本:た行の作家

2011年02月12日

ちょっとした勉強のコツ<外山滋比古>−本:2011-12−

ちょっとした勉強のコツ
ちょっとした勉強のコツ
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# 出版社: みくに出版 (2000/09)
# ISBN-10: 4840300895

出版社からの内容紹介
言語学者にしてエッセイスト。さらに幼稚園園長から大学教授まで教育者としても幅広いキャリアをもつ著者が、「教える」「育てる」「学ぶ」本当の意味を説き、確実に頭の「よくなる」コツを伝授する。

また同じ話が何回かでてくるなあ。
まあ、1923年生まれだし、この本を書いたときが77歳。仕方ないか。

満腹時には頭が働かなくて、勉強もよい仕事もできないとのこと。
なるほど、俺はいつも満腹だからダメだったんだ。
明日から食事について真面目に考えよう。ダイエットだって全然うまくいかないし、物事が一向に覚えられないのもそのせいだったに違いない。
といいながら、ココイチのカレー(5辛)で腹いっぱいになりながらウダウダブログを更新しているようでは何も変わらないのだろう。
さて、図書館に本を返してくるかな。
外山さんの本はあと2冊図書館で予約しているが、どうせ同じ論調で変わり映えしない内容だろうと思ったらなんだか読む気がずいぶんと失せてしまった・・・。

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2011年02月11日

忘却の整理学<外山滋比古>-本:2011-11-

忘却の整理学
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# 出版社: 筑摩書房; 四六版 (2009/12/12)
# ISBN-10: 448084290X

外山滋比古って、懐かしい。
大学受験の頃に現代文の問題に頻出だということで随分と読んだような気がする。
「思考の整理学」も読んだはずだが、内容はすっかり忘れてしまった。

書いてあることは単純。
忘れることは悪いことではない。
思考力を高めるためには、脳が情報でごちゃごちゃになった状態はよろしくない。
不要なものはどんどんすっきりと忘れてしまうことだということ。

記憶力がないことを嘆いている人にはありがたい内容だが、書いていること自体はそれだけであって、なんらかの根拠があるわけではない。そもそも著者の個人的理論なのでしかたないけれど。
でもまあ、アイデアでも文章でも寝かしておくことでよくなる場合が多いというには納得だ。
後は睡眠によって脳内の黒板を綺麗に消す作業が大切だというのもよくわかる。

それにしても最近はなんでもかんでも忘れてしまうなあ・・・。
忘却の彼方に飛んで行ってしまった記憶のなんと多いことか。



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2010年02月10日

教授の異常な弁解<土屋賢二>−(本:2010-17)−



教授の異常な弁解
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# 出版社: 文藝春秋 (2009/12/9)
# ISBN-10: 4163720405

評価:86点

相変わらずムチャクチャ面白い。
楽しい本なので、風呂場やトイレで脱力しているときにヘラヘラ笑いながら読むのが好きなのだが、屁理屈をこね回しているようで、時折これこそ物事の本質ではないのかと思うようなところをビシっとついていたりして、なかなか油断がならなかったりもする。
土屋先生の言い回しを覚えておいて、どこかで文章に盛り込んでやろうと思うことが多いのだが、そう簡単にマネができないのだ、これが。

あ、でも、今日、土屋先生の本が役に立った。
この本に出てくる、苦労して並んで席を確保した電車に、老人が乗り込んできたためにやむをえず土屋先生が席を譲ったと言う話。
今日の帰り、ラッキーなことに電車で座れたのだが、目の前に火をつけたら7秒くらいで燃え尽きそうな枯れたおばあさんがやってきた。
一瞬寝たふりをしようかと思ったのだが、あの土屋先生でさえ席を譲ったのだからと思ったら、さすがにそのまま座っていることができずに私もそのおばあさんに席を譲ったのだった。
土屋先生の本を読んだおかけで、ためらわずにおばあさんに席を譲ることができた。
徳がひとつ積めた。
きっと明日はいいことがあるだろう。
ありがとうございました。


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2010年01月29日

花散らしの雨 みをつくし料理帖<高田郁>−本:2010-13−



花散らしの雨 みをつくし料理帖
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# 出版社: 角川春樹事務所 (2009/10)
# ISBN-10: 4758434387

評価:91点

図書館の予約の関係で、1作目より先に2作目が手元に来てしまった。
高い評判を知っていたので楽しみにしていたが、まさに期待にたがわず、面白い。
江戸の料理屋で料理人として勤める「澪」のけなげな頑張りはなんともいじらしく、平成のオッサンの涙腺は何度も思わず緩んでしまいそうになるのです。
ストーリーは極めて情緒的で、浅田次郎をもう少しポップにしたというか若干女性らしくしたような印象。でも悪くない。控えめでおとなしい女性として描かれている澪が、敵地に乗り込んで啖呵を切ったり、クレイマーのように思える客と丁々発止のやり取りをしているさまは爽快だ。さらに、小説の中に出てくる料理がどれもこれも美味しそうでたまらない。
世界中の食材が季節を問わず手に入る現在の日本と違って、江戸時代の料理にどれだけ制限が多かったことか。だからこそ、自然界から採れるものを大切にし、創意工夫を凝らした季節感タップリの料理が次々と出来上がってくる。
ほんと、うまそう。
でもじゃあこの時代に生きるかと言われればそれはちょっとなあ。
カレーとかラーメンとか食いたいもの。

澪の恋路はマダマダ障害に満ち溢れていそうだし、澪を取り巻く諸問題も全然解決していないので、続編はどんどんとできそうだ。
そうか、料理のネタがつきたら終わってしまうのかも・・・。

順番は逆だが、1作目を早く読みたい。

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2010年01月23日

悼む人<天童荒太>−本:2010-10−

悼む人
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# 出版社: 文藝春秋 (2008/11/27)
# ISBN-10: 4163276408

評価:85点

図書館で半年以上待ってようやくまわってきた。
直木賞を受賞して随分と過ぎているし、生と死をテーマにしたそこそこ重たく生真面目な内容なのにまだまだ人気があるのだ。
そう、一言で言えばとにかく生真面目に書かれている。
主人公の、見も知らぬ人を「悼む」ことを目的に全国を旅しているという行動こそ奇抜だが、死者を悼むという気持ちは誰にでもあるものだ。
他の登場人物も、夫殺しの女性、末期癌の母親、品のないライター、とそんなに珍しくもない人たちだ。さらには鳥肌立つような感動的なシーンが連発されるわけでもなく、スリル満点のサスペンスシーンもない。
それなのに圧倒される。ただ、ひたすらに人の死について生真面目に真正面から書くことを貫いているからだろう。
ここまで書いてもらうと、気持ちよく物語りに入っていけるというものだ。

でもなぜこんなにこの本は受けたのだろう。
宗教と綺麗に切り離し、人との関わり、人の記憶、死んで人の心に残すもの、というテーマに限定して書いているから受け入れやすいのはあるのかもしれない。
死ねば無だ、という科学的には当たり前の主張(小説では自分を殺した妻に取り付いている夫の亡霊?がそれを話す担当)に宗教観のようなものを押し付けず、人間同士の関係性で勝負するというのはなかなかうまいやり方なのだろう。

そんな理屈こねくり回して感想を書く必要はない。ただ読んでいて生きることに前向きになれる本だからそれだけでいいのだ。たぶん。

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2009年11月21日

純粋ツチヤ批判<土屋賢二>−(本:2009年読了)−

純粋ツチヤ批判
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# 出版社: 講談社 (2009/5/29)
# ISBN-10: 4062155044

評価:80点

東京大学を卒業し、お茶の水女子大で哲学を教えるツチヤ教授の天才的オバカエッセイ集。
どこをどうすればこれだけ真面目にふざけて面白い文章が書けるのか不思議でならない。いつ読んでも面白いのだからどうしようもない。
オバカエッセイだから10分くらいで読めるだろうと高を括っていると、結構文字が詰まっていてわりと複雑ないいまわしで笑わされるので、思っているより読み終わるのに時間がかかる。
時間をかけて読む本かどうか真面目に考えてしまうときっと手には取らない本だろうから、表紙にはいしいひさいちなぞを使って「お手軽さ」を強調しているのだ、きっと。
ううむ、計算されているなあ(たぶん)。

いずれにせよ、面白い。
生徒のふざけた論文を読んでいて、真面目にふざけた文章を書けば自分も読む人も面白いことに気付いたツチヤ教授。それにしてもいろいろとよく書いています。
新刊がまた無事に読めて幸せでした。先生、もっとガシガシ書き続けてください。
応援しています。本は買わずに図書館で借りて読むだけですがブログで褒めますから。

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2009年10月10日

マインドマップ超入門 (トニー・ブザン天才養成講座 1)



マインドマップ超入門 (トニー・ブザン天才養成講座) (トニー・ブザン天才養成講座 1)
マインドマップ超入門 (トニー・ブザン天才養成講座) (トニー・ブザン天才養成講座 1)
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# 出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン (2008/12/20)
# ISBN-10: 4887596766

