2014年12月

「鳳」 11号

              鳳                        

     凡夫のつぶやき   堀瞳子
 東本願寺を訪れた時「日めくり法話 凡夫のつぶやき」を購入した。姫路生まれの版画家、岩田健三郎氏の書と絵に惹かれて何気なく買ったものだが、奥が深い。法話は四人の共著で三十一あり出典も書かれている。どれも分かり易い言葉だが、私の胸にぐさりと突き刺さるのである。いくつか紹介すると、 
  この耳はながねん人の云うことをおろそかに効いた耳です
  私のあたまにつのがあった つきあたって折れてわかった
  人のいうことをナルホドそうかとうなずけたら 
     何かそこには小さな花が咲くようである 
成人君主にはなれないが、自分を振り返ってみることが出来、愛唱している。その中で一番好きな法話がある。
  くだり坂には またくだり坂の 風光がある
 山に登る時、上りと下りは同じ道でも、見逃した景色や草花に驚くことがある。朝通った道なのにと思うことが多である。人間の身体には利き手、利き足、利き目など左右の違いがあり、懸命に見たつもりでも、一方面しか見ていないことに気付く。人生の折り返し点はとうに過ぎているが、くだり坂の風光を思いながら、この先を楽しめたらと思っている。

   作品  
        藤勢津子
   狼と思ふ遠くに吠えゐるは
   襟巻の向かう向きなる女かな
   寒燈にある明るさのほのぬくし
        高道章
   切干は漉き紙の色寺庇
   山眠る箒倒るる音のして
   空よりも水くらかりし鳰
        堀瞳子
   棒一本わたして閉づる冬の道
   厳寒の日の道つづく渚かな
   賛美歌に手拍子が付きクリスマス
        浅井陽子
   この冬を如何にと山を仰ぎけり
   寝付かれずふくろふ次を啼かざれば
   かたち佳き山より晴れて鷹の声
    「俳味箪笥」  俳句の背景の文章・・俳句のみ紹介
 踊子の冬服腕をつつまざる    井上草加江    高道章   
 人の家にまヽごとじみて茎の石  石橋秀野    藤勢津子
 ぞくぞくと雪が木につき諏訪神話  宮坂静生   堀瞳子
 霜もつよし蓮華とひらく八ケ嶽  前田普羅    浅井陽子 
      「俳句好風11」 案山子は神の使い  堀
           「言葉の素顔」     藤            
           「硝子戸の眺め」   高道
           「火によせて」     浅井         
                        文章は題のみ紹介しました。
       季節を詠む
    軍装の遺影は十九年の暮       高道
    金襴の帯や草履や着衣始       堀
    むささびの飛翔を何に喩えふべき   藤
    ナプキンを赤と緑にクリスマス     浅井 

              

「頭」の字(一月のお題)

                  

 頭には、「当間(とうま)」「天玉(あたま)」「貴間(あてま)」の転とか、諸説あります。いくつか言葉を「頭打ち」「頭数」「頭金」「頭ごなし」「頭が固い」、「膝頭」「鳥頭(とりかぶと)」。二十日正月のことを、「頭正月」(京阪地方)という所もあるそうです。
 本当に誰もが知っている、詠み人知らずの有名な俳句(?)から。
   実るほど頭のたれる稲穂かな
   実るほど頭をたれる稲穂かな
   実るほど頭の下がる稲穂かな
   実るほど頭を下げる稲穂かな
色々な表現があります。「たれる」は、「垂れる」と漢字で書く場合もあります。助詞の違いや、漢字の違い、漢字で書くか、ひらがなで書くか、俳句の特性をも言い表しているような気がします。

          

   北狐の雪は払はざる         後藤比奈夫

   猪の山佛なども飛んで来る      伊藤白潮

   寒禽や断台は母の如         しらいししずみ

   頭の大き子規の画像に冬籠る       原裕

   頭重き冬の日ことに神は近し       田川飛旅子

主に冬の句を選んでみました。

             


   

