本:な行の作家

2011年09月03日

ルシッド・ドリーム<中島さなえ>

ルシッド・ドリーム
ルシッド・ドリーム
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出版社: 講談社 (2011/4/19)
ISBN-10: 4062168472

内容(「BOOK」データベースより)
オフィス街の小さなビルの一室で、夜な夜な不思議な講座が開かれている。老若男女、職業もさまざまな人々が甘い蜜に誘われるようにそこにはやってくる。彼らの願いはただ一つ、楽しい夢の中で永遠に暮らす方法を身につけること。ここは、夢を我がものにし、現実をすてるための学校、ルシッド・ドリーム・スクール。うるさい家族、めんどうな恋人、すべてを捨てれば有り余るほどの幸福が受講生たちを待っている。悲しくもおかしい、怖いけれど魅力的な物語の始まりだ。

*****************************
なぜか超楽天的な性格に生まれ、そのままのびのびと超楽天的な性格を馬鹿みたいにはぐくんできた私は、現実の世界がとても大好きで、夢の世界で暮らしたいと思ったことはほとんどない。
そうはいっても、この歳になると、残りの人生でやれることは限られているのが明白。この小説のように自由に夢を操ることができれば、それはそれで楽しいだろうなあ。

中島さなえの書く小説であるから、単純にホノボノとした夢物語で終わるわけはなく、耐えきれないほどの痛みや悲しみを伝えてくる話や、いったいどこに連れて行かれるんだろうという不安や恐怖を与える話が次々出てくる。
そして読む者を決して飽きさせないエンタメ魂も炸裂。ううむ、面白い。
本人は嫌がるかもしれないが、故中島らもの血は、確かに、さなえ氏に受け継がれているようだ。

ちょっと毒気は少ないけれど、「奈落の赤獅子」がよかった。


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2011年02月05日

背中の記憶<長島有里枝>-本:2011-9-

背中の記憶
背中の記憶
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# 出版社: 講談社 (2009/11/20)
# ISBN-10: 4062158965

写真家、長島有里枝さんのエッセイ集。
エッセイというよりは秀逸な私小説。
子供の頃の記憶を、ひとつひとつ丁寧に掘り起こし磨きあげて配置し、郷愁やもどかしさや切なさを隙間にたっぷり詰め込んで作り上げた作品ばかり。
書き始めてから本になるまで4年かかったというが、それが納得できる密度の濃い内容だった。

表現者として秀でている人は、それが写真であれ文章であれ、見る人、読む人の心を揺さぶるものだ。

(「あとがき」より)
わたしが撮ってきた膨大な量の写真には、同じような構図の似
たイメージが何種類か存在する。初めての場面に懐かしさを感
じるのは、それが昔見た愛しいものの後姿を追いかける作業だ
からかもしれない。それらの元になっている記憶、撮り逃がした
ゆえに永遠に脳裡に残ることになったイメージを、なんとか現
像できないだろうか。しかし過ぎたものを写真に残すことはでき
ない。けれども文章なら再現できるのではないか。そう思ったこ
とが、この本にまとめたはなしを書くきっかけになっている。



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2010年11月21日

いちにち8ミリの。<中島さなえ>-本:2010-56-

いちにち8ミリの。
いちにち8ミリの。
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# 出版社: 双葉社 (2010/8/10)
# ISBN-10: 4575237035

評価:85点

大好きだった故中島らも氏の娘さんのデビュー小説。
とても優しいロマンとファンタジーに溢れた作品。それでいてエンタメ性もたっぷりあって面白い。
さすがです。

手裏剣を使う本物の忍者が現代によみがえったり、亡くなった祖父の同級生が木の上から話しかけてきたり、石が毎日8ミリずつ動いたりという幻想的な要素を、下世話な日常とうまく組み合わせているところなど、らも氏の小説とオーバーラップする。
特に表題作で、坊主の源信が石が元通りに動く仕掛けを作って人を騙すところは、「ガダラの豚」へのオマージュなのだろうか。
忍者がでてくるところも、山田風太郎が好きだったらも氏の影響のように思える。

これから書かれる作品にも、らもさんの影響が見え隠れするのだろうか。それが楽しみでもある一方で、これだけ才能のある人なのだから、父親の影響を全く感じさせないようなジャンルの作品を書いてほしいとも思う。
そうそう、らも氏はトリックを思いつかないから推理小説が書けないと言っていたなあ。
中島さなえ氏の「密室殺人解決に挑む本格推理小説」というのが出ないかな。
それをらも氏に読ませて感想を聞いてみたいものだ。

次の作品を楽しみにしています。
ガンガン書いてくださいっ!

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2010年10月30日

すれ違う背中を<乃南アサ>-本:2010-51-

すれ違う背中を
すれ違う背中を
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# 出版社: 新潮社 (2010/04)
# ISBN-10: 410371011X

評価:77点

内容(「BOOK」データベースより)
「過去」の背中に怯える芭子。「堀の中」の体験をいまだ不用意に口走る綾香。しかしやっと、第二の人生が、ここ谷中で見えてきた二人だった。コトが起こったのはちょうどそんな頃。二つの心臓は、すれ違った彼らにしばし高鳴り、しばし止まりかけた。ムショ帰りコンビのシリーズ、大好評につき第二弾。

**********************

先月、実家に帰省した際、母親と近所を歩いているときに母親がある家をそっと指差してこう言った。
「ちょっと前にスナックか何かに火をつけた殺人事件があったやろ。その犯人がこの家の親戚なんやって」
私は、「ふうん」と相槌を打っただけで特にコメントしなかったが、世間の犯罪者に対する厳しい目を改めて感じた。
私の母親には決して悪気はないだろうし、おそらくその家の人たちに対して差別的な発言や態度を示したりしていないはずだ。
もちろん、親戚の犯罪であって本人たちには罪がないのだから当たり前の話のはずなのだけれど、それでも噂は面白おかしく世間に広がる。
ひょっとしたら、その家の男の子は好きになった女の子のお母さんからは快く思われないかもしれない。
被害者の気持ちを逆なでするつもりはないが、なかなか難しく微妙な問題だ。

ということでムショ帰りの二人が主人公。
法によって裁かれ、定められた罪を刑務所で償っても元通りにならないものは多すぎる。
それに対する意見を声高に叫ぶのではなく、不自由な現実を受け入れて、日々不安を感じながらもなんとかまともに生きて行こうとする二人の姿を淡々と書いている潔さが、乃南アサらしくていい感じだ。

「いつか陽のあたる場所で」の続編。
そういえば、他の小説で主人公の警察官もでてきます。

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2009年09月23日

この世には二種類の人間がいる<中野翠>−(本:2009年)−

この世には二種類の人間がいる
この世には二種類の人間がいる
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# 出版社: 文藝春秋 (2007/03)
# ISBN-10: 4163689702

評価:78点

初めて著者のエッセーを読んだが、結構面白かった。
二分法自体が世の中をいい加減に分断しているから話が極端になって面白いのだが、その分断する視点が独特で興味深い。
自分がいったいどちらに入るのかを考え、著者の考えに膝を打ったり反駁したりしながらサッと読み終えてしまう。
失礼な言い方だが、銀行の窓口で順番待ちをしているときに読むくらいにはちょうどよい。没頭して番号や名前を呼ばれているのが聞こえなくなるということもないでしょう。

読んでいて少し酒井順子を思い出したが、あちらよりは少し高尚というか文学的な香りがする。少しだけれど。どちらがいいかは好みの問題でしょう。
機会があればもう少し著者の本を読んでみよう。



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2009年09月14日

カウント19<永田俊也>−(本:2009年)−

カウント19
カウント19
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# 出版社: 講談社 (2007/4/6)
# ISBN-10: 4062139936

評価:82点

著者のことは聞いたことも見たこともないが、先日図書館の棚をゆっくり眺めながらうろついていて(私にとっては至福の時間)、偶然目に留まったのがこの本だった。
カウント19。
昭和からのプロレスファンであれば、だれもがその数字を目にしてニンマリしてしまうだろう。
平成のプロレスではめったに目にしなくなったカウント19。
カウントアウトギリギリのリングアウト勝である。

両軍入り乱れての大乱闘とか、客席になだれ込んでの大騒ぎの末のリングアウトなんてハッスル以外ではめったに見なくなってしまった。いや、インディなら時々やってるかな。
そういえばジャイアント馬場が「決着は必ずリングのうえで付ける」とか言い出してからリングアウト勝ちとかなくなってしまったんだっけ。
当時は私もそのとおりだ!と思ったものだが、今になってみればそんなノラリクラリした戦いと不透明な決着こそがプロレスというジャンルを生き延びさせていたのではないかと思う。
白黒はっきりつけるのならば、人は総合格闘技やK-1に向かうのであって、誰もプロレスを見なくなってしまうのはわかっていたことだ。
それにしてもどこまでも続くプロレス界の不人気はどうしたものか。
なんとか頑張って欲しいものだ。

