデスノート)の存在。
この2点に違和感さえ覚えなければ、どの年代であっても、この映画にのめり込むのは結構たやすいことじゃないだろうか。それら以外は非常に論理的に作られている。
漫画でデスノを読んでいる人間にとってはこのハードルは低いので、私も映画を楽しむことができた。
漫画では非常に難解で、ページから文字が溢れんばかりに解説してあるデスノを、見事にわかりやすくかつ緊張感を持った映像に変化させていたと思うし、キラこと夜神月とLの息がつまるような戦いは、漫画以上の臨場感だった。
原作にないラストを原作に近いイメージで、しかも二転三転のトリックもいれてよく作ったなと思う。
登場人物の熱演もあるが、まずは脚本の勝利かな。
藤原竜也は、デスノートの記憶を本当に無くしているときと、そうでないときの演技の微妙な差をうまく見せていたし、デスノートを持ったとたんに地獄に身を落としていく高田を演じていた片瀬那奈が以外によかった。
リュークやレムの死神CGは、あまり違和感もなく、結構高いレベルだったんじゃないか。
でも、ほんとにあんなのが出てきたら、あの程度の驚きではすまないと思うのだが。
ミサミサにしろ、エルの周りの警官にしろ、納得するのが早すぎるって。
前編が終わった後、日テレはDVD発売前にテレビの地上波で公開し、後編への集客をもくろむ作戦に出た。これは結構見事だったと思うのだが、普通映画が公開されると、その後にDVDでたっぷり稼いだ後に地上波放映というのがこれまでの暗黙のルールだっただけに、他のテレビ局からは非難の声もでたようだ。
でも、いいんじゃないか。
見る人たちが喜んでくれるのなら。
デスノを使って犯罪者を殺したライトの取った行動を認めることはできないけれど、気持ちはよくわかる。
特にミサミサのような境遇にあっていれば誰しもそう思うだろう。
だけど人間は神ではなく、あのノートを使うことは、やはりタブーなのだ。
私の場合は、単に気がちいさくてあのノートは使えない。
死んでくれたら、と思う人がいたことはあるが・・・。
などということは、思っても口に出してはいけません。
2006年12月30日
dekodekoman at 00:26 Permalink
トゥモロー・ワールド−(映画:2006年153本目)−


監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー、チャーリー・ハナム、クレア=ホープ・アシティー
評価:87点
公式サイト
(ネタバレあります)
そろそろ何とかしないと、人類は本当に滅亡するよ。
そんな気持ちにさせられる、内容の濃い社会派SF映画だった。
今日、テレビで爆笑問題の太田が「日本国憲法第9条は必要だ」という立場からこんなことを言っていた(言葉はちょっと変わってますが、こんな意味に思えた)。
「戦争やテロにどんな主張や大義名分があっても、暴力で解決しようとするのはダメなんだ。なぜなら暴力はどんな言葉(メッセージ)より目だってしまうから。(暴力で解決したときには暴力の悲惨さしか残らない)だから、争いの解決は必ず言葉で行わなくてはならない」
「戦争放棄を青臭い理想と言わないで欲しい。現実的にそんなことはできやしない、という考え方こそ青臭い。現実が理解できた自分に酔っているだけで、その先の理想に思いを馳せることさえできない。(現実の一歩先を考えるのが人間じゃないのか)」
( )は適当に私がつけたし。
そうなんだ。
ジョンレノンのイマジンの世界は決して青臭い理想ではないんだ。
そんなことを思ったのは、太田の言葉を聞きながら、この映画の中で年老いたジョンレノンのようだったマイケルケインを思い出したからだろうか。
分けのわからん前置きが長くなったが、舞台は2027年の英国。2009年から人類には子供が生まれなくなり、人類の未来に絶望した世界は次々と破滅の道を進んでいった。
唯一、英国だけが軍隊のもとに秩序を維持している。しかしその維持も世界中からの移民を徹底的に排除する政策のおかげであった。
クライブ・オーウェン演じるセオはエネルギー省の官僚だが、ある日、元妻で活動家のリーダーであるジュリアンから、一人の不法移民少女のために通行証を手に入れて欲しいと頼まれる。
彼女を護送中、ゲリラに襲われてジュリアンは死亡。そしてその少女はなんと妊娠していることが判明する。
彼女と生まれてくる赤ん坊を、「船」に送り届けるため、政府と、そして活動組織の両方から逃げ続けるセオ。
このあたりの緊迫感は息が詰まるほどで、戦闘シーンもリアルで凄い迫力だ(銃撃戦が繰り広げられているビルからセオが女性と赤ん坊を助けるシーンはかなりの長まわしだったらしい)。
あれだけ撃たれてあたらないなんてありえない、と思っていたら、セオはちゃんと撃たれてしました。すいません。
ライフルの弾ひとつひとつの音がきちんと聞こえてきて、弾が撃ち込まれて絶え間なく立ち上る砂煙も実にリアル。
そして赤ん坊を見た瞬間に全ての戦闘が一時休戦となるクライマックスシーンでは、思わず見ているこちらまで合掌したくなるほどだった。
ほんとにあの船で赤ん坊は助かったのか?