吹屋ふるさと村「西江邸」「広兼邸」

 高梁市成羽の「銅と弁柄の里・吹屋ふるさと村」の「西江邸」を訪ねました。西江邸<天領大庄屋〉は無形文化財指定!屋敷というより、城郭のような豪壮な建物です。芭蕉の句碑もあります。奥様の話では、江戸末期に文人が集まって句会をしていた膨大な資料が、手つかずになっているそうです。
 「西江邸は磁硫化鉄鉱(ローハの原石)の採掘で財をなした。ここで造られたローハは、吹屋の胡屋、中野屋、大黒屋などの工場で良質の弁柄(べんがら)に製造され、弁柄請負人大塚定次郎・広兼勇左衛門らの手により日本各地に販売されている。…販路は西欧まで及び、西江家をはじめとする関係者は巨万の富を積むこととなった。しかし、戦後の技術革新の波は、簡単で良質の弁柄が大量生産できるようになり・・採掘は中止・・現在に至っている。」
江戸時代の繁栄期に建てられた5つの蔵を持つ西江邸にはいまでも18代目のご夫妻が住んで守っておられます。郷蔵の蔵には、弁柄を用いた久谷焼や、漆器などが展示してあります。弁柄は金以上に値打ちがあったころが偲ばれます。
このあたりでは、旧吹屋小学校、夢街道(ととや道)と呼ばれるベンガラ色の街並み、笹畝坑道、ベンガラ館、広兼邸などが観光できます。P1130927

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備中吹屋 「西江邸」 芭蕉句碑

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「高梁川」 高梁川流域連盟72

「高梁川」  高梁川流域連盟72   特集「星空のメッカ」
機関誌「高梁川」を発行する「高梁川流域連盟」は高梁川の本流・支流・支川を擁する市町村および、高梁川に水源を求める市町の7市3町(新見市・高梁市・総社市・早島市・倉敷市・矢掛町・井原市・浅口市・里庄町・笠岡市)を正会員として構成されています。
今回392ページの内容は「高梁川流域の自然フォトコンテスト2013」特集「星空のメッカ」「リレーポエム(詩・歌・俳句・川柳・漢詩」「文章18篇」など充実しています。
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リレーポエム   俳句と文章
 「うたひつつ」    工藤泰子

   春の川わがクリスタルちりぢりに

はるけきに海鳴りひびく春の川  

霾るや浚渫船が動き出す

桃畑うつす小川や春の逝く

うたひつつそぞろそぞろのすみれぐさ

貯水池へ流れ落ちゆく花筏

水音は五つの樋門犬ふぐり

貯水池は水を湛へて柳垂れ

草青む高瀬通しの水門に

閘門の跡つつぬけに花菜風

菜の花の奥より船頭現はれる

風光るあつと言ふ間の渡し舟

船頭に踊り子草をもらひけり

対岸の船頭を呼ぶ白日傘

高瀬舟往来の地や風薫る

うたかたの流れ流れて夏きざす

白服や今も無料の渡し舟

水無月や水門遺構となりてあり

つばくらめ一級河川も合流す

夏柳に指先触れて水の音

単線の線路あちこち夏薊

さかのぼる川を俯瞰す桐の花

洞内の温度変はらず滴れり

洞穴の水音探る夏帽子

永劫と思ふ石筍滴りて

船頭の鷹揚なこと南風

水門の縄朽ちてをり夏蓬

朽ち舟の舳先病葉二三枚

新橋梁建設中や雲の峰

早口に波の穂先や夏河口

           
       金光町は桜のうつくしい町である。桜が咲くと、金光駅、里見川の土手、丸山公園は桜色に染まる。通称「良寛さんの寺」の円通寺公園の高台から桜に縁どられた“河口”を眺めていると、まるで平家物語絵巻を観ている様だ。
 葉桜のころ酒津公園を訪れた。貯水池の水は「疎水百選」に選ばれ、東西用水(高梁川・笠井堰掛)の碑が建つ五つの樋門からは、西岸,西部、南部、倉敷、備前樋用水に配られて右に左に流れ、やがて市街地に吞み込まれて見えなくなる。貯水池の桜並木を北へ行くと八ヶ郷用水路があり、無為村荘(元大原家別荘)や古民家を改装した「川辺のレストラン」もあり、散策を楽しめる。この用水の水がなんと我が家の蛇口に到達しているとは驚きだ。