ストーリを書くのを忘れていた。
弱小プロレス団体・亜細亜プロレスの42歳悪役ヒール・キムが主人公。
老舗のプロレス団体(明らかに新日本がモチーフ)と、ひょんなことから東京ドームで全面対抗戦を行なうこととなる。
勝ち目のないその大会で、偶然キムが相手のエースを倒してしまったことから話はややこしくなる。

弱小団体の経営難の話、大手と中小の露骨な力関係などは、リーマンショックから立ち直れない日本の中小企業の姿を思い起こしてしまい読んでてつらくなるが、現実はこんなもんなんだろう。

最後の試合のキムの技?は凄い。
いやーすっきりして感動できた。最後はもちろん題名どおり。

対抗戦って、私が小学生のことは新日本VS国際プロレスだったし、社会人の頃は新日本VSUWFインターだった。
どっちもマジメに興奮したもんだ。

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2009年08月26日

暗鬼<乃南アサ>−(本:2009年)−

暗鬼 (文春文庫)
暗鬼 (文春文庫)
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# 出版社: 文藝春秋 (2001/11)
# ISBN-10: 416765203X

評価:79点

しばらく図書館で本を借りていなかったので手元に未読の在庫がない。
さて、会社に出かけるにあたってどうしようかと本棚を見渡し、題名から内容が全く思い出せなかったこの本を手に取った。
乃南アサだし、はずれはないだろう。そう思って電車に乗ってから読み始めた。
確かに読んだことはある。
それだけはわかったのだが、結局最後まではっきりとは思い出せないまま読み終わってしまった。
決してインパクトの薄い本ではないと思うのだが、家族と新興宗教と麻薬とマインドコントロールなどを組み合わせた、オドロオドロしく不健康な世界観を記憶することを、脳が自然と拒否したのかもしれない。

文庫になる前、1993年に出版された内容だ。
だからと言ってはなんだが、今なら携帯電話やパソコンの力で、法子はこの家族の罠に絡めとられる前になんとか助かったのかもしれない。
いや、そんなもので助かるほど甘くないか。

8人家族のもとに嫁いできた法子。
法子を迎える家族の優しい態度に安心したのもつかの間、店子が引きこした一家心中事件についての小さな違和感が、やがて大きな不信感へとつながっていく。
このあたりの書き方は非常にうまく、何かにつけて法子の「意識過剰」をアピールしているため、実は法子が異常で、家族はマトモなのではないかと読者に思わせている。
そして、中盤から後半にかけて著者の揺さぶりが始まる。
徐々に異常な世界に法子を引き込む様子を読んでいると、私自身が、危うい新興宗教の世界に引きずりこまれていくようだ。

幻覚サボテン(ペヨーテ)を含めて様々な幻覚作用物質が登場するが、読んでいると中島らもを思い出した。
アマニタ・パンセリナをまた読んで見たいような、そうでないような。

エンディングに向けて、嫌悪感が増していくような内容になっていくが、不思議とその異常さが理解できてしまうのが少し怖かったりもするのだった。
異常もずっと続けばそれが正常になってしまうからなあ。

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2009年04月19日

100回泣くこと<中村航>−(本:2009年41冊目)−

100回泣くこと (小学館文庫)
100回泣くこと (小学館文庫)
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# 出版社: 小学館 (2005/10)
# ISBN-13: 978-4093861540

評価:67点

随分と前に出版された本だったのだなあ。
最近の新聞の広告欄を見て、図書館で予約して借りたのだが、なるほどすぐに順番がまわってくるはずだ。

主人公が育てた犬(ブック)が、死にそうだという電話が実家から入る。
離れた実家にいるブックのもとに帰るため、主人公は昔ブックとよく一緒に乗っていたバイクをひっぱりっだし、そのメンテナンスを始める。
そんなところから物語が始まり、バイクのメンテの途中で主人公の彼女も登場する。

バイクの描写は結構専門的で、メカ好きの男ならそのあたりに引き込まれたりするかもしれない。
だが、その他は極めて淡々としたそして静謐な描写が続く。
だからといって、感情が伝わらないということはなく、主人公とその彼女の誠実な人柄と真摯な行動、そして胸いっぱいの感情はしっかりと読み取れる。
読んでいて決して悪い気はしない文章だった。

だがまあ、彼女が熱を出した時点で結末は容易に想像できるし、あまりにも盛り上がりに欠けていてなんとも物足りない。
もう少し、読者の感情を揺さぶるような展開とか、シーンはできなかったのか。
「決して開かない箱」のお守りだとか、バイクへのこだわりだとか、著者の思いを随所に込めようとしているのだろうなとは思うけれど、もう少し読者の感情を揺さぶる展開にしてもよかったように感じた。
登場人物が若いわりには人間として出来上がりすぎているということもあるのかも。

1時間あまりでさらりと読み終え、ああそうですかと終わってしまった。
感性の瑞々しい若い人はともかく、私のような汚れたおっさんにはあまり向いてないでしょう。

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2009年04月12日

超「超」整理法<野口悠紀雄>−(本:2009年40冊目)−

超「超」整理法 知的能力を飛躍的に拡大させるセオリー
超「超」整理法 知的能力を飛躍的に拡大させるセオリー
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# 出版社: 講談社 (2008/9/18)
# ISBN-10: 4062149486

評価:70点

「分類するな!」というメッセージに非常にインパクトがあり、かつ「押し出しファイリング方法」が自分にとってもかなり有効だった前作と比較し、今回のGmailを活用した集中管理検索抽出方法とでもいうような整理法は若干インパクトにかける。
なにより著者が自ら書いている通り、普通の企業ではウイルス対策や情報漏えいの問題から社外とのネットワークに制限を設けているところが一般的であり、とてもGmailに情報を集中させるなんてことはできないのだ。
私の勤める会社でも、Gmailは利用できないし、Gmailの自分のアドレスにメールを送ろうとしても全て上司のチェックが入る。
ファイルを添付したときにはパスワード設定が必要だし、そもそも会社で作成したファイルを自宅に持ち帰ったり送ったりすること社内規程違反だ。
ということで、著者の掲げるような今回の整理法は、現在の日本のサラリーマンにとっては現実味が薄いとしかいいようがない。
ただ、メールを蓄積して自分のデータベースとして仕事に活用していくというのであればそれは既に実施済み。
先月同時期のメール、一年前の同時期のメールを使ってルーティン業務はこなしていける。
でもそんなことは誰でもやってるんじゃないだろうか。

もうひとつ言えば、終盤は「勉強」に対する著者の持論紹介のような内容だった。
それはそれで面白かったが、「整理法」の話ではなかったぞ。

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2009年01月04日

窓の魚<西加奈子>−(本:2009年3冊目)−

窓の魚
窓の魚
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# 出版社: 新潮社 (2008/06)
# ISBN-10: 4103070412

評価:83点

内容(「BOOK」データベースより)
秋のある日、二組のカップルが山の温泉へ向かう。一緒にいるのに遠い四人にまとわりつく、猫の鳴き声と不穏な影。裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。大人になりきれない恋人たちの旅の一夜を美しく残酷に描いた長編。

ナツとアキオとハルナとトウヤマ。
4人の視点で、温泉旅行の様子が繰り返し描かれる。
同じ旅行に参加しているというのに、4人の考えていること、感じていることのズレがこれでもかというくらい強烈だ。
同じ時間を異なる目線で読み返すたびに、4人の関係について、また4人のキャラクターについて新しい発見が増えていき、位置関係が修正されていく様子はなかなか面白かった。
さらに、4人の独白の間に挟まれている、同じ宿に泊まった客、宿の従業員、そして宿の女将の章もいい感じのアクセントにもなっていて、宿で何が起こったのかを教えてくれる。

読みながら学生時代に聞いた話を思い出した。
哲学の初級講座だったか、それとも哲学を専攻している先輩が酔った席でなんとなく話してくれたことだったか。

人の心の中というものは自分自身では決してわからないものだ。
他人と交わり、他人という鏡に映って初めて、人は人間としての存在を人間社会の中で認められる。
「違う、私は怒っているのだ」とあなたがどれほど思っていても、あなたと関わっている全員があなたが悲しんでいると思えば、その社会の中ではあなたは悲しんでいるのだ。
「誰も本当の私のことをわかってくれない」のではなく、他人という鏡に映っているのがあなたの本当の姿なのだ。