評価:70点

内容(「BOOK」データベースより)
ビル・ゲイツ、アル・ゴアはじめ世界2億5千万人以上が使っている脳を活性化する思考技術、マインドマップ。マインドマップ×速読術×記憶術で脳の潜在パワーを解放せよ。

とにかく簡単に、中高生でもわかるようなレベルでマインドマップについて説明がなされている。
思考は放射状になされるということを前提としたマインドマップの考え方や活用方法にあまり異論はない。絵を使い、色も多様に使って楽しく書くことが大事だと言うことも確かにそのとおりだろう。
でもなあ、職場で色ペンつかってあんな絵を描いていたらなんだと思われるし、「マインドマップ使ってブレストしましょう」とかこっぱずかしくて言えないよ。
ということで、ひとり密かに目立たぬようにマインドマップもどきを作っては仕事をボチボチと進めてみたりしています。
効果があるのかないのか、まったくわからんぞ。まあいいか。


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2009年02月07日

シチュエーションパズルの攻防<竹内真>−(本:2009年20冊目)−

シチュエーションパズルの攻防―珊瑚朗先生無頼控 (創元クライム・クラブ)
シチュエーションパズルの攻防―珊瑚朗先生無頼控 (創元クライム・クラブ)
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# 出版社: 東京創元社 (2008/06)
# ISBN-10: 4488025277

評価:72点

カレーライフや、ビールボーイズといった著者の青春小説と比べるといまひとつ。
登場人物はかなり魅力的だし、「銀座の文壇バー」などという私には縁のない世界を興味深く書いてもくれて面白いのだが、ストーリーの根幹をなしているミステリの謎解きにグっとくるものがないのが原因だろう。
クロロホルム事件やFAXの事件にしても、読んでいるこちらが「その謎を知りたい!」と思わないのだ。
だから一生懸命謎解きをそれにくっつけても、それを読んで感動することがない。
ふうん、なるほど、それで。となってしまう。
無理にミステリ仕立てにしなかったほうがよかったんじゃないだろうか。

バーのホステスの体をさわりまくりながら、葉巻をくゆらせ、不思議な事件の謎解きを軽やかにやってのける「サンゴ先生」は確かに魅力的だが、安楽椅子探偵ミステリって、これくらいが限界なのだろうか。
少なくとも私は主人公が動いて事件に巻き込まれていく小説のほうがいいなあ。

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2009年01月10日

ビールボーイズ<竹内真>−(本:2009年7冊目)−

ビールボーイズ
ビールボーイズ
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# 出版社: 東京創元社 (2008/02)
# ISBN-10: 4488023991

評価:90点

最初から最後まで徹底してビール。
そして最初から最後まで徹底して青春どまんなか小説。
北海道新山市で友達になった4人が、12歳のときに秘密基地と名づけた納屋で初めてビールを飲んだ。
その仲間達がふるさとを離れたり戻ってきたりしながら、ビールを通じてふるさとを再生していく。
12歳から31歳まで。彼らの成長の様子が丁寧に書かれていてよんでいて気持ちがいい。まさにさわやかな喉ごしだ。
一方で、両親がリストラされて町を離れざるを得なくなったものがいたり、将来に悩み一人東京に出て行くものがいたり、性同一性障害に悩むものがいたり、そして自分のビール工場を作ろうと奮闘しながら何度も壁にぶつかるものがいたりして、そんな様々な障害が物語の中では程よい苦味になっている。

あまり酒に強くない私ではあるが、酒の席の雰囲気は嫌いではないし、読んでいて主人公達の楽しげなほろ酔いの雰囲気が幾度となく伝わってきた。
章の合間にはビールに関する薀蓄がビッシリと書き込まれてあって、これがまた面白い。
アメリカの禁酒法の話や、日本のビール業界が酒税法と合わさっていかに大手企業の独占を守るためにできているかも教えてくれる。
そういえば、先日の新年会でギネスの生を飲んだが、焦げ臭くてあまり美味しいとは感じなかった。
もともとそんな味なんでしょうね。

19年間をタイトにまとめてあるので、全体的に駆け足気味で時折記述に物足りなさも感じるが(選挙のところなど書き込めばそれで一冊の本になるだろうし)、これはこれでいいのでしょう。
ビールを飲んだことのある人もない人も、誰が読んでも楽しめるであろう青春小説です。
ああ、ビール飲みたい!

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2008年12月07日

ぽろぽろドール<豊島ミホ>−(本:2008年160冊目)−

ぽろぽろドール
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# 出版社: 幻冬舎 (2007/06)
# ISBN-10: 4344013417

評価:80点

人形を題材にした短編集。
生まれてからこの方、人形とはほとんど縁のない生活を送ってきた普通のオッサンにとってみると、なんとも強烈で不思議な物語ばかりだった。
以下は、そんなオッサンの感想なので、これまで人形に対して思い入れを持って接してきた人たちからすると到底賛同を得られないだろうし、さらにはフィギュアという名前の人形を熱烈に偏愛する人たちからも怒られるかも。
いえ、決して人形文化を否定するものでもないし、家にアヤナミナントカという等身大フィギュアがあったりすると、心底凄いなと思ったりもする。実際にそんなものをおいている友人がいるわけでもないが。

ゴチャゴチャ書いたが、人形に対するサディスティックな感情や、擬人性、自己投影等が、包み隠さず赤裸々に書かれていて、非常に興味深い。
思いを吐き出すために人形を叩いたり、人形をひたすらに着飾って自分の思いを転化させたり、人形に好きな人を重ねたり、好きな人に愛してもらうために人形と自分を同一化させたり、果ては人形そのものを愛したり、自分の運命を人形と道連れにしたり。
そのギリギリの危うさが醸し出すエロシティズムがなんともいえないのだ。

おっさんには結局人形とはなんなのかわからないのだが、考えてみれば人間は太古の時代から土偶や埴輪といった人形を作ってきたのだ。
人間という生物が生きていくためには人形って必要なのかもしれない。

人形のことばかり書いたが、この小説は別に人形文化の解説書というわけではない。人形を媒体にした青春小説のようなもの。ただ、人形という材料が強烈過ぎて、その印象ばかりが残ってしまうのが少々難かもしれない。
私が唯一持っていた仮面ライダーがバイクに乗った人形はどこにいったのだろう。人形、とは言わないか・・・。

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2008年11月24日

東京・地震・たんぽぽ<豊島ミホ>−(本:2008年153冊目)−

東京・地震・たんぽぽ
東京・地震・たんぽぽ


# 出版社: 集英社 (2007/08)
# ISBN-10: 4087753832

評価:83点

東京で大地震が発生した。そのとき人々はどう感じ、どんな行動をしたのか。14編の短編が様々な人たちが露にした心のなかを描いていく。

まずは設定がうまい。東京直下型大地震というのは決して予想しがたい状況ではないが、その設定で短編をつむいでいくというのは読んでいて新鮮だった。微妙に登場人物が絡んでいたりしているところも絶妙だ。
次に、それぞれの短編にきちんとテーマを盛り込んであることがよかった。
「いじめ・不登校」「育児ノイローゼ」「老人介護」「会社と家庭」「親子」「兄弟」などなど。
大地震発生時のパニック小説というよりは、大地震という設定を借りて、短編の中で著者が書きたかったことをしっかりとあらわしている。大地震のあとだからこそ湧き出てくる人々の本音が生々しい。

それぞれの短編の展開自体は単純だ。
あっと驚くような結末もない。
だが、その単純なところが妙にリアルで逆に印象に残るのだった。
蝶の標本と一緒に逃げ出してしまった少年はどうなったのだろうか。少女はもう一度弟と一緒に眠ることができたのだろうか。

2007年にこの本を書いたときの著者は25歳。
これからがさらに楽しみな作家です。

なんて、今日はどうも上から目線だな。すいません。
25歳の女性、なんていうと会社の新人事務員のようで、ついつい「おじさんが仕事教えてあげるモード」になってしまうようだ。

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不機嫌な職場〜なぜ社員同士で協力できないのか<高橋克徳、河合太介、永田稔、渡部幹>−(本:2008年152冊目)−

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)


# 出版社: 講談社 (2008/1/18)
# ISBN-10: 4062879263

評価:79点

ベストセラーになっているというので、図書館で借りてきて読んでみた。
題名からは、職場のおかしなところをあげて笑いとばすようなものかと思っていたが、実際は不機嫌な職場をご機嫌な職場に変えるための具体的な対応策を示した極めて前向きな本だ。
人生の多くの時間を費やす職場だからこそ、ギスギスした行きたくないような場所にするのはやめよう、みんなが喜んで働けるような職場にしよう、という内容。
日本の企業が不機嫌な職場になってしまった理由として、西欧型成果主義の導入があげられている。成果測定のために仕事の領域が明確になったことで、社員同士が自分の仕事だけをするようになり、結果タコツボ化現象が起きて誰も引き取らない仕事が増えてしまったというのだ。
これは結構実感できることだった。
私の勤めている会社でも、大きなリスクとしてそれが認識されている。
誰の守備範囲でもないところに落ちてしまうから、ポテンヒットと呼ばれていたりする。

