本:や行の作家

2011年09月20日

インシテミル<米澤穂信>

インシテミル (文春文庫)
インシテミル (文春文庫)
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出版社: 文藝春秋 (2010/6/10)
ISBN-10: 4167773708

内容(「BOOK」データベースより)
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。

*************************
藤原竜也主演で2010年に映画化もされているミステリ。
いわゆるクローズド・サークルを舞台とした殺人ミステリ。なぞ解きがなかなかわからず、結構引き込まれた。

ただ、登場人物のキャラが少し弱く(主人公とヒロインはしっかりしているが)、時折、「これ誰だっけ?こんなキャラだっけ?」となるのが少々残念。
また、様々なミステリのオマージュとして殺人用の武器が渡されていくところなど結構凝ってはいるのだけれど、そもそもそこまでミステリ好きじゃない私にとってみれば、まったく感慨・感激を呼ばない設定になってしまっている。
好きな人は好きなんだろうなあ、こういうミステリ。



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2009年10月17日

おそろし 三島屋変調百物語事始<宮部みゆき>−(本:2009年読了)−

おそろし 三島屋変調百物語事始
おそろし 三島屋変調百物語事始
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# 出版社: 角川グループパブリッシング (2008/7/30)
# ISBN-10: 4048738593

評価:88点

江戸で三島屋という袋物屋を営む叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働く17歳の「おちか」。
物語の冒頭の記述でおちかには暗い過去があり、自分を許すことができずに生きていることがわかるが、その内容はすぐに明かされない。そして、叔父のアイデアで、おちかは次々に訪れる人々の話を聞くことを仕事のひとつとされる。
三島屋の「黒白の間」で人々がおちかに語る話は、語る人々の心を救うのと同時に、おちかの心をも少しずつ溶かしていくのだった。
適度な謎と怪しさが満ちた話の中に含まれている切なさがたまらない。それにくわえていつもどおりの流麗な文章は読んでいてうっとりするほど。いや素晴らしい。

連作短編集になっていて、最後は大団円となりでおちかの心も救われる。多少無理やりまとめた感じも否めないのだが、それも著者の巧さの前にはたいした問題にも思えない。
江戸を舞台にした人情怪談(勝手な創作語ですが)、たっぷり楽しめました。

鏡の中に閉じ込められていた彼女のその後が心配です。戻ってこれないよね、器がないのだから。

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2009年09月07日

アカペラ<山本文緒>−(本:2009年)−

アカペラ
アカペラ
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出版社: 新潮社 (2008/07)
ISBN-10: 4103080116

6年ぶりの著者の作品。
楽しみにしていたのだが、なかなか図書館で順番がまわってこなかった。
ようやく借りて読んでみたが、さすが山本文緒。文体が若干変わったような気もするが、静かな文章の中からジンワリと染み出してくる暖かさと、微かに感じられる鋭く深い狂気は健在。
じっくりと楽しませてもらった。
その後の小説ってまだ出ていないんだっけ。
まだ体調万全ではないのかな。次回作も楽しみに待っています。

「アカペラ」「ソリチュード」「ネロリ」という、3篇の中篇が収められている。「アカペラ」は、ちょっとボケ気味の祖父と、15歳の孫娘の物語。ボケと勘違いがでたらめに交差して、普通では考えられない状況に陥ってしまうけれどなぜかどこか嫌味がない。こんな設定で読者に嫌悪感を抱かせない力って凄いんじゃないだろうか。
「ソリチュード」も同じ。38歳のダメダメダメ男が主人公で、家出をしてから久しぶりに実家に帰ってきてもは相変わらずのダメ男。でもなんだか自然とそんな男を応援してしまったりする。
三番目の「ネロリ」は、体の弱い弟と彼にべったりの50歳の姉。そして弟の彼女?の変な関係を書いている。
これでいいのか、と問われると決していいとは言えない状態にいる姉弟で、身近にこんな人たちがいたら関わりあいたくないと思うのだろうが、小説の中では彼らはなんだか普通。普通に、当たり前に生きている。
そう、人間はみんな当たり前に普通に生きているのであって、世界はそんな人たちの積み重なり。
んん、著者の言いたいこととだいぶ違うんだろうけどまあいいか。

とにかく面白かった。
長く鬱に苦しまれた著者の復活を祝い、そして無事に次回作が出来上がることを祈ります。
ボチボチ頑張ってください。

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2009年06月19日

時が滲む朝<楊 逸>−(本:2009年49冊目)−

時が滲む朝
時が滲む朝
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# 出版社: 文藝春秋 (2008/07)
# ISBN-10: 4163273603

評価:55点

第139回芥賞受賞作。
日本語を母国語としない作家が書いたとは思えない、という前評判を聞いていたし、天安門事件が題材となっていると聞いて読むのを楽しみにしていた。
率直に感想を言えば、予想外にあっさりとした内容で、読み手に響いてくるような登場人物の心理描写もなく、とても芥川賞に値するような内容とは思えない。
少しだけ小説の香りを塗したルポタージュ、という程度ではないか。

確かに日本語を母国語としない人が書いた小説としては驚異的だ。
さらに、日本人には考え付かないような表現が散見されて、それは結構新鮮。
例えば「感激のあまり唇から喉まで震え」「視線が直射」「拍手がバシッと」なんて、そう見かける表現ではない。
ただ、それ以外では見るべきものがない。
天安門事件、中国の民主化運動に対する記述も、現在の我々が大方想定しうるような内容がほとんど。
もっとも残念なのは。時間の進み方が非常に雑だということ。
あの枚数に長い時間軸を詰め込みすぎているので、ひとつひとつの場面のつながりが希薄すぎて後半の再会に対する感動が薄れてしまっているのだと思う。

天安門事件が起きたのは、私が大学生の頃だった。
その1年前に1ヶ月ほどバックパックを背負って中国を貧乏旅行をし、天安門広場を訪問もした私にとってあの事件は衝撃的だった。
あれから20年以上がたち、中国は部分開放と強烈な統制を混在させて経済成長を続けている。
人権問題で国際世論からどれだけ圧力を掛けられようと揺るがない国家体制にはある意味感心するが、やはり言いたいことが言える世の中のほうがいい。どう考えても。

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2009年05月23日

あの空の下で<吉田修一>−(本:2009年45冊目)−

あの空の下で
あの空の下で
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# 出版社: 木楽舎 (2008/10/9)
# ISBN-10: 4863240082

評価:74点

内容紹介
ANA機内誌『翼の王国』に掲載された短編を書籍化。数々の文学賞を軒並み受賞した吉田修一、初の読みきり連載小説&エッセー集となる。
1編ごとに異なる主人公の些細な日常を、胸が詰まるほどリアルに表現した12の短編小説と、世界の旅エッセイ6編を収録。

悪くない。
機内誌ということを配慮し、短編の中にうまく飛行機を紛れ込ませてきちんと作り上げている。
内容はかなり軽めなののだが、そこに郷愁感を適度にまぶして、ある程度読み応えのある短編にできあがっているのはさすがだ。なんでもない日常(飛行機に乗っているという時点で非日常だとは思うが)が丁寧に切り取られてあって、読んで感動するというよりは、思わず「うまいなあ」とうなってしまうような感じ。

じっくりした感動を味わう本ではないけれど、たまにはいいんじゃないだろうか。


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2009年03月22日

元職員<吉田修一>−(本:2009年37冊目)−

元職員
元職員
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# 出版社: 講談社 (2008/11/5)
# ISBN-10: 4062150921

評価:70点

(ネタバレあります)
風呂につかりながら30分程度で一気に読み終えてしまう程度の長さ。
「元職員」という題名と、豪勢なタイ旅行で始まるところから、男の抱える裏事情はおおよそ見当がついてしまう。
それを全く裏切らないまま話が進んでいき、最後はオチも何もないとなれば、???という気持ちにもなろうというもの。

自分の犯罪に気持ちの整理がつかず、タイで激しく揺れ動く主人公の心情は非常によく伝わってくる。
だが、結局はそれだけで事件が進展しドラマチックな結末を迎えるということもない。
男が開き直って一層のバカオヤジになって日本に戻るというだけだ。

ムエタイの話といい、タイで見かけるいやな日本人観光客の話といい、さらにはタイに溶け込んだ日本人の若者の話といい、著者がタイに行って感じたことを、見聞記のようにサラサラと書きつないだだけのようにも思える。
もっと深い意図があるのかもしれないが、それを感じることはできなかった。え、これで終わり?という後味の悪さはそんなに嫌いではないけれど、感心できるものでもないぞ。

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2009年03月08日

人のセックスを笑うな<山崎ナオコーラ>−(本:2009年35冊目)−

人のセックスを笑うな
人のセックスを笑うな
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# 出版社: 河出書房新社 (2004/11/20)
# ISBN-10: 4309016847