というような話だった気がする。
そうか?と思う部分もあるが、それは私の記憶の問題であって、哲学的にはもっと洗練されたフレーズになってこの事象は説明されているだろう。ということで、細部はともかくそのようなことを思い出させる小説だった。

救いやカタルシスのある小説ではないけれど、こんな感じの話は決して嫌いではない。
読みながらいろいろ考えさせられるのも読書のひとつのパターンとして悪くないのだ。

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2008年10月01日

ミャンマー―失われるアジアのふるさと<乃南アサ>−(本:2008年131冊目)−

ミャンマー―失われるアジアのふるさと

# 出版社: 文芸春秋 (2008/06)
# ISBN-10: 4163701400

評価:82点

大学生の頃、サークルの仲間と憂国の士をきどって国際政治経済ゼミなるものを自主的に立ち上げ、世界の様々な出来事を調べては深夜まで拙い激論を交わしていた。
そのうち酒が入って毎回支離滅裂になっていったりしたのだが、バカなりに理想を熱く語ったりしたものだった。
そのうちの一人が、3回生のときに大学を一年休学し世界放浪の旅に出た。
その行動力にも驚いたが、帰ってきたときの彼の言葉には考えさせられた。
「軍事政権の国、社会主義の国などいろいろな体制の国があり、また工業化の進んだ先進国があり開発途上国があり、絶え間なく民族紛争をしている国もある。戦争をしている国だってある。俺たちは日本で得られる情報をもとにその是非を論じているけれど、そこに行ってみると、どんな場所でも人間は普通に一生懸命生活していてかわりないんだ。もちろん彼らが普通に生活しているから、彼らの国にも問題もないという局地的な視点は誤っているのだろうけど、一方的にこちら側の視点だけで彼らのことを「あの国は・・・」とひとまとめにして論じるのも間違いだ。世界っておもろいけど難しいぞ」というような話だったように記憶している。
んー、たぶんだが。

乃南アサがおとづれたミャンマーという国。
軍事政権の国で、スーチー女史は軟禁されており自由なんてどこにもないように思える。
でも、行ってみると、いろんな顔が見れる。
乃南アサの比較的淡々とした文章が、ミャンマーでも人間が笑い泣き食べ眠りながら生きているのだという当たり前のことを、しっかり味あわせてくれた。
この本を読んだからといって特にミャンマーに行きたいと思いはしなかったけれど、そこに生きる人たちに対して「お互い頑張りましょうよ」という気持ちになった。
最後の最後、若い僧侶が政権批判ともとれる意見を語っている。
みんなが同じような思いを抱きながら口にすることができないとしたら悲しいことだ。
これは別の友人の言葉だが「宗教は世界を変えることができない」というのを思い出した。
世界はまだまだ難しい。

書き忘れていたが、写真がいい(坂斎 清)。
こんな写真を撮りたいものだ。

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2008年09月08日

ゆれる<西川美和>−(本:2008年119冊目)−

ゆれる

# 出版社: ポプラ社 (2006/06)
# ISBN-10: 4591093034

評価:94点

まだ30代前半の著者は映画監督で、この「ゆれる」はもともと映画作品。
2006年度の日本映画界で賞を獲りまくった作品を、監督自らがノベライズしたのがこの本だ。

凄い本だった。
人間の心の底には何があるのか。どれが本当の思いなのか。
読んでいるうちに自分の性格や考え方だけでなく、その存在そのものさえも信じられなくなり、不安定でグラグラした揺れる大地に放り出されたような不安感が生まれてくる。
昨夜読み終えたのは深夜1時ごろだったが、このままではきっと眠れないと思ってメラトニンの助けを借りました。
それほど精神のバランス中枢みたいなところを揺さぶられる作品です。
「ゆれる」っていう題は、ほんと巧い。

実家を飛び出し東京でカメラマンとして活躍する弟と、実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。
母親の法事のために久しぶりに弟が実家に帰ってきた次の日、兄弟は幼馴染の女性と3人で車で遠出する。

この遠出で、女性がつり橋から転落死してしまう。
事故だと思われていた転落死を、兄が自分の殺人だと自首したことから、話は急展開する。
誠実な兄と奔放な弟。
ステレオタイプに見えるこの設定は途中からドンドンと変質していく。
何が本当で何が嘘なのか。
どれが本当の兄弟の心なのか。
いや、本当などという言葉は心を表すにはふさわしくない。
人の心なんて簡単に分析できうるわけもなく、兄の心も弟の心も、右へ左へと揺れながら、お互いの人生と相手の人生を翻弄していく。

私は3人兄弟の長男で妹が二人。
故郷には父母が健在しており、一緒には住んでいないものの妹二人がいろいろと面倒を見ている。
日頃はそんなことも考えてないのに、妹たちの心の底にあるものを考えるとちょっとぞっとした。

映画はオダギリジョーがでているらしい。
これは見てみるしかなさそうだ。

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2008年05月11日

本は10冊同時に読め!<成毛眞>−(本:2008年69冊目)−

本は10冊同時に読め!―生き方に差がつく「超並列」読書術 本を読まない人はサルである! (知的生きかた文庫 な 36-1)

出版社: 三笠書房 (2008/1/21)
ISBN-10: 4837976913

評価:63点

とにかく本を読め、何はともあれ本を読め、一度に10冊読め、どんどん読めという読書教の経典のような本。
しかし、著者が教祖様だとすれば、読書教の中でも結構異端っぽいカルトな軍団かもしれない。
書いていることの半分以上は納得できるものの、なんだかとても大切な部分が大きく抜け落ちている。
「本を読まない人はサルである!」と言い切る傲慢な視点はまだしも、「支配者となるために本を読め、そうでなければいつまでたってもお前は「庶民」だ!」というところまでいくとなんだかこちらの気持ちも萎えてくる。
庶民のまま埋もれていきたいとは思わないし、まだ人生に対する野心だってあるけれど、読書はそれだけのためではないと思うのだ。

元日本マイクロソフトの社長という成功者の言うことであるから、それなりに説得力はあるのは確か。
しかし、本を愛するひとりの市井のものとして、社会的ステイタスをあげるための読書をあまり強調してもらいたくないもんだ。

お金がないので、とりあえず著者のように本を一度に10冊も20冊も買えません。
私は日曜図書館通いのおっさんです。
自宅に数万冊の本っていうのは、憧れはしますけど。

ま、でもやりますよ。並列同時進行読書。
というかこれぐらい本好きなら普通にやってることではないのか?

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2008年02月10日

仕事の道具箱<中島孝志>−(本:2008年22冊目)−

仕事の道具箱 (青春文庫)


出版社: 青春出版社 (2006/06)
ISBN-10: 4413093437

評価:75点

ビジネス本も適度に読むようにし始めたが、楽しみのタメというわけでもないので、キーワードをまとめて備忘録にすることにした。
この本は、およそビジネス本で現在語られている仕事の手法をずらりと並べて紹介している。
一項目見開きの2ページ完結。
したがって内容が結構スカスカだが、こんな考え方がちゃんとあるんだということが認識でき、出典も紹介されているのでその気になったときに手がつけやすい。
なかなかいいのではないだろうか。

ということで、私が気になった部分のみ抽出。
やっぱり早起きが必要かなあ・・・。

1.段取り
・エレベータープレゼンテーション(言いたいことは全て3行でまとめる)
・完璧理解−ステップアップ法(どこでわからなくなったかを確認、段階を踏んできちんと突破)

2.時間
・ニッチタイム活用法(10分刻み)
・「すぐ始める術」(速く仕事をするには早く始めればいい)
・時間・範囲分割集中法
・朝時間の最適活用

3.情報
・メモる技術

4.アイデア
・マンダラート(3×3マス穴埋め方式)
・マインドマップ(トニー・ブザン)
・図解思考(アイデアは図にすることによって大きく膨らむ)

5.頭がいい
・六つの質問力(問題発券の基本は何と言っても質問)
・ロジックツリー
・散布図法(とにかくグラフにすることで関連性を探る)
・ドーナツシンキング(やりたくないことのなかに核心がある)

6.決断
・ゴール(とにかく最終結果を頭に描いて決断すること)
・カン(一度決心したら、後は自分を信じてぶつかってみよう)

7.言葉
・ロジカルトーキング
・養老先生(具体的に言う)

8.売れる
省略

9.癒し
省略

10.成功
・マネ(獲得すべきスキルを身につける最も簡単な方法)