そもそも船っていったいなんなのか?
セオをあんな行動にまで駆り立てたモチベーションはなんなのか?
なぜ世界中の女性達がいっせいに不妊になったのか?
わからんことは多いけど、大切なのはたぶんそんなことじゃない。
赤ん坊がうまれ育ってこその人類であり、赤ん坊が生まれてこようとおもうような世界を我々は作る義務があるのだ。
戦争している場合ではないんだってば。いやほんまに。
2006年12月12日
dekodekoman at 01:18 Permalink
トンマッコルへようこそ−(映画:2006年147本目)−


監督:パク・クァンヒョン
音楽:久石 譲
出演:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン、イム・ハリョン
評価:95点
公式サイト
(ネタバレあります)
笑い、感動し、そして泣いた。
韓国で800万人の人が見たというが、十分に納得できる凄い映画だった。
2時間超が全く長く感じられない。
今まで私が見た中で、最高の反戦映画じゃないだろうか。
連合軍の爆撃で爆弾が花火のように辺りを照らすなか、これまで敵同士だった二人の兵士が最高の笑顔で見つめあう。
人生の最後に命をかけて「トンマッコル」を守った兵士達。
あんなに美しく、切ないラストシーンを見たのも久しぶりのような気がする(本当のラストシーンは別にあるが、あれは回想シーンなんだろう。なるほどそれで少年兵はあの時花びらを髪に挿していたのだ)
1950年、朝鮮戦争の真っ最中に、戦争から取り残された村「トンマッコル」へ、南と北の敵対する兵士たちと連合軍のアメリカ兵が迷い込んだ。
遭遇したときの緊張感は、争うことを知らない村民たちとの暮らしの中で徐々に癒されていき、兵士達は人間らしさを取り戻していく。
村の象徴のような少女、ヨイル(カン・ヘジョン)は少々頭の足りない役柄だが、とにかくかわいい。
踊るように歩き、人々に笑顔をふりまき、優しさを与え、自然を感じる姿からは、無垢な少女の聖なる美しさが溢れ出ている。
どこかで見たと思ったらオールド・ボーイに出ていたのだ。
あれもいい映画だった。また見たくなったじゃないか。
しかし、村の平和は続かず、連合軍の兵士が村にまで進出し、ヨイルは殺され、そしてついに爆撃までが始まる。
兵士たちの決意は、自らの命と引き換えに村を守ることだった。
前半ではコミカルな映像で何度も笑わせ、中盤ではじっくりと兵士たちの心の変化を写して感心させ、終盤の圧倒的な戦闘シーンで見るものの心を揺さぶる。
映画の中で「戦争反対」などということばは一度もでてこない。
「違う出会いをしていれば、もっと楽しかったのにな」というようなセリフを、最後にシン・ハギュンが言うが、せいぜいそんなもの。
しかし、銃口を向けられても怖がりもしない村人たちの日常そのものが、戦争のバカバカしさを強烈にあらわしている。
言葉を荒げなくても想いを伝える方法はあるのだ。
ちょうどトンマッコルの村長のように。
そういえば「どうしたらこんなにうまく村をまとめることができるのか」というチョン・ジェヨンの質問に対して、「腹いっぱい食わすことだ」という村長の答えがよかったなあ。
腹いっぱいのところに、いさかいは起こらないのだ。
ポップコーンが降ってくるシーンや、イノシシのシーンなんかはアニメっぽいけどそれもまたいい。
夜中にイノシシの肉を食らうところもいい。
ノグソシーンが結構お下劣なところも、それもまたいい。
韓国映画を見ていつも思うのだが、銃撃戦のシーンとかリアルすぎて怖くなる。
耳を劈く音も、飛び散る血も肉も、臨場感ありすぎだよな。
それでもとにかくいい映画だった。
2006年11月21日
dekodekoman at 23:21 Permalink
手紙−(映画:2006年141本目)−


監督:生野滋朗
出演:山田孝之、玉山鉄ニ、沢尻エリカ、尾上寛之、吹越満、田中要次、杉浦直樹、吹石一恵、風間杜夫
評価:81点
公式サイト
(ネタバレあります)
東野圭吾の名作を映画化。
主人公の、この世にたったひとりの肉親である兄との深い絆に感動させられ、そして犯罪者の家族、犯罪被害者の家族、ということについて考えさせられる。
しかし、原作は超えられなかった。