評価:80点

いまさらではあったが、図書館の書架で見つけたので読んでみた。
案外悪くない。
ドギツイイロモノ的な題名からなんとなく避けてきた本であったが、内容は極めて普通の繊細で切ない恋愛小説。
盛り上がりに欠ける展開ではあったが、なんとなく始まり、適度に盛り上がり、そして苦しくてやり場のない気持ちをどこにもぶつけることなく終わってしまう恋愛というのは妙にリアリティがあり、感情移入してしまった。
19歳のオレ(主人公)と、39歳のユリの恋愛。
ユリは主人公の通う美術の専門学校の教師で既婚者。
教師と生徒の恋愛であり、そして不倫でもあるのだが、予想されるようなドラマはほとんど起こらない。
それでもユリと別れた後の主人公の気持ちは読んでいてよく伝わった。
私のどの部分にうまくヒットしたのか。それはよくわからないけれど。

「電話なんて温度だ。
言葉は何も伝えてこない。
ただ、温度だけは伝えられる。
オレは、ユリの温度の低いのを感じた。
必要とされていないことが、ひしひしと伝わってきた。」

「いつごろから恋が終わっていたのか、今となってはわからない」

さて、これを原作とした映画も見てみようか。
評判はあまりよろしくないようだけれど。

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2009年02月14日

とける、とろける<唯川恵>−(本:2009年23冊目)−

とける、とろける
とける、とろける
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# 出版社: 新潮社 (2008/03)
# ISBN-10: 4104469041

評価:75点

決して面白くなかったわけではないが、評価の難しい本だ。
「著者初のエロティック作品集」と紹介されており、確かにストレートな性描写が結構書き込まれている。
だが、どこか中途半端。
書きながら「恥ずかしい」という気持ちが強かったんだろうなと感じられてしまうのだ。文芸作品っぽく仕上げておこうとか、ミステリやホラー風味を混ぜて単なるエロ恋愛小説とは少し違う風味を醸し出しておこうとか、そんな著者の考えが染み出してしまっている。
それはそれで悪いことではないのかもしれなが、いったい何を書きたかったのかがよくわからない。
ガツンと切ないエロで走りきる決心がないのなら、ミステリ・ホラー風味の恋愛小説という程度にしておいて、「ペニス」とか「ヴァギナ」とかいう言葉を無理に入れなければいいのだ。

などと偉そうに書いたが、女性の心の奥底なんて全くわからない中年のオッサンの戯言なのでお許しください。
女性は著者の小説のようなことをどこかで考えているものなのでしょうか。
オッサンには何もわかりません。
変に理解しようとするとセクハラ行為につながりそうで、それはそれで恐ろしいことです。

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2009年02月05日

静かな爆弾<吉田修一>−(本:2009年19冊目)−

静かな爆弾
静かな爆弾
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# 出版社: 中央公論新社 (2008/02)
# ISBN-10: 412003917X

評価:83点

テレビ局に勤務しており、中東の爆弾事件をテレビで取り上げてもらおうと奮闘している早川俊平が主人公。
見方によっては、話すことが全て青臭く、周りが見えず、大切なものがなにかもわからないという、たまったもんではない若造だ。
一方で、その迸り出るバイタリティや無尽蔵の体力や、やりたいことには捨て身で突っ込んでいく無謀な若さは正直うらやましい。
日々喧騒、そんな俊平が恋に落ちたのが、耳が不自由なため静寂の世界で生きる女性、響子。
あまりにもあからさまな対比なのだが、そこはうまく処理されて、ギリギリのリアリティで物語りは進んでいく。

俊平が響子の世界を思うとき、そのシーンからいつも音が消え去ったかのように感じさせる描写が見事だ。
花見のときにそばで起きている喧嘩に響子が気付かない場面。家で一人音の出ない映画を見ている場面。二人でプールに行った場面。
どれもが静まり返っていた。

仕事にかまける俊平と響子の恋の結末は、なんだか納得できるようできないようなものではあるが、少なくとも主人公が全てに真摯に対峙していることには好感が持てる。
そうか、これは青春小説なのか。
ふうむ、グダグダ遠回りしながらも熱く生きていき、ようやく真実にたどりつくとかいう例のパターンか。
ま、こんな雰囲気の小説は結構好きです。

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2008年12月26日

一瞬でいい<唯川恵>−(本:2008年166冊目)−

一瞬でいい
一瞬でいい
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# 出版社: 毎日新聞社 (2007/7/20)
# ISBN-10: 462010714X

評価:85点

初めて著者の本を読んだ。
唯川恵、なんていう名前もそうだが、図書館で見る単行本の背表紙に書かれた題名もなんともこっぱずかしいものが多く、とても40過ぎのおっさんが手に取れるようなもんではなかったからだ。
だが、なぜかこれは借りてしまった。
緑の森のイラストが描かれた表紙が、なんとも幻想的で気に入ったからだけかも知れないが。

結果、読んでよかったと思える内容だった。
18歳の男女4人が浅間山へ登り、そのうちの一人を事故で失ってしまうところから物語りは始まる。
そこから延々31年。
友人の死を背負い、つらい人生を歩んでいく3人が、出会い別れまた出会っていく様子が真摯に書かれている。
軽いラブストーリーではなく、かといってドロドロした愛憎劇でもなく、押さえた筆致のなかからほとばしりでる感情がチラチラ見えるところがなんとも切ないのだ。

31年の年月を経て変遷していく登場人物たちの描写がうまい。
その時々の恋愛感情の描写が素晴らしいが、それは唯川恵ならではのようらしい。他の本を読んだことがないのでわからないのだが。
だが、この本が彼女の作品の中ではかなり重めの異色作であるとかいうコメントを目にすると、他はもっと強烈なラブストーリーなのだろうな。
おっさんには少々つらいかも。
機会があればまたチャレンジしてみます。唯川恵。

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2008年12月06日

償い<矢口敦子>−(本:2008年158冊目)−

償い (幻冬舎文庫)
償い (幻冬舎文庫)
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# 出版社: 幻冬舎 (2003/06)
# ISBN-10: 4344403770

評価:74点

随分と昔の本だったのだなあ。5年以上前か。

帰りの電車で読み始め、食事中・風呂の中と続いて深夜までかかって一気読み。
盛りだくさんで非常に面白かったのだが、悪く言えば詰め込みすぎて不完全燃焼の感が否めない。
ドンデンガエシありのサスペンス小説にしたかったのか、人間心理を深く書き込んでいく哲学的な小説にしたかったのか、少年犯罪とホームレスというような社会派小説にしたかったのか。はたまた、犯罪をガキガキと暴いていくパワフルな警察小説にしたかったのか。
まだ視点があるぞ。
障害者の抱える心の暗闇と性の物語、とか。
正常が狂気に変わる瞬間を描いた小説、とか。
罪とは何か、人間とは何かを論じる物語である、とか。

これだけ様々な視点を持つ小説を文庫本440ページに詰め込もうとすると、先ほど言った不完全燃焼に加えて、都合の良いストーリー展開というのがどうしても目についてしまう。
一番はキーマンが偶然出会う機会が多すぎるということか。
驚いたのは、主人公の日高という元医者で現ホームレスを、同僚だった美和子という医者が一人の力で、自力で、見つけてしまったということだ。
なんだかなあ。
ホームレスに探偵まがいのことをさせてしまうのも、どうも現実味がなさ過ぎる。

仕事の忙しさを理由に、妻子を死なせてしまった日高の苦しみと、その償いの物語としてはよくできていると思う。
ただ、ここまで人を殺す内容にしなくてもよかったと思うのだけど。


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2008年11月27日

デッドライン仕事術<吉越浩一郎>−(本:2008年155冊目)−

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)
デッドライン仕事術 (祥伝社新書)


# 出版社: 祥伝社 (2007/12/15)
# ISBN-10: 4396110952

評価:75点

数日前に読んだビジネス書「不機嫌な職場」と反対のことが書いてあって笑ってしまった。
まあ、ビジネス書なんてそんなものであって、視点を少しずらせば180度違うことが書いてあっても両方とも正しいし、両方とも間違っているとも言えるのだ。

「不機嫌な職場」には、成果主義を進めるあまりに社員が自分の守備範囲に線引きをしすぎて隙間に落ちる仕事が多くなり会社全体がうまくいかないということが書いてあった。だから熱い仲間意識を高めてみんなで仕事しようと。
こちらの本には、締め切りを作って効率を徹底的に追求して仕事することが個人の幸せにも会社の発展にもつながるという。各自のやるべき仕事を顕在化させろという。静かな職場で各自が集中して自分の仕事をしろと。
ううむ。凄いな。
両方とも説得力があったし、両方とも極論のような感じでもあったし。

ただ、個人的には今回の著書のほうがわかりやすい。
とりあえず自分の仕事に締め切りを作り、集中して早く仕事を終わらせて早く帰るようにしろというのはそこそこ共感できるからだろう。

ということで今日は普通なら一日かかりそうな仕事を馬力かけて早めに終わらせて上司へのプレゼンまで強引に済ませたのだった。
「社員旅行をしよう!」などという「不機嫌な職場」の提案よりは、こっちのほうが手っ取り早く効果が出そうな感じだな。

