本:あ行の作家

2011年09月10日

キミは知らない<大崎梢>

キミは知らない
キミは知らない
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出版社: 幻冬舎 (2011/05)
ISBN-10: 4344019881

内容(「BOOK」データベースより)
先生、本当のことを教えて。何で私の前に現れたの?研究者だった亡父の手帳を渡した直後、突然姿を消した先生。ほのかに想いを寄せていた高校2年の悠奈はたまらず後を追う。ところが再会したのは穏やかな先生とは別人のような鋭い眼差しの男。さらに悠奈の前に、「お迎えにあがりました」と謎の男たちが現れて―。

*********************

主人公の行動を冷静に振り返ると、思慮にかけていてムチャクチャなのだが、あまりにもいきいきと動き回るものだから、違和感も少なく、自然と物語に引き込まれてしまう。
もともと登場人物のキャラ付けは上手な人だけれど、この小説では特にいろんな設定がピタっとはまっている。
さらに、青春小説だと思って読んでいたら、思いのほか本格的なミステリになっていることにも驚かされた。
なかなか話がつながってこないのと、敵味方が二転三転するので読みだすとやめられない、風呂で読み始めると危険です。

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マンチュリアン・レポート<浅田次郎>

マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)
マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)
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出版社: 講談社 (2010/9/17)
ISBN-10: 4062165007

関東軍の暴走による張作霖暗殺事件を小説にしたもの。
著者の作品である、「蒼穹の昴」「中原の虹」の登場人物が次々と登場し、ある種の懐かしさを覚えながら読んだ。
語り手は、天皇陛下の命を直接に受けて事件の真相を調べる日本陸軍の若者と、爆破された機関車そのもの。
機関車を語り手にするとはまた無茶な感じなのだが、それを違和感なくやってしまうのは浅田次郎ならではでしょう。
下手したら機関車トーマスになってしまうところだもの。

ただ、ストーリーとしては史実で知っていることをひっくり返すような内容ではないのでいまいち物足りない。
登場人物たちのキャラ設定、場面描写、情感にあふれたセリフ等の魅力と、コネタを挟んで読ませる内容になってはいるものの、蒼穹の昴や、中原の虹のような感動までにはいたらなかった。

とはいえ、面白いです。さすがに浅田次郎。


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2011年03月06日

イチローの哲学<奥村幸治>-本:2011-17-

イチローの哲学―一流選手は何を考え、何をしているのか
イチローの哲学―一流選手は何を考え、何をしているのか
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# 出版社: PHP研究所 (2010/12)
# ISBN-10: 4569792367

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
奥村 幸治
1972年、兵庫県尼崎市生まれ。93年、オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)に打撃投手として入団。94年、イチロー選手の専属打撃投手となり、日本プロ野球最多210安打達成に貢献。「イチローの恋人」としてマスコミで紹介され、話題に。95年に阪神タイガース、96年に西武ライオンズで打撃投手の後、自らユニフォームを脱ぎ、米国でメジャーリーグの野球を勉強。パーソナルトレーナーとしてプロ選手らを指導した。99年に中学硬式野球チーム「宝塚ボーイズ」を結成し、強豪チームに育て上げる。東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大選手は教え子。現在は同チームを応援するNPO 法人ベースボールスピリッツ理事長も務める

****************************

プロレスや格闘技や野球など、小説以外の本が続いているけれど、これはいつも借りている図書館のシステムが改定されて、かなり細かいジャンル別に最新作から検索することができるようになったせいでもある。
人気の小説は予約しても半年は有にかかるため、これまで読んでいないノンフィクションとかスポーツ系に走ってしまっているのだ。
とんでもなく分厚い本とかは少ないので、気楽にさっと読めるということもあるのだけれど。

ということで、「イチローの哲学」。
イチロー本というよりは、オリックス時代にイチローのバッティングピッチャーだった著者が、イチローから学んだことも含めて自分の人生観、野球への取り組み方、指導者としてどうあるべきか、等を書いている。
年齢は私より下ではあるけれど、私よりよっぽど思慮深く人間ができている。少しは見習って、高い意識を持って生きることにしよう。できれば。

ということで、野球シーズンまでもう少し、今年もイチローには頑張ってもらいたいものです。


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2011年02月26日

ワールドプロレスリングの時代 金曜夜8時のワンダーランド<市瀬英俊>-本:2011-14-

ワールドプロレスリングの時代 金曜夜8時のワンダーランド
ワールドプロレスリングの時代 金曜夜8時のワンダーランド
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# 出版社: 朝日新聞出版 (2009/2/20)
# ISBN-10: 4022505257

金曜夜8時にプロレスに熱狂していた時代が私にも確かにあった。
当時は中学生〜高校生。懐かしく思いだした。
プロレスしか見ていなかったから、裏番組が太陽にほえろだったということを知らなかったなあ。
金八先生も同じ時間だったのか。

プロレスの話ではなく、ワールドプロレスリングというテレビ番組を作っていたというお話。
カメラワークや編集の話など、知らないことが多いのでそこそこ興味深いものの、致命的なのはエピソードが少なく驚きや喜びが薄い内容だということだ。
冒頭に「これは暴露本ではありません」と書いてはあるものの、これではあまり楽しめない。
もっとプロレス的エンタメ度合いを上げてほしかった。

あとは第1回IWGP決勝戦。猪木がガチで失神したように書いてあり、なんだかなあという感じだ。
プロレスファンがターゲットなら、もっと裏の真実を書きこまないと誰も納得しない。
テレビの番組製作の世界に興味がある人がターゲットであればまあいいけど、このタイトルではそういう人は買わないだろうな。

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2011年01月30日

オノデラユキ

オノデラユキ
オノデラユキ
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図書館で写真集を借りた。
もの凄いエネルギーを作品からは感じたけれど、私が見たい写真ではないし、撮りたい!と思うものでもないなあ。
芸術の幅って広いんだと改めて実感。
どうも自分の守備範囲外のようだ。

作品を生でみるとまた違うのだろうけど。


内容紹介
東京都写真美術館で開催される個展を記念して刊行。オノデラユキ(1962~)は、1990年代から頭角を現し、日本の写真表現に新風を吹き込んだ新世代の作家。現在はパリを拠点に国際的に活動の場を広げている。2003年「第28回木村伊兵衛賞」、2006年フランスで最も権威ある写真賞「ニエプス賞」を受賞。「写真」という枠組みに収まらないユニークなシリーズを次々と発表するオノデラの、代表的シリーズ〈古着〉や〈トランスヴェスト〉など、初期から現在にいたる全14シリーズより、約200点を掲載し、20年間の軌跡をたどる。[会期:2010年7月27日~9月26日]

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2011年01月15日

うめめ<梅佳代>-本:2011-7-

うめめ
うめめ
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# 出版社: リトルモア (2006/9/4)
# ISBN-10: 489815185X

梅佳代3連発。
こちらは梅佳代の名前を世間に知らしめた、2006年度 第32回 木村伊兵衛写真賞受賞の写真集。

この写真集の写真も、どれもこれも面白い。
最強ですね、梅佳代。
表紙のポテロング、どうしたんだよう!