さて、酒津の近くに「水江の渡し場」があると聞き、探しまわった。小さな立看板を見つけ車を河原へ進めた。来年、完成予定の新橋の工事関係の車両ばかり置いてある。「立ち入り禁止」の看板まである。ともかく川面の見える所まで河原を行くと、対岸に舟を見つけた。手を振ると、迎えに来てくれた。意外にも渡船はモーターボートであった。往年の“渡し”ではないが、しばし船旅を楽しんだ。新橋が完成すると廃止の運命だそうだ。

江戸時代、物資を運搬する「高瀬舟」は高梁から玉島まで運行した。船穂には「高瀬通し」があり、一ノ口水門はパナマ運河のような閘門式だったとか・・。その遺構も探すのに苦労した。かつての水路は埋め立てられたり、地下となっていたりして、高瀬舟の発着場―川港の「ふなだまり」にも今は案内看板が立つだけである。大正時代の面影をのこす銭湯や羽黒神社をみると北前船で賑わった栄光の時代を感じることができる。神社では今でも「からす天狗」が睨みを利かしている。

俳句を作るにあたって 玉島港、酒津公園、水江の渡し、水門などを吟行した。また伯備線で新見、井倉に行き、井倉洞で遊んだ。洞窟の太古の暗がりより滴れる命の雫が、こくこくと巨大な鍾乳石を造る。一方で、その一滴は、無数の他の一滴たちと共に大きな流れとなり、海へと下ってゆく。〈人はみな大河の一滴〉そんなフレーズをうたひつつ・・・ (運河・遥照同人) 
       
  

 

鴨の陣

池にはいろいろな種類の鴨の陣があります。近づくと逃げるので撮影は難しいです。
大きな望遠レンズを付けて撮ればいいのでしょうが・・マガモ、クロガモ、ヒドリガモでしょうか?溜池と判る取水口のバルブを撮りました。お地蔵様もあります。池の真ん中の道には「お旅所」があります。このあたりは神功皇后伝説の地で、道木といわれています。今は近くを新幹線が通っています。池の影は新幹線の架橋です。
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12月MMKの俳句感想

             
天にも地にもまた人の世にも心の痛むことの多い今日この頃

地にうすく鞣されている鼬の死   智行

 鼬に鶏の血を吸われたとか、ちらっと人をかえりみて逃げたとかの話があります。狡くて憎い鼬ですが、鼬は鼬で懸命に生きている。それが今や車時代。何台もの車に次々に轢かれて革だけになる、このことを「地にうすく鞣されている」と俳句的省略表現にしていますね。こういう死に方が鼬の死だというのは何とも救いようの無い感じがしますが・・・これも死の姿ですね。野生動物と人との距離も近くなっていますしね。

息切れをしてゐるやうな冬の蠅   智行

 この句は、「息切れをしているような」と見たところがポイントですね。冬の蠅も暖かな所なら忙しなく飛び回る。それはあたかもはあはあと喘いでいるようだと。一方、寒い所ではじっと動かない。もはや生きる根気をなくしているようでもある。いずれにしても冬に生きるのは蠅にとって大変なことには違いない。

霜柱ハープの楽譜美しく      とき魚

 恥ずかしながらハープの楽譜のことも奏法のことも知りません。ただ、音と次の音の大きな高低差を縦の線で繋いである特徴的なハープの楽譜を見たことはある。そういうハープの楽譜に美しさを見出しているのですね。霜柱の立つ様の美しさと重ね合わせているのですね。

鳶鴉わらわらと飛ぶ地震の後    とき魚

 「わらわらと」の語が効果的ですね。地震におどろきおののきうろうろする・・・生きとし生けるもの皆わらわらと・・・私達にもその様子が目に焼き付いています。

帰り花与謝の入り江は日を返し   瞳子

 今月は与謝への紀行の句。山の展望台から見る天橋立、冬日を反射する与謝の海。傍らには帰り花。冬日の美しい情景を、読む人にしっかりと想起させるいい句です.。

山迫るたび列車揺れ冬紅葉     瞳子

山が迫ると風圧を受けて揺らぐ列車を詠んだものですが、冬紅葉にも圧力を感じたと言うことでしょうね。列車の中の人々も感動で揺らいでいるよう。

雪吊りや百万石の綱の張り     八重子

 俳句的省略表現でいいですね。「加賀百万石の兼六公園の雪吊り」ですね。兼六公園は高い雪吊りが多く見事です。雪吊りの揺るぎなく端正な姿を「綱の張り」と捉えた。好きな句です。

