山内節子 第一句集 「七野七種」 角川学芸出版を紹介します。
つらつらと つらなるいのち くわとのひも
山内節子さんの作品が安心して読めるのは、どの句も現場に立って物を見つめて真摯に詠んでいるからである。・・・序文より 茨木和生
自選句
お山から雨脚早し御田植
左義長の竹伐りに行く小舟かな
憧れが恋の始まり雲の峰
豆筵広げ相場のラジオ聞く
正倉院正面にして暦売る
夫にもと買ふ歌神の宝船
歌貝の句を諳んじて雛の客
産み月の髪を切りきて夏帽子
汐汲と決めて羽子板市に行く
つらつらとつらなるいのちくわとのひも
満員の川舟連ね紅葉狩
はやしけり京の七野の七種を
共鳴句
懸想文ぎなた読みしてゐたりけり
鬼封じ込めたる巌春の雪
竜穴の口に日の入る彼岸かな
端午鰤甑隼人の裔の海士
年表を皇紀でしるし献氷祭
天窓の小さき包パオの夏炉かな(モンゴル)
御花園(ぎょくわゑん)の岩の築山菊の宴
午後からも山影退かず石鼎忌
涅槃図の沙羅は黄金に枯れゐたり
うすがみのふくれきつたる葱坊主
昼は子と貝掘りに来て十三夜
この案山子煙草のにほひしてゐたり
猫よらず虫こないも苗四月馬鹿
湿原の荒れてをりたる花野かな
星落ちし所を祀り山桜
野遊びの続きに乗れる渡し舟
毒茸見とれて人に遅れたる
夜神楽の中入りに投ぐ福の種
ケンケンと朱書きの札も初鰹
落葉掻寒山似よと言はれても
寒山;看経不解義 お経みるけど意味は知らん
拾得;与箒不除塵 箒もってても塵ははかん
おかしみがありそして深いです。悟りの極致ですね。