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2008年01月09日

おどりば金魚<野中ともそ>−(本:2008年6冊目)−

おどりば金魚

出版社: 集英社 (2007/07)
ISBN-10: 4087753794

評価:85点

東京の古いアパートの階段の「おどりば」を舞台にした連作短編集。
初めての「野中ともそ」だったが、結構よかった。というかかなりよかった。
「野中ともそ」については、あまりにも知らないのでちょっと調べてみたら、こんなインタビューがあった。
「ともそ」なんて言われたら性別もよくわからないじゃないか。

インタビューの中で、「野中ともそ」が、登場人物たちのことを「みんな不器用だから、やさしさや思いやりをうまく表現できなくて、すれ違ってしまう。」と言っていたがまさにそんな感じの小説だった。
そりゃ、著者が言っているのだからあたりまえか。
やさしい人たちばかりが登場するのだが、どこかうまくかみ合ってなくて現実からゆるりと浮揚した感じの展開。
こういう「半純文学、半エンタメ」みたいなものは好きなのではまってしまった。
「ゲイ」になって新宿で「おかまバー」を開いている息子の敬太郎と、それを許すことのできなかった父親の太田さんの話はちょっとしんみりしてホロリときていい感じだった。

おどりば、といえば、予備校の階段を駆け下りたついでにおどりばの壁にジャンピングニーアタックをかまして穴を開け、えらく怒られたことがあった。
あれは人生で最高のジャンピング・ニーだったなあ。
ジャンボ鶴田に捧げたいくらいだったのだ。
オーッ!

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2007年10月23日

改訂版 プロのメモ術・ノート術―使えるアイデアを生み出すテクニック<長崎快宏>−(本:2007年122冊目)−

改訂版 プロのメモ術・ノート術―使えるアイデアを生み出すテクニック

出版社: PHP研究所; 改訂版版 (2001/12/14)
ISBN-10: 4569619460

評価:30点

データを集める大切さとともに、集めたデータを活用する大切さが書いてある。
さらにはメモの取り方のノウハウがぎっしりと。
しかし、著者が海外旅行の取材などを仕事としているひとなので、自然とメモの取り方も取材用のものに限定されていく。
様々なメモの紹介は面白かったが、メモの技術論はそのような仕事に限定されたものになり、私のようなインドア派サラリーマンにとっては何の役にも立たないノウハウ本になってしまった。
まあでも、メモを取るのは大切なので工夫しろ、ということだけはわかったからまいいか。
海外を取材で飛び回る人は読んでもいいかもしれないが、それ以外の人には基本的に必要ない本だ。
ついでに言えばデジタル関連グッズの使い方なんてなにも書いてないしなあ。
あ、そうだ。5月の海外出張用に買ったボイスレコーダーをもっと活用しよう。


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2007年10月21日

ナンシー関の「小耳にはさもう」ファイナル・カット<ナンシー関>−(本:2007年121冊目)−

ナンシー関の「小耳にはさもう」ファイナル・カット

出版社: 朝日新聞社 (2005/1/14)
ISBN-10: 4022579773

評価:86点

これまでのどの単行本にも納められていない、いわゆるお蔵入りのエッセイを集めたもの。
ナンシー関が40歳で突然亡くなったのが2002年だから、もう5年たつのだなあ。

お蔵入りエッセイといっても、発言が過激すぎるとかいうことで未収録になったものではないようだ。
おそらく当時の世相などを考えて優先順位的に漏れてしまったものということか。
そう考えると、若干切り方が甘いような気もしてくる。
それでもやっぱり面白い。
テレビにでる芸能人に対して我々が「あれっ」と感じるところを的確に指摘し、辛らつな表現のなかにも笑いを取りいれてエッセイにする技術はほんとうに凄いものだ。
ケシゴム版画の独特さもよかったよなあ。

惜しいかたをなくしました。
誰も厳しいコメントをしないので、最近のテレビ界はなんでもありの様相を呈しています。
亀田某だって、ナンシー関がいればもっと早い段階で苦言を書いていたんじゃないだろうか。
細木和子や三輪明宏や江原啓之あたりをどんなふうに切ってくれただろうか。
ついでにイシバ防衛大臣も。
生き返ってよ。

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2007年06月02日

しずく<西加奈子>−(本:2007年54冊目)−

しずく

出版社: 光文社 (2007/4/20)
ISBN-10: 4334925448

評価:90点

仕事のない土曜日の昼間、布団に寝ころがりなりながら、「しずく」を3分の1読む。
そうだ、こんな日は昼間から風呂に入ろう。
そう思い立って、浴槽に湯を張って身を沈め、「しずく」を3分の1読む。
風呂から上がってもまだ外は明るい。
ベランダに置いてある椅子に座って風に当たり、アイスコーヒーを飲みながら「しずく」を3分の1読む。

幸せな時間だった。そして、いい本だった。
読んでいて優しい気持ちになれたし、思わず笑い出してしまったり、ジンワリと涙ぐみもした。

6つの短編は、それぞれ女同士のやり取りを描いている。
「ランドセル」では、幼馴染に十数年ぶりに再会し、そのまま思いつきのようにロスへ海外旅行に出かける話。
「灰皿」は、一人暮らしの老女が一軒家を賃貸にだし、借り手になった若い小説家と心を通わせていく話。
「影」は旅行者と島の女性、「木蓮は」女性とその恋人の子供、「しずく」は夫婦に飼われている2匹の雌猫、そして「シャワーキャップ」は母と娘。
美しくしかしどこかユーモアのある文章は読みやすく、ごてごてとした無駄もない。
必要最小限の展開で、きっちりと落としどころに持っていく。
見事な短編ばかりだ。

個人的には、表題作にもなっている書下ろしの「しずく」がよかったかな。
猫たちのキモチの描写は笑えて笑えてしかたがない。
猫好き必読だろう。
ちょっと物悲しいラストも余韻たっぷりだ。
あとは「木蓮」かな。
そして、「シャワーキャップ」で母が言うセリフがまた素晴らしい。
こんな小説を読んでいると、次は女に生まれて子供を生んでみたい、なんて思うのだ。
痛いよね、でも。

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2007年05月11日

さくら<西加奈子>−(本:2007年48冊目)−

出版社: 小学館 (2005/02)
ISBN-10: 4093861471

評価:90点

なんだかもの凄くかっこいいけれど、もの凄く悲しい家族の物語。
でも、もの凄くあったかくて、それでいてもの凄く切ない。

最高にかっこよくて学校でモテまくりだった自慢の兄ちゃん。
誰もが振り返るような美人だが、暴力的で風変わりな妹。
綺麗で強くて逞しく、お父さんに激しく恋をしているお母さん。
いつも小さく静かに座っているだけに見えて、家族の精神的な支えになっているお父さん。
そして犬のさくら。
そんな家族の中で目立たない次男が主人公だ。

兄ちゃんの話はいつもかっこよく(中学生で童貞喪失だもんなあ)、妹の話はいつも爽快。不良グループをグーで殴るところなんて最高だ。
母親は子供達に堂々と性教育を行い。お父さんはいつも静かに座っている。
さくらは、尻尾を振ってみんなの間を走り回り、たわしをガリガリと齧りまくる。主人公の眼を通して描かれる家族には、主人公のそれぞれの家族を愛する気持ちがはちきれるほどに注がれていて、読んでいて幸せな気分になってくる。

しかし悲劇は起きる。
兄の事故、父親の失踪、引きこもる妹、キッチンドランカーの母、主人公は大学生になった。
悲劇のどん底、なのだが読んでいてそんなに悲壮感はない。
どんな状況になっても主人公の家族をとことん愛する気持ちがヒシヒシと伝わってくるからだろう。
そして、バラバラになり、人格までが崩壊してしまったような家族の中で、ひとり変わらない犬のさくら。
最後にはさくらの力で、家族はまたひとつになり、前に進みだす。
そのあたりの、静かだけど生命力に満ちた描写がまた素敵です。
最後にはとても暖かい気持ちで読み終えることができた。
ああ、いい本じゃ。