本願寺の畳になれる藺を植うる   八重子

 由緒ある寺で使われる畳の藺草、立派な藺草に育てようという意気込みと誇りを感じさせる句です。

解体の分別厳し冬日和       恭子

 十数年前から家の解体にも廃材の分別が定められています。そのため日数も費用もかかりますが環境に優しくなりました。家の解体を経験しないと知らなかったことですね。

鬼門より少し離れて実万両     恭子

 普段はあまり気に掛けない鬼門。ところが家の建て替えとか庭の造り替えとかになると、やはり災いがないようにと、鬼門には避けるべきものがあるようです。

鯱の尾のはねて冬日を返しけり   加代

 晴れ渡った冬空へ向けて跳ね上げた鯱の尾。曲線の美しさと反射光。きりっとした冬の空気を感じます。

神の留守閂しかと雁木門  加代

 雁木門とは岡山城の要塞門のことだそうです。神無月頃の静かで頑丈な門のたたずまいを感じさせる句です。「しかと」が効いていますね。

引越しの荷に鉢植えの冬薔薇も   順子

トラックに思い出積むや小六月   順子

 今回は引っ越しの句で纏めていますね。「鉢植えの冬薔薇」を詠むことで、今までの草花を愛でていた生活の様子やこれからの生活への期待などを想像させていいですね。そして結局捨てずに持っていく品々は思い出の詰まった物、捨てられない物なのですね。「小六月」の季語で前途には明るい予感がします。

冬囲墨の色なる鯉沈む       千秋

 沈んだ冬鯉の鈍重さ。「墨の色」は正に冬の鯉ですね。「緋鯉」では雰囲気が出ませんね。

地に咳をこぼして去りぬ靴の音   千秋

 音だけで詠み上げた今月の珍しい句。何だか思わせ振りな咳だと思いませんか。「去った人の靴音で解るわ、あの人よ。来たよと合図のような咳を残して去ったわ」とか。いいですね。

日脚伸ぶ丈の短き能衣装      泰子

 発見の句。脚が見える能衣装の丈の短さを見つけ、「日脚」が長くなったことを意識的に対照させていますね。余談ですが『羽衣』の羽衣はうすい衣でなく厚い衣です。

膝の猫日向ぼっこの猫である   泰子

 「我が輩は猫である」の口調。日向ぼっこをしているのは膝の猫だけではなく作者も日向ぼっこの猫になっているのでしょう。ほっこりとうとうとと。

 誰かの口調ではありませんが「しっかりと」句に向き合いたいと思っているのですが・・・

では、よいお年を!!
      
             

ちあきの「MMKの俳句」鑑賞12月

                  

公美子さん

クリスマスキャロル溢るる地下の街

 クリスマスキャロルが流れてきて、賑やかな幸せに満ちた地下街が目に浮かびます。反面師走の慌ただしい中、まだ新年を迎える準備が終わっていない心忙しさが対比されて句に深みが出てきました。

銀杏散る連隊跡は無人駅

 かつて練兵場があった場所は、今はもう無人駅となり、色鮮やかな銀杏の葉が散っているばかり。日本のために死んでいった人を悼む気持ちを、季語によって見事に読者に感じさせ、今の平和を感じている句だと思います。

山茶花の垣を隔てて避難塔

 これも災害で亡くなった人々を思い出させます。「山茶花」の季語によって、作者の優しさが見えます。花があたかも人々を慰めているように感じたのでしょう。

シクラメン一人の刻の使いよう

 様々な色、形を持つシクラメン。私はこの句からは、真っ赤な立派なシクラメンを想像しました。このシクラメンのように私の時間は、私のものより充実させて使いますという思いを感じました。

三和さん

荒れ地今ソーラー発電冬将軍

栃木でも荒れ地と言わずソーラー発電しています。社会ではいろいろ話題になっていますが、私は良いとも悪いとも判断ができません。作者は、季語冬将軍で「富」有るものを非難しているのでしょうか。

闇に手を伸べるがごとき去年今年

 これも鑑賞が、難しい。確たる物は、手だけです。「闇」を感覚で捉え共鳴しなければ理解できないのでしょう。今年と来年の曖昧模糊とした時間を「闇」とし、それを人工的に手で切る、巧く言い当てたと思いました。