本書では、そんなポテンヒットを無くすために、仕組みを考えること以上に社員の意識を変えなくてはならないと説く。
かつての日本企業にあったはずの、もっと熱い、仲間意識を高めるような家族的な何か、そんなものが必要らしい。
それはそれで読んでいて説得力があった。

だがなあ、やっぱりなかなか難しいと思うのだ。
誰もが主人公になりうる新興企業ならともかく、でっかい老舗企業では労働者はどう考えても歯車であって、日々それを実感させられながら我々は働いているのだから。
ただ、個人的にはこの本に書かれていることをどんどん実践していきたいものだ。

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2008年09月23日

檸檬のころ<豊島ミホ>−(本:2008年127冊目)−

檸檬のころ

# 出版社: 幻冬舎 (2005/03)
# ISBN-10: 4344007476

評価:88点

青春、です。
東北地方の田舎の県立進学校。
高校生たちのみずみずしい物語はどこか懐かしくて心の深いところをくすぐるようだ。
なぜ私のようなおっさんがそう感じてしまうのか不思議であったが、舞台が田舎というせいか登場人物の高校生たちがあまりスレていないからなのだろう。
設定は現代のハズなのに(1982年生まれの著者が2005年に書いた本なので、2000年前後?)、妙に「昔の高校生」という感じがしてくる。
一方で、高校生のセリフのひとつひとつは真っ直ぐでとんがっていておっさんが読むと時々心が痛くなる。
自分が歳をとったことを痛感させられる瞬間だ。

物語は連作短編。
うまく前後の話をシンクロさせていて、ある物語ではサイドにいた子が、別の物語では主人公になり、入学から卒業へ、季節はどんどんと進んでいく。
巧いなあ。7つの短編でひとつの長編がきちんとできあがっているのだもの。

あとがきで著者は自分の高校生時代は「地味で底辺だった」と書いているが、ほとんどの人は地味なんだから、地味な話は共感を読んだりするのだ。特に青春時代の話は。
などといいながら、私もいろいろと思い出して妄想にふけりながら楽しんで読むことができた。

女子高校生の視点だけでなく、担任の先生の視点で書かれた「担任家業」がよかった。
大人はいろいろつらいのだ。

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2008年09月15日

夜の朝顔<豊島ミホ>−(本:2008年123冊目)−

夜の朝顔

# 出版社: 集英社 (2006/04)
# ISBN-10: 4087748065

評価:80点

神田川デイズが面白かったので、早速図書館で豊島ミホを借りてきた。
今思ったのだが、ペンネームだとすれば「トシマ」という音の苗字を選ぶというのもなかなかのセンスだな。
このまま作家であと20年もすれば(46歳)怖いことになりそうだ。

主人公の小学生(センリ)が、小学校1年生から6年生になるまでの連作短編集。
独特の感性で、小学校時代を見事に切り取っている。
といいながらも、正直自分がここまでいろんなことを考えていたかどうかは心許ない。
男って特に小学生時代は基本的にバカだからね。
いや中学生になってからもバカだけど。
女の子と同レベルの精神的成熟度になるのは高校生くらいか?

私自身を振り返ってみても、小学生時代、人間関係で悩むことはあったかもしれないが、この主人公のように人間関係そのもののわずらわしさを本質的に理解し、さらにそれを乗り越えていくなどというレベルの高い思考は到底できていなかった。
若干感じる違和感はそういう男女のレベル差なのかもしれない。

センリは安易に他人とつるまず、かといって斜に構えたひねくれ者でもなく、いつも真剣に物事に相対する。
その分傷つきもするけど、着実に成長していく。
その成長の様子が物語から読み取れるところも興味深かった。
小学生の人間関係って、基本ノーガードの打ち合いなんだが、突然高度なディフェンスとかしたりするので始末が悪い。
そういえば自分にもいろいろとあったなあ。
ううむ、一度あの時代に戻って馬鹿すぎる自分に厳しく注意しておいてやりたいものだ。

そうそう、小学校5年生のセンリは、担任の先生にほのかな恋心を抱き、先生のお気に入りになりたいと思うのです。女の子はかわいい。
男は中年になって出世によこしまな思いを抱き、部長のお気に入りになりたいなどと思うのです。男は情けない・・・。

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2008年09月13日

神田川デイズ<豊島ミホ>−(本:2008年121冊目)−

神田川デイズ

# 出版社: 角川書店 (2007/05)
# ISBN-10: 404873766X

評価:83点

ちょっとダメダメだけど、なんとも等身大で共感を呼ぶであろう大学生たちの日常。
実にいい感じで楽しんで読めた。
みんな一生懸命な青春。
ぐっと入り込んでも悩み苦しむし、引いて冷めてみてもまた悩み苦しむし、いったいどないせえっちゅうんじゃと思った日々が懐かしい。
「アホみたいなプライドとツユダクの自意識に潰れそうな日もあるけど」というコメントを読んでまさにそうだと思った。
今にしてみれば、あのときの感情のほとんどが過剰な自意識だったもの。
思い出すだけでこっぱずかしくもなる。
アラフォーになり(アラフォーの人間がアラフォーという言葉を使うのは恥ずかしくないのか、私にはまだよくわからないがとりあえず書いてみた。アラフォーではなく、とっくにオーバーフォーではないかというご指摘はさらりと無視させていただく)、ある程度人生を達観して客観的に見つめることができるようになると、この本に出てくる大学生のころの様々な思いは笑って済んでしまうようなことばかり。
でも、妙に懐かしく、そして今はもうそんな風になれないということが悲しくもある。

この小説に出てくるような思い出を、自分も持っているのだということを思い出させてくれたことに感謝して、人生の後半戦を生きていこう。
そんな気持ちにさせてくれる本だった。

童貞メガネーズのコントを一度聞いてみたいような気もするが、これだけは絶対に面白くなさそうなきがするなあ・・・。

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2008年08月27日

孤塁の名人―合気を極めた男・佐川幸義<津本 陽>−(本:2008年106冊目)−

孤塁の名人―合気を極めた男・佐川幸義

# 出版社: 文藝春秋 (2008/03)
# ISBN-10: 4163268405

評価:85点

格闘技マニアを自認している私ではあるが、合気道とか古武道とかそのあたりにはまったく興味を持ってこなかった。
本当に強いのなら、PRIDEにでてくればいいのだ。
今なら、DREAMや戦極という舞台もあるではないか。
その気になれば渡米してUFCという手だってある。
本物であれば、光ることができる場所はたくさんあるのだ。
そこに出てこない時点で、私にとっては格闘技というものの範疇に入ってこないのだった。

だが、この本に書かれている佐川幸義はたまらなく魅力的だ。
「合気」をマスターしたことで、相手の力を瞬時に殺してしまう。
どんなに鍛え上げた人でも触れられた瞬間に数メートル吹っ飛ばすことができる、
荒唐無稽に思えるそんな武術でも、読んでいるうちに信じざるを得なくなってくる。
それは著者の津本陽が実際に体験したことだからでもあり、また多くの弟子たちが彼の死後も道場を継ぎ、多くの門人を鍛えていることだからでもある。
何よりも、それが自らを鍛えに鍛えあげた男が達した境地として語られているところに信憑性を感じる。
惜しむらくは、もう少し合気の謎を究明してくれればありがたかったのだが、本人にさえ弟子にうまく伝えられないのだから仕方ないというものだ。

残念ながら亡くなられた佐川幸義へのレクイエムのような本でもある。
小説というよりはルポか。
佐川の全盛期にヒョードルと戦ってほしかった。心からそう思う。

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2008年05月21日

大延長<堂場瞬一>−(本:2008年75冊目)−

大延長

出版社: 実業之日本社 (2007/7/20)
ISBN-10: 4408535087

評価:88点

(ネタバレあります)
高校野球はいいもんだ。
いろんな不祥事が起きたり、野球留学が問題になったり、マスコミの過剰な報道に辟易とすることもあるけど、野球が好きな高校生が一心不乱に白球を追うというのは素直に感動できるものなのだ。
と、もと高校球児として強くそう思う。

この小説の登場人物たちは様々な立場で野球に相対している。
5期連続甲子園出場という華々しい経歴を持つ強豪チームの監督。
チームの勝利より、自分のバッティングにしか興味のないスラッガー。
膝の故障を押し通し、投げ続けるエースと、手首の骨折から復帰し、やっと試合に出場するキャプテン。
選手の将来を思い、試合に出たいという怪我をした選手の願いを必死に押さえつける監督。
甲子園という大舞台にやってきていながら、喫煙現場をフォーカスされてしまう内野手。