内容(「BOOK」データベースより)
デッドライン仕事術とは「就業時間も仕事も、すべて締切を設定する」という、非常に簡単な仕事手法である。ダラダラと残業せずに、毎日、「今日は○時に帰る」と決めて仕事をする。「来月中旬ごろ」という曖昧な言い方はやめて、「×月×日まで」とすべての仕事に締切日を入れる。この二つを実行するだけで、仕事効率は驚くほど上がる。デッドライン仕事術は自分の仕事効率を高めるだけでなく、部下の仕事を管理し、スピードを上げさせるのにも、抜群の効力を発揮する。部下を動かす際は「会議」も併用するのだが、「本当に有効な会議のやり方」も本書で詳説してある。トリンプを一九年連続増収・増益に導いた、吉越式仕事術のすべてを開示した一冊。

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2008年11月16日

薀蓄好きのための格闘噺<夢枕獏>−(本:2008年150冊目)−

薀蓄好きのための格闘噺
薀蓄好きのための格闘噺


# 出版社: 毎日新聞社 (2007/09)
# ISBN-10: 4620318345

評価:75点

格闘技に詳しくない人や、興味のない人が読んでもまったく面白くないだろうな、この本は。
総合格闘技を中心にその裏話やいくつかのエピソード、そして一人のファンとしての著者の思いが書き込まれている。
残念なのは業界の裏側に密着!とまではいかない内容なので、著者の書いていることはだいたいこちらも知っていることばかりであるということ。
この本がでたのが2007年の秋。それから1年たって格闘技界の状況はさらに変化しつつあり、またネットで様々な情報が伝わってくる現状からすれば、多少の古臭さを感じてしまうところもある。

だが、それでもいいのだ。
格闘技に対する思いが十分に伝わってくるので、それを読んでいるだけでうれしいし。
それにしても餓狼伝がまだ終わっていないというのに、東天の獅子とかいう柔術の小説をまた始めてしまっていったいどうする気なのだろうか。
キマイラだって完結してないぞ。
やりたいほうだいだな、夢枕獏。
餓狼伝は、最初のころは日本にあまり伝わっていない総合格闘技の情報が満載になっているというだけで読んでいて心躍るものがあったが、あっというまに現実が小説を追い越してしまってどうにもならなくなってしまっている。
まあ、そういうこともあるのだろうな。

ということで現在一番の注目はヒョードルがこれから誰と戦うのかということと、総合への転進を表明した金メダリスト石井選手がいつリングにあがるのかということだ。
石井には期待したいなあ。PRIDE崩壊からようやく次の舞台が整いつつある日本の総合の世界をなんとか大きくしてもらいたい。
景気が悪くなるとまた観客動員も減るだろうし、ここ数年が正念場になりそうだ。
さて、日本の格闘技界は今年の大晦日のどんな試合を見せてくれるだろうか。

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2008年09月04日

長い終わりが始まる<山崎ナオコーラ>−(本:2008年115冊目)−

長い終わりが始まる

# 出版社: 講談社 (2008/6/26)
# ISBN-10: 4062147874

大丈夫か、山崎ナオコーラ。
新進気鋭の売り出し中女流作家、と思っていたのに6月下旬に出した新刊が図書館で順番待ちもせずに借りることができる。
大丈夫か、山崎ナオコーラ。
貴志祐介の「新世界より」なんて、5月に予約してまだ順番がまわってこないというのに。

まあ、これだけトンガった癖のある女の子を主人公に、好き放題書いていれば読者の好き嫌いも分かれるだろう。
個人的にはこの傍若無人なツッパしり系の文章は結構好きなんだけどなあ。
あまりに個性が強すぎて、このまま売れない作家になって潰れてしまわないか心配だ。
かといって大衆迎合的なナオコーラの文章も読みたくはないけど。

主人公の小笠原は大学でマンドリンサークルに入っている女性。
周りとうまくやっていこうなんて考えもせずにトンがりまくっているくせに、サークル内の序列を妙に気にしたり、自分の居場所がないことに悩んだりもする。
小笠原は田中のことが好きだけど田中には彼女がいる。
田中とはよく一緒にいるけれど、恋人になれない。
物凄く不器用だけれど物凄く真剣に生きている小笠原。
ガシガシと他人とぶつかっては他人を傷つけ自分も傷つく。

で、オチは?といわれるとそんなものはないのだが、純文学ってそんなもんでしょう。
それでも、揺れ動く小笠原の感情にこちらも揺さぶられ、小笠原に妙に感情移入しているうちに読み終えてしまうような本だった。
俺も明日からちょっとトンがって生きてみようかな。
上司に辛らつな批判的意見を述べたりして。
無理だな。すいません。

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2008年09月01日

カツラ美容室別室<山崎ナオコーラ>−(本:2008年111冊目)−

カツラ美容室別室


# 出版社: 河出書房新社 (2007/12/7)
# ISBN-10: 4309018408

評価:71点

第138回芥川賞候補になった作品。
芥川賞、というには少しインパクト不足だなあと読んでいて感じたが、このときの芥川賞は川上未映子さんの「乳と卵」。
ルックス面での話題性も含め、これはさすがに大敗でした。
といっても私は「乳と卵」は読んでいないので、どちらが面白かったとはかけない。
そのうち、「乳と卵」も読んでみよう。

さて、カツラ美容室別室。カツラをかぶる店長・桂孝蔵の美容院で出会った淳之介とエリを中心に、美容院に集まる仲間たちの交流を描いた小説。
強烈などんでん返しがあるわけでもなく、身を焦がす熱烈な恋愛がや三角関係が繰り広げられるわけでもなく(三角関係は一応あったりもするが)、かなり淡々と日常が繰り返されていく。
淡々と、と書いたが、ストーリーを思い出してみるとそこそこ込み入った人間関係も書かれている。そこにベタベタ感を感じないのは、著者独特のどこかドライかつ笑いを感じさせる文章のせいなのかもしれない。
「論理と感性は相反しない」の感想にも書いたが、個人的にはかなり好きな文章だ。
本を出してくれる出版社がある限り、書いて書いて書きまくってくださいませ。そのうち、ナオコーラワールドみたいなものが確立されてきて、読者はもっと安心してその世界観に身を浸すことができるかもしれない。
角田光代や川上弘美に毒をまぶしたような作家になってほしいなあ、などとおっさんは勝手なことを思うのだった。

とりあえず、もう少し作品を読ませていただきます。

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論理と感性は相反しない<山崎ナオコーラ>−(本:2008年110冊目)−

論理と感性は相反しない

# 出版社: 講談社 (2008/03)
# ISBN-10: 406214588X

評価:72点

好きか嫌いかといわれれば、かなり好きな部類に入る短編集。
面白いか面白くないかといわれれば、個人的に非常に興味深く読めた本。
人に薦められるか薦められないかといわれれば、ううむ、大きく躊躇したうえに「これは好き嫌いが分かれるとおもうので、この著者の本を読むなら別の本から入られたほうが・・・」
と答えてしまうだろうというのが素直な感想だ。

あとがきで「雑誌に載せないので気兼ねなく、自由に、遊び心満載に、ふざけにふざけました。でも、手は込んでます」と書いてある。
(このあとがきも2段階になっていて、いい感じに力を抜いてふざけてあるのだが)
まさしくそんな感じで、ストーリーも落ちもないわけのわからん短編がドシドシ入っていて、なんだか中学生か高校生が、思いつくままに大学ノートに書きなぐった感が満載。
これは「計算されつくした」というよりは「勢いと感性を大事にしてぶちまけた」というほうがどう見ても正しいように思えてくる。
手が込んであるのはどのあたりなんだろう。
一度著者に聞いてみたい気もするが。
といってもこの感性は嫌いではないので、ところどころニヤニヤと笑いながらあっという間に読み終えた。
読み終えたのは3日前だが、さて感想でも書こうかと思って、内容がまったく思いだせなかったりしたのだが・・・。

「芥川」も「人間が出てこない話」も、さっぱりわけがわからんが、なんとなく面白かったからまあいいか。
Amazonの評価なんぞも結構散々だったりして、やはり万人受けはしていない。
この辺は著者の想定内なのか、それとももっと評価されると思っていたのか。そのあたりも聞いてみたいもんだ。

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2008年08月07日

浮世でランチ<山崎ナオコーラ>−(本:2008年99冊目)−

浮世でランチ

出版社: 河出書房新社 (2006/9/12)
ISBN-10: 4309017789

評価:90点

ナオコーラ、なんていうふざけた響きだけが妙に残る作家で、ついでに言えば、「人のセックスを笑うな」なんて本も、題名のわざとらしさが鼻についてとても読む気にはなれない。
そんな風に思っていたのに、図書館で思わず手にとって借りてしまった本。
結論から言えば、妙に著者の文章が心地よく感じられ、主人公の言葉を通して語りかけてくる内容が自分の心境にシンクロして没頭して読んでしまった。
往復の電車の時間を使って一日であっさり完読。
人との係わり合いをグズグズ書いているこんな小説が心に沁みるだなんて、私はちょっと弱っているのかも知れない。
などと自分で書いているうちは元気なんだろう。