こういう写真は女性の方が撮りやすい、というのはあるよなあ。
街中で男がカメラを持ってうろついていると、どうしても不審な目で見られてしまうもの。
せめて身なりは清潔にして、爽やかな笑顔(本人ができる精いっぱいのものだが)を振りまきながら写真を撮ることにしよう。
うう、難しいよう。

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ウメップ<梅佳代>-本:2011-6-

ウメップ
ウメップ
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# 出版社: リトル・モア (2010/7/23)
# ISBN-10: 4898152929

最高です。梅佳代。
これってVOW!だったっけと思わせるような雰囲気もあるのですが、決してお下劣お下品だけにはならず、思わずプッと吹き出しニヤニヤしてしまう写真ばかり。それでいてなんだか芸術的でもあるんだよなあ、不思議です。
被写体への愛情と梅佳代の持つとことんの明るさがドドドっと伝わってくるいい写真集だった。

表紙の写真なんて最高です。
みんなーなんで泣いてるの?キモダメシの帰りなのかな?


内容紹介
12万部突破『うめめ』、4万部突破『男子』、4万部突破『じいちゃんさま』につづく、梅佳代2年ぶりの新作写真集!『ウメップ』誕生!!
梅佳代の眼は磁石のように路上の奇跡を呼び集め、まばたきの瞬間に“ウメップ”が生まれる。それは、すべてを肯定するチカラ。
ファン待望の新作写真集は、デビュー作『うめめ』の世界観をさらに深めた、梅佳代作品の根幹をなす“スナップ写真”で綴られます。
今年の夏はウメカヨ旋風が吹き荒れます!!

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2011年01月14日

うめ版 新明解国語辞典×梅佳代−本:2011-5−

うめ版 新明解国語辞典×梅佳代
うめ版 新明解国語辞典×梅佳代
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# 出版社: 三省堂 (2007/07)
# ISBN-10: 4385363196

うはははははは。なんて面白い写真集なのだろう。
凄いな、梅佳代。
面白くてポジティブでバカバカしくて楽しくて、見ているだけで幸せになるような写真ばかり。
新明解国語辞典との調和も素晴らしい。

こんな写真を撮りたいなあ。

「思いもよらない」「実社会」「凝り性」が最高です。
あ、「鑑」もよかったなあ。
若いお父さんサラリーマンのいい笑顔!


出版社/著者からの内容紹介
全開。うめ新ワールド!
ファースト写真集「うめめ」で大ブレイク、注目の写真家・梅佳代があの「新明解国語辞典」とコラボレイト。独特の観察眼に基づく写真とことばが、真面目で妙ちくりん、イミフメイでカワイイ、微笑ましくもどこか切ない......そんな〈人間とことば〉の世界を描き出す。
個性と個性がつむぎだす人間観察の新境地、「うめ新ワールド」が、いま、幕をあける。

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2011年01月07日

ストーリー・セラー<有川浩>-本:2011-2-

ストーリー・セラー
ストーリー・セラー
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# 出版社: 新潮社 (2010/8/20)
# ISBN-10: 4103018739

評価:77点

装丁がとても綺麗だったので、Amazonの写真を大き目に載せてしまった。

内容(「BOOK」データベースより)
小説家と、彼女を支える夫を襲ったあまりにも過酷な運命。極限の決断を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた―。極上のラブ・ストーリー。「Story Seller」に発表された「Side:A」に、単行本のために書き下ろされた「Side:B」を加えた完全版。

そもそも、「Story Seller」という雑誌を知らないけれど、Side:A,Bと綺麗に対になった物語だった。どちらも夫婦の物語で、女性が作家。Aでは作家である妻が思考すると脳が壊れていくという奇病で亡くなってしまう。Bでは交通事故にあった夫に偶然すい臓がんが見つかって3年後に・・・という話。
どちらも悲しい話なのだが、著者が書くと病が見つかった後の夫婦の愛情が強烈にクローズアップされて、それはもう微笑ましくて泣くのを忘れてしまうほどだ。
愛する人を失うという究極の場面設定で、これだけベタベタしたラブコメを書けるのだから、有川浩はやっぱり凄いなあ。
ウルっとくる場面もあったが、遠慮のない恋愛描写に少し照れながら爽やかに感動的に読み終えることができた。
Aででてくる、紙いっぱいに繰り返される「きみがすきだ」というラブレター。
中学生のときに付き合っていた女の子に、そんな手紙を出した自分を思い出して思わず赤面じゃ。

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2011年01月03日

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」<安宅和人>-本:2011-1-

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
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# 出版社: 英治出版 (2010/11/24)
# ISBN-10: 4862760856

評価:83点

正月早々ビジネス本読んでどうする気だ、というツッコミを自分でいれたくなりますが、仕事でそれなりに悩んだりもする中間管理職だということでご容赦ください。

わかりやすくて面白かった。
とりあえず会社に持って行って、チョコチョコ読み返しながら使える部分は使っていこう。


内容紹介(Amazonより転載)

人生は何かを成し遂げるためにはあまりにも短い。

コンサルタント、研究者、マーケター、プランナー……
生み出す変化で稼ぐ、プロフェッショナルのための思考術
「脳科学×マッキンゼー×ヤフー」
トリプルキャリアが生み出した究極の問題設定&解決法
はじめに 優れた知的生産に共通すること

■序章 この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう

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2010年11月22日

訪問者<恩田陸>−本:2010-57−

訪問者
訪問者
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# 出版社: 祥伝社 (2009/5/14)
# ISBN-10: 4396633173

評価:80点

アマゾンのレビューを含め、いくつかのブログにアップされている書評は若干辛い。
ミステリと呼ぶには強引なエンディングで無理にまとめた感じが確かにしないでもない。
ただ、個人的には結構好きな内容だった。
閉ざされた洋館の、いかにも怪しげな老人たちと弁護士とカメラマンと少女と家政婦。途中から現れたこれもまた怪しげな青年も加えて、皆勝手にしゃべりまくる。
読み始めてすぐに登場人物たちが椅子に座った「舞台」が頭に浮かんでくる。このまま脚本にしてちょっとト書きでもつければそのまま舞台で演じられるのではないかと思うような内容だ。
先を急いでスイスイ読み進めるうちに数時間で読み切ってしまった。

真相は拍子抜けではあるけれど、楽しみたいのは推理の過程と、キャラのたった登場人物たちのやりとり。そして演劇にあるべき独白の連続。
著者独特の世界観をじっくり楽しむには良い本ではないか。


内容(「BOOK」データベースより)
山中にひっそりとたたずむ古い洋館―。三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、朝霞家の一族が集まっていた。千沙子に育てられた映画監督峠昌彦が急死したためであった。晩餐の席で昌彦の遺言が公開される。「父親が名乗り出たら、著作権継承者とする」孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいる?一同に疑惑が芽生える中、闇を切り裂く悲鳴が!冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。数日前、館には「訪問者に気を付けろ」という不気味な警告文が届いていた…。果たして「訪問者」とは誰か?千沙子と昌彦の死の謎とは?そして、長く不安な一夜が始まるが、その時、来客を告げるベルが鳴った―。嵐に閉ざされた山荘を舞台に、至高のストーリー・テラーが贈る傑作ミステリー。

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2010年10月30日

感応連鎖<朝倉かすみ>-本:2010-50-

感応連鎖
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# 出版社: 講談社 (2010/2/20)
# ISBN-10: 4062160447

評価:80点

女性の心の内側にあるザラザラっとした部分を、遠慮なくデフォルメして書きこんだ作品。
女ごころのわからないおっさんには毒々しすぎて少々刺激的ではあったものの、それぞれの心の微妙な変化の書き方が絶妙で、引き込まれように読んでしまった。
決して読後感はよくないものの、妙に説得力のある小説だ。

説得力があるといっても、人の心を断片的に読める少女や、脂肪ではなく想いを体に詰め込んで異型と言えるまでに太っている少女など架空の設定で話は進む。
それでも、女性の心の奥ってひょっとしたらこんな風なんだろうと思わせるのは凄い。

