佐藤八重子

秋風や名札薄れし薬草園

蚯蚓鳴くおいと呼ばれし名無し妻

谷口智行

無名氏のマスク外せるところかな

縄跳の子よ名にし負ふ花街の

池端順子

小春日やタンタンと言ふパンダの名

名人の音と褒められ松手入れ

野中千秋

名も知らぬ穂絮大きく飛ぶ夕べ

ふるさとは名水の里紅葉晴

岩城眉女

秋風や人を恋する名残り病み

名月に心の底を見抜かれて

坂東恭子

飛行士の名だたる技術小春空
          紅葉山名前呼ばれてゐるやうな

松村公美子
  名物の饂飩にかける柚子辛子

秋日和皇居の木々にみな名札

安藤加代

名も知らぬ花と出会ひて秋惜しむ

俳名は持たぬと決めてちゃんちゃんこ

新居三和

名工の寄木文箱や秋ともし

地芝居の子役の見得と名せりふ

工藤泰子

名前より番号大事冬ざるる

幼名で呼んで呼ばれて花八つ手

    堀瞳子

多羅葉に好きな人の名冬隣

風呂名残塩瀬の菊の帯締めて