主人公25歳のOL。
周囲との関係をうまく組み立てることができず、ひとり公園で弁当を買ってランチをしながら過ごす毎日。
群れることは嫌いだからという雰囲気をかもし出しているものの、それが本心なのかどうか本人も自信が持てない屈折した感じがなんともよろしい。
そんな彼女が会社を辞めてアジアを旅する様子と、彼女の中学生時代の思い出が交互に出てくる。
そんな彼女だから、当然中学生時代も偏屈な生徒だったのだった。

過剰な自意識。
そういってしまえば終わりかもしれないが、思春期には誰もが他人との距離感に悩み、ウジウジグズグズイライラするのだよな。
やる気なさげな脱力的な描写の中で、主人公のそんな思いが共感を持てるように書かれていたと思う。

最後のまとめ方も、若干の意外感があってうまかった。

40を越えて思うが、大人になってもこういう気持ちはなくならないのだよな。
オッサンにはオッサンの疎外感があるのだ。
忙しさにかまけて真剣にそういうことを考えずごまかしているだけなのだ。
「いつかみんな死んでしまう」
そんなことをきちんと考える若者の方が、回答もないくせに達観した振りをしてるオッサンたちよりはえらいかもね。

そんなことを思いながら読んだのだった。


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2008年07月05日

悪人<吉田修一>−(本:2008年92冊目)−

悪人

出版社: 朝日新聞社 (2007/4/6)
ISBN-10: 402250272X

評価:90点

図書館で半年以上待ってやっと順番が回ってきた本。
420ページという堂々の読み応えながら、読み始めるとやめることができず一気読み地獄に引きずりこまれてしまう内容だ。
昨日は12時前から読み始め、夜中の3時半までぶっとおしで読了。
さすがに眠い・・・。、

インパクトのある内容だった。
語りはあくまで静かで落ち着いているが、文章が登場人物の心境を余すところなく伝えてきて、読んでいるものの心を打つ。
携帯サイトで出会った女を殺してしまった男、殺された女の父親、殺人事件の原因を作った男、殺人犯と恋に落ち、一緒に逃亡を続けた女、そして殺された女。
殺人犯となりすべての悪を一身に引き受けた男は、どこまで悪人だったのか。
殺された女と、残された周りの人々と、何が違い、どこが境目となったのか。そもそもそこに違いなんてあるのか。
決して犯罪者擁護をしている内容ではない。犯罪は犯罪として裁かれるべきものだろうが犯罪を犯した人間は本当に憎み忌み嫌われる存在なのか。
そんな古臭いとも思われるテーマにスポットをあてて人間を書ききっているのはすごい。

古臭いテーマと書いたが、最近の風潮は「罪を憎んで人を憎まず」というものから「罪を憎んで人をさらに憎む」というものに変わってしまった。どちらが正しいというものではあるまい。
ただ、偏った行動、偏った考えが誤った道に進みやすいということは歴史上実証されているのだから、冷静なバランス感覚だけは持ち合わせていたいものだ。

といってもなあ、これだけ凶悪犯罪が続くと、加害者の人権とか加害者の事情とか、そんなものは無視してどんどん死刑にしてしまえ!なんて思ったりもしてしまう。
歳をとったからだろうか。
ひとつ冷静にならなければダメだ。
そんなことも考えさせられた小説だった。

娘を殺された父親の心境を読んでいるとつらくなる。
神がいるのなら、増尾にも何か天罰を。

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2008年06月22日

ヨム マラソン 42.195kmの脳内活劇<吉田誠一>−(本:2008年88冊目)−

ヨム マラソン 42.195kmの脳内活劇

出版社: 講談社 (2008/2/8)
ISBN-10: 4062144069

評価:80点

市民ランナーのフルマラソン体験記。
といっても、本になるくらいだから市井の人というわけではなく、またタイムもなかなかに凄い。

著者のプロフィール(裏表紙に記載)は以下のとおり。

1962年茨城県生まれ。高校までサッカー部に所属。立教大を経て’85年に日本経済新聞社に入社。運動部でサッカー、野球、ラグビー、スケート、陸上などを担当してきた。サッカーのワールドカップは’98年から3大会連続して日本代表を中心に取材した。’92年アルベールビル、’98年長野の冬季五輪や’91年ラグビー・ワールドカップなども取材。2003年4月から本格的にランニングに打ち込み、’04年11月に初めてフルマラソンに出場した。自己最高記録は3時間22分11秒

40歳を過ぎてからマラソンを始め、45歳で3時間22分11秒の自己記録を更新。その記録を出したスコットランドでのネス湖マラソンと、その6日前に走ったベルリンマラソンの体験が書かれている。
42.195キロもの間、ランナーが何を考えて走っているのか。それがリアリティに溢れた文章から伝わってくる。
伝わってくるけど、私はもともと走るのが苦手なので、これを読んで「よし、俺も走ろう!今すぐ走ろう!」とまでは思わなかった。
グーグルでこの本を検索し、ブログで紹介している記事を読んでみたが、そのほとんどが自ら走る、ランナーの人たちだった。
走る前の入念な準備と高揚感、走っているときの様々な心境、そして走り終わった後の達成感と次のマラソンに向けてすぐに沸き起こってくる飢餓感。それはまさに走る人たちがみんな感じていることらしい。

ただ、走るだけだから物理的には誰にでも始められることだが、実際に3時間半ほどでフルマラソンを走りきり(3時間半を切ることは、サブ3.5と言うらしい)、著者のような感覚を味わえるまでは簡単にはいかないことがよくわかる。
とりあえず膝も悪い私には無理なこと。
それだけに走ったこともない42キロを文章から実感させてくれたこの本はなかなか貴重だった。

ホノルルマラソンくらいいつか走りたい。
そんな風に簡単に思ったりしたことがあるのが少し恥ずかしくもなった。
こんなにしんどいのならやっぱり無理そうだ・・・。

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2008年06月17日

陰陽師瀧夜叉姫(下)<夢枕獏>−(本:2008年85冊目)−

陰陽師 瀧夜叉姫 (下)

出版社: 文藝春秋 (2005/9/28)
ISBN-10: 4163242805

評価:90点

上巻で撒き散らした伏線を綺麗に纏め上げ、最後はホロリとさせながら見事なエンディング。
美しく妖しくいい話だった。

平将門の蘇り、というのはいかにもありそうな話だが、著者の書く話だから一筋縄ではいかない。
誰が敵で誰が味方なのか、黒幕は誰なのか。
道満は果たしてどちらについたのか。
将門を悪役のまま終わらせなかったのは、俵藤太との絡みから当然か。
「二人の友情」というどこかスポ根ドラマ的な展開には大いに感情移入できた。
博雅がラストシーンで目立っているのも珍しい。

「何のためにこの世に生を受けた」
と敵に問われた博雅が顔を上げて答える。
「あなたは花に問うおつもりですか」
「風に問うおつもりですか」
「花は、そこに、在り、咲き、花であるだけで、十分に、満ち、足りております」
「私は人です」
「花がそうである如く、人であることをまっとうするために、私はこの世に生じたのです」

かっこいいぞ、博雅。
晴明のひっつきむしではなかったのだ。

そういえば中盤では晴明と博雅のやおい雰囲気丸出し会話もでてくる。
なんだか腐女子向けのサービスショットのようだが違うのか。
まあいいけど。

また陰陽師で長編を描いてくだせえ、夢枕先生。


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2008年06月15日

陰陽師瀧夜叉姫(上)<夢枕獏>−(本:2008年84冊目)−

陰陽師 瀧夜叉姫 (上)

出版社: 文藝春秋 (2005/9/28)
ISBN-10: 4163242708

評価:90点

これは面白い。
これまで読んだ「陰陽師」シリーズの中では最高の出来栄えではないか。
などと褒めていると下巻でガックリくるのかもしれないが、どうかそうなりませんように。

短い人情話でつないでいくのではなく、がっつり本格的なミステリ仕立てで話が展開していく。
謎がわかっていてもなかなか口にしない晴明のもったいぶった態度は相変わらずで少々イライラさせられるのだが、今回は清明自身もなかなか謎解きの最後までたどり着かない。
よって、博雅や晴明と一緒になって物語を追える臨場感があるのだ。
これが短編だと、晴明の語りを聞いてるだけで終わってしまうからなあ。

鬼の行列が現れ、巨大な蜘蛛が車をひいて人を襲う。謎の瘡の呪いはなにか。話がこみあってきたところで、事件の原因が平将門にとんでいく。
なるほどうまいよなあ。平将門といえば、なんとなくそういうまがまがしい事件を引っ張ってくるイメージが現代人にもあるもの。
その平将門の最期の場面は壮絶だった。
どんな呪いが子孫に残り、そして下巻に展開されていくのか楽しみだ。

おどろおどろしい場面を独特の形容詞と畳み掛けるように短い文章でつないでいく著者のスタイルがやはりいい。
夢枕獏の本を読むたびにそう書いているようなきもするが。
しかし、笑い声を書くのに

か、
か、
か、
か、
か、
乾いた声で笑い(以下略)