まあ、私も含めて単細胞な男どもは、実はほとんど理解できていないのかもしれないが。

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2010年10月24日

路地の記憶<阿久悠・佐藤秀明>-本:2010-48-

路地の記憶
路地の記憶
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# 出版社: 小学館 (2008/1/31)
# ISBN-10: 4096820253

評価:85点

路地はいいなあ・・・。
こんな写真を撮りたい。

内容紹介(Amazonより)
故阿久悠氏が最後に遺した「日本の原風景」
大都市の路地、漁村の路地、港町の路地、工場町や古都の路地……。
ライフワークとして路地を撮り続ける写真家佐藤秀明氏と作詞家の故阿久悠氏が、
日に日に変貌する日本全国各地の路地の貌を追う「人生歌写真詞集」。

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深夜零時に鐘が鳴る<朝倉かすみ>-本:2010-47-

深夜零時に鐘が鳴る
深夜零時に鐘が鳴る
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# 出版社: マガジンハウス (2009/11/26)
# ISBN-10: 4838720416

評価:70点

なんだかわかりづらい不思議な小説だなあと思って読み終えたのだが、どうも「タイム屋文庫」という本の続編というかスピンオフ作品らしい。
29歳のキチンキチンとした女性が、不意にいなくなった友人のリコを探しながら静か少しづつ成長していくような話、と言えばあっているのかどうかもよくわからんが。

登場人物が印象的で読んでいて飽きることはないけれど、手に汗握ったり、ロマンスにドキドキしたりということもない(一応ロマンスはあるけれど)、かといって透明感ある文学的な文章に魅せられるということもなくて、なんとも感想の書きづらい小説だ。
著者の作り出す独特の雰囲気は嫌いではないが、この作品については、インパクトが弱すぎてあまりにも印象に残らなかった。

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2010年10月10日

私の家では何も起こらない<恩田陸>-本:2010-45-

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
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# 出版社: メディアファクトリー (2010/1/6)
# ISBN-10: 4840131651

評価:77点

内容紹介(Amazonより)
この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・・・・
ようこそ、丘の上の幽霊屋敷へ。恩田陸が描く、美しく不穏なゴーストストーリー。
小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。
血の海となった台所、床下の収納庫のマリネにされた子どもたち・・・・・・いったいこの家にはどんな記憶が潜んでいるのだろう。幽霊屋敷に魅了された人々の美しくて優雅なゴーストストーリー。恩田陸が描く幽霊屋敷の物語。ラストには驚愕の書き下ろし短編が!

**************************

恩田陸らしいと言えばそうなんだろうけど、たっぷり雰囲気はあるものの、何がどうなっているのかよくわからんというのが読んでいる時の素直な感想だ。
誰が幽霊で、誰が人間なんだとか。
事実と幻想の境目はどこなんだとか。
時間的にはどの順番になっているんだとか。
雰囲気だけを味わってサクサク読んでしまったので、途中からそういうことはどうでもいいや、ということになってしまった。

ホラー小説のようではあるけれど、理詰めに計算された怖さは全くない。グロテスクな場面さえも美しく描写してしまう恩田陸ワールドを味わいながら、秋の夜長を楽しませていただきました。

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2010年10月02日

フィッシュストーリー<伊坂幸太郎>-本:2010-42-

フィッシュストーリー
フィッシュストーリー
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# 出版社: 新潮社 (2007/1/30)
# ISBN-10: 4104596027

評価:89点

短編を4作品収録している。
最後の「ポテチ」は熱い話で胸に響くが、やはりできすぎ。
まあ、そこでホームラン打たなきゃどうにもなりませんがね。
最初の「動物園のエンジン」はどこかシュールだが、結局なんだかよくわからない。2つ目の「サクリファイス」は、田舎の村の言い伝えと殺人事件と村おこしを混ぜ合わせたような話で、伊坂幸太郎が書いているんだからそれは確かに雰囲気は悪くないのだけれど、なんだか「名探偵コナン」の脚本になりそうな話だ。

ということで、3つ目の「フィッシュストーリー」。
本のタイトルでもあるし、映画にもなっているメジャーな話であるが、やはりこれが最高にカッコいい。
時間を越えて、越えてといってもSFではなくてちゃんと物理法則を守って時間を越えて、ひとつの曲が人々をつないでいく。
売れないロックバンドの最後の曲、「フィッシュストーリー」。
文字にメロディは書いていないが、「僕の孤独が魚だったなら」で始まる歌詞とメンバーの演奏の様子を読んでいると、ビンビンにとんがった音が突き刺さるように響いてくるようだ。
曲中に入れられた無音の時間。
「いいんだよ、どうせ売れないから」とあっさり言って残したその無音の時間が、人を助けて時をつないでいく。
小説の構成もカッコいいけど、登場人物がみんなカッコいいんだよなあ。
映画も見てみたい。
DVD借りるぞ。

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2010年09月23日

砂漠<伊坂幸太郎>-本:2010-40-

砂漠 (新潮文庫)
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# 出版社: 新潮社 (2010/6/29)
# ISBN-10: 4101250251

評価:94点

決して大学生活を振り返って感傷的になるわけではないけれど、この小説を読んでいて、あの4年間はなにものにも代えがたい貴重なものだったのだと改めて感じさせられた。
充実していたかというと決してそうでもなく、無駄なことに時間をどっさり浪費していたけれど、ありあまる時間のなかでいろいろ感じ、考えられたのは事実。
そんなことを思い出させながら、小説の面白さ自体にもどっぷりハマらせてくれる内容だ。

舞台は仙台。おそらく東北大学がモデルで、そこに入学した5人の主人公たちの繰り広げる青春物語。新歓コンパから始まるあたりがなんともリアルでうれしくなる。
語りは「北村」という少し冷めた青年なのだが、なんといっても「西嶋」が最高。
見た目はぱっとしないのだが、いつも自信に満ち溢れ、空気を読まず持論を滔々と展開し、やらない善よりやる偽善を選択し、ひたすらに前進し続ける。世の中は平和であるべきだと、麻雀では平和(ピンフ)しか上がろうとしない。
とにかく変な奴なんだが、実に魅力的です。
自分の学生時代の友人に、西嶋によく似たやつがいたので思わず重ねあわせてしまった。西嶋が絶世の美女、東堂に惚れられたのと同じように、私のその友人の奥様も綺麗です。
なるほど、時代は西嶋タイプなのかもしれない。
そんなことはないか。

小説なのであり得ない展開も結構出てくるが、根本に流れる「真面目な怠惰さ」と「単純な好奇心」が学生時代の雰囲気をうれしくなるくらい忠実に醸し出していて、思わず手を打ちうなずくようなことも多い。
楽しく、そして胸を熱くしながら読める本だった。

最後の卒業式の場面、学長の言葉に著者の警告も込められていてハっとさせられた。
「学生時代を懐かしむのはいいけれど、学生時代はよかったなどと後ろを振り返るような人生を送るな」というようなセリフ。そうだよなあ。

受験生の娘が大学に入ったら読んでもらいたい本です。

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2010年09月21日

ねずみ石<大崎梢>-本:2010-39-

ねずみ石
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# 出版社: 光文社 (2009/9/18)
# ISBN-10: 4334926819

評価:77点

児童文学の香りが漂うような、爽やかな青春小説。
爽やかな、というと語弊があるかもしれない。
4年前に起きた殺人事件の犯人探しがメインストーリーであって、事件の起きた祭りの夜の記憶が一分喪失している主人公・サトが、徐々に新たな事件に巻き込まれていくという内容だ。
もちろんお約束通りに、最後には犯人も捕まってハッピーエンドで終わるのだけれど、その終わり方も少しほろ苦い。
私はこの結末をあまり予想できなかったなあ。