もちろんそれは私にとってという話だが。
東野圭吾の原作を読んだときに頭の中に浮かんだ映像と、この映画の映像がどこか微妙にずれていて、ずっと不協和音を奏でていたのだ。
どこなのだろうか。
山田孝之のイジけた演技にイライラしたからだろうか。
沢尻エリカの絶対的に変な関西弁に卒倒しそうになったからだろうか。
風間杜夫の豪邸があまりに浮世離れしていたからだろうか。
そこで吹石一恵を選ぶか普通、エリカちゃんのほうがかわいいじゃないかと憤慨したからだろうか。
などと突っ込みどころを並べて映画の感想にするのは品格がありませんね。なんといっても一番変だったのは主人公達の漫才でしたけど。
気まずいねえ〜♪
「犯罪者が身内にいたら」それは誰にでも起こる可能性があること。そして、自分には非がないからと言って平然と生きていける世の中ではないのだ。
苦悩を続け、つらい日々を送る主人公を見ていると心が痛い。
そして6年たって改めて自分の罪の大きさを知り、涙を流す兄の姿を見るのも心が痛い。
細やかな感情を写しだす映像に心を揺さぶられ、そして最後にとどめの小田和正。
なんと卑怯な。あれでは誰でも泣いてしまうぞ。
沢尻エリカはいい女優になったなあ。
2006年11月03日
dekodekoman at 14:22 Permalink
時をかける少女−(映画:2006年135本目)−

監督:大林宣彦
出演:原田知世、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣、高林陽一、上原謙、入江たか子、高柳良一
評価:90点
(ネタバレあります)
ネタバレもヘッタクレもないか。
1983年、原田知世を一躍有名にした青春アイドル映画の傑作。
アニメでリメイクされた最近の作品を見逃したので、こっちをDVDで見てみた。筒井康隆の原作は読んでいたけど、実は映画は見ていなかったのだ。
結構まともな映画だ。
いや、かなりまともな映画だ。
正直にいうと胸が熱くなってちょっと泣きそうになった。
いかんいかん、おじさんの涙腺はかわいい女の子の胸キュンストーリーに敏感に反応してしまうのだ。
ある日、中学3年生の少女・芳山和子は、同級生の深町一夫や浅倉吾朗と一緒に理科室の掃除を行っていた時に、実験室でラベンダーの香りを嗅いで意識を失う。それから和子は自分を取り巻く時間が奇妙に動きをすることに気づきはじめたのだった。
やがて、同じ日が二度始まるという決定的な事件が起こる。
タイム・リープの事実を知って混乱する和子。
普通の女の子でいたい、そう決心した和子はあの場所に戻ろうとした・・・。
ああ、懐かしい。
そうそう、こんな話だった。
いつのまにか未来人の深町を愛していた和子。
初めてのそんな気持ちに戸惑い、彼との別れに胸を痛め、そして記憶を消されるという現実に涙する和子。和子と言うより原田知世。かわいすぎます。オジサンはハアハアを通り越して、涙目で彼女を見つめ続けるのです。
「そんな切ない表情をしないでくれ、オジサンがなんでもしてあげるから!好きなものを買ってあげるから!」
目の前にこの映画の原田知世がいれば、オジサンたちはみんな揃ってそう叫ぶでしょう。
彼を愛したという思い出までを消されるという切なさ、そうか、これは最近見た「明日への記憶」にも繋がるのだな。
単なるアイドル映画にとどまらず、きちんと見る人の心に何かを残してくれるのは、そんなところまで大林監督がしっかり描いているからだろう。
もちろん筒井康隆の原作も秀逸。
尾道を映し出した映像はとても美しい。
監督の過剰な思いがひとつひとつのカットによく現れていた。
登場人物はみな、古きよき中学生たちであり、古きよき先生、古きよき両親、古きよき隣人たちだ。
こんな日本があったのだ、そんなノスタルジーにも浸ることができるのだった。
多少棒読みのセリフや、チープ感がぬぐえないタイムリープシーンなどはまあ時代を考えれば仕方ないでしょう。
とりあえず、一度は見ておく価値があります。オジサンにとっては。
2006年10月02日
dekodekoman at 23:42 Permalink
トランスアメリカ−(映画:2006年122本目)−


監督:ダンカン・タッカー