などと6行使うんだからなんでもありだ。
さて、下巻も早速読むことにします。

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2008年06月07日

陰陽師 夜光杯ノ巻<夢枕獏>−(本:2008年82冊目)−

陰陽師 夜光杯ノ巻

出版社: 文藝春秋 (2007/06)
ISBN-10: 4163260609

評価:77点

久しぶりに読んだが相変わらずの夢枕節。
短い改行で文章をつないでいくことで、読者にも心地よいリズム感を与えてくれる。
餓狼伝の格闘シーンも同じだったが、夢枕獏の書く本の「白地占率」というのは現在の小説家の中ではダントツなのではないか。
著者にとって効率的というか、本を買って読んだ人間にしてみれば少し損をした気になるというか、図書館で借りて読んでいる私のように人間にとっては短い時間で読み終えることができて逆に得したような気になるというか・・・。

内容は、清明と博雅が相変わらず笛を吹いたり酒を飲んだりと風流な世界にひたりながら謎解きをしていくもの。
謎解きといっても、陰陽師の世界であるから、清明がなにやら呪をとなえて解決するようなものばかり。
少し妖しい世界に、演歌の世界のような情念を混ぜ合わせ、いつもどおりの陰陽師。
たまに読むからかもしれないが、結構飽きないのだよな、この世界観。
昔のような不思議さが少し薄れてしまったような気もするが。

最後の浄蔵恋始末は少し切なくいい話だった。

ところで、餓狼伝はもう完結しないのだろうか。

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2008年05月27日

男女(オスメス)の怪<養老孟司・阿川佐和子>−(本:2008年79冊目)−

男女(オスメス)の怪

出版社: 大和書房 (2006/6/15)
ISBN-10: 4479011889

評価:75点

聞き上手な阿川さんと、我が道を突き進む養老先生の対談。
見事にかみ合っていて、なかなか面白い。
実際の対談時には阿川さんはかなり苦労したらしく、それが「おわりに」に記されている。
といっても、養老先生の話が一気に専門分野に突っ込んでいくので理解するのが大変だったようだ。

確かに、養老先生の博識ぶりは凄い。そして自分の専門分野に話を引きずり込んだときの見事な論理展開と圧倒的な知識量は、読んでいてうっとりするほどだ。
男ってこうあらねば!なんて思ったりしてしまう。

話の内容は、表題になっているように、オス・メスについて。
人間の男女についての話がだんだんと動物の性を中心とした話になり、さらにそこからどんどんと派生していく。
こんな会話ならいつまでも読んでいたいし、できればその場に居合わせてみたいものだなあ。

渡辺淳一についての記述は笑った。
男のロマンの話になり・・・。
阿川:女性に対してロマンをかんじるということは?
養老:そういう男もいるよね。そうすると、えらい大変なことになる(笑)。
阿川:大変なことになっても、懲りない人もいますよね。渡辺淳一さんの恋愛遍歴について、お母さまが「息子は病気ではありません。病気は治りますけど、息子は治りません」っておっしゃたそうですけれど(笑)。

なるほど、ズン先生はやはりそうだったのか。
ただのエロ小説家ではないと思ってはいたが・・・。

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2008年03月06日

最後の息子<吉田修一>−(本:2008年37冊目)−

最後の息子 (文春文庫)

出版社: 文藝春秋 (2002/08)
ISBN-10: 4167665018

評価:83点

最近少しはまりつつある吉田修一。
「悪人」は図書館で予約してるけど、なかなか順番が回ってこないので、他の作品をボチボチ読んでます。

表題作を含む3篇が収められているこの本。
読んだ誰もが同じ感想を持つだろうが、3つの作品の色がおもいっきり違うのに驚く。
いかにも文芸作品っぽい「最後の息子」では、オカマの閻魔ちゃんと恋人である若い男が主人公。
ものすごく冷静な視点から発せられる投げやりで哲学的な言葉と、それと対照的に見える感情的な行動のギャップがいかにも、という雰囲気だった。
この作品で文學界新人賞を獲ってデビューしたんだっけ。

次の作品が「破片」
母親を亡くした男所帯(父、長男、次男)の男くさいくさいくさい暮らしを3人の視点を次々と移りながら語っていく。
それぞれが、男としてどうあるべきかという強烈な自意識にがんじがらめになっていて、そこからおきている悲惨な状況が少しコミカルで笑えたりもする。
だからストーカーはダメだってば。

最後の「Water」には泣けた。
どまんなかの青春小説。
水泳にかける高校生達の熱くて馬鹿馬鹿しくてさわやかな日々を描いている。まともすぎてびっくりしてしまったじゃないか。

一枚のアルバムの中に、演歌とポップスと前衛ジャズが混ざっているようなものか。
ま、でもそれぞれの完成度が高いからかなり楽しめたのだった。


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2008年02月28日

パーク・ライフ<吉田修一>−(本:2008年31冊目)−

パーク・ライフ

出版社: 文藝春秋 (2002/8/27)
ISBN-10: 4163211802

評価:62点

第127回(平成14年)芥川賞受賞作品。
さすがに芥川賞だ。こんなところで終わられたらわけがわからない、というところで見事に切れている。
パーク・ライフを読み終えた瞬間、
「え?これで終わり?」と、何回も最終ページを読み返したほどだ。
どこかに最後のオチでもかくれていないかと、本を振り回してみたが結果は同じだった。

淡々とした日々の生活を書き綴っていくところから始まり(淡々としていても、結構非日常だが)、そこから何かを感じさせる雰囲気にうまくつなぎ、そしていよいよこれから、という部分で唐突に終わってよいものか。
まあ、いいのか。
芥川賞だから。

暖かくなったら、昼休みに日比谷公園で弁当でも食ってみよう。
20代で初めて東京に来て暮らし始めた頃は、そんなこともしたもんだった。若かったのう。

本には表題作に加えて、「flowers」という作品が入っている。
こちらはなんとも暗くてちょっと陰惨な雰囲気。
結局、著者は何を書きたかったのだろうか。

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2008年02月17日

ランドマーク<吉田修一>−(本:2008年27冊目)−

ランドマーク


出版社: 講談社 (2004/7/16)
ISBN-10: 4062124823

評価:75点

大宮に建設中の35階建ての高層ビル「O‐miya  スパイラル」。
ねじれながら天に向かっていくというこのビルの設計者犬飼と、建築現場で働く隼人の物語。
力のかかり具合ひとつで、建物が崩壊してしまうような構造になっているねじれたビルディングの不安定さが、二人の主人公の置かれた環境を象徴しているように物語は進んでいく。
なぜか通販で買った金属製の貞操帯を身につけている隼人。
こんな不自然なものを身につけていても誰も俺に気づいてくれないという屈折した思いはどんどん高まっていく。
犬飼は神奈川の自宅にほとんど帰らず、大宮のホテルに泊まりこむ生活。
愛人との間には倦怠感が漂い、家にいる妻は実家に帰ってしまい戻ってこない。

最後までこの二人は交わることがない。
それでいて、ビルを間に挟んだ、ふたりのなんとも漠然とした不安定さがヒシヒシと伝わってくる。
決してことさらに不安を強調するような心理描写はないのだけれど、情景の描写が繊細かつ具体的で、街並みも主人公の表情や姿も読んでいて目にしっかりと浮かんでくるからそう思えるのだろう。
Amazonの紹介文には「圧倒的な筆力、鮮烈なイメージ」と書かれてあったが、まさにその通り。
うまいものだ。

「大宮駅」や「さいたま新都心駅」はかつて仕事でよく利用した駅なので、妙に懐かしかった。
総合格闘技の新団体「Dream」ができたようだし、またスーパーアリーナに行ってみたいものだ。

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2008年02月02日

7月24日通り<吉田修一>−(本:2008年17冊目)−

7月24日通り

出版社: 新潮社 (2004/12/21)
ISBN-10: 4104628034

評価:85点

吉田修一を読んでみようと図書館からごっそりと借りてきて4週間。
明日の期限日までに読めたのはこの1冊だけだった。
今月再チャレンジです。

素敵な恋愛小説だった。
美形の弟だけが自分の誇りで、逆に自分自身に対してはまったく自信が持てずに何事にも一歩踏み出すことができない女性、小百合が主人公。
自分が住む街をポルトガルの首都、リスボンと重ね合わせて暮らすという、いつでも逃げこめる自分の世界をもった女性だ。

 ジェロニモス修道院前、ガレット通り、ドン・ペドロ4世広場。心の中で小百合が話す地名から浮かぶ地中海の街と、文中に描かれる海に面した地方都市のイメージが重なる様子が映像的にいい感じだな、と思っていたら、既に映画化されていたとは知らなかった。
映画は、「7月24日のクリスマス」という題名。
大沢たかおと中谷美紀ならDVD借りて見てみようかな。

ずっと冒険することもなく、臆病な人生を送ってきた小百合が、高校時代から憧れていた先輩と付き合うことになる。
不釣合いなことは、自分が一番わかっている。
最後に後悔することも、自分が一番わかっている。
自分の傍にもっと自分を見てくれる相手がいることもわかっている。
それでも最後の最後に、冒険を選ぶ小百合。
ふうむなるほどそうくるか。