サトの友人のセイ。ここに修ちゃんやらシゲ兄やらタマさんやら、若い男がどやどやと絡んできて、これはなんだ、BLなのか?と思わせるような場面もあった。
まあ、ちゃんと落ち着いて解決してくれてよかった。

ストーリーはともかく(私は好きだが賛否両論)、語りはしっかりしていてうまい。
うまいけど、ゴツゴツしていなくて、さすがに大崎梢だと感心したのだった。

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2010年09月11日

終わらざる夏(上・下)<浅田次郎>-本:2010-37・38-

終わらざる夏 上
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終わらざる夏 下
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# 出版社: 集英社 (2010/7/5)
# ISBN-10: 4087713466
# ISBN-10: 4087713474

評価:80点

上・下巻とも450ページを超える大作。しかも所々で旧仮名遣いの手紙が出てくるものだから、すいすいと読み進むわけにもいかない。
たっぷり時間がかかってしまった。

1945年8月。日本は確実に終戦に向かって進んでいた。そんな中、千島の果ての占守島(シュムシュ)に取り残された日本軍の精鋭部隊があった。アメリカ軍が攻めてくることもなく、かといって戦闘地域に派遣されるための輸送手段ももはやなく、ただ、存在していたその部隊。
彼らのところに、敗戦後に相手と交渉するための通訳係が兵隊としてこっそりと送り込まれる。敗戦の予定を現場には知られないようにするため、2人のダミーも巻き込んでだ。

この3人を含めて、多くの人たちのドラマが書き込まれた群像劇。
これだけたくさんの人がでてきながら、決して散漫にならずそれぞれの登場人物にきちんと結末をつけ、話をまとめていくところはさすが浅田次郎。
ただ、若干ファンタジーを混ぜたロシア兵の語りは蛇足ではなかったか。あのままではロシアが単なる悪者になってしまうので、若干の配慮をしたんだろうと思うが、ゴチャゴチャしてしまった感は否めない。

それにしても、占守島(シュムシュ)のことについては、何も知らなかった。8月15日以降にそんな戦いがあり、その後シベリアに連行され強制労働の末に多くの人が死んでいったということを。

戦争を経験している祖父も祖母もすでに亡くなってしまった。
せめて、幼少期に終戦を体験し、戦後の混乱期をしっている父母に、今のうちに少しでも話を聞いておこう。
読みながらそんなことを考えたのだった。

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2010年09月08日

オー!ファーザー<伊坂幸太郎>−本:2010-36−

オー!ファーザー
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# 出版社: 新潮社 (2010/03)
# ISBN-10: 4104596043

評価:88点

内容(「BOOK」データベースより)
みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。

**********************

ありそうでなさそうで、よく考えると絶対になさそうな話なんだけど、どっかにありそうで面白い。どっちやねん。

主人公を含め、登場人物それぞれの物の考え方、とらえ方が独特で見事にキャラがたっている。かといって、決して奇天烈で癖のある人間ばかりではなく、常識的な感覚もあり、なんといってもみんなカッコイイ。そうカッコイイのだ。
主人公、由紀夫は母親一人父親4人の6人家族。
父親が4人もいるのは、母親が身ごもった時にその4人と付き合っており、誰の子供かわからず、結局4人と結婚式を挙げたからだ。
その設定からして、絶対にあり得ないのだが、著者がそれを当然のように自然に描写していくので、いつの間にか、まあそれもありだなと思ってしまう。

この4人の父親、まったくタイプが違う。
女性に異常なまでにもてる葵、ギャンブラーの鷹、中学校の教師でスポーツ万能の勲、抜群に頭のいい悟。
彼らに共通するのは、息子である由紀夫を大切に思っていることと、マージャンが趣味であること、そして、言動がとにかくカッコイイことだ。
物事を見る視点もそれぞれ独特で、ひとつひとつの言葉が妙に説得力がある。
この4人と、どこか冷めた主人公と、うるさく由紀夫に付きまとう同級生の多恵子が引き起こすドタバタは何故かバランスがよくて読んでいて心地よいのだった。
ただ、自分の少年時代を振り返ってみると、父親4人なんてたまらんけどね。

ドロドロとした知事選挙での争いや、やくざも頻繁に登場し、清濁併せ呑む世の中を表しているが、これはこれでいいのだろう。そう綺麗事でまとめているわけでもないので。

で、熊本先輩は多恵子のことをあきらめて引き下がったのだろうか・・・。振込詐欺の犯人は捕まったのだろうか・・・。
まあいいか。

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2010年09月04日

SOSの猿<伊坂幸太郎>-本:2010-34-

SOSの猿
SOSの猿
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# 出版社: 中央公論新社 (2009/11/26)
# ISBN-10: 4120040801

評価:77点

内容(「BOOK」データベースより)
ひきこもり青年の「悪魔祓い」を頼まれた男と、一瞬にして三〇〇億円の損失を出した株誤発注事故の原因を調査する男。そして、斉天大聖・孫悟空―救いの物語をつくるのは、彼ら。

****************************

とてもとても無理やり感のある話だけれど、結構面白く最後まで一気に読み終えた。

2つのストーリーが後半になると噛み合ってくるのだけれど、それがバチンと組み合わさってスコンと腑に落ちる、というものではなく、ジワジワと混じり合っていき、いつのまにかミックスされてエンディングになっているという感じだ。
そのジワジワ感については、ファンタジーを巧く咬ませた効果ともいえるが、見方を変えれば少し中途半端かもしれない。

ベストセラー作家の著者が昨年11月に出した本ではあるけれど、図書館ではもう本棚に並んでいて予約なしで借りられる状態だ。
万人受けはしない内容だということが、そこからもよくわかる。
もうちょっとスッキリさせたほうが良かったのではないだろうか。

株の誤発注ネタについて、うっかりミスの原因を執拗に探っていくところは興味深い。著者が書いているとおり、ヒューマンエラーの根は結構深いのに、組織は安易に個人に全責任を押しつけたがるものだ。


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2010年08月29日

死神の精度<伊坂幸太郎>−本:2010-31−

死神の精度
死神の精度
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# 出版社: 文藝春秋 (2005/6/28)
# ISBN-10: 4163239804

評価:80点

5年も前の小説とは知らなかった。

しかもラジオドラマ化、映画化(金城武主演)、舞台化までされているなんて。
確かに完ぺきに出来上がった、洗練された構成。
死神と人間の関係という、これまで語りつくされてきたような陳腐な設定を、コミカルさと深刻さをうまく混ぜあわせて絶妙に処理している。
ミュージックが好きで(ジャンルに強いこだわりはないようだ)、人間界への知識(言葉の意味など)が多少不自由で、味や痛みは感じない。眠ることもない死神。
彼らの仕事は担当の人間と接触し、その人物が死に値するかどうかを確認すること。「可」という判断をすれば、8日後にその人物は事故等のアクシデントで死んでしまうのだ。
病死等の「寿命」は死神と関係ない。死神の仕事は「突発的な事故」だけ。としたことだけで、読者の死神への嫌悪感はずいぶんと薄れてしまう。そのうえ、妙に親近感のわくセリフなどが繰り返されるので、基本的にこの小説で死神を嫌いになる人はいないだろう。

6つの短編が収められているが、やくざの話であったり、恋愛小説で会ったり、雪の山荘密室殺人事件であったり、バラエティにも富んでいて読みやすい。
一番好きなのは最後の老女の散髪屋か。
やくざの話もよかったけど。

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2010年04月27日

アイム・ファイン<浅田次郎>−本:2010-26−

アイム・ファイン!