若干詰め込みすぎの感は否めないが、それも愛情のあまりに何もかもを書き込みたかったんだと思えばまあいいか。

さくら


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2007年05月04日

きいろいゾウ<西加奈子>−(本:2007年41冊目)−

きいろいゾウ小学館 (2006/2/28)
ISBN-10: 4093861625

評価:86点

夫の名前が無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名前が妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う若夫婦が、九州の片田舎にやってきたところから物語は始まる。
微妙に不思議系の夫婦の物語なので、序盤は淡々と話が進んでいき、なんともかったるい、それでいて心地よくもある西ワールド(そんなものがあれば、だが)に翻弄されてしまう。
登場人物たちの行動もなんか不思議だし、都会で登校拒否になってやってきた少年も寡黙なようでませていたりもする。
だが、やっぱり変なのはツマさんで、周囲の生き物と会話をしたり、夫の日記にいろいろと挟み込んだりして、正常と異常の境目を漂っているようだった。
うまくいっているようで、どこか居心地の悪い、というか納得できないものが二人の間にはあったのだが、それが後半になって一気に噴出し盛り上がり、そして静かにまとまりを見せる。

だからなんなんだ、と言われれば困ってしまうような内容なのだが、全体を覆う雰囲気は結構好きだ。
途中で挟み込まれるきいろいゾウの童話は、それだけで絵本になって出版されている。
著者の前作「さくら」は25万部も売れたのか。
全然しらなかった。
ということでサイトはこちら

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2007年01月20日

誇りを持って戦争から逃げろ!<中山治>−(本:2007年8冊目)−

誇り筑摩書房 (2006/07)
ISBN-13: 978-4480063090

評価:75点

残念ながら憲法第9条は改正されるだろう。
日本はアメリカの属国であり海外と戦争ができる普通の国になる、そのとき日本が戦場になったり核攻撃されたり徴兵制が復活して海外派兵したりすることは必至である。
それを防ぐには「逃げる」しかないと著者は言う。
「アメリカ軍産複合体とそこから利益を得ている日本の権力亡者どもに「逃げる」ことで日本の庶民の意思を見せつけてやろう。戦争放棄は決して難しくない。逃げてしまえばよいのだ。」
まあしかし、逃げるところがないわな。
いくら「海外に口座を持て」とか「海外ネットワークを作っておけ」とかいっても、誰にでもできることではないし、「逃げる」ことに関してさらに具体的な例示がなされているわけではない。
どこにどうやって逃げるんだよ!と読んだ人はみんなそう思ったんじゃないだろうか。

実際には、「逃げる」という選択肢(著者は「逃走権」と呼んでいる)があるだけで、それを説明することで、現在の国際社会の状態、全面核戦争の危機、憲法9条を変えることの意味、などを整理して説明しているという内容だ。
数々の論理は、時には非常に斬新で思わず大きく頷いてしまう。
日本を利用する米国の考え、中国と北朝鮮の関係、日本の戦争責任、なるほど。
しかし、よく読むとかなり乱暴な決め付けも多い。
そのほうがすっきり整理できて気持ちはいいのかもしれないが、中国の一幹部の暴言を中国国家の意思のように決め付けるのは危険ではないか。
日本だって暴言三昧の某都知事とかがいるわけで、彼の発言を日本の意思だとされてはたまらない。

そうはいっても、先日世界週末時計の針が2分進んであと5分になったのは事実。
大国は必ず興亡するから、米国もいつか衰える。
そして人類もだ。
著者のいうとおり、愚かな争いだけはせずに、種としての寿命を全うできるよう、できるだけのことはしたい。

「逃げろ」といっても、君達は逃げられないだろう。
だったら、逃げなくてはならない状態にならないように、なんとかしないとダメなんだ。
結局、こういうことがいいたかったのかもしれないが、それはよくわkらない。

少なくとも自分の子供が生きている間は平和な世界であってほしい。
いや、孫が生きている間、いやいやひ孫が生きている間は、いやいや・・・。


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2006年12月27日

きらめくジャンクフード<野中柊>−(本:2006年127冊目)−

きらめくジャンクフード文藝春秋 (2006/12)
ASIN: 4163687106

評価:81点

ああ、たまらん。
こんな本を夜中に読むもんじゃないぞ。
思わずポテチの袋を開けてしまったじゃないか。
フレンチトーストの描写の美味しいそうなこと。
ああ、そういえばちょっと固くなったフランスパンがあったじゃないか。
卵と牛乳に混ぜて、そうかいつもはここにグラニュー糖を入れるのだが、そのままパンを浸して焼いてからハチミツかメイプルシロップをかければいいのか。
作るけど、食べるのは明日の朝にしよう、絶対にそうしよう、何があってもそうしよう、そう思ってもいつのまにか深夜にたらふく食ってしまっている。
最近体重が増えたのは、野中柊のせいだ。きっとそうだ。

NHK英会話のテキストに連載されていたエッセイが本になったらしい。
といっても野中柊自体を全く知らなかった。
英会話のテキストに連載するだけあって、本人も海外生活の経験があり、おかげでか、ジャンクフードに造詣が深い。
ジャンクに造詣が深い、というのも感覚的に間違っているようなきもするがまあいいだろう。
ただ、ベーグルも餡ドーナツもピッツァもみんなジャンクフードなのだね。
ポテチ系の体に悪いものがジャンクというイメージがあったけど、結構いろんな食べ物のエッセイが詰まっている。
ちなみに、ジャンクフードを辞書で調べると、「カロリーは高いが栄養価の乏しい、スナック菓子類やファーストフードなどの食品」「即席麺やスナック菓子など多種・大量に生産されている食品。また、高カロリーだが、栄養価が低く、添加物の多い食品」(大辞林)
ということらしい。
ダイエット中の俺は絶対に食えないはずだが、なんだか毎日食っているものの半分くらいはジャンクフードのような気がするぞ。
やめらないのだよなあ。
ジャンクってうまいのだ。
ああ、油の浮いたカップ麺が無性に食いたい。

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2006年10月05日

マラケシュ心中<中山可穂>−(本:2006年97冊目)−

マラケシュ心中







講談社 (2002/10)
ASIN: 4062104393

評価:61点

女同士のセックスってよくわからない。
本人達がいくら興奮して涙を流しながら抱き合ったとしても、こればかりは読んでいて全く興奮しないし、インパクトも感慨も敬愛も憧憬も尊敬もなにもない。
男同士が抱き合うよりはマシだけど。あ、ブロークバック思い出した。うげげ。

女しか愛せない女流歌人(絢彦)が、元師匠の若い妻(泉)に恋をする。
絢彦と違い、泉はノーマルだったこともあって、二人の距離はなかなか縮まらない。
しかし小説なのだから、当然二人は急速に惹かれあうのだ。
それでも、友人としての関係を築こうとする泉に対して、どうしても気持ちが押さえきれない絢彦は何度も言い寄っては離れ、また言い寄っては離れ、次は泉から近寄り、そして離れ・・・。
ついに二人はスペインに一緒に行ってしまうのだ。

確かに絢彦の情熱的な心の叫びは聞こえてくるが、読んでいるうちに次第にどうでも良くなってくる。
絢彦は往生際が悪く女々しいし、泉の優柔不断さは筆舌に尽くしがたい。
マオをあっさり見捨てて、物語の真ん中辺りから全く思い出さない絢彦の性格の悪さはなかなかのものだ。
泉は愛の逃避行中でもダンナに電話ばかりしてるし。
ついでに言えば、出てくるモロッコ人はみんな教養のかけらもない世界最低レベルの人間として描かれている。絶対抗議がくるぞ、モロッコ大使館から。

そう思うとあれだな、読んでいて感情移入できる人物が最後まででてこないから、居心地も悪いし集中できないのだ。

そうは言っても、二人で逃避行を始めてからは、文字からエネルギーが溢れてきそうなくらい情熱的な文章と、ダイナミックな展開で読者を惹き付ける。最後の5分の1くらいは面白かったのだ。

なんにせよ。
マオをどうにかしてやってくれ。
泉の子供はそれからだ。


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2006年10月02日

牢屋でやせるダイエット<中島らも>−(本:2006年95冊目)−

牢屋でやせるダイエット青春出版社 (2005/6/9)
ASIN: 4413093194

評価:80点

中島らもの著作は全部読んだと思っていたけど、これがまだだった。
強がっていても牢屋の中の生活はそれなりに堪えたようだ。なんとも素直な中島らもの姿が垣間見えてなんだかかわいらしい。

それにしても俺はほんとに「ダイエット」の本だと思っていたのに。
牢屋で麦飯食って、3キロ痩せて、腕立て伏せと腹筋で肉体改造したとか、そんな類の内容だと思っていたのに。

拘置所の飯はうまくて22日間で4キロ太ったってあんたそれはなんじゃいな。
でも考えてみれば、あれほど細い中島らもがダイエットなんぞする必要もなく、というかあれ以上痩せれば病気になってるよね。
病気だから牢屋に入院して、酒もタバコも薬もなく少しは健康になったといえるのかもしれない。