この歳になると、何事にも「自然と無理せず穏やかな結末」を望むようになっているので、読んでいる小説にもそんなことを感じたりする。
駅のホームのラストシーン。最後の最後まで、主人公は7月24日どおりの「すし屋」に行くのだと思っていた。
でも恋愛ってそんなもんじゃないんだよな。
あえて無謀な道に飛び込んで傷つくことがわかっていても、行ってしまうのだ。
なんとも切ないラストだった。

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2007年12月27日

初恋温泉<吉田修一>−(本:2007年162冊目)−

初恋温泉

出版社: 集英社 (2006/06)
ISBN-10: 4087748154

評価:89点

「パレード」で山本周五郎賞受賞。
「パーク・ライフ」で芥川賞受賞。
いわゆるこてこての純文学系の人なんだろうと、この本を読むまでは思っていた。
というか、吉田修一自体をよく知らなかったのだ。
どうもすいませんでした。

5組の男女の、温泉宿での物語。
それぞれ実在の温泉と実在の宿を舞台にしている。
熱海の「蓬莱」では、離婚を妻に切り出されたばかりの夫婦。
青森の「青荷温泉」では、ひたすらしゃべり続ける口数の多い夫婦。
黒川「南城苑」では高校生のカップル。
ドラマチックな事件が起きるわけではないのだが、彼らの間の小さな会話には、妙にリアリティがある。
悲しみや喜びや愛しさや空しさ、みたいなものが凄く丁寧に書かれているようにおもうのだ。
悪く言えば毒のない小説なんだろうが、こういう素直でまともに心に沁みてくるものって、なかなかいいよなあと最近思ったりするのだった。
吉田修一、また読んでみよう。

ところで図書館で借りたこの本、著者のサイン本だった。
なんとなくいい感じのサインだった。
誰かの寄贈本なんだろうな。

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2007年07月31日

ランチブッフェ<山田宗樹>−(本:2007年74冊目)−

ランチブッフェ

出版社: 小学館 (2006/06)
ISBN-10: 4093797390

評価:90点

この人の本ってこんなにおもしろかったんだ。

山田某という著者の本を図書館で手にするときは、いつも慎重に確認する。
あの、「リアルなんやら」を書いた読むのも恐ろしい文章力の山田某と違うことをきちんと確かめるためだ。あいつの本だけは発禁処分にしてどんどん在庫を燃やしてしまわないと、世の中の本好きの人間に対して、世の中の作家という人たちに対して失礼だ。

何を関係ないこと書いてるんだバカタレ。すいませんでした。

著者は1965年生まれ。年代同じこともあってか、読んでいて感覚的に非常にしっくりくる。
物語の設定、展開、オチまで違和感がなく、すんなり心に染みてくるところが見事だ。
短編6つの色合いがそれぞれ微妙に異なっているのもいい感じだ。

最初の「二通の手紙」は離婚してしまった夫婦のラブストーリー。
「混入」は、ちょっと物悲しい農家の嫁のサスペンス。
「ランチブッフェ」は、主婦達のランチでのたわいない会話で人生の奇跡を語る。
「電脳蜃気楼」はコミカルな詐欺もの。これを書いたのは2000年かあ。その数年後のデイトレの流行りようを想定していたような内容だ。
「やくそく」はホラーテイストなのだが、個人的にはこれが一番面白かった。
最後に娘の手をギュっと握っているが、握ってよかったのか。
成長とともに娘の記憶がなくなっていくことを祈るのみだな。そうでなければ20年後に修羅場が待っている。うう、怖い・・・。
「山の子」は中年の哀愁と少年時代への郷愁に満ちている。
ピンポイントに心の動きを書いているので、主人公をとりまく環境なんてまったくわからないが、たまにはこんなのもいいんだろうね。

さて、著者の他の本も読んでみるかな。

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2007年07月29日

夢を見ない男 松坂大輔<吉井妙子>−(本:2007年73冊目)−

夢を見ない男松坂大輔

出版社: 新潮社 (2007/03)
ISBN-10: 4104530026

評価:72点

「夢を見ない男」という題名は、松坂がレッドソックス入りを決めたときの記者会見でのコメントから取ったもの。
***********************
米国人記者から「大リーグ入りの夢が叶った今の気持ちを聞かせてください」という質問が飛んだときである。それまで、とろけそうな笑みを振りまいていた松坂が、一瞬、表情を険しくした。語気を強め、はっきりした口調で言った。
「僕はもともと夢という言葉は好きではありません。見ることはできても叶わないのが夢。僕はずっとメジャーで投げることができると信じ、それを目標としてやって来ました。信じてやってきたからこそ、今ここにいられるのだと思います」
***********************
実績も努力も伴わないやつのセリフならば、「くそ生意気な26歳の若ゾウが」となるのだろうが、相手が100億円の男であり、しかも豊かな才能を凄まじい努力で開花させている姿を目の当たりにすれば、納得せざるを得ない。
夢と目標をきちんと使い分け、自分の目標達成に向け最大限の努力をし達成する。文字で書くとそんなに難しくなく当たり前のことに思うが、たったこれだけのことでも、日頃意識しているかといわれれば、私は否だ。
41歳のおっさんが、26歳の若者の生きかたにかなわない。
まあ、相手が松坂だから仕方ないか。

もうひとつ読んでいて感心した部分がある。
************************
「マウンドではいつも実験しているんだよね。仮説を立てて実験し。結果を求め、それを分析し、将来つかえるかどうかを見極める。例えば実験しているものをジグソーパズルに譬えると、これまで100ピースで埋められていたものが、200ピースになり、300ピースになる。そのコマは年々増えていく。コマが増えていくと埋める作業って難しくなるでしょ。それと同じように、年を追う毎に考えることが増えて、苦しみも増していくんだよね。でも、より細かいコマで埋めたほうが完成したときに絵は綺麗になる。多分、この作業は引退するまで続けていくんだろうなあ・・・」
「その作業ってつらいけど、嫌だとは思わない。だってコマが増えれば増えるほど、緻密な野球ができるわけだし、ピッチャーとしての僕を進化させることにもなる」
************************
これは最近の仕事で私も感じていたことだった。
マウンドを会社に、野球を仕事に、引退を定年に、ピッチャーを社会人(会社員)に置き換えたようなものか。
私がこの歳になって、増えてきた引き出しでようやくそんなことを考え始めてると思うのに、松坂はずっとそんなことも考えて野球をやってきたのだ。凄いはずだ。

著者は松坂に非常に近しい人のようで、奥さんとも親交が深いという。
従って、これまで週刊誌に報じられてきたいくつかの事件や、今回のレッドソックスとの交渉の内幕なども詳細に書かれている。
どれもこれも、松坂の真摯な人柄を強調するような内容ばかりであるのが少々気になるが、このての本では仕方ないだろうし、それぞれ非常に興味深く読めた。

ただまあ、もっと野球の話では突っ込んだところが欲しかったなあ。
野球への取り組み姿勢や精神論は十分伝わったが、技術的な話は満足できない。練習方法や、セルフコントロールの方法にもっと驚べきものがあるんだろう。
著者が女性で実際には野球をしたことがないから、というわけではなく、そもそもこの本の目的が違ったのだろうけど。

昨日現在でメジャー1年目の松坂は12勝7敗 防御率3.79
最終的に18勝10敗、3.30くらいまではいって欲しいがどうだろうか。
頑張れ、できるはずじゃ。

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2007年06月16日

1976年のアントニオ猪木<柳澤健>−(本:2007年59冊目)−

1976年のアントニオ猪木

出版社: 文藝春秋 (2007/03)
ISBN-10: 4163689605

評価:80点

朝日新聞のアントニオ猪木インタビューシリーズは昨日(6/15)で終わりだった。
さすがに新聞のインタビューではある程度まともなことしか言ってないが、この本に出てくるとおり、人間としての猪木の行動はムチャクチャだ。
それでも多くの人がアントニオ猪木に魅せられ、彼を信じ応援する。
金のあるものはスポンサーになって金をだし、金のないものは彼のでる試合に応援に駆けつけ、もっと金のないものはテレビの前で応援してきた。
幾度となく金の問題でトラブルを引き起こし、もう今度こそ日本のプロレス界と縁を切っただろうと思わせておいて、また、猪木・ゲノム・フェデレーションだからなあ・・・。
ほんと、この人の頭の中がどうなっているのかも不思議だが、彼の周りに集まり人たちも不思議だわ。
そんな私も昔からのアントニオ猪木信者だったりするのだが。

本書にアントニオ猪木のインタビューは出てこない。
猪木の周りの人々、そして猪木と対戦してきた人たちへの丁寧な取材によって、猪木が行ったリアル・ファイトがどのようにその後のプロレス界に影響を及ぼし、今の格闘技界とプロレスの関係を作り上げてきたかを冷静に分析している。
中には暴露っぽい内容も多分に含まれて入るものの、これまでに知らなかった劇的な事実、というようなものは存在しない。
それでもやっぱり、猪木の舞台裏って面白いよなあ。
こんな人と仕事していたら、私だって騙されてついていこうと思ったかもしれない。