# 出版社: 小学館 (2010/1/28)
# ISBN-10: 4093878900

ここのところ、がっちりした分厚い小説を根をつめて読む気になれず、エッセイとか軽めの青春小説等にふらふらと流れてしまう。
別にエッセイがダメだというわけでは決してない。自分の中にごつい本に向かうエネルギーがあまり残っていない状態なのだろう。
図書館から借りて手元にあるのは、川上未映子の「世界クッキー」と、これまた薄い本だ。
1Q84だって買っておいてあるものの、まだページをめくる気力がない。
まあ、資格試験が終わるまでは仕方がないなあ。
仕事も異動したばかりで毎日わけわからんし。

ということで浅田次郎。
エッセイであっても文章は巧みであり、まったく退屈することがない。
前作のカニ詐欺で懲りたのか、今回は自虐ネタが多かったように思う。それにしてもデブでハゲで狭心症で痔。あまりにも親近感を覚えて怖くなるほどだ。決定的に似ていないのは私に浅田次郎のような文才がないことだけど。


内容紹介(Amazonより)
「鉄道員」で直木賞を受賞したベストセラー作家によるエッセイ集。
JAL機内誌「SKYWARD」人気連載中の旅エッセイ「つばさよつばさ」の単行本化第2弾です。
第1弾は2007年に単行本『つばさよつばさ』として刊行し、2009年10月に同名タイトルで小学館文庫より刊行。好評を博しています。
今作品も前作に引き続き旅をテーマにした一冊。ベストセラー作品『蒼穹の昴』の中国ロケで起きたこととは?(『西太后の遺産』)、
熊本で出会った""しろくま""の正体とは?(『しろくま綺譚』)など笑いあり、涙ありの浅田節が存分に描かれています。

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2010年01月30日

オイアウエ漂流記<荻原浩>−本:2010-14−


オイアウエ漂流記
オイアウエ漂流記
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# 出版社: 新潮社 (2009/8/22)
# ISBN-10: 4104689041

評価:80点

航空機の事故で無人島に流れ着いた10人(+犬1匹)が織り成すサバイバル生活人間模様。
といってもそこは荻原浩だからユーモアたっぷりに話が進み、実に楽しい。
とにかく生きねばならない。そんな極限状態では世間の肩書きがどれほど役に立たないものなのか、シビアな視点も織り交ぜながら多彩な登場人物のドタバタ劇が続いていく。
よく言えばバランスの取れた小説であって、無駄なストレスを感じずにリラックスして楽しく読むことができるが、悪く言えばゆるくまとまりすぎていて緊迫感と言うか盛り上がりがいまひとつだ。展開は概ね予想通り、誰も死なないし誰も発狂しない。小さな権力争いはあっても、集団は分裂もしない。そして唐突なラストへ。
もっとドラマチックな展開にしてもよかったのになあ。

流れ着いた10人は、新婚旅行中の夫婦、じいさんと孫、謎の外国人、リゾート開発会社の4人組、そのお得意先の副社長。
新婚旅行中の女性がもっとも毒を持って書かれていたように思うがどうだろう。ちょっとゾッとしたのだが。

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2010年01月23日

ダッシュ<五十嵐貴久>−本:2010-11−

ダッシュ!
ダッシュ!
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# 出版社: ポプラ社 (2009/7/7)
# ISBN-10: 459111029X

評価:79点

埼玉県春日部市にある高校を舞台にした爽やかな青春小説。
といってもゴリゴリといろいろ盛り込んであるのではなく、非常にすっきりとした展開。読みやすくもあったし、クライマックスに向けて感情移入もしやすかったが、若干の物足りなさも。

「ねーさん」こと菅野桃子先輩と彼女にあこがれる4人の後輩の話だが、陸上部のスターだったねーさんが骨肉腫にかかり、足を切断することになってしまう。
病気になっても、手術が決まっても、気丈に振舞う「ねーさん」ではあったが、その唯一の弱点が昔付き合っていた男性。彼に会いたいというねーさんの望みをかなえるべく、後輩4人組は結束して行動を開始する。
桃子先輩を含めた5人のキャラが際立っていて非常に映像的。書かれているシーンが明確に頭に浮かんできて、生き生きと動いていく。どこかテレビ的な作品だった。悪く言えば小説的にステレオタイプでもあるのだけれど、映像として把握できると読むスピードが格段に上がるので私としては助かったりするのです。

成田空港にいる「ねーさん」の元彼のところに向かい、全員が協力して突撃していくシーンは手に汗握りました。スピード感もなかなか。

ところで本日の新聞に小説誌の広告があり、そこに著者の写真が載っていた。
こんな爽やかな青春小説を書くというのにとんでもないオッサン(失礼(笑))。重松清と彼の書く小説以上のギャップだった。
そう、小説は顔でかくもんやないんやでえ。

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2010年01月17日

レコーディング・ダイエット決定版<岡田斗司夫>−(本:2010-8)−



レコーディング・ダイエット決定版 (文春文庫)
レコーディング・ダイエット決定版 (文春文庫)
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# 出版社: 文藝春秋 (2010/1/8)
# ISBN-10: 4167773104

評価:80点

書いてあることは、ベストセラーになった「いつまでもデブと思うなよ」とほとんど同じ。
レコーディング・ダイエットについて、その具体的なやり方と効果について、丁寧にわかりやすく書いてある。
無理なく、頑張らずに、継続できるダイエットとしては数あるダイエット方法の中では最も合理的。もちろん、毎日メモを取ったり、それをグラフにして分析したりというのは、そういう作業に喜びを見出せるか、少なくとも強い抵抗感を持たないような性格でなければ続かないところもあるとは思う。
オタキングと呼ばれた岡田氏にはまさにピッタリだったんだろう。

理論以外の部分では、著者からレコーディングダイエットに取り組む人へのエールというか心構えというかメッセージがぎっしり。読んでいて著者の思いがしっかり伝わってきた。「頑張りすぎるな、きっとできる」というメッセージは一見矛盾してるんだが、まあこれでいいのだろう。

私も一時期取り組んだが、メンドクサクなって挫折した。
また明日から頑張ってみようかな。
いや、そうしよう!

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2010年01月11日

監督<海老沢泰久>−(本:2010-7)−

# 出版社: 文芸春秋 (1995/01)
# ISBN-10: 4167414066

評価:90点

監督 (文春文庫)
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海老沢さんといえば、昨年夏、59歳の若さで鬼籍に入られた人だ。
直木賞作家でもあるし、プロ野球やF1を題材にした本でも有名だが、この本はこれまで知らなかった。単行本が出たのが1979年3月。ちょうどこの本のモデルとなっている広岡達郎がヤクルトスワローズを率いて日本一になったのが1978年のペナントレース。現実とリンクさせ、実在の野球チームや監督・選手を登場させてドキュメンタリーかと思わせるようなリアルな描写が続いていく。
この小説に出てくる広岡は、実際の広岡とは全く別の架空の人物だという設定。ヤクルトではなく、建設会社が親球団で、球団名も「エンゼルス」になっている。監督の広岡以外は選手名もすべて違う名前に書き換えられているが、ベテランエースの大滝は松岡だろう。俊足巧打の高原は若松、トレードにだされた外国人選手はマニエルで、かわりにやってきた長距離砲は大杉。そんなことを想像しながら読むのも楽しい。

広岡達郎と言えばヤクルトもそうだが西武の監督としても手腕を発揮していきなり強豪チームを作り上げたことでも有名。世間一般的には冷酷な管理野球のイメージが定着しているが、小説の中ではその「管理」がプロ選手として守るべき当然のことを課しているだけというのがよくわかるし、勝てずに苦しむ広岡の様子が人間的に書かれていて面白い。
実際に、昨年度最下位のチームが戦力的にそう変わらないのに突然優勝してしまうことはたまにあるが、監督の指導力でここまで変わるのだとしたら凄いことだ。