読んでいて一気に感情移入してしまうキャラもあれば、著者の思いどおり憤りを感じてしまうキャラもある。
それらが全て大きなうねりのように「野球」というものに飲み込まれて感動的なゴールに向ってなだれ込んでいく様子は見事としかいいようがない。
かつての同級生が監督同士になって戦い、そのときの対戦相手がまた監督同士になって・・・。高校野球を巡る輪廻転生とでも言えばいいのか、そのあたりの設定もうまくできていた。

物語にリアリティを持たせているのは、プレーのひとつひとつや故障への対応に説得力があること。違和感なく最後まで読むことができた。
甲子園の決勝戦が延長15回0−0の引分再試合。そして再試合も延長へ・・・よいう試合経過は多少できすぎだが、何が起こるかわからないのが野球というのは確かにそうなのだ。
著者は高校時代に野球してたんだろうなあ。そうでなければなかなかここまではかけないと思うんだがどうなんだろう。


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2008年05月08日

不謹慎な経済学<田中秀臣>−(本:2008年66冊目)−

不謹慎な経済学 (講談社BIZ)

出版社: 講談社 (2008/2/21)
ISBN-10: 4062820811

評価:78点

決して不謹慎ではなく、著者の明確な立ち位置から、至極全うに日本経済について論理的に説明してくれる。
「一見、経済とは関係なさそうな話題を取り上げたり、世間で常識とされていることをひっくりかえすような逆説(?)を掲げたりしながら、話を進めてみたい」と書いていたが、そう驚くような説はなかったのではないか。
日銀の迷走ぶりをバッサリと切り捨ててくれたところは爽快だったし、「「お金ですべての問題が解決できるわけではない」ことを学ぶためにこそ、経済学の存在意義がある」という著者の意見には全く賛成する。

経済学部出身であり、そして現在は少々錆付いてはいるものの、金融マーケットに絡む仕事に10年以上携わってきた私にとっては、十分に知的好奇心を刺激してくれ、そして常に新しいものの見方を学ばねばならないことにも気づかせてくれるいい本だった。
難しかったけど。

かなり意識的にスピードをあげて読み終えたが、それはじっくり腰をすえて考えながら読むと、1ヶ月くらいかかりそうだったからでもある。
わかったつもりでサッと読める本でもあるが、著者の理論を仔細に読み取ろうとすると思った以上に難解な本でもある。
ま、たまにはこんな本もいいか。

それにしても日本の景気はまだまだ悪いままで続きそうだ。

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2007年12月26日

BOSS<堂場瞬一>−(本:2007年161冊目)−

BOSS

出版社: PHP研究所 (2007/10)
ISBN-10: 4569694934

評価:80点

(ネタバレあります)
大リーグのチームを作るGM(ゼネラル・マネージャー)の物語。
今でこそ日本の野球界でもGMの存在が普通になっているが、ちょっと前までは「なんじゃそれは」という感じだった。
いや、今でもそうかもしれない。
そんなGMが、大リーグのチーム作りでどれほど重要な存在であって、どれほど過酷な日々をおくっているかがよくわかる。

主人公の高岡は、大リーグのフロントでチーム編成などの経験を積み、ついにニューヨーク・メッツのGMとなった。
大金をかけて選手を集めるのではなく、スモール・ベースボールを目指し、出塁率の高く走れる若い選手を中心に、目的を持ったチーム作りをする。
それが高岡の考え方だった。
彼とペナントを争うことになるのは、かつて高岡の師匠でもあったウィーバー。
ブレーブスのGMである彼は、マスコミに対して常に饒舌ではあるがスタンドプレーも多く、旧態依然としたGMの雰囲気を醸し出している。
この対照的なふたりのやりとりが非常に面白い。

物語の進行はかなり想定どおりに進む。
快調にシーズンのスタートをきったメッツに対してブレーブスは低迷。
しかし、効率ばかりを重んじて情のない経営をする高岡に対して、しだいと選手が反発を始める。
綻びはコーチ陣にまで及び、チームは夏場以降急失速。
一方で、ウィーバーはファームから人材を発掘したりマイナーにくすぶっていたベテランを復帰させたり、ドラマを提供しながらジリジリとメッツを追いかける。

人の心を掴むために、自分がどうすべきかをようやく高岡は理解し、メッツとブレーブスは優勝を欠けたワンマッチプレーオフにもつれ込むのだった。

書いてしまえば盛り上がりに欠けるのだが、これがGMという視点を通しての物語なのでかなり興味深い。
加えて、野球の描写がリアルで示唆に富み、素晴らしい。
「野茂」を想起させるベテラン投手の活躍にはわくわくするし(彼はナックルは投げないだろうけど)、選手たちが、投げ、打ち、走り、守る姿は躍動感に溢れていて一気に読ませてくれる。

最後は「経営者たるものこうしなければならない」という少々説教臭いところにおちついてしまうのだが、まあそれもご愛嬌というところだろうか。
中年サラリーマンには、そのあたりも含めて二度美味しい小説かもしれない。


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2007年11月12日

ディスタービア−(映画:2007年128本目)−

ディスタービア1ディスタービア2
監督:D・J・カルーソー
出演:シャイア・ラブーフ、サラ・ローマー、アーロン・ヨー、デヴィッド・モース、キャリー・アン・モス、マット・クレイヴン

評価:84点

公式サイト

(ネタバレあります)
楽しくて面白くて、そしてやっぱり怖かった。
サイコサスペンスホラーをスピード感たっぷりに見せているなかなかの秀作。つっこみどころが多いのも逆に楽しみを増やしてくれている。

それにしてもデヴィッド・モース。徹底的な善人顔をしているだけに、こういう悪役をやると妙に嵌って怖いのだ。いかにもサイコ・キラーって感じだぞ。

大自然の中の父と息子の愛情に満ちた会話のオープニング、ゆったりとした気分で映画を見始めたところでいきなり強烈な自動車事故が起こる。
この見せ方もインパクトが何重にもなっていて非常にうまい。

一年後、父親を失って自暴自棄になっているダメダメ主人公は教師を殴って自宅謹慎3ヶ月になり、足首にGPS付きの電子発信機をつけられて自宅軟禁状態になる。
家から少しでも離れると警察が飛んでくるのだ。
やることがなくなった主人公は四方の家を覗きはじめる。

このあたりは少しダレダレ。
主人公のダメぶりにイライラしたり、覗かれているとわかっていながら主人公に惚れていくヒロインの心理状態がわからず途方にくれたり、友人のアジア人は馬鹿っぽくかかれすぎじゃないかと思ったり、オオ、母親はどこかでみたと思ったらマトリックスのトリニティだったのかとにんまりしたり、そんなことを考えているうちに後半戦で一気に盛り上がり始める。

ターゲットは覗き先のひとつであった隣人のモース。
彼の車は、殺人犯の車としてニュースで報道されたものと同じだった。
夜中に血のついた大きなビニール袋を引きずっていた。
モースの家に呼び出されたクラブの女性が悲鳴を上げて逃げ回っていた。

数々の不審な目撃をはっきりさせようと、主人公達はついにモースの家に忍び込もうとする。

ここからは一気にスピード感を上げて、ホラー色を強めてクライマックスまで疾走。
現代の若者らしく様々なハイテク機器を使いながら敵に対抗するのだが、やっぱりガキはガキで失敗も多く、それが逆に見ていてのドキドキ感をましてくれたりもするのだ。
なんでも完璧にこないしていたジェイソン・ボーンとはえらい違いだが。

前半から後半へのギアチェンジの見事さはなかなかのもの。
それはともかくやっぱりホラー映画は苦手だ。肩が凝りまくってしまった。
あとはあれだな、犯人の家はどうやってあんなに改築されていたんだろうか。不思議じゃ。


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2007年11月02日

指一本の執念が勝負を決める<冨山和彦>−(本:2007年127冊目)−

指一本の執念が勝負を決める

出版社: ファーストプレス (2007/06)
ISBN-10: 4903241491

評価:60点

これもまた研修で読まされた本。
読まされた、とは書いたが、それなりに面白く楽しんで、また勉強もしながら読むことができた。
だからといってどうだ、ということはないのだが。

激しい変革期の現在の社会に置いて、リーダーとなるために何をしてどうならなければいけないか。
かなり断定的ではあるがわかりやすく書いてあり、確かにこれなら読者の気も引くだろう。
高学歴を担保に調整人間が会社の中で生き残っていったこれまでの日本の会社の仕組みはもたないと著者はいう。
だからといって、社会の仕組みそのものがどうなるかという予想はしない。
ただ、個々人が何を考え、どのように仕事に取組むことで生き残っていけるかが書いてある。

たくさんの項目が総花的に並んでいるので、いろいろと共感を持てる部分もあるだろう。
そこだけを読んでいってもまずまず読めるビジネス本だ。
「日本語でも言語領域が違うと通じない」というのは日頃よく感じていることだし、
「一般解を求める経営者は、答えを先送りする」
「ガバナンスの本当の仕事は、社長の首を切ること」
「無能な上司に出会ったらチャンスと思え」
など、感心しながら読んだ。
まあ、とにかくいろいろ考えてリスクをしっかりとって勝負して働け、ということだ。
そのうち日本の会社は大きく変わるぞ、と。