モハメド・アリ、パク・ソンナン、アクラム・ペールワン。
猪木がリング上でリアルファイトを行ったのは生涯この3人だけだという。
おそらくそれは真実だろう。
でも、リアルファイトでなくても、常に猪木は真剣だっただろうし、常に猪木は演じていたともいえるのじゃないか。
猪木はこの生き方でよかったんだろう。
だからもうでてこなくてもいいのに。
IGFは絶対に失敗するぞ。小川とジョシュを呼んだくらいでは無理だってば。

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2007年04月01日

あぶないコンビニ食<山田博士>−(本:2007年32冊目)−

あぶないコンビニ食三一書房 (1996/05)
ISBN-10: 4380960072

なぜに突然こんな本を図書館で手に取ってしまったのか、自分でもわからない。
心の奥底で食生活に対する漠然とした不安でも抱えていたのだろうか。

さて、書かれたのが1996年とちょっと古いし、三一書房だし、読んでいるうちにこれは実は「トンデモ本」なのかと感じてしまったりしたけど、まともなこともそこそこ書いてあるようだ。たぶん。きっと。

日本人の心をすさませているのは五つの食べものだという。
それは、1.タール色素(合成着色料)、2.安息香酸(合成保存料)、3.亜硝酸塩(発色剤)、4.BHA(酸化防止剤)、5.味の素(化学調味料)。
まあ、確かに体にいいはずがない。
著者が問題視しているのは、体に悪いとわかっていても一向に禁止されずにこれらが使われているということ、そして消費者には使用されているかどうかさえわからなくなっているということだ。
食品は実名入りでバンバンでてくる。
読んでいるだけで恐ろしくなり、これからは買う前に食品の裏側もよく読もうとか、明らかに体に悪そうなものは食うのも飲むのもやめようと真剣に思った。
しかし読み進めていくうちに、これではなにも食べられないことに気づいた。
実際著者は後半になって、白米も食うな肉も食うな砂糖も使うな野菜は緑黄色だけ食と、どんどんと無茶を言い出す。とても無理な相談だ。
そして、最近の子供達の無気力やアトピーやいじめも全部食事のせいだと言い切る。
ポテチ食ってコーラばっかり飲んでる子供は暴力的なんだそうだ。
だからアメリカは横暴なのかと思いもしたが、そんなもの科学的に検証できるんだろうか。

ま、それは別にしても、自分でできることはちゃんとしたほうがいい。
口に入れるものの影響は、生物にとって大きいことは間違いない。
自分のため、子供のため、だから。

などといいながらカッパえびせんを一袋食ってハーゲンダッツのアイスクリームを食ってしまった。
私の体は毒だらけなんだろうな。
多少の毒なら気合で浄化してやる!なんて言ってるうちはダメか。

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2007年02月25日

アイの物語<山本弘>−(本:2007年21冊目)−

アイの物語角川書店 (2006/06)
ISBN-13: 978-4048736213

評価:95点

(ネタバレあります)
SF小説でこんなに感動したのはいつ以来だろう。
椎名誠の「アド・バード」以来だろうか。
この小説がそれなりの予算を持って映画化されれば、「ブレード・ランナー」を超える可能性を持っている。絶対にそう思う。
誰か映画化してください。
でも、きちんと。
お願いですから、きちんと。

マシンが人間に替わって地球を支配している時代。
マシンに囚われたひとりの人間(僕)が、マシンから7つの物語を聞かされる。
アイビスという名のそのマシン(アンドロイド)は、ヒトの書いた架空の物語を話し始めた。

最初の5つの作品は、これまで発表された短編ばかり。それぞれを読むと
確かに面白いものの内容に統一性はなく、ネットやゲーム等、バーチャルな世界の存在をそれなりに読ませるというもの。
しかし、マシンが人間に読み聞かせるというシチュエーションを作り出すことによって、それぞれの短編の根底に流れる、SFへの著者の想いみたいなものが伝わってくる。
物語の間に挟まれる、アイビスと僕の会話が、大きな流れをつむぎながら、作品の説明をしているのだ。
「(君は)理解しているはず。物語の価値が事実かどうかなんてことに左右されないということを。物語には時として事実よりも強い力があるということを。」

そして書き下ろしの最後の2作品が秀逸。
「詩音が来た日」では、介護用アンドロイドの詩音が、「心」をもつにいたる様子が感動的に書かれている。
アンドロイドが心を持ったとき。
それは、自分達とは違う知性を持つ人間という生命体を受け入れ理解し、死から免れることのできないヒトの心を救おうという遠大な理想に自分で目覚めたときだった。
「人間は少しも論理的でなく倫理的でない」「全ての人間は程度の差こそあれ認知症だ」という詩音の言葉は辛らつながらも真実だ。
人類から決してなくならない、多くの戦争や犯罪を目の前にして、誰が人間は論理的で倫理的だと言えよう。
自分だけはそうだと思っている一般大衆であっても、必要があれば嘘をつき、都合よく物事を解釈し、子供達は学校でイジメを繰り返す。
こんな人間を超えた、そんな心を持つ機械がうまれても全然おかしくない。
「私には愛は理解できませんが、傷つけあうことが好ましくないとは理解できます。争いより共存を選択します」
詩音の言葉が耳に痛い。

この作品まではフィクション。
そして最後の「アイの物語」が、マシンが人間にとって替わった未来の真実を語った物語ということになっている。

あまりにネタバレになるのでこれ以上は書かないが、確かに書かれているとおりなのかもしれない。
人類が月に到着してから随分と時間がたったが、そこから先には到底進めそうにないし、先進国では人口の減少も始まった。
人類の限界をAIが破り、その夢をAIが実現する世界が、本当にくるのかもしれない。

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2006年09月22日

カオス<梁石白>−(本:2006年91冊目)−

カオス幻冬舎 (2005/9/9)
ASIN: 4344010361

評価:72点

なんかちょっとぬるい。
このオッサンも歳をとりすぎたのか。

今回の舞台は歌舞伎街に加えて大久保。
国籍性別入り乱れ、混沌とした無秩序な世界を作り出す大久保。
俺は結構好きだけどなあ、大久保。
アジア料理の屋台村や、コリアンバーベキューの店が立ち並び、国際テレカを売る怪しげな店や読めない言葉だらけの店も目に付く。
こんなところに「世界のやまちゃん」や「牛角」があるのがなんかかわいい。

本の話だった。

在日朝鮮人の李学英と金鉄治が主人公。度胸の座った主人公たちが危ない橋を渡りながらのしあがっていく様は、いつものヤンソギルの小説だ。金と女と酒と薬とやくざと外国人マフィアが跳梁跋扈する裏社会。今回は警察も裏側だし、学英が入れ込んだジャズシンガーまでが謀略に身を染める。
騙し騙されながら命を削りあう展開が息をつかせないところはさすがだが、なんだか味が薄い。
それぞれの行動が薄くて説得力がないし、命を狙ったり狙われたりする緊迫感があまり伝わってこないのだ。主人公たちも裏世界で生き抜いていくには少々馬鹿すぎるんじゃないだろうか。

存在感が際立っていたのは、美しいニューハーフの「たまご」。彼女の愚かながらも一生懸命な生き方は気持ちいい。
宗教にのめりこんだり、想像妊娠してしまったり・・・。
あまりに素直な彼女が(彼か)物語を華やかにしているのは確かだった。

でも、「血と骨」ぐらいのえげつない小説のほうがヤンソギルは絶対いい。

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2006年06月01日

「かわいい」論<四方田犬彦>−(本:今年50冊目)−

かわいい論筑摩書房(2006年01月)
ISBN 4-480-06281-5

評価:75点(100点満点)

「かわいい」という言葉をこれだけ小難しく論じることができるとは素晴らしい。
いえ、嫌味ではなくて、これはかなり本格的な現代文化論とでもいうものだ。
だが、いかんせん私の理解力を超えたところで議論が進んでおり、自分に興味が持てるところ以外は理解できなかったというのが実情である。
サブカル、とか言われても、ようわからんのじゃ。

「かわいい」現象が世界を席巻しつつあり、特に日本発の「かわいい」は、セーラームーンやパフィーのアニメやピカチュウやキティちゃんとなって世界中に広がっている。
そもそもそんな現象さえも知らない私であって、この本の導入部分で語られているこの話を読んで感心しているのだからどうしようもない。

次に、日本の「かわいい」の来歴、そして現在の日本における「かわいい」の現状が述べられる。
「きもかわ」くらいは私でもなんとかわかった。あれでしょ。アンガールズ。
あんなもん、本気で気持ち悪いだけで、どこにもかわいさは感じへんけどなあ・・・。

その他にも興味深い考察は多い。
「縮み志向の日本人」はなるほどという感じだし、「かわいい」と「グロテスク」の境界線を論じた末にたどり着く、アウシュビッツの壁の子猫の記述はなかなか強烈。