出演:フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ、フィオヌラ・フラナガン、バート・ヤング、キャリー・プレストン、エリザベス・ベーニャ、グレアム・グリー
評価:91点
公式サイト
(ネタバレあります)
ロードムービーは好きだけど、おかまちゃんは生理的に受け付けない私。さて、この映画はどうだろうかと思ったら、これがごっつよかったのです。
性同一性障害のブリーが男から女へ性転換手術をする直前にかかってきた一通の電話。それは彼(彼女)に17歳の息子(トビー)がいるという内容だった。驚くブリーだが、思い当たる節があり、彼は息子に会うためにNYへと向かう。
道端で売春をしていて捕まったトビーを警察から連れ出したものの、さてそこからどうしたものか困るブリー。
とりあえず教会関係者だと嘘をついてトビーとともに車で大陸を横断しロスに向かうのだった。
ブリーを演じるのはフェリシティ・ハフマン。この人はれっきとした女性。この映画で昨年のアカデミー賞最優秀主演女優賞にノミネートされた(受賞はウォーク・ザ・ラインのリーズ・ウィザースプーン)。
彼女の演技が素晴らしくうまい。
仕草も声も、どうみても女になりかけの男にしか見えないのだ。
えっと、別に女になりかけの男を良く知っているわけではありませんが。
トビーに対して自分が男であることも、父親であることも隠したまま旅を続けるブリー。途中で車も金も盗まれた二人は、自分達の性を売りながらでも逞しくも生々しく旅を続ける。
やがてブリーが男であることがトビーにばれ、そしてついに父親であることもばれてしまう。
女になるために全ての準備を終えたはずだったブリーに足りなかったもの。それが旅を通じながら埋められていく。
両親や妹との再会と確執。トビーのやり取りのなかで感じる苦悩。
そして改めて確認する本当の自分の性。
ところどころに笑いはあるものの、実に真面目でまともでいい映画だった。二人はきっといい親子になるだろう。
2006年10月01日
dekodekoman at 00:15 Permalink
チアガール VS テキサスコップ−(映画:2006年121本目)−


監督:スティーブン・レイク
出演:トミー・リー・ジョーンズ、クリスティーナ・ミリアン
評価:80点
(ネタバレあります)
宇宙人トミーの今回の任務は警官だ。
殺人事件の目撃者となってしまった、チアリーダー5人組。彼女たちを犯人から守るために、トミーは彼女達を一軒家に監禁(保護か?)し、一緒に生活をすることになったのだった。
冒頭の殺人事件のシーンなどはかなりテンポよく進んでいき、ひょっとしてこれはなかなかのアクション映画なのかと思わせられたりするが、当然そんなことはないわけで、あっというまにベタベタのコメディ映画に早変わりする。
しかも警官隊の戦略は基本的に「待ち」であって、犯人が来るまでひたすらに我慢。
これではサスペンスにもアクションにもなるはずがないのじゃ。
しかし、コメディとしては面白い。
チアリーダー5人と共同生活、などというとシモネタ連発で見るに耐えなくなりそうなのに、それをトミーの渋面が全て救ってしまっている。トイレにパンティやブラジャーがぶら下がっていようと、目の前を露出バリバリの彼女たちが歩き回ろうと、「彼氏とテレフォンセックスしたい!」とか叫ばれようと、トミーの心は全く動揺しないのだった。
おじさんとしては、彼の渋面にとても救われる。
そうだ俺だって平気だ。あんなヘソだしルックくらいで涎なんかたらすか小娘が!などと自分がトミーになったつもりで冷静にいられるのだ。
でも、ほんとにあんな境遇になったら刺激が強すぎて、俺は1時間も耐えられないな。
軽薄そうでいて、実は真面目で前向きな彼女たち。
命をかけて自分たちを守ってくれるトミーを彼女たちは信頼し、トミーも彼女たちから娘との付きあい方のアドバイスを貰ったり、助教授との恋を応援してもらったりする。
うーん、ハートウォーミング。
最後のアクションも彼女たちの機転もあってかっこよく締めくくり。
できすぎだけど、トミーおじさんだからこれでいいんでしょう。
そうそう、BOSSのCMはいつまで続くのか楽しみです。
次はなんだろう。コンビニの店員あたりでどう?