さて、俺も自分を磨くか。
こんな本を読んでいる場合ではないのだ。

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2007年10月20日

簡単に断れない<土屋賢二>−(本:2007年117冊目)−

簡単に断れない。 (文春文庫)

出版社: 文藝春秋 (2006/11)
ISBN-10: 4167588099

評価:78点

相変わらず面白い。
強引かつ綿密な論理展開で読者を煙に巻き、とんでもない方向に誘導していくと思いきや、いつもあっさりと論理破綻を見せ、自身や自身の傍にいる助手や奥さんをオチにしてきっちり笑をとってエッセイをしめくくる。
名人芸、と読んでいいレベルではないだろうか。
それでいて、ときおり「真実」を言い当てる描写が紛れ込んでいるから始末が悪い。
布団に寝転びながら、または風呂に入りながらゴロゴロダラダラと読んでいると、そんなところには気づかずに読み終えてしまう。
かといって、佇まいを直して読むような本でもないのだが。

表題にもなっている「簡単には断れない」というエッセイでは、まさにそうだなと感心した。
会社の飲み会の誘いを断るのがどれだけ大変か。
そうなのだ。ほんとに大変なのだ。
サラリーマンにとっては特に。
著者のオクサマのみならず、「いや」「いかない」という言葉だけで、理由を述べずとも簡単に断ることのできる人たちが私もうらやましい・・・。

まとめ買いがお勧めのようですが、1冊だけ買いました。
買うほどの本ではなかったと、後悔してしまうのもいつもと同じ。
次からは図書館で借りて済まそう。


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2007年10月16日

童門式「超」時間活用法<童門冬二>−(本:2007年115冊目)−

童門式「超」時間活用法

出版社: 中央公論社 (1997/03)
ISBN-10: 4120026426

評価:30点

10年前に作家の童門冬二氏が書いた時間活用方法。
10年ひとむかしとはいうものの、日本経済にとっては失われた10年とかいってろくな発展もなかったわけだから、時間活用方法もそんなに古くなってないかもしれない。
そんなことを思って読み始めた。
しかし、10年の壁は厚かったのだ。
しかもこのおっさんは1927年生まれ。
この本を書いたときに既に70歳。じいちゃんの時間活用法、なのだ。

一番の違和感は、電子メールを使わないこと。
原稿は全てFAXだ。FAXの素晴らしさ便利さが延々と謳われている。
手書き原稿でないのにFAXを使う意味は今はないよなあ。
まあ、しゃあないか。
当然インターネットは使ってないので、資料の収集方法も同じ本を3冊くらい買い込んで、1冊は保存用として、残りは破いてコピーして書き込んで使うという。
そんなことに金は使えない。普通の人にはできないことを書かれても困るのじゃ。
「活用法」といいながら、途中では臨海開発に対する持論が延々と続いたりしておっさんボケたのかと思ったほどだ。

もうひとつの違和感は、口述筆記。童門氏の文章は小説もエッセイも全て口述筆記だという(テープに吹き込み、専門家におこしてもらう)。
目が悪くなり文字が見えにくくなって口述筆記した「中島らも」は仕方ないにしても、私は基本的には口述筆記を信じない。
口から出た言葉がそのまま文章になるとき、常時読むに耐えるものになるのはどうしても無理がある。
いくら本人が「話す前に頭の中で推敲して完璧な文章になっている」といっても、複雑な文章、文学的な文章なんかは書けないはずだ。実際、中島らもが口述筆記していたころの小説は、短文切れ切れですぐに単調になってしまっていた。
それはそれで悪くないが、そんなパターンの文章しか書けない、なんて小説家じゃないのではないか。
などと偉そうに書いたが、童門氏は超売れっ子ベストセラー作家だったらしいので、文句をたれる私ごときが間違ってるんだろうな。ま、いいや。

ということで久しぶりにビジネス本らしきものを読んだのに、ためになる部分はほとんどなかった。
唯一あるとすれば、人間寝なくても大丈夫ということと、気持ちのギアチェンジをするということか。

そう、過ぎたことは悩まない。前向いて生きるしかないのだよ。
などと思っているからいつも「お前は反省しない!過去に学ばない!」といって怒られるのかもしれんな。

さあ、今日も夜更かしするぞ!

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2007年09月27日

誘拐の誤差<戸梶圭太>−(本:2007年107冊目)−

誘拐の誤差

出版社: 双葉社 (2006/11)
ISBN-10: 4575235695

評価:85点

(ネタバレあります)
これを書くとネタバレになってしまうのだろうが、これをかかずのこの小説の面白さを伝えることは無理なので遠慮なく。
本格警察小説などと表紙には銘打ってあるが、実際は警察も含めて事件にかかわる無能な人たちの、ひたすらにおばかな行動を書いた小説。
一応殺人事件は何度も起きるし、警察は犯人探しに躍起となる。
地回りもあれば張り込みも聞き込みもあるし、犯人は証拠隠滅のためにさらに犯罪を犯したりもする。
だが、全員が間抜けでバカで醜い。
登場人物がみんなそうなってしまうのは、主人公が殺された10歳の男の子だからだ。
主人公のレオが殺されてしまうのは、道に落ちていたスケボーに乗って遊んでいたときに犯人の車の傷をつけてしまったから。
ただそれだけの理由でレオは殺されてしまう。
そして、殺された直後からレオの魂は浮遊をはじめ、あたりの人たちの心の中を全部読めるようになってしまったのだ。
だから物語は登場人物達の本音が連なって進んでいく。
社会なんて本音を隠しているから円滑に進むのであって、みんながそれをさらけ出したら恐ろしくて生きていくことができないだろう。
とりわけ戸梶の小説だから、出てくる人間は直情的な行き当たりばったり極悪人とか、強烈な電波系とか、思い込みの激しい偏屈な警察官とか、そんなんばっかりでまともな人は誰もいない。
レオの親たちだって、レオの死を純粋にはかなしんでくれないのだ。

これら強烈な本音を読んでいるうちに、だんだんとそのグロテスクな設定に浸ってしまうのが恐ろしい。
戸梶の凄いところは、そこで読者を安住させずにさらに強烈な世界へと推し進めていくところか。
須田の犯罪はとどまるところを知らぬようにエスカレートしていき、馬鹿な警察は無地の兄ちゃんをゲロさせ、話はとても収拾がつかないところへと進んでいくのだ。

いずれにせよ、死んだ子供の幽霊を使って、登場人物の頭の中を書いて物語を薦めていくって凄いアイデアだよなあ。
これならなんでもできる。めんどくさい視点の切り替えもいらない。
話を進めるだけ進めさせて最後は成仏させてしまったし・・・。
その後のラストシーンは面白かった。
それはそうです。罰は受けないとね。

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2007年06月02日

変身<嶽本野ばら>−(本:2007年53冊目)−

変身

出版社: 小学館 (2007/3/30)
ISBN-10: 4093861854

評価:90点

面白く、そして余韻のある物語。
下妻物語が好きだったので(といっても映画で観ただけだが)、著者の名前を図書館の本棚で見かけて思わず借りてしまった。
それよりなにより、野ばら、男だったのか・・・。
驚いた。驚いて思い出したが、昔も同じように著者が男だと知って驚いたことがあった。
フリフリのロリータファッションに身を包んだちょっと変わった雰囲気の女性=嶽本野ばら、というイメージが相当強く出来上がっているのだろう。
というか、歳とって俺の物忘れが酷くなっているだけか。

話がそれた。
30歳を過ぎた漫画家志望の超ぶっさいくな兄ちゃん。アルバイトして貯めた金で自主制作の漫画を作り、ストリートで売ったりしているが、今まで買ってくれた人は「ゲロ子」という名前のこれまたぶっさいくな女の子ひとり。
そんな主人公が、ある朝起きたら超美形に変身しているところから物語りは始まる。
カフカの変身をパロった冒頭。
美形になった主人公は、ストリートで売る本が次々と完売。
大手出版社に眼をつけられ、王子様、として大々的に売り出される。
主人公が描くのは古臭くてくどくてこだわりが強い少女漫画、大衆に受け入れられるはずもなかったのに、容姿が変わっただけで一気にスターにのし上がる。

著者のディティールにこだわるくどいくどいくどい描写はなんとも言えず楽しい。まさに主人公の描く漫画そのものなんだろう。
読みながら、
「成功に空しさを感じた主人公は、結局ゲロ子を選んで、容姿もブッサイクに戻るんだろうな」
なんて思っていたら、そんな甘展開ではないところが面白い。
どれだけ容姿が完璧になっても、オタクで童貞の、キモイ男はキモイのだった。
「人は見た目が9割なんとかかんとか」という流行の本を全否定するような展開は意外性に満ちていて笑えた。
しかし、笑えるのにいちいち真実をついていくる描写が凄いのだ。