そういえば、昨日私の娘が面白いことを言っていた。
「それって、4コマ目のピカチュウだよね」
「どういうこと?」
「上の3コマでどんなに悪いことしても、最後に「ピカチュウー!」ってかわいらしく叫ぶと何でも許されちゃうんだよ」
「・・・?」
「だから、どんな悪い事も隠してしまう、最後のかわいいしぐさのことをそういうの」

こんど使ってみよう。
「4コマ目のピカチュウ」


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2006年04月01日

超バカの壁<養老孟司>−(本:今年30冊目)−

超バカの壁新潮社 ; ISBN: 4106101491 ; (2006/01/14)

評価:88点(100点満点)

ベストセラーとなった「バカの壁」「死の壁」に続く壁シリーズ第3弾。
まあ、内容的には養老先生がさまざまな話題に対して持論をズバズバと言っているだけの本だ。

だが、このおっさんの凄いところはその発想の自由さだ。
なるほどと手を打ちたくなるような話もあれば、おっさんそれはあまりに暴論だ、というところもある。
妙にラジカルな部分がある一方で、非常に保守的な話もでてくる。
だが、それらすべてをひっくるめて養老孟司という人間なのだろう。
なんのしがらみもなく、常識にもとらわれず、自由に思うところをズバっと語るところは清清しい。
また、一見あたりまえに思えることでもきちんと整理されているので読んでいる人間の頭の中まで綺麗に整理される。
ここらへんはさすがに学者だ。

「男女の問題」のところは面白かった。
生物学的にはどう考えても女性のほうが優れている。
医者だけあって、遺伝子や発生学的なところから納得感ある説明をしてくれる。
平均寿命を見れば一目瞭然。なるほど、まさにそのとおり。男って弱かったんだなあ。

「若者の問題」のところで、著者は仕事についてこう語る。
「仕事というのは、社会空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたことを考えるんじゃない」
結構痛いところをついてくるものだ。
まだまだ若造の私も、与えられた仕事をきっちりとやることを改めて始めよう。職業倫理を持って。

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2006年03月29日

リアル鬼ごっこ<山田悠介>−(本:今年28冊目)−

リアル鬼ごっこ文芸社 ; ISBN: 4835525795 ; (2001/11)

評価:2点(100点満点)

(著者のファンの方は読まないでください)

2点つけたのは映画のデビルマン以来じゃ。
こんな本を図書館に置いとくなよボケ。
俺の税金がこんな本を買うために使われて、しかも一部が印税になってこいつに渡っているなんて絶対に許せない!絶対にじゃあああああっ!はあはあはあ。

なんの予備知識もなく図書館でジャケ借りして読み始めた。
(そう、表紙はカッコイイのです)
初めてその作家の本を読むときは、とりあえずプロフィールを見る。
「昭和56年生まれ」若いなあ。
「20歳の時に書いたデビュー作」へええ、すっげなあ。
「2001年が初版第1刷発行、2003年初版第10刷発行」ふーん、売れてるんだな、結構。

読み始めて数分でもの凄い違和感を感じた。
私の体が全力でこの本を拒否しているような感じだ。
ソバアレルギーの人が、蕎麦湯の入ったコップを鼻先まで持っていってしまったときのようだ(知らんけど)。

これはいくらなんでも。
いくらなんでもだ。
いくらなんでもこれはおかしい。

中学一年生の私の娘でももうちょっとまともな文章を書くぞ。
基本的な文法くらいは勉強してから本を書いてくれ。(※)
中学一年生の私の娘でももうちょっと構成に頭を悩ますぞ。
安易に西暦3000年に設定しながら、新幹線やファミレスを登場させないでくれ。

ネット上のいろんなところにたくさんの突っ込みがあるようだから、ここであげつらうのはやめておくけど、いやはやきちんと出版されている本を読んでここまで驚いたのは初めてだ。
あー、ほんまにびっくりした。
どこぞの高校の文学部が書いた文芸誌のほうがまだましだ。
ついでに言えば12月24日はクリスマスではなくてクリスマスイブだ。
文章力がないだけではなくて、世間一般の常識も欠如しているのだから凄い。

デビルマンと是非対決させたいなあ・・・。


(※)
「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」
「いざ、着地してみるとそこは森の様な草むらに二人は降り立っていた」
「そこは入り口とは反対側に小さな鉄のふたのようなものがある」
「ほんのタイムを縮めるために」
「三人は分かち合うように抱き合った」
「居間の部屋」
「この日の午後十一時の間には」
「罪として重罪が下される」

他にもわけのわからん形容詞の乱発や同じ言葉の繰り返しなどももの凄いです。

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2005年12月04日

男の嫉妬 武士道の論理と心理<山本博文>−本を読んだ(今年73冊目)−

男の嫉妬筑摩書房 ; ISBN: 4480062653 ; (2005/10/04)

評価:82点(100点満点)

なるほどこれはわかりやすい。
江戸時代の武士の社会での様々な出来事を、見事に嫉妬という観点で整理している。
この本で取り上げている嫉妬は、いわゆる男女間での嫉妬ではなく、出世に関する男の嫉妬である。
戦国の世であれば、敵方に一番に飛び込み、手柄を上げることが出世と同じであった。例え命を失っても、それを評価されればよかった。
他の武士が手柄を立てれば、自分がそれ以上の手柄を立てればよかった。
そして江戸時代。平和が訪れ戦国時代と違い刀を振り回して手柄を立てることができなくなると、他人の昇進がよりいっそう気になるのだ。
微妙な平衡感覚。足の引っ張り合い。昇進した者に対する誹謗中傷。そりゃあ凄いものです。
スタンドプレーをする人間がいれば、それを批判する人間がおり、噂を流して失脚を狙ったり、褒め殺しをしてみたり。
いやはや、江戸時代も現代も全くおんなじだな。

現代の会社の中でもそうだものなあ。
入社したてのころは何もわかっていなかったが、16年も同じ会社で仕事をしているといろいろ見えてくる。
男の世界の嫉妬は江戸時代からかわっていないのだ。
見えっぱりの馬鹿ばっかりじゃないか。
自分もその中の1人であることは間違いない。
誰かが自分より早く昇格すればうれしくないもの。

ちょっと情けない。

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2005年10月01日

現役続行/プレイボールは二度かかる<矢崎良一他>−本を読んだ(今年60冊目)−

現役続行竹書房 ; ISBN: 4812420253 ; (2005/03)

評価:91点(100点満点)

田口壮、嶋重宣、小野仁、川崎憲次郎、阿井英二郎、丸尾英司、代田建紀、古田敦也、水上善雄、西本聖、前田勝宏……。
プロ野球の世界で彼らが経験した様々な栄光と挫折が、9人のライターにより書かれているノンフィクション。
どれもこれもしっかりとした取材にもとづいていて素晴らしい。
とにかく野球が好きだという、選手たちの思いがぐっと伝わってくる。

野球ファンにはたまらない話ばかりだと思うし、野球ファンじゃなくても、ちょっと疲れたサラリーマンには心に染みる話ばかりだ。

巨人にいた小野はいつにまにかいなくなったと思っていたが、ツインズの2Aにいるのは知らなかった。
また、彼と広島で去年ブレイクした嶋との関係は非常に興味深かったし。

世間から給与泥棒として興味本位であれだけ叩かれた川崎の本音も聞けた。
「投手は誰でも少々痛いくらいだったら投げてます。投げられるのに投げたくないという投手はいない」
今年の上原だって満身創痍で毎回投げていたと言うもんな。

西本の引退試合の話も感動的。
ううむ、いいノンフィクションだった。

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2005年07月31日

本を読んだ-炎精(かげろう)<山崎洋子>-

炎精毎日新聞社:ISBN:4-620-10625-9:2002年08月

評価:81点(100点満点)

1900年代前半の上海が舞台。
中国に進出した欧米列強そして日本。それぞれの国の策略と陰謀がひしめく世界での、一人の女のドラマチックな生き方を描く。
などと勝手にまとめてしまったが、そんなことでいいのだろうか。
ともかく、この時代の上海は恐ろしい。
中国国内が、共産党と国民党に分かれて激しい内戦状態にあり、そこに勝手に満州国を作って侵略していった日本や、欧米の列強、ロシアなどが虎視眈々と領土を狙っている。
上海という街は当時そんな中国の状態を象徴していたのだろう、いろんな国の人たちが住む町があり、いつも争いと謀略が渦巻いている。
中国って60年前はこんな状態だったのだ。
その後、太平洋戦争が終わって日本が中国から撤退し、中国共産党が国民党を台湾に追いやって中国全土を統一し、欧米諸国も追い出して、そんでもって現在の基礎が築かれ始めたのだ。
そうなのか?たぶんそうだ。

予想外のドラマチックな展開が、スピード感を持って迫ってくる。
分厚い本だが、夢中で先を読んでしまうので、決して飽きることはない。
ラストがちょっとあっさりしすぎていると思うがどうだろうか。あの後、隼人と凛子は助かったのだろうか。娘とは再会できたのだろうか。若干説明不足の感は否めないようで、読後感はすっきりしない。スケールの大きい小説だけになんとも惜しいなあ。

著者の本を読んだのは初めてだった。
また今度、借りてみよう。

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