2006年08月07日
dekodekoman at 18:02 Permalink
ディセント−(映画:2006年103本目)−


監督:ニール・マーシャル
出演:シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ、アレックス・リード、サスキア・マルダー
評価:78点
公式サイト
(ネタバレあります)
でた!
でました地底人!
地底生活に適応して進化した彼らは、音を頼りに敵を見つけ、鋭い歯で相手に襲い掛かる。動きは素早く壁を縦横無尽に駆け回る。
光のない世界に住む彼らに視力はいらず、目は退化して見えない。
体表は白くなり、両生類のような湿り気を帯びている。
SF好きの小学生ぐらいなら簡単に考え付きそうなステレオタイプの地底人。
うじゃうじゃいるのに結構弱いし、噛みつかれさえしなければ十分に勝てる相手だ。武器は持っていないし、思ったより打たれ弱い。
目をグリグリされているのは痛そうだったぞ。
いえいえそれでも十分に怖かったしグロかったしドキドキいたしました。
洞窟探検にでかけた女性6人組が、地底3000メートルの未知の洞窟に迷い込み、脱出不可能な恐怖にさらされる。
開始50分あたりまでは、狭くて暗い洞くつでの必死の脱出劇がテンポよく進んでいく。まるでアドベンチャー映画だ。そして、登場人物たちの間に微妙な空気が流れだし、そうかこれはひょっとしてサイコホラーなのかと思わせた瞬間に地底人だ。
ああ、びっくりした。
いきなり違う映画になってしまったようだった。
救いのない結末はあまり好きじゃないけど、ビデオカメラの液晶画面越しに見る暗闇の映像の怖さは結構斬新だったし、主人公の女性が何かをふっきったかのように強くなっていく様子には思わず拳を握って応援してしまった。
退屈しない90分間。映画としてどうかといわれれば、微妙だけど。
ラストはどう理解すればいいのだろう。
どこからかが幻覚だったというのか。
それともラストが彼女の心の中の幻覚なのか。
そうだ、地底人の泣き声はプレデターのようだった。
第8回ブリティッシュ・インディペンデント映画賞 最優秀監督賞 最優秀映画技術賞しています。
2006年07月21日
dekodekoman at 21:32 Permalink
タイヨウのうた−(映画:2006年98本目)−


監督:小泉徳宏
出演:YUI、塚本高史、岸谷五朗、麻木久仁子、通山愛里
評価:92点
公式サイト
(ネタバレあります)
泣いた・・・。
ラストで薫(YUI)の歌う「Good-bye days」が流れだしたきには鳥肌が立つような感動が押し寄せてきた。
25歳の監督の演出と19歳の少女の歌声に、いいおっさんの心がこんなに乱されるとは思わなかった。
難病ものだけど単なるお涙頂戴映画ではない。
切なくそしてとてつもなく力強いメッセージを込めた青春映画なのだ。
主人公の雨音薫は日光に当たると死んでしまうかもしれないXP(色素性乾皮症)という難病にかかっていて、昼夜逆転の生活を送っている。
夜になると起きだし家を出て、人気のない駅前でひとりストリートライブをしながら歌手を夢見ている。
演じているYUIは本当に歌手なので歌はうまくてあたりまえだが、これがまた独特の歌声でインパクトが強烈。彼女の歌声の求心力は凄い。
薫が夜明け前に家から眺めるバス停にいつも現れるのが、サーフィンに行く途中の孝治(塚本高史)だった。
やがて二人は出会い恋に落ちていくのだが、昼間に会うことのできない薫には普通のデートなんてできない。「このまま彼と一緒にいても彼にはいいことなんてなにもない。だからもう会わないほうが・・・」そう思う薫を応援する両親や友人の力で薫はまた前向きに生きようと決意するのだった。