いずれにせよ、中島らもともあろう人が牢屋の経験を本にしないわけがなく、マトリや看守とのやりとりも、食事や風呂や運動の様子も、そして独房に付けられた監視カメラのことまで細かく書かれていて面白い。
最初は高圧的な監視にいちいちはむかって問題を起こし(窓の外の鳥達に餌をやる程度のかわいい反抗だけど)、そのうち深い思考に入ってもいく。
「世界中、全てが監獄なのだ」と悟ったようなことをいい。「全ての男は無用である」という持論を展開する(どこで読んだけど忘れた)。
女性的なイメージを強く求め、権力には永遠に抵抗する。何について書いていても中島らもの視点にブレはないのだ。
うむ、素晴らしい。

ほんとにダイエットできるのなら大麻不法所持で逮捕されるのもいいかとおもったが、太るようなのでやめた。
そんな根性もないくせに何を言うかと鼻で笑われそうだ。
はい、まことに申し訳ありません。真面目に痩せます、小市民ですから。

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2006年09月16日

花伽藍<中山可穂>−(本:2006年88冊目)−

花伽藍新潮社 (2004/09)
ASIN: 4101205337

評価:78点

(ネタバレあります)
初めて中山可穂の作品を読んだが、これが著者の始めての短編集だそうだ。後書きに、長編がかけないスランプ中だったと書いてある。
5つの作品はどれもこれも力作で、情念のこもった心理描写は読んでいてゾクゾクさせられた。色気もたっぷりだ。

残念なのは、すべてレズビアンもしくはバイセクシャルの女性が主人公であること。
彼女と彼女の恋愛は、いかがわしいようでいてある意味純粋で、そのての世界を全く知らない私にさえも妄想をもたらしたりするのだが、いかんせん、深いところはわからない。
わからんなあ。
女同士の性行為もセックスというのだなあ、などというふやけた感想しかあたまに浮かんでこないのだ。

とはいっても、最後の「燦雨」はよかった。
愛し合って暮らす女性二人の老後は、悲しく、美しく、そして切実であった。
貫き通せる女同士の愛、か。
それはそれでいいものかもしれないな。やっぱりよくはわからないけれど。

花伽藍


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2006年09月05日

心が雨漏りする日には<中島らも>−(本:2006年84冊目)−

心が雨漏りする日には青春出版社 (2005/6/9)
ASIN: 4413093186

評価:80点

(ネタバレあります)

中島らもの本を最近まとめて3冊読んだ。
そろそろ読んでない本がなくなってしまったようだ。
それはそれで寂しいものだが、もはやどうしようもない。
ガダラでも読み返すか。それとも明るい悩み相談室を最初から読んでいくか・・・。

この本には、躁うつ病と闘う中島らもの姿が書かれている。
どの話もどこかに書かれていたり、どこかで聞いた話ばかりなので目新しさはないが、これだけ病気関連の話だけ集められると、とにかく壮絶な時間を過ごしてきたのだなとやはり感じさせられる。
壮絶なんだけど、軽妙な語り口からは決して悲惨さは感じられず、どこか第三者的に病気の自分さえも笑い飛ばす、中島らも節は読んでいて気持ちがいい。
高槻事件はほんまに大変だっただろうなあ。
躁状態で暴れまくっていた時代の、劇団のメンバーは大変だっただろうなあ。
まあ、どれだけ迷惑かけても、結局愛されてしまうのは、氏の人徳でしょう。

躁うつ病の人とかかわることがもしあれば、この本のおかげで少しは理解してあげられるかもしれない。
そんなことを思いながら、やっぱり笑いながら読んでしまったのでした。

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2006年09月01日

株式会社日広エージェンシー企画課長 中島裕之<中島らも>−(本:2006年82冊目)−

中島裕之双葉社 (2005/07)
ASIN: 4575298247

評価:88点

(ネタバレあります)

中島らもの1回忌にあわせて発行された本。
小説ではない。
中島らもが日広エージェンシーという広告会社でサラリーマンをしていた時代の企画書の数々が本になったのだ。
入社が1981年、社長の宮前氏が中島らもに独立を勧めて退社したのが1986年、そんな昔の中島らもの企画書の数々を段ボール箱にきちんと保管していた日広エージェンシーはえらい!

ウインドウズのパソコンなんてない時代だ。
企画書はほとんどが手書きで(ワープロくらい打てば、とは感じたが)、中島らもの自筆がたっぷりと楽しめる。
独特のイラストも満載。
最初に中島らも入社時の履歴書があり、そして彼の名を一躍広めた「啓蒙かもぼこ新聞」の企画書(正式には編集企画案)が・・・。
ああ、たまらんなあ、涙ちょちょぎれまっせ。
俺が中島らもを知り始めたのが、ちょうどこのかまぼこ新聞と月光通信だもんなあ。

数々の企画書に、中島らもの溢れんばかりの才能がほとばしりでている。本当にそう思う。古臭さを全く感じない。
コンテの中にはつまらんなあというものも混じっているが(ボツネタが多いのだから仕方ないか)、驚くべきは企画書の中の文章だ。

住友金属のCF企画書は、壮大な歴史小説を読んでいるようだった。
「燠火の端に彼はその毛むくじゃらの腕をおそるおそる這わせ、それをつまみあげる。黒ずんで鈍く光る、見たこともないその断片を。石ではない。炭でもない。そして異様に硬い。・・・不思議な思いに小首をかしげて彼はいつまでもそれを見つめ続ける。大きな掌の中の小さな金属の最初のかたまり。そこから始まる膨大なヒト文明の流れ。激流を予感させるプロローグ。」

かっこいい!サラリーマンの書く文章とは違う。
このおっさん、やっぱりすごかったんやなあ。

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君はフィクション<中島らも>−(本:2006年81冊目)−

君はフィクション集英社 (2006/07)
ASIN: 4087748197

評価:83点

中島らもが死んでからもう2年たってしまった。
時間はほんとに遠慮なく過ぎていくものだ。
あと10年たてば、彼の話をする人も減っているだろう。
あと30年たてば、私も死んでいるかも知れず、中島らもを知る人も少なくなっているだろう。
あと50年たったときに、「ガダラの豚」は世間で読まれているだろうか。
「お父さんのバックドロップ」は日本映画の古典のひとつとしてどこかで放映されたりしてるだろうか。

個人的に思うことだが、「中島らも」、実は結構しぶとく生き残るような気がしてならない。
この手の偏屈な天才の残したものは、一部の熱狂的なファンを集めるものだし、未来のどこかの時代のある世代に、彼の作品の何かがピッとひっかかるに違いない。
それは「DECO-CHIN」のもつグロテスクな毒かもしれない。
「バッド・チューニング」に見られる楽器への偏愛振りかもしれない。
表題作にもなった「君はフィクション」のコミカルなブラックさかもしれない。

それにしても、死してなお、未発表短編集が刊行されるなんて幸せな人だ。
この本は、わりと多彩なレパートリーで、きちんと短編集の体裁をなしている。
十分に中島らものエネルギーを感じられるのだ。
「東住吉のぶっこわし屋」の不条理感なんて、もうむちゃくちゃで楽しいわい。

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2006年04月08日

来なけりゃいいのに<乃南アサ>−(本:今年33冊目)−

来なけりゃいいのに祥伝社 ; ISBN: 4396631189 ; (1997/08)

評価:76点(100点満点)

さらりと読めるサイコ・サスペンスの短編が7作品収められている。
きっちりオチをつけた作品(多重人格者のところはオチが見えすぎましたがそれもまたご愛嬌でしょう)。
主人公の心理描写に集中した作品。
屈折した誤解が生む恐怖をあらわした作品。
そして、ある企業の極秘プログラムを書いた作品。これなんか星新一か阿刀田高の雰囲気たっぷりだったりする。

などなど、よくもこんなにバラエティに富んだ作品を書けるものだ。

乃南アサって、かなり多作だし、実に息の長い作家だ。
このレベルを長年続けていくには、インプットだって相当に必要なはずだし、かなりの努力を日々しているのだろうな。
私より6歳上なだけ。
実はあまり変わらないのだ。

「久しぶりに帰ろうか、帰って、母の顔を見ようか−フサエさんの荒れた手を見ながら多恵子はぼんやりと考えていた。」

昨日出張があって、たまたま大阪の実家に泊まってきた。
拾ってきた子猫にミルクをやっていた母親の手が、荒れていたのを思い出した。昔はあの手で随分とどつかれたものだ。
私もそろそろ親孝行をしないといけない年齢になったのだな、たぶん。