鵙の贄五感で守る我が命

 季語と自分の命の接点はいかに。なにか由来があるのでしょうか。「たまたま」さんの鑑賞は、五感で守るでは足りないと。感性を分かり合えるのですね。

宵時雨隠岐行く船の点滅灯

出航の白波闇に宵時雨

宵時雨で二句。泰子さんの鑑賞にもありますが、色々深読みができます。私は、寂しさよりは、冬の港のしみじみとした落ち着きを感じました。

眉女さん

早や師走噴火と地震に気を取られ

 時の流れは齢と共に早くなるような気がします。その上、年の後半には、日本各地で次から次へ、大噴火があったり、地震があったりしました。その被災者への思いを、また災害を憂いながら俳句にしていると思いました。

凍蝶や予防注射の腕重し

肺炎球菌ワクチン接種神の留守

両方とも「健康で長生き」を願う気持ちが分かります。このような難しい題材を俳句にしようという心意気にまず感動しました。しかも儚い、命たえだえな「凍蝶」の季語を配置したことにより、生き残ることへの執念のようなものまで感じます。私も家庭医の先生に「いつ死んでもいいんです」と言いながら、予防接種をしたり、薬をいただいたりしています。凄まじい執念ですよね。二句目「神の留守」の季語も、神のいない間ゆえ自分の健康を守らなければという思いでしょうか。それとも神の居ぬ間に体調を整え、神のお帰りを待とうというのでしょうか。とにかく新しい俳句に挑戦することに頭が下がりました。        

寄島の牡蠣

今年の牡蠣の出来は上々だそうです!
寄島港の牡蠣小屋は大忙しです。店頭では焼牡蠣をサービスしています。
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H26年12月「地」の俳句あれこれ

         

檜尾とき魚

闇冴ゆる天地の辻に立てば尚

鳶鴉わらわらと飛ぶ地震の後

谷口智行

地にうすく鞣されてゐる鼬の死

猪鍋の地味噌の味に足らひけり

新居三和

冬の蝶低く飛びゆく流刑の地

荒れ地今ソーラー発電冬将軍

堀瞳子

大地みな眠りにつきぬ鰤起し

猟初地霊を祀り行きにけり

安藤加代

地に着かぬ俳句の道や冬の薔薇

地下茎より押し上ぐ葦の冬木の芽

佐藤八重子

蓮根掘る回る地球を傷つけて

地引網繕ふ爺の小春かな

池端順子

銀杏落葉地の輝きを天にまで

冬温し「地の塩なれ」の聖句読み

野中千秋

天と地の呼吸やはらか小春かな

地に咳をこぼして去りぬ靴の音

坂東恭子

短日や術後の足を地に降ろす

雪催観光名所祖谷地方

松村公美子

地中這う土竜の行方冬ざるる

クリスマスキャロル溢るる地下の街

岩城眉女

早や師走噴火と地震に気を取られ

「はやぶさ」の跳躍台か地球冬

工藤泰子

冬麗スマホに地図のアプリなど
竜の玉零れ地平の新しき 
    


谷口智行の句(H26年12月)

冬泉不測の深を目で測る

風邪の子の体触られどほしなる

息切れをしてゐるやうな冬の蠅

かすかなるむぎぶえ山村暮鳥の忌

朴落葉朽ちて防石網のなか


檜尾とき魚の句(H26年12月)

霜柱ハープの楽譜美しき

裸木となりゆく雨の橡大樹

鳴いて遠嶺の雲の星明り

茶畑の日差し眩しき風邪心地

霜柱ダツラまだまだ咲く気らし

堀瞳子の句(H26年12月)

冬麗や大江の山は靄立ちて

帰り花与謝の入江は日を返し

丹後より丹波へリレー冬紅葉

山迫るたび列車揺れ冬紅葉

山眠る大江に赤電車青電車

佐藤八重子の句(H26年12月)

雪吊りや百万石の綱の張り

本願寺の畳となれる藺を植うる

日向ぼこ猫になるまでしてをりぬ

ハートに火ついて解けたり雪女郎

木の葉髪賞味期限の際にゐて 

坂東恭子の句(H26年12月)

山茶花の今朝もまた散り不動堂

解体の分別厳し冬日和

冬の月話題は黄泉に及びけり

鬼門より少し離れて実万両

山に沿ひ落ち葉の径を行く遍路

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