主人公はぶっさいくに戻って心の平安を取り戻すことはできない。
バイト先のかわいい女の子も、美人編集者も、トップアイドルも、みんな主人公を振って逃げていく。
そしてゲロ子も・・・。

こんな男はやっぱり女性には嫌なんだろうか。
男として、友だちにいたら面白いんだけど。

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2007年04月28日

巨船ベラス・レトラス<筒井康隆>−(本:2007年38冊目)−

巨船文藝春秋 (2007/03)
ISBN-10: 4163256903

評価:50点

筒井御大の新刊。
図書館で予約待ちもなく借りれてしまうとはどういうことか。
東野圭吾の本は半年待ちだというのに。
お笑い芸人の「劇団ひとり」の本なんて半年+2ヶ月待ちだというのに。
これが御大の嘆く、文学界の現状なのだろうか。

巨船=文学界の中で、御大の怒りはゆらゆらと揺れ動く。
作家や詩人や編集者たちばかりがうじゃうじゃとでてきてはよくわからない言葉を繰り返す。
そのうち彼らの小説の登場人物も次々と登場し、虚構に虚構を重ねた物語は果てしなく続いていく。
独特の句読点の打ち方や、段落を無視した場面転換の連続で、読んでいると非常に疲れる。
内容もなんだか難解。
文字量も多いし、なかなか進まなかった。
最後は疲れて、少々投げやりに読了。
なんだか、もう筒井康隆はいいや、という感じだなあ。

この本に含まれている著者の強烈な毒気を、そんなに面白いと思えなくなってしまった私はもうダメなのだろうか。
仕事で会議資料ばかり作っているから、遊びのある文章を受け付けなくなってしまっているのだろうか。
そもそも、40歳を越えると人間ってそんなものなのだろうか。
そうすると、このオッサンはやっぱり化け物なんだろうか。

そんな無意味ななことをつらつらと考えてしまった。
次は宮部みゆきか重松清でも読もうっと。


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2007年04月12日

ツーカイ!金剛地くん<戸梶圭太>−(本:2007年35冊目)−

金剛地くん徳間書店 (2007/02)
ISBN-10: 4198622884

評価:69点

(ネタバレあります)
ああ戸梶圭太か、どうせまたムチャクチャかいてるんだろうなあと思いながらも、表紙のイラストが昔の少年探偵団風なので、ちょっと興味を持って借りてみました。
戸梶圭太でした。
お下劣丸出しなんでもありのゲロゲロ小説でした。
バリキチ金剛地が傍若無人の天上天下唯我独尊の大暴れ(天上〜ってそんな意味だったか?)。
どう考えてもこんな人間とかかかわりたくない。
でもかかわりたくなくても勝手にこのバリキチは勘違いして攻撃してくるのでやっかいだ。
だいたい、バリキチという言葉自体が放送禁止用語なんじゃないか。
ここは場末のブログだから何でもありだろうけど。

金剛地は新聞記者で2時間ドラマの寸評を書く仕事をやっている。
自らのことを「評豪」などと名づけ、どこにいってもやりたい放題。
自分の文章を盗まれたと言って暴れて逮捕され、その後は記憶喪失で失踪し、そして最後は1950年代の東京に子供の姿で送り込まれるのだった。

まあとにかくスピーディで楽しめます。


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2007年02月20日

ツチヤ教授の哲学講義<土屋賢二>−(本:2007年19冊目)−

ツチヤ教授の哲学講義岩波書店 (2005/12)
ISBN-13: 978-4000013994

評価:75点

まさかこんなに真面目な本だなんて・・・。

いつも馬鹿馬鹿しくも腹がよじれるようなエッセイばかりを書いて私を楽しませてくれる著者が、なぜか突然真面目に哲学の本を書いてしまった。
というか、著者は哲学の大学教授だったのだな。

大学1・2回生を対象とした11回分の講義を、話し言葉のまま文章にしてあるので、いっけんわかりやすいように見えるが実は奥が深い。
奥が深い、などと書くと私がこの本の全てを理解しているように思われるかもしれないがそれは誤解であって、奥が深そうに見えるが私にはその入り口あたりしか見えないのだ。
はっきりえば、難しすぎてよくわからない。

プラトンやアリストテレスやハイデガーやカントやデカルト。
誰もが知っている有名な哲学者の考え方をわかりやすく説明したうえで、「でも、私は違うと思う」と堂々と否定していく。
え?と思いながらも、読んでいると著者の考え方のほうが当たり前で正しいように思えてくるのだ。
最後は、哲学的な問題は全て無意味であって解決できない。それは言葉に限界があるからだ(というような意味に思えたが違うかな?)というウィトゲンシュタインの考え方に整理されていく。
この辺りでなんだかわかったようなわからないような気持ちになり、だから結局哲学とはなんなんだろうと思ううちに本が終わってしまった。

ということで、よほどのことがない限り今後も哲学の本は読まないと思うが(ソフィーの世界でさえ、最後まで読んでいない)、ひとつだけよくわかったことがある。
それは言葉の定義の大切さだ。
全ての議論は、言葉を定義して同じ認識を持つところからはじめないと意味をなさないのだ。
だから誰も私の言っていることにいつも賛同してくれなかったのだ。

明日から定義マンになろうっと。
まずは会議資料の締切という定義に幅を持たせることからだな。

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2007年01月22日

貧相ですが、何か?<土屋賢二>−(本:2007年9冊目)−

貧相文藝春秋 (2006/07)
ISBN-13: 978-4163682907

評価:83点

相変わらず面白い。
著者のエッセイはほとんど読んでいるので、もう何をつかってどんな笑いを取りに来るのか、パターンも読めてしまうのだが、それでも面白いものは面白い。
お約束の芸風は、吉本新喜劇を見ているかのようだ。

自虐的なネタと、著者の周囲のネタだけ。それも妻と助手と学生と、同僚の大学教授たち。彼らとのやり取りを卓越した文章で著して笑わせてくれる。
著者にかかれば、最近のウエイトレス言葉で問題になっている「以上でよろしかったでしょうか」とか「こちら、ヤキソバになります」が見事に肯定されてしまったりするのだ。
「店員の言葉が叱責や恫喝でないだけでも評価できる」
ははは。いつも恫喝されている土屋氏らしい。
「この言葉は相手の意思を聞いているのではなく、以上復唱しました、私は間違っていたでしょうか、とたずねているのだ」
え?
「客の意思を直接聞かず、自分が間違っていたか判断を客に仰ぐ、実に謙虚だ」
と、わけのわからない論理を展開しておいて、妻の小言を全部「●●でよろしかったでしょうか」で逃げ切る戦法につなげていく。

「なんとかしろ、ということですね。それでしたら少々お時間をいただきますが、以上でよろしかったでしょうか」
ムチャクチャだが、面白い。

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2006年12月28日

NHK問題<武田徹>−(本:2006年128冊目)−

NHK問題筑摩書房 (2006/12)
ASIN: 4480063366

評価:79点

もっと生々しいスキャンダラスなNHKが出てくるのかとおもっていたら、きわめて学問的で硬質なNHK論であった。
だが、面白い。
NHKを材料に、公共性の問題、ジャーナリズムの問題などを、歴史的事例を交えてわかりやすく解説している。

公共性という言葉を盾に受信料不払いの罰則化をもくろむNHKではあるが、そもそも政府の強い意向を受け続けてきた歴史のあるNHKに公共性などないことが、事実を積み上げるようにして説明されている。
そして、支配しない、支配されない公共性を形成するための公共放送の必要性につながっていく。

しかし、一回読んでわかったような気になってこのブログでレビューを書き始めたものの、書き始めるとどんどんわけがわからなくなって、読み直すとさらによくわからなくなった。
ということで、難しいことを書いている武田徹氏のサイトはこちら

いずれにせよ、受信料でなりたつ放送だから公共放送だという論理は間違っているのであって、NHKが公共性を形成するジャーナリズムとしての公共放送でなければ、受信料を支払う国民は納得しないということだ。
そして、受信料を払う国民の意見、批判をもっと取り入れる仕組みを作ること、そうでなければいつまでたっても不払いは減らない。まして、強引に強制徴収システムに変えるなどという暴挙は決してあってはならないのだ。
たぶん、そんなことが書いてあったような気がするなあ・・・。

難しいことはどうでもいい。
NHKはとっとと放送にスクランブルをかけてくれ。
NHKがなくなっても俺はまったく平気じゃ。
「功名が辻」も「英語でしゃべらナイト」も「爆笑オンエアバトル」も見なくても平気なのじゃ!(たぶん)
地震が起きればネットで情報を拾うのじゃ!
まあでも、時々はいい番組も流しているので、真面目に頑張って下せえ。
受信料の支払いについては前向きに検討いたします。