野球の動きひとつひとつが丁寧に説明されて説得力がある上、淡々とした翻訳調の語り口(解説で山口瞳がそう書いている)が逆に緊迫感を煽って読む手がとまらない。昨日は結局フロに本を持って入り、2時間かかって読みきってしまった。おかげで寝不足です。


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2009年12月09日

ネコを撮る<岩合光昭>−(本:2009年読了)−


ネコを撮る (朝日新書 33)
ネコを撮る (朝日新書 33)
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# 出版社: 朝日新聞社 (2007/3/13)
# ISBN-10: 4022731338

評価:80点

楽しい本だった。
ネコの写真を撮るためのハウツー本というよりは、著者がネコを求めて様々な場所を訪れた際の小さなほほえましい出来事を写真とともにつづっている感じだ。
カメラをぶら提げて町や村の中をウロウロしていると怪しい目で見られるが、ネコを探して写真を撮っているとわかった途端に町中の人が協力してくれたりする。
そんな場所が世界中にたくさんあることがなんともうれしい。
もちろん著者の人徳もあるのだろうけど。

1年半前にデジタル一眼レフを買うまではカメラについてあまり興味もなかったので、写真家とか写真集とかそういうものの知識が私には全くない。この本の著者も動物写真では世界的に有名なカメラマンなのだ。
調べてみると、ネコの写真集が結構ある。
順番に読んで、見てみることにしよう。

谷中のネコを追いかけて撮り続けてみようかとも思ったんだけど、谷中墓地とか夕焼けだんだんまわりのネコというのは既にメジャー扱いで写真集とかもでてるのですね。
うーん、ネコ写真ってかわいいからなあ、今から始めるのはハンデでかいか。
などと言いながら、初秋に撮った谷中墓地のネコ写真を載せておこう。

いかに警戒されずに近づくか。
頑張って人間性を磨くこととします・・・。


ヤナカネコ1

ヤナカネコ2

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2009年11月13日

ロコモーション<朝倉かすみ>−(本:2009年読了)−


ロコモーション
ロコモーション
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# 出版社: 光文社 (2009/1/21)
# ISBN-10: 4334926495

評価:77点

********************
内容(「BOOK」データベースより)
小さなまちで、男の目を引く「いいからだ」を持て余しつつ大人になった地味な性格のアカリ。色目を使われたり「むんむんちゃん」などのあだ名をつけられたりしない静かな生活を送りたくて、大きなまちに引っ越し、美容関係の仕事を見つけた。しかし、新しくできた屈託のない親友、奇妙な客、奇妙な彼氏との交流が、アカリの心の殻を壊していく―。読む者の心をからめ取る、あやうくて繊細でどこか気になる女のひとの物語。
********************

意地悪な言い方をすれば、「ふしだらな女」がふしだらにならないように気をつけて気をつけて暮らしてきたけれど、やっぱりふしだらになって崩れていく物語。
最後には大きな事件を経て、そんな自分から開放されて自立した道に進んで行こうとするところで終わる。
ラストだけ読むととても救われた気持ちになるが、実際にアカリはそのまま幸せになれるのだろうか。
持って生まれた性によって、もうひと波乱、ふた波乱が人生に起こって「やっぱり」となりそうな気がするなあ。

文体も展開のスピード感も結構好きなのだが、さすがにこのテーマは男には、とくにおっさんには難しすぎじゃ。

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2009年10月25日

田村はまだか<朝倉かすみ>−(本:2009年読了)−


田村はまだか
田村はまだか
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# 出版社: 光文社 (2008/2/21)
# ISBN-10: 4334925987

評価:80点

奇抜な題名がまず目に付く。
田村とはどのような人物なのか。誰が田村を待っているのか。どうして田村を待っているのか。

小学校の同窓で集まった40歳の男女5人。スナック「チャオ!」で田村を待つ5人のそれぞれの物語がキレのいい文章で次々に語りつながれていく。
中年男女のノスタルジー、遅れてきた自分探し、というような割とありふれたテーマが中心だと思うのだが、それが「田村はまだか」というフレーズでうまくまとめられて、ひとつの小説として完成度を上げているようだ。
聞き役のマスター花輪がいい味を出しているのもよかった。

田村の話も含めて、どれもそう突飛な話ではないのだが、大事なセリフはマスターがノートに書き留めるという設定であるため、それが無理なく小説の中で何度も繰り返される。読者の印象にうまく残るいいアイデア。
田村を待つ5人とマスターという設定も、アイデアの勝利でしょう。

短い会話文で畳み掛ける部分と、じっくりとした説明が混ざっている文体は結構好きなので、他の作品も機会を見つけて読んでみることにしよう。

内容(「BOOK」データベースより)
深夜のバー。小学校クラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」を待つ。待ちながら各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。今の自分がこうなったのは、誰の影響なのだろう―。それにつけても田村はまだか?来いよ、田村。人生にあきらめを覚え始めた世代のある一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒涛の感動が待ち受ける傑作。

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2009年10月24日

ラブコメ今昔<有川浩>−(本:2009年読了)−

ラブコメ今昔
ラブコメ今昔
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# 出版社: 角川グループパブリッシング (2008/7/1)
# ISBN-10: 404873850X

評価:75点

自衛隊を舞台にした、ベタベタアマアマのラブコメ短編集。
いつものとおり、展開がお約束どおりでわかっていてもニヤニヤしてしまう作品ばかり。自衛官の凛々しさみたいなものが巧く混ぜ込んであるが、最近右よりになってきた私には、それも読んでいてそこそこ心地よかった。
それにしてもこの作品はいつもに増して甘くなかったか。
題名にわざわざラブコメと書いてあるのだからまあ当たり前なのだろうが、いくらなんでも40過ぎのおっさんにはちょっと毒気がきつすぎたかもしれない。

上司の娘と隠れて付き合う話が結構面白かったが、殴り合ってわだかまりを解いて家で鍋って・・・。古典的なラブコメパターンを今の時代に持ち込んだということなのだろうなあ。

これはこれでいいけど、個人的にはもっとガッチリしたものを読みたい気がした。

内容(「BOOK」データベースより)
突っ走り系広報自衛官の女子が鬼の上官に情報開示を迫るのは、「奥様のナレソメ」。双方一歩もひかない攻防戦の行方は?(『ラブコメ今昔』)。出張中新幹線の中で釣り上げた、超かわいい年下の彼は自衛官。遠距離も恋する二人にはトキメキの促進剤。けれど…(『軍事とオタクと彼』)。「広報官には女たらしが向いている」と言われつつも彼女のいない政屋一尉が、仕事先で出会ったいい感じの女子。だが現場はトラブル続きで…(『広報官、走る!』)。旦那がかっこいいのはいいことだ。旦那がモテるのもまあまあ赦せる。しかし今度ばかりは洒落にならない事態が(『青い衝撃』)。よりによって上官の愛娘と恋に落ちてしまった俺。彼女への思いは真剣なのに、最後の一歩が踏み出せない(『秘め事』)。「ラブコメ今昔」では攻めに回った元気自衛官、千尋ちゃんも自分の恋はいっこうにままならず…(『ダンディ・ライオン―またはラブコメ今昔イマドキ編』)。

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ゴールデンスランバー<伊坂幸太郎>−(本:2009年読了)−

ゴールデンスランバー
ゴールデンスランバー
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# 出版社: 新潮社 (2007/11/29)
# ISBN-10: 4104596035