YUIの演技は驚くほど飾り気がなくて危うさすら感じるが、見ているうちにそれが個性に思えてなじんでくる。決して「下手糞」には思えない。
「つきあって」という孝治に「うん」とだけ答えるときのかわいらしさ。
「CDつくろうよ」といわれたときに力強くうなづくときの美しさ。
「嫌だ、私は死ぬまでは生きるって決めたんだから」と話すときの澄んだ瞳。
スタジオで歌っているときのかっこよさは本職だからあたりまえか。
ああ、いっぺんでファンになってしまった。
顔を少ししかめながら熱唱するところもたまらなくいいぞ。
ストーリーにはヒネリがないかもしれないが、YUIの歌を活かすにはこれでよかったのだと思う。
薫と孝治のやり取りは高校生の青春そのものでかわいらしくほほえましい。
塚本高史は今まで知らなかったけどわりといい演技をしていたし、父親役の岸谷五郎がびしっと全体を締めていた。
テレビドラマ化されてるんですね。知らなかった。
すでに1回目の放送は終わっている。
主演は沢尻エリカ。パッチギを見て以来彼女も結構ファンなんだけど、ドラマはどうなんだろう。見てみたいような、映画のイメージをそのまま残しておきたいような・・・。
2006年07月15日
dekodekoman at 01:50 Permalink
デイジー−(映画:2006年94本目)−


監督 アンドリュー・ラウ
出演 チョン・ジヒョン 、チョン・ウソン 、イ・ソンジェ
評価:86点
公式サイト
(ネタバレあります)
オランダを舞台に繰り広げられる、ハードボイルドと恋愛物語の見事な調和。
ありえない展開だが、これくらい思い切った嘘くささだと逆に映画に入り込めるから不思議なもんだ。
チョン・ジヒョン(画家)と、イ・ソンジェ(警察官)と、チョン・ウソン(殺し屋)。
画面いっぱいに強烈なオーラを放つこの3人が、こんな役柄で絡み合うという非現実の世界。
そこにどっぷりとはまらせてもらった。
絡み合う、といっても、超純愛しかでてこない。
チョン・ジヒョンとチョン・ウソンなんて、手も握らないのだ。
手も握らないわりには、望遠レンズ(というか銃のスコープかあれは)で彼女をずっと見続けたり、広場と家の送り迎えを勝手に始めたり、深夜に自宅を訪問したり、もうそれは完全にストーカー。
でも、あれだけかっこいいと、あんなことをしても決してストーカー扱いはされないのだろう。
ウソンがストーカー行為を繰り返しても、彼女の心はイ・ソンジェを待ち続ける。
そのあたりの切ない演技は、まさに韓国映画純愛路線まっしぐらでした。
最後にはみんな死んでしまうという悲恋も、まさに王道。
チョン・ジヒョンはこれまでの威勢のいいエキセントリックなネエチャン役から180度方向転換して、内気ではにかみ屋の芸術家のお嬢様を演じている。
さすがに最初は違和感ありありだったが(エヘとか、ウフとかいう笑顔は見てて少しイライラした)、言葉を失ってからは声が出ない分その不自然さが消えてくれてよかったようだ。
チョン・ウソンは、同性から見てもたまらんくらいにカッコイイね。
あんな目で見つめられたらどうしようもございませんな。
デイジー咲き乱れる美しい郊外の風景もよかったが、街中の映像がお洒落で美しい。広場もそうだが雨宿りしていた軒先までも、ひとつひとつの映像が切り取るとすべて絵葉書になりそうだ。
家の中も、出てくる小物も、コーヒーを入れるサイフォンも、机も椅子も完璧だった。
ストーリー、登場人物、そして映像。
すべてがセットになって非現実の世界に観客を放り込むという点では、実にツボをよく押さえてある映画だと思う。
でも、泣くまではいかなかった。
もうちょっと、なんとかならんかったか・・・。もうちょっと。
チョン・ジヒョンのキャラ設定に無理がありすぎたのかもしれないと、今になってそんな気もしてきたぞ。