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2006年11月09日

壊れかた指南<筒井康隆>−(本:2006年109冊目)−

壊れかた指南文藝春秋 (2006/4/26)
ASIN: 4163248404

評価:85点

壊れています、筒井先生。
こちらのインタビューで、「自分が壊れたかった。自分の文体には飽き飽きしている」などとのたまわっておられますが、それにしては結構計算された壊れっぷり。
面白いけど毒が強く、時折唖然とさせられ、「やりすぎじゃ」とつぶやいてしまう。そんな話が雑多に詰め込まれ、「これでもか、え、これでも壊れへんというか」という光線をあらゆるページから放出しています。

同じ年寄りでも、どんどんと面白くなくなっていき、今では痛々しさばかりが感じられる阿刀田某先生や、完全にボケボケ化してしまい、エロネタしかかけなくなってしまった渡辺ズンイチ先生とはえらい違いです。
自分の力で最後まで地面にたち続けようという、気概がヒシヒシと感じられます。
んん、何を書いているかわからなくなってきたが、俺もたまには壊れたいとおもったりもするのであって、私が書いたはずの金融界を震撼させる一大レポートの行方や、猫になってしまったあいつのことがとっても気になったりするのである。
まあ、なんとかなるのだ、こんな世の中だから。


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2006年10月07日

マスク<堂場瞬一>−(本:2006年98冊目)−

マスク
集英社 (2002/04)
ASIN: 4087753115

評価:66点

(ネタバレあります)
母と自分を捨てて単身メキシコに渡り、ルチャドールとして生涯を終えた父を取材するため、スポーツ記者の主人公はメキシコを訪れる。
主人公の父、「エル・ソロ」が生涯を終えたのは、メキシコシティからバスで5時間もかかるセントロという小さな町だった。

プロレスファンにとっては読んでいて興味深くそして楽しい記述が続く。メキシコのルチャ・リブレが国民にとってはそれほど大切なものになっているとは知らなかった。
ルチャ・ドールの繰り出す技のひとつひとつの説明や、リングやマットの設営の説明も目に浮かんでくるようだ。
しかしそれ以外はなんともストレートで薄っぺらくて思わせぶりでいただけない。
家族を捨てた父親への確執が、遠いメキシコから家族を思っていた父親の気持ちを知るに連れて取り除かれていく。
いい話だがありきたり。
読んでいてイライラしたのは、登場人物たちがみんな大切な話をもったいぶって話さないために中盤で物語が著しく停滞することだ。
それぞれたいした秘密じゃないくせに。
こういう引っ張り方をするなら、せいぜい秘密は一つにするべきだよな。

エル・ソロと自分の関係を語りたがらないディアス。
なぜレスリングを辞めたかを語りたがらない主人公。
自分が嘘つきと呼ばれる理由を語りたがらないミゲル。

アホばっかりか。

特にライバルに負け続けたことを引きずってレスリングを辞めた主人公の独白なんてバカバカしくて聞いていられない。
カタルシスの欠片もないぞ。
素直に自分の気持ちをさらけ出し、日本から主人公を追ってメキシコまでやってきた千夏のほうがよっぽど男らしいじゃないか。

格闘シーンはそれなりにうまい。夢枕獏先生にはかないませんが。
この本って、プロレスに興味がない人はまったく面白くないのじゃないだろうか。
ま、どうでもいいか。

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2006年09月27日

日本以外全部沈没―パニック短篇集<筒井康隆>−(本:2006年93冊目)−

日本以外全部沈没角川書店 (2006/06)
ASIN: 4041305225

評価:82点

(ネタバレあります)
筒井康隆ってやっぱり凄い。

1962年から1976年にかけて書かれた短編11本が収められている。
表題作の「日本以外全部沈没」は、もちろん小松左京の「日本沈没」をパロって付けられた題名だが、これを思いついた時点でもう勝ちだよな。
なんでももともと題名を思いついたのは星新一で、それを筒井康隆に持ちかけたらしいが、ほんまかどうかは知りません。

「日本以外全部沈没」は読めば10分もかからない短編。
最近これを原作として映画ができたらしいが、いったいどうやって映画にしたのか見てみたいものだ。超が付くB級なのは間違いないだろう。

日本以外が全部沈没した世界。
当然世界中の人間が難民となって日本に押しかけてくる。ハリウッドの映画スターも、各国の首脳も、北のお父様もだ。
そこではモラル無視のドタバタが繰り広げられる。
土地と食料がない。カレーライスは5万円になった。クラブでシナトラが歌っている。アーサーミラーがポルノ小説の脚本を書いている。エリザベステイラーが立ちんぼに・・・。

悪ふざけをさせれば筒井康隆に勝てる人はそうはいないだろう。
特にこの短編集は断筆宣言などする遥か前の話であって元気がいい。誰か止めないのかと思うほど好き勝手に書きまくっている。それが痛快でもあり、かつブラックな風刺に思わず感心もしてしまうのだ。
宇宙人だって殺してしまうし、大阪万博に南京大虐殺館を作ってしまうし、やらせで学生運動してしまうし、成金農協を思い切り馬鹿にする。よーやるわ。

テレビ放送の嘘っぱちを茶化した「ヒノマル酒場」や、学生運動を茶化した「日本列島七曲り」と「新宿祭」は最高に楽しい。有名な「農協月へ行く」も収められている。「パチンコ必勝原理」はどこかで呼んだ記憶があるなあ。
誰も怒らなかったのだろうか。
筒井康隆だからなんでもありだったのだろうか。でもそれでいいよね。
リスク管理だとか内部統制だとかコンプライアンスだとか、最近流行の湿っぽい言葉をぶっ飛ばす無法地帯作品群はたまに読むと面白い。
まだまだ頑張ってくださいませ、筒井のおじさま。



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2006年09月18日

ケセランパサラン<大道珠貴>−(本:2006年89冊目)−

ケセランパセラン小学館 (2006/8/2)
ASIN: 4093861706

評価:85点

芥川賞作家の最新作。
予約なんて必要なく、図書館の棚に無造作に置いてあった。
純文学は人気がないんだな。
「国家の品格」は200人待ちだというのに。
(在庫が10冊だから1冊20人、ひとり2週間借りられるから40週か。読むのは1年後になりそうだ。買うか)

でも、こういう本は嫌いではない。劇的な事件は起こらないけれど、淡々とした日常の中の出会いや別れがしっとりと書かれてあり、どこかエキセントリックさを感じさせる主人公たちの喜怒哀楽とその微妙な心理描写は、ところどころでカチリカチリと読むものの心にハマってくる。

文章のすべてが、「そう!そのとおり!」とはならないところがいいのだろうね。
なんとも微妙な緩さを持ったさじ加減とでもいうのだろうか。
おっさんになってくると、そういうものが肌にあってくるのだった。

中身は、若者たちの、実らぬ恋、家族との衝突、将来への不安などを描いた4篇の小説と16篇の詩。
主人公たちはささやかな毎日に対して、たくさんの悲しみとちょっぴりの幸せを感じて、人生の序盤戦を乗り切ろうとしている。
緩やかに書かれていても、著者の描く若者たちはやっぱり若者で、読み終わると彼らのエネルギーをいつのまにかたっぷり浴びている自分に気づく。
これは著者からのエネルギーでもあるんだよな。さ、頑張ろう。

19歳の剣が実家を出て一人暮らしを始める「剣のこと」が一番好きかな。
「ああ、おなかが破裂しそう。はさみでチョキチョキ切ったら、子ヤギがでてくるくらいよ」って、読んだ瞬間はこれどっかで使おうと思ったが、よく考えたらオッサンにはどんなシチュエーションでも無理だ。いや禁止だな。

ケセランパサランは、妖怪のようなケダマのような生物のような、そんなものです。
ネットで検索するとわんさかヒットする。
白粉食って増殖するって、それはやはりないでしょう。

あ、大道珠貴って同い年だ・・・。

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2006年08月25日

銀齢の果て<筒井康隆>−(本:2006年78冊目)−

銀齢の果て新潮社 (2006/1/20)
ASIN: 4103145285

評価:85点

筒井康隆も70歳を越えた。
70歳を越えたからこそ、老人が殺しあうこんな小説を嬉々として書くことができるのだろう。
ネタ的には「バトルロワイヤル」の老人版だが、内容は完全にコメディだ。高齢社会の日本に問題提起をしているようでしていないようでよくわからない。豪快な悪趣味さと、思わずニンマリしてしまうコミカルな描写と、昔風に言えば、まさにエログロナンセンス炸裂のスラップスティック小説。
高校生のころに読んだ「俗物図鑑」を思い出した。
あれは映画化されたんだよね。見た覚えがある。
山城しんごが出ていたなあ。
なんて映画を見ているんだ俺は・・・。

「俗物図鑑」に比べれば、多少常識的になっているかもしれないが、それでも十分にメチャクチャで面白かった。
豊富な人生経験を持つ老人たちばかりが登場人物だから、キャラ設定がつけやすいのだろう。妙に感情移入してしまう老人が多かった。生にしがみついて子供たちを盾にしようとする老人には怒りをおぼえてしまったり。
まさに老醜、今の日本にはよく見られる光景ですな。