評価:95点

ゴールデンスランバーって、どこかで聞いたことがあるとずっと考えていたのだが、そうそう、ビートルズのアビー・ロードに入っていた曲だった。
著者はビートルズファンなのでしょう。かなり詳しく当時のビートルズの置かれた状況が登場人物たちのセリフを通して説明されたりする。歌詞も何度か引用される。
突然メドレーが入っているなどかなり異質なアルバムだったけど、私は結構アビーロードが好きだった。ビートルズの終焉を表わすアルバムでもあったのだけれど。

物語はビートルズとは関係ない。総理大臣が仙台でのパレード中に突然ラジコンヘリを使った爆弾で暗殺され、その犯人としてまったく見に覚えのない青柳が追われることとなる。
真の黒幕はわからないものの、国家権力総動員で理不尽に追い回される主人公の逃走劇はとにかくスリリングでスピード感満載。学生時代の友人や、偶然知り合った人たちの協力を得て、ボロボロになりながらも逃げ続ける主人公は、生き続けるために大勝負をかけてクライマックスに臨む。

多少できすぎているのは小説だからいいでしょう。
オズワルドの話なんて主人公は若いのによく知っているものだと感じたし、父親のセリフはかっこよすぎる。
事件の最後にある人に再会して助けられるシーン。そこから、事件の3ヵ月後を説明している第5章になだれ込んでいくアクションから感動への展開は見事だった。エレベーターのシーンもなかなかいいのだ。

ああ、面白かった。風呂場で夜中の2時まで一気読み。

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2009年10月17日

猫を抱いて象と泳ぐ<小川洋子>−(本:2009年読了)−

猫を抱いて象と泳ぐ
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# 出版社: 文藝春秋 (2009/1/9)
# ISBN-10: 4163277501

評価:85点

小川洋子の作品はどれもこれも「静謐」という言葉が当てはまるのだが、今回の作品はとりわけ静かで美しい。
それもそのはず、主人公の少年は、唇が閉じた状態で生まれてきたため、手術が終わるまでは産声すら上げることができなかった。脛の皮膚を移植する手術を終えた彼の唇には、さわさわと脛毛が生えており、かれはとても寡黙な少年に育った。
そんな彼が、チェスとであい、伝説のチェスプレイヤー「リトル・アリョーヒン」として数奇な運命をたどる。

リトル・アリョーヒンもそうだが、出てくる他の登場人物たちもどこか何かが欠けていて不安定。それでいて、物語はよどみなく絶妙のバランスを保ちながら展開していく。さざなみは立つものの、大波や嵐はこない。感動的なラストもない。それでもこれだけすっきりとした読後感を与えてくれるのは凄いものだ。

日頃、ベラベラとやかましくしゃべり倒している自分が、とてもかっこ悪く恥ずかしく思えてくる小説でもあった。
言葉として発しなくても、大切な思いは伝わるのだ。
例えばそれがチェスのひと駒の動きだけであっても。

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2009年10月10日

四度目の氷河期<荻原浩>−(本:2009年読了)−


四度目の氷河期
四度目の氷河期
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# 出版社: 新潮社 (2006/9/28)
# ISBN-10: 4104689033

評価:89点

予備知識なしにこの小説を読み始めた。
「四度目の氷河期」という題名、そして本の表紙。
きっとSFなのだろうと思っていたのだが、どうにも変な立ち上がり。
「僕は人とは違う」
「父親はクロマニヨン人なんだ」
時にこいつは馬鹿なのかと思うような少年が、岩場に一人ででかけては石器を作りだしたときには、いったい物語がどこに行ってしまうのか心配になった。
「自分は特別、人とは違う」と自意識過剰な若者は考えがちだが、この物語の主人公は生物的な意味でも人とは違うと思っているからややこしい。
中盤になって陸上競技を始めたあたりから、ようやく青春小説として落ち着いてくる。
「違うと思っているのはあなただけ、人と同じだよ」と言われて過剰な自意識を少しいさめられ、一方で「人はみんな特別だ、世界にあなたはあなただけ」と言われて、人と違うことに安心もする。
不安定な心と肉体は左右に大きくぶれながら日々は過ぎていく。
大人になるまでって、確かにそんな感じだった。

ひとひねりも、ふたひねりも効いた青春(恋愛)小説。
イジメに母親の死にDVまで盛り込んで、少し作りすぎた感じはあるけれど基本的には前向き。私はこういうのは好きです。

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2009年09月27日

きのうの世界<恩田陸>−(本:2009年読了)−

きのうの世界
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# 出版社: 講談社 (2008/9/4)
# ISBN-10: 4062140616

評価:71点

独特の世界観で読むものを魅了する恩田ワールド。
開始早々、よくわからん2人称を使った珍しい文体で掴みはOK。そのまま現実なのか夢なのかわからないような不思議な世界が展開され、そのなかで殺人事件の謎解きに少しづつ迫っていく。
ただ、殺人事件は起きるのだが切迫感はほとんどなく、スポットがあてられるのは事件よりも事件が起きた町の生い立ち。

町の中にある隣の市の飛び地の謎、町のシンボルでもある3本の塔の謎、町に張り巡らされた水路の謎。町にやってきた何でも記憶してしまう男の謎。その他とにかく謎がどんどん広がって収拾がつかなくなっていく。
ああ、これはわけのわからんオチでまとめきれないパターンになりそうだと半分を過ぎたあたりで思った。それでもまだ希望はあった。
あと4分の1くらいになって、まだ殺人犯もわからず町の秘密もわからない。とても嫌な予感がしたのだが、流麗な文章に酔うように物語は進んでいく。
気付いたときにはあと十数ページ。とき既に遅く、幽体離脱かなんだかよくわからん結末に落ち着いでしまった。
???である。
で、町の秘密はどうなったのだ。
自分が二人いるという男の謎はどこにいった?
凶器をカラスがって、そんな無茶な。

理路整然としたオチは端から期待していないものの、もう少し納得できる展開にしてもらいたかったものだ。書きっぱなしではないか。
物語の雰囲気は大好きなのだが。

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2009年09月13日

ちょいな人々<荻原浩>−(本:2009年)−

ちょいな人々
ちょいな人々
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# 出版社: 文藝春秋 (2008/10)
# ISBN-10: 4163275509

評価:83点

短編が7作品。巧くて面白くてスカッとできて、そして少しホロリ。
どれもこれも完璧な味付けのおかずが詰まっている、高級幕の内弁当を食べているようだった。

表題作の「ちょいな人々」は、「ちょい悪」とか「ちょいかわ」とかいうよくわからん言葉に踊らされる中年のおっさんたちの悲哀を書いている。
私も会社で「カジュアルフライデー」やら「クールビズ」やらが始まって、実際に着ていく洋服に困ることも多い立場なので、身につまされた。
身の程を忘れてのぼせ上がることのなきよう、自分に戒め、です。

「いじめ電話相談室」は、かなり辛辣な内容。
市役所の「いじめ電話相談室」で働く聡子が、親身に電話相談を受け続けた結果、自分が相談室でイジメにあってしまう。
実際に大人って陰湿なイジメをするものだが、これは笑えない展開だった。
聡子がそんな境遇を勇気を持って打開し、イジメた側にあっと言わせるところは爽快。

他に面白かったのは「犬猫語完全翻訳機」。ニヤニヤ笑いながら楽しめた。そして、最後の「クタバレ、タイガース」でホロリ。
短編集の締め方としても最高に巧い。

荻原さんの本は、「四度目の氷河期」を図書館から借りてあるので、次はとりあえずこれを読もう。
まだ読んでない本も多いので、じっくり楽しみながらの予定です。

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2009年09月03日

あした吹く風<あさのあつこ>−(本:2009年)−

あした吹く風
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出版社: 文藝春秋 (2008/12)
ISBN-10: 4163277102