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2005年11月19日

チカラビトの国<乃南アサ>−本を読んだ(今年70冊目)−

チカラビト新潮社 ; ISBN: 4101425302 ; (2003/09)

評価:78点(100点満点)

内容(「BOOK」データベースより)
「行司の格は飾り紐の色で分かる」「土俵は呼出しが叩いて作る」「前髪が長い力士は稽古不足」…行司、呼出し、床山、女将、靴屋・洋品店など、力士を支え、盛り立てる人たちは相撲界の不思議を知り、力士の日常をよく見ているもの。そこで相撲ファンの乃南さんが自ら取材、裏方の意外な役割、楽しいエピソードを紹介しました。初心者から相撲通まで楽しめます。決まり手のミニ解説付き。

************************

九州場所真っ最中の本日。明日が中日だったっけ。
朝青龍の史上初7連覇がかかっているというのに、客の入りは非常に悪いらしい。
うーん、いつから相撲人気はこんなに落ち込んできたんだろう。
若貴人気が終わった後に、相撲協会が手を抜いてきたことのツケだとか言われてるけど、彼らのようなスター力士はそう簡単にでてこないもの。

若貴時代も盛り上がったが、北の湖の終盤から千代の富士全盛期の時代も面白かった。
俺は旭富士が大好きで、何度も何度も横綱昇進がかかった大事なところで負け続け、心底落胆したものだ。
体の柔らかい業師が、次第に力強さを見につけて横綱になっていくのを見ていくのは楽しかった。

今は朝青龍が好きだが、ライバルがいなくて見るほうに緊張感がなさ過ぎる。
よく横綱自身が勝つことへのモチベーションを保てるものだと感心する。
どっかに、次の横綱になれそうな強いやつはおらんのか。

ということで全然関係ないが、乃南アサらしくさらりとしかし愛情たっぷりに相撲のことを書いていて、興味深く読めました。
行事や呼び出し、床山のことなんて、こんな本でも読まないと全然知らないもの。

こんなブログも発見しました。
相撲一筋、どすこいブログです。


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2005年09月18日

しゃぼん玉<乃南アサ>−本を読んだ(今年57冊目)−

しゃぼん玉朝日新聞社 ; ISBN: 4022579617 ; (2004/11)

評価:85点(100点満点)

いきなり、通り魔やコンビニ強盗をしながら逃亡生活をしている若者(主人公)が登場する。
自己中心的で無軌道でどうしようもなく馬鹿で凶暴な主人公。
読み始めて、この先どうなってしまうのか恐ろしく感じてしまったほどだ。乃南アサのことだから、読むのがつらくなるくらいのえげつない展開もありうるなと覚悟した。

ところが、若者が、トラックから投げ捨てられ道に迷ったときにたまたま出会って助けたお婆さんの家に住み着くことになり、そこから事情が変わっていく。
急に若者の性格が変わるはずもないのだが、山奥の過疎の村で、老人たちと交流していく中で、少しずつ変化が起きてくる。
このあたりの描写は読んでいて心地よい。
自分の心までもが、ゆったりと解きほぐされていくようだ。

その後、ま、いろいろあるのだが、最後には自分の罪も償い、まともな人間になっていくのだ。

出だしからは想像できない、単純で御伽噺のようなハッピーエンド。
たまにはこういうのもいいかも知れない。
ちょっとウルってくるしな。
人生は長い、まだまだやり直しはきくのだ。

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2005年07月12日

本を読んだ-酒気帯び車椅子<中島らも>-

酒気帯び車椅子集英社 ; ISBN: 4087747352 ; (2004/12)

評価:86点(100点満点)

らもさんが死んでそろそろ一年になるんだなあ。
読む前はそんな感慨に浸りもしたのだが、読み始めるとハチャメチャな展開が面白く、一気に読んでしまった。

表題と表紙から、おおよそのストーリーに予想がついてしまうのだが、しばらくは延々と主人公のサラリーマンの日常描写が続く。
普通なら、このあたりは読んでいて退屈してくるはずなのだが、そこはさすがに中島らもだ。細かい笑い、妙なうんちく、適度なおやじネタを取り混ぜて退屈させることがない。

当然復讐劇だから、できるだけえげつない仕打ちを受けていたほうが読者の共感も得られるし、クライマックスでのカタルシスも大きい。それはわかるけど、あそこまでえげつない暴行シーンを書かなくてもいいのに。読んでいてちょっと気持ち悪くなった。

しかし、おかげで犯人たちに対する敵意は主人公以上に強くなる。
早くやっつけろ!
最新最強装備の車椅子を早く用意しろ!
やれやれ!殺してしまえっ!
読みながらそんな気持ちになっていった。

そしていよいよクライマックス。
残りのページが少ないんでどうなることかと思っていたら、案の定あっさりと最後の決戦が終わってしまう。
うーん、もうちょっとここらあたり引っ張っれなかったのかなあ。
そんなこといっても、これ以上引っ張っていたら未完で終わっていたんだよな。

もっともっと書いてもらいたかった。
たまにこの人の本を読むと痛切にそう感じるのだ。

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2005年05月16日

本を読んだ-「超」発想法<野口悠紀雄>-

「超」発想法講談社 ; ISBN: 4062099918 ; (2000/03)

評価:88点(100点満点)

「超」整理法で著者のファンになったのは何年前のことだっただろう。ファンっていっても、出た本を必ず読むくらいだけど。
いつもそうだが、適度にわかりやすくて、適度に斬新で、適度に知的好奇心を抱かせてくれて、適度に俺もやってみるかという気持ちにさせてくれる。
見事なものです、野口先生。
だからといって、ほとんどの凡人は先生の提唱する方法を試してみては失敗するわけでありまして、結局野口先生に印税が入っていくことになるわけです。

でも、いろいろと実感できる本だった。
新しい理論があるわけではないと思うのだが、発想には何が必要かということを体型立ててわかりやすく説明してくれる。
知識を真面目に詰め込み、常に考えていれば、アイデアはおのずとうまれるという言葉には実感させられた。
そうだよな。論文書くときのひらめきってこんな感じだもの。

その他、KJ法をボロクソに言ったり、文部省のゆとり教育をばっさり切ったり、気持ちのいい文章はたまらなくいい。
この本が出たのが2000年。このときに文部省がゆとり教育の間違いに気がついていればよかったのにな。今頃気付いても遅いわい。
そうだ、野口悠紀雄を文部科学省の大臣にすればどうじゃ。
だれか、総理に進言してくれ。総理と話せる偉い人はどこかにおらんか!

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2005年04月27日

本を読んだ-あなた<乃南アサ>-

あなた新潮社 ; ISBN: 4103710047 ; (2003/02/27)

評価:88点(100点満点)

2002年1〜12月に「新潮ケータイ文庫」に連載・配信されていた作品が単行本化されたもの。
なるほど道理で文中に「携帯電話での会話」がやたらと多いわけだ。
いくら現代の浪人生、大学生が主人公だとしてもそこまで携帯電話での会話を散りばめることもなかろうと感じていたのだがそれで納得した。
緻密に計算された構成で読者をぐいぐいと引き込み最後まで読ませる筆力はさすがである。
しかし、主人公に付きまとう生霊の存在がだんだんとあまりにうっとおしくなってくるのはどうなんだろうか?
連載・配信時にはそうでもなかったのかもしれないが、続けて一冊の本にしてみると、展開の遅さに苛立ちを覚えてしまう。
生霊の正体が知りたくて知りたくて、ついに私は3分の2を読んだあたりでラストのページをめくってしまったではないか。

ゾクゾクする緊張感と恐怖感はある程度味わえる。しかし、読みやすさと引き換えにおどろおどろしさを取り払ってしまったことで、落ち着きのない軽さが目立ってしまってるのは残念じゃな。
生霊の物語なんだから、もっともっと怖くしてもらわないといかん。なんて怖がりのくせにすいません。

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2005年03月03日

本を読んだ-中島らも KAWADE夢ムック 別冊文藝-

中島らもムック河出書房新社 ; ISBN: 4309976913 ; (2005/02/22)

評価:90点(100点満点)

中島らもが死んでから随分とたったような気がするし、ついこないだのような気もする。死んだことさえほんとかどうかわからなくなるときもある。
どの雑誌にも連載がなく、新しい小説も発表されず、テレビにもでてこず、そしてこんな追悼本が発刊されるのだから、やはり中島らもは死んでしまったのだろう。