笑って最後まで読んだものの、この国の老人問題は実は笑って済ませられるものではない。
国民年金法や厚生年金保険法は「100年大丈夫」なんて言ってるけど、絶対に当てにならないもんね。
だいたい、あと10年20年で死んでしまうような連中が作る制度が、ずっと機能するわけがない。「当面は大丈夫だけど、その後は君らで適当にやってくれ」という考えで制度を作っているに違いない。
俺もしっかり自助努力だ。
50万の資金を株で1億にしておくのだ。


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2006年08月15日

優雅で感傷的な日本野球<高橋源一郎 >−(本:2006年75冊目)−

優雅で感傷的な日本野球河出書房新社; 新装新版版 (2006/6/3)
ASIN: 4309408028

評価:69点

「新装新版版」って、別に誤植ではないようです。
新版を新装した版です、ということなのでしょう。
よくわからんけど。
1988年、著者はこの本で第1回三島由紀夫賞を受賞している。
ということで、いわゆる名作であるらしいが、本屋で手にとって中を見もせずに買ってしまうまで全くそんなことは知らなかった。
ノンフィクションに近い野球小説だと思っていたのに。

中身もよくわかりません。
大体、三島由紀夫を読んだことのない私には理解できないものなのでしょうか。
わからない、からと言って面白くないということではない。
そこに書かれているのは野球ではないけれど紛れもなく野球だから。
野球を知らない人たちが語る野球であったり、やけにシュールで幻想的な野球の試合であったり、ううむ、結局なんなんだといわれれば、野球という観念が文字になったものとでも言えばいいのだろうか。
やっぱりよくわかりませんわ。面白いけど。

今週号のナンバーは野球特集。うれしいね。
先週は格闘技特集だったし、ここのところずっとサッカーだったので買う気が起きなかったが、ちゃんとバランスを考えているようだ。
さて、来週はなんだろうか。
オシムジャパンか、残念だが。

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2006年06月24日

いつか白球は海へ<堂場瞬一>−(本:今年59冊目)−

いつか白球は海へ集英社(2004/4)
ISBN : 4-08-775335-2

評価:88点

社会人野球版「キャプテン」。
ちばあきおの名作「キャプテン」では、名門青葉学園から墨谷二中に転校してきた谷口君が、人一倍の努力を重ねに重ねて、墨谷二中を地区予選決勝戦まで引っ張っていく。
この本では、12年前に全国制覇を遂げてからはすっかり落ちぶれてしまった間島水産という社会人野球チームに、六大学で活躍したのちにプロ野球を蹴って海藤が入団してくる。

負けて当たり前のやるきのないチームで、ひとり孤軍奮闘しながらなんとかまた後楽園球場で行われる全国大会に行きたいと頑張る海藤。

中学生たちが主人公だったキャプテンと違い、そこは社会人野球だから大人の事情がそこかしこに存在する。
海藤自身の恋愛もそうだし、誰もが事情を語ろうとしない主砲三浦の離脱や、ちんぴらと夜毎につるむかつてのエース、伴の堕落した生活。高校時代からの知り合い伊東は肩を壊していた。

空回りしていた海藤の頑張りが少しづつチームに浸透し、間島水産はチーム解散の危機を脱するために全国大会出場を目指してスタートを切る。

著者がスポーツ経験者だけあって、野球の描写も違和感が全くなく、微細な点までリアルである。
物語の最初ではあまりに打ちすぎて浮いてしまっていた海藤も、途中で怪我をしてしまい、苦しみながら試合にでることで人間らしい存在になっている。
こういうスポーツものは、いくつもの障害や挫折を乗り越えてこそ、最後の感動が大きくなるものだ。

全国大会出場をかけた最後の試合、1点リードされた最終回の攻撃で三浦が5年ぶりの打席に入ったときにクライマックスを迎える。
いい場面だった。
そして見事な結末だった。

時代設定は昭和40年。時代の風俗をもうちょっと書き込んでくれれば面白かったのかもしれないが、それはたいした問題ではないだろう。

やっぱり野球はええのう!

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2006年06月03日

天才パイレーツ<戸梶圭太>−(本:今年52冊目)−

天才パイレーツ朝日新聞社 ; ISBN: 4022579145 ; (2004/04)

評価:71点(100点満点)

ある分野では天才だが、人間として社会的に不適合な子供たちを集めた船上セミナーで繰り広げられる、ドタバタスプラッタエログロSFコメディ。
昔の筒井康隆を少し思い出した。

なんでもありです。
放送禁止用語がでずっぱり。
スプラッタ描写もでずっぱり。
荒唐無稽な展開が勢いよく続いていくうちに、もはや著者も収拾がつかなくなってしまったようなもの。
というよりは収拾がつかないことを計算したうえで無軌道に筆を滑らせた小説なのかもしれない。
船の上のできごとだから、沈めてしまえばハイオシマイっていうのも、かなり凄いご都合主義で、そこらへんの落ち着きどころだけは決めてあったのだろう。

気になったのは、カタカナでつづられる英語のセリフが読みにくくてうっとおしいのと、登場人物が多すぎて、それぞれのキャラが薄くなってしまうこと。
それを除けばこういう馬鹿馬鹿しい小説も結構好きだったりするのだ。

何年か前、ネットで知り合った友人たちと、掲示板を使って自由連作小説遊びなんかをしたことがある。書き込む人は、それぞれが次々と無軌道に話を膨らませ、無茶な展開に無理矢理つなげ、登場人物が突然増えたり死んだりしたものだ。
なんだかそれに似ているよなあ。

片手片足頭なしの怪物に襲われるのは怖いし、血混じりの胆汁や胃液や腸液も浴びたくないもんだ。



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2005年09月23日

薔薇ホテル<つかこうへい>−本を読んだ(今年59冊目)−

薔薇ホテル角川書店 ; ISBN: 4048729624 ; (1996/04)

評価:79点(100点満点)

出版社/著者からの内容紹介
“あの人を愛し、そして、踊り続けた私の人生”美智代は十九歳で神田の小さな印刷屋に嫁ぐ。が、夫の会社が倒産。生活のために勤めに出た役所で伊達に出会い思いをよせる。それがエスカレートして……。
*****************************

主人公美智代の一人称で最後から最後まで完結する。
読み終わった最後には、これはすべて主人公の妄想だったというラストもありだなと思えるほど、なんとも幻想的で不思議な雰囲気の小説だった。

通産省の将来あるキャリア(もちろん妻子持ち)に恋した主人公は、ブレーキを持っていない色キチガイのように怒涛の勢いで彼に迫り、見事にその愛を勝ちとる。
電車の中で痴漢呼ばわりしたり、深夜の職場で勝手に服を脱いだり、それはもうめちゃくちゃ。今ならストーカーで一発逮捕の酷さだ。
彼の机の下に忍び込み、そこで日中をすごすなどという発想も凄いもんだ。

淡々と続く文章の中に秘められた、主人公の激しい感情がしっかりと読者に伝わる。
日経新聞でバカエロ戯言を書きなぐっているズンイチ先生に読ませてあげたいものだ。
この小説、映画化されています。
しかも製作が・・・。こんなことしとったのか、知らんかった。


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2005年07月01日

本を読んだ-粗忽拳銃<竹内真>-

粗忽拳銃集英社 ; ISBN: 4087744493 ; (1999/12)

評価:83点(100点満点)

1999年の第12回小説すばる新人賞受賞作品。
著者は1971年生まれ。うーん、俺より5歳も下だ。
落語家の天馬、映画監督の時村、俳優の広介、ライターの可奈の物語。
といっても4人とも見習い駆け出しのペーペーたちばかり。悩み苦しみ、夢の実現のために必死に生きている若者である。
彼らが、偶然に実弾の入った拳銃を拾ってしまい、またそれを繁華街で発砲してしまったことから騒ぎが大きくなっていく。
臭い青春小説に、拳銃という非日常を絡ませて、面白く読みやすい内容に仕上げている。4人のうちの一人が落語家っていうのも、軽めの内容にうまくマッチしてるんだろうな。
といっても根っこは青春小説。
やりたいことと現実を常に天秤にかけながら、精一杯生きていく姿はぐっとくるのだ。

「俺ぁ、根拠のない自信ってのが一番大事なんだと思うぞ」
「だって、根拠がなけりゃ仕方ないでしょ」
「自信さえありゃ、根拠なんて後からついてくるんだよ」
「それじゃあ順番が逆じゃない」
「んなもん、先も後もあるか」

学生時代、根拠のない自信でなんでもかんでもやりとおしてしまう先輩がいた。
懐かしいなあ。
みんな無茶なガキだったけど熱かった。
よし、俺ももうちょっと頑張ろう。
そんなことを思いながら、青竹踏みに精を出すのだった。健康一番。

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