評価:68点

(ネタバレあります)
34歳の主人公「美那子」と17歳の高校生「レイ」の恋愛小説。
恋愛小説というよりは、恋愛を通じて登場人物たちが再生していく前向きな小説ではあるのだが、スキャンダラスな設定をただひたすらに美しく書いてあって現実味が薄い。

夫を幼馴染の親友に寝取られた34歳の歯科医師という美那子の設定、そして父親が幼馴染の姉と不倫の末に事故死してしまったというレイの設定はなかなか強烈なのだが、そんな二人が簡単に知り合い簡単に惹かれあい、あっという間に恋は盲目状態に陥ってしまう。
いやいや、それだけのトラウマがあれば、もう少し恋が成就するまでに高いハードルがいるのではないのか。

小説の冒頭で恋してしまっている二人なので、その後から起きる出来事は二人の気持ちを確認する作業のためだけに存在するようなもの。
それが対した盛り上がりもなくタンタンと続いていく。
34歳バツイチと17歳の高校生の付き合いがそんなに簡単にうまくいくもんでもなかろう。過去がどうだこうだと言う前に、現実問題として10人中9人は大反対するぞ。そこらへんの苦悩はどこにいったのだ。お気楽すぎないか・・・。

登場人物の心理状態を美しく表現していく著者の透明な文体は健在だが、それだけでは読み応えのある小説は書けないのでは。なんて偉そうに書いてすいません。

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2009年08月31日

終末のフール<伊坂幸太郎>−(本:2009年)−

終末のフール (集英社文庫)
終末のフール (集英社文庫)
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出版社: 集英社 (2009/6/26)
ISBN-10: 4087464431

評価:90点

大阪に向かう新幹線の中で読もうと、東京駅構内の本屋で購入。
伊坂幸太郎という名前と、55万部突破というオビについ釣られてしまったが、55万部売れただけあっていい本だった。
それにしてもゴールデンスランバーは未だ図書館で借りることができずに順番待ち。一気に大ブレイクしたよなあ、伊坂幸太郎。

あらすじについては、「BOOK」データベースがものすごくうまくまとめてくれているので最後に添付。

設定を同じくした連作短編とも言えるこの小説。
最初の「週末のフール」があまり読後感が良ろしくなく、スっと心に入ってこなかったため、2作目以降もそんなに期待せずに読み続けたのだが、読み進むほどにどんどんと良くなっていく感じだった。
小惑星衝突で人類滅亡、などという荒唐無稽な設定も、そのとき人々がどう生きるのかという命題を、少しユーモラスな視点を加えながら様々な角度から書き出していく。
その視点の多様性と、失われない笑いのセンスは素晴らしい。
人類滅亡がテーマの小説なのに、読んでいて時折ニンマリさせられるなんてそうあることではないだろう。

個人的には5作品目の「鋼鉄のウール」が好きだなあ。
不器用で、でもストイックなカッコイイキックボクシング選手が登場するのだが、ひょっとして武田幸三がモデルかと思っていたらやはりそうであることがあとがきに書かれていてうれしくなった。
K1ではあまりいいことがなかった武田だけど、彼はカッコイイ。
そのキックの選手のセリフが最高だった。
「明日、死ぬとしたらどうする?」
「僕にはローキックと左フックしかありませんから」
「明日死ぬのに、そんなことをするわけ?」
「明日、死ぬとしたら生き方が変わるんですか。あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」

私も死ぬのは怖い。
誰だって怖い、と思う。
でも、今やることをやるしかない。生きるとはそういうことなんだ、きっと。

とりあえず娘にこの本を勧めてみよう。

内容(「BOOK」データベースより)
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

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2009年05月09日

なんでもありか―静と理恵子の血みどろ絵日誌<伊集院静、西原理恵子>−(本:2009年44冊目)−


なんでもありか―静と理恵子の血みどろ絵日誌
なんでもありか―静と理恵子の血みどろ絵日誌
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# 出版社: 双葉社 (2008/3/26)
# ISBN-10: 4575300225

評価:90点

週刊大衆に連載されたギャンブルエッセイをまとめたもの。
伊集院静の毒に溢れた文章と、さらに西原の毒にまみれたイラストの相乗効果によりそれはもう恐ろしいほどに魅力的な内容になっている。
なんとも素晴らしい。読んでいてゾクゾクする。

さらに言えば、毒の裏側にある膨大な愛情がいいのだ。
競輪をボロクソにいいながら、競輪が好きで好きで離れることのできない伊集院先生。いい感じである。
イワイシマコのエロエロぶりを豪快に暴露しながら、仲がいいんだろうなあと連想させる西原のイラスト。
そんなところを丹念に味わせていただきました。
丹念に読む本じゃないぞと、二人には言われそうですが。

人生は一度しかないのをわかりきってはいるけれど、もう一度やっていいよといわれれば、借金とギャンブルと酒と女にまみれてグダグダに生きてみたい。
ダメダメ男の典型のような生きかたをして、でも何か才能があってそれでなんとか飯は食える。
食えるけどいつ野垂れ死んでもおかしくないような人生。
小心者のセコセコサラリーマンには決して選べない人生だからあこがれるのだ。
いや、今からそれをやれといわれれば断りますけど。
本を読んで追体験させていただければ十分です。

久しぶりにマージャンしたくなったなあ。

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2009年03月03日

人間の覚悟<五木寛之>−(本:2009年33冊目)−

人間の覚悟 (新潮新書)
人間の覚悟 (新潮新書)
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# 出版社: 新潮社 (2008/11)
# ISBN-10: 4106102870

評価:70点

老人の戯言とは言わない。
心に沁みる後期高齢者の数々の言葉。いい本だった。

4月1日付で異動となる会社の先輩が貸してくれた本。
5年ほど先輩になるのだが、生意気な私の口答えの数々に真剣に対応してくれたことに感謝している。
酔っ払って前後不覚に陥り、副社長にも平気で絡んでしまう愛すべきおっさんがいなくなるのは悲しいが、今回の異動は真面目にご栄転なので喜んであげよう。

借りた本にはところどころ赤鉛筆で傍線が引いてある。
私も自分で買った本には時々そんなことをするが、この本を読んでいて私ならここに引く、と思ったところは完全にスルーされ、そこか、そこなのか?というところに線がひいてあったのには笑えた。
人の感性って本当にそれぞれなのだなあ。
それにしても
「ブッダはたくさんの方言につうじていたと言われます」に、なぜ線をひくのだろう。ふうむ。

著者は「「覚悟」とは、あきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でもなく絶望でもなく事実を真正面から受け止めること」だという。
下り坂の時代にはそれが大切であり、また人生の下り坂の時期には死をきちんと意識して覚悟すべきだと言っている。
多くのコメントには納得できるし、私もある程度達観した境地に早くなりたいとは思う。
ただ、国家に対する姿勢は少し違うかな。
国家に多くを求めないという姿勢には同意するが、だからといって何も言わなければ民衆は好きなように彼らに食い散らかされるだけだ。
「覚悟」ができてないから騒ぐのではなく、落ち着いて「覚悟」するためにも、国家に対していうべきことは言わねばならぬのではないだろうか。

著者は自分で自分のことを後期高齢者だと揶揄しているが、学生時代からのファンである私からしても、本当に歳をとったなあと思う。
直木賞を獲った「蒼ざめた馬を見よ」はかっこよかったよなあ!

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