追悼本らしく、様々な人がコメントを寄せたり、インタビューに答えたりしているが、それぞれから愛情がたっぷり感じられるのはなんだかうれしい。それよりなにより、選びぬかれた中島らものエッセイ20連発を読んで、この人はこんなに凄い人だったのかと再認識した。
奥深い精神論から、確信犯的な下世話ネタまで、嫌味なく笑いを含ませ書ききっている。完璧じゃあないか。

巻頭で小堀氏が選んでいる中島らものエッセイの中の言葉。
「僕という存在の喪失が、しばらくの間人々の間に影を落とし、やがてその影が薄れていって、僕はほんとうの「無」になる。そういうのがいい」。

でもあなたが残したものたちは、なかなかなくならないと思うよ。
「ガダラの豚」でも読み返してみようか。

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2005年02月21日

本を読んだ-「超」文章法<野口悠紀雄>-

「超」文章法中央公論新社 ; ISBN: 4121016629 ; (2002/10)

評価:81点(100点満点)

「超」シリーズで有名な野口先生が文章法についてまとめた本。
わかりやすく面白く読みやすくためになる。なかなかこういう実用本には出会えないもんだ。
野口悠紀雄らしいきっぱりとした言いきり文章が心地よく感じられるのだが、よく読んでみるとそんなに凄いことは言ってないような気もするんだよなあ。比喩の使いかたもそうだし、言葉の重複を避けるなんて、社会人であれば文章を書くときに誰でも考えることに違いない。

まあ、それでもいいや。
最終章ではとにかく書き始めろと野口先生が言う。
「始めれば完成する」と。
俺ももうすぐ39歳。いつかは小説を書いて直木賞でもとりたいと言っているあいだに会社を定年になって、書いたものといえば会社の昇格用件であるレポートだけとかいうことにもなりかねん。

頑張ろう、きっとできる。
そんな決意を抱いたわたくしでございました。

「文章法」を語る本は、読んだ瞬間にその本に書いてあることを全部マスターした気になるのが困ったもんだわい。

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2005年01月12日

本を読んだ-「超」整理法<野口悠紀雄>-

「超」整理法3中央公論新社 ; ISBN: 4121014820 ; 3 巻 (1999/06)

評価:65点(100点満点)

ブック・オフの2冊100円コーナーで発見。
野口先生の本が、2冊で100円かあ。1999年だからとてつもなく古い本でもないんだけどな。しかし、読んでみて、この価格もまあ納得です。

1993年の「超」整理法は画期的だった。
資料を分類せずに封筒にぶち込み、時間軸で管理する押し出しファイリング方式の発想は斬新で、しかも実用的。今でも私は実践しており、おかげで机の上は周囲の同僚と比較してはるかに綺麗だ。
だからと言って情報処理能力や仕事の効率が他人より優れているかというのはまた別の話であって、私が著者の整理法を完全に理解し、業務の成果として活かすようになるにはあと30年ほどかかるだろう。
ま、隠居後の自宅の書斎で(そんなものが隠居後にもらえるならば)、こつこつと「超」整理法の完成に向けて努力を重ねることとします。

さて、「超」整理法は、続編の時間管理法を経て今回にいたる。ここでは、情報(つまり紙の資料)を廃棄する手立てとしての「バッファー」という新たな概念が出てくる。これはこれで面白かったが、最初の押し出しファイリングほどの感激はないし、これだけで新書1冊は題材としていかにも苦しい。
よって、「理想の書斎」や「パソコンのデータ管理」などで中身を膨らませてある。
パソコンに対するコメントはすぐに時代遅れになるのではきついよね。本書では「ハードディスク80ギガは文書ファイルにとっては無限の領域」と説明されているが、2005年の現在では、テレビなどがパソコンで見られるようになったこともあり、動画ファイルが資料として蓄積されることが多くなっている。ここでは500ギガのハードディスクでさえ十分な大きさではなく、相応の管理方法がやっぱり必要になっているのだ。

そういうことで、前作、前々作と比べてのパワー不足はいかんともしがたく、2冊で100円もやむなしだな。さあ、机の上を片付けようっと・・・。

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2004年09月30日

本を読んだ-こどもの一生<中島らも>-

子供の一生ISBN: 408774678X ; (2003/12)

評価:84点(100点満点)

中島らもが死んでしまってから、彼の作品は読んでなかったが、久しぶりに図書館で見つけて借りてきた。
著者自身があとがきでいろいろと解説しているとおり、もともとは演劇の脚本として書かれたもの。構想14年の作品がようやく本になったというだけあって、実によくできている。中島らもの作品によく見られる馬鹿馬鹿しい笑いと無駄な薀蓄を重ねながら、まったりと前半は進んでいく、そして後半にはいきなり転調したかのようにスピード感あるホラー小説に・・・。
ぞっとくるほどの怖さはなかったけど、氏自らが最後に書いているように、超B級ホラーの傑作と言っていいんじゃないだろうか。架空の人物を使ったいじめと、その架空の人物が現実になってしまうというアイデアは秀逸です。
こうやって作品を読んでいると、中島らもが死んでしまったことにまったく現実感が伴ってこない。そのうちまた新刊でもでるんじゃないかと思ってしまう。
改めて、もったいなく、そして悲しいと強く感じる。


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2004年06月16日

本を読んだ-未練<乃南アサ>-

mirenISBN:4-10-602650-3 発行:2001/08/10

評価:80点(100点満点)

<内容>
機動捜査隊員・音道貴子、トラウマをかかえつつも健在なり! 短編シリーズ第2弾。 
警視庁第三機動捜査隊員・音道貴子、33歳。バツイチの独身。現在、過去の事件から抱えたトラウマからやっと回復の途中にあり――。病んだ都会の、病んだ親たち子供たち。ジコチュウの男たち女たち。1000万人総犯罪予備軍の東京で、いち早く現場に急行する貴子の遭遇する六つの不可解な事件。

音道貴子、33歳。かっこいいんだけど、「おっちゃん」って呼ばれるのだけはやめて欲しいなあ。
関西では、「おじさん」の意味なんやけど・・・。
音道貴子が出てくる乃南アサの本は、

凍える牙:音道貴子もの長篇作1(直木賞受賞作品)
花散る頃の殺人:音道貴子もの短篇集1
鎖:音道貴子もの長篇作2
未練:音道貴子もの短篇集2
嗤う闇:音道貴子もの短篇集3

の5作品。私は「鎖」と「嗤う闇」はまだ読んでない。鎖を読んでいないので、今回の本に出てくる、彼女のトラウマのわけがよくわからなかった。
「おっちゃん」が出てくる長編は、本格的推理サスペンスって感じなのだが、短編は、「おっちゃん」の日常をなにげなく切り取ったものが多い。
その中に、犯罪の陰にあるやりきれない思いをうまく混ぜ合わせてある。なんとなく、重松清の香りを感じたりもしました・・・。いい短編集ですわ。
母親との買い物シーンが一番好きだなあ。よっぱらいを押さえ込むサマがなんともかっこいい。

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2004年04月11日

本を読んだ-逆説論理学<野崎昭弘>-

中央公論新社 ; ISBN: 4121005937 ; (1980/01)

評価:60点(100点満点)

知的好奇心をくすぐる、なんともアカデミックな本でありながらも分かりやすく書かれている・・・書かれてないって。

著者の書いた詭弁論理学が面白く、これも流れで買って読んだ。
ビールを飲んだ後に、風呂に入りながら読んだ。
意識を失い、溺れて死にそうになった。
教訓:ビールを飲んだ後に風呂で読むのはせめて東海林さだお程度にしておきましょう。

論理学というよりは数学の本です。
経済学部出身、バキバキの文系コースを進んできた私にとって、何がなんだか分からず意識を失う部分も多々ありました。
それでも、アキレスの亀の話(この話は有名ですね。私も中学生のとき先生から聞き、興味を持ったのを覚えています)など「無限についての逆説」の項は面白かったし、「数の世界の逆説」もトリビアボタンを押しまくりの感がありました。

読んで損はしないでしょうが、数学にあまり縁のなった私のような人間が最後まで読みきるのは難しい。私が読みきったのは、ひとえに「このブログに感想を載せねばならん、ここまで読んで読みきれないのでは死んでも死に切れん、今まで払った厚生年金はどうなるんだっ!掛損じゃないかっ!なにがなんでも200歳まで生きて、年金貰いまくってやる!」という想いにほかなりません。

最後の最後、マイナス×マイナス=プラス、を説明してくれる項がありますが、そこだけ立ち読みしてもオモロイかもしれませんね。

ううむ、今日は落ち着いたアカデミックなブログになった。
実は本の内容がまったく分からなかったので落ち込んでおとなしいだけなのです。
それでは、また明日。



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