お知らせ

季刊「鳳」19号

季刊  19号 

あるいは山を、

あるいは海を

ありえるであろう、

自己の魂を覓ぐべく、

ほうほう(鳳々)と

声にして跋渉する。

「弱冠」

~人は生れて十年したら「幼」といい、学門を始める。二十年したら「弱」といい、冠をつける。三十年したら「壮」といい、妻を迎える。四十年したら「強」といい仕官する。五十年したら「艾(がい)」といい、重要な官職につく。六十年したら「耆(き)といい、人を指揮する。七十年すると「老」といい、家事をその子に伝える。八十年以上を「耄(ぼう)」といい、生れて七年までを「悼(とう)」といい、「耄」と「悼」の者は、罪を犯しても刑を加えない。百年の人を「期」といい、ねんごろに養う~(「礼記(らいき)より)弱冠はここからきた言葉で、二十歳の男子のことである。・・・・一般では、実際に冠をつけることはないが、大人になるということは、目に見えない冠を賜ることになる。その冠には自負や責任がちりばめられている。冠を心に、胸を張って人生を歩いて欲しいものである。浅井陽子

作品  「青々忌」  浅井陽子  (読んで思った鑑賞・感想少し・・工藤泰子)

本抱けば文字踊るかも空也の忌 

空也の口から小鳥が飛び出す像がありますよね!文字も踊るはず・・。  

近松忌解きたる帯に足とられ      

近松に似合う措辞!

蕪村忌の暮れて艶めく空の色  

蕪村の画のタッチ好きです。艶めく空の色なんですね。

青々忌燠の芯まで透き通る  (「俳句」一二月号より転載) 

透き通るのは、焔に不純物がないから・・見ている作者の純な心が見れる。

笹鳴や胴埋もるる石仏

青空へ長き坂道帰り花  (「俳壇」一二月号より転載)

虎落笛嵯峨も奥なる仏訪ふ

木漏れ日を入れてふんはり落葉籠 (「俳句四季」一二月号より転載)

落葉焚焔にふつと水の色  
ふつと・・元素記号!?

昆布巻の鮒の腸とる比良颪(「俳句界」一二月号より転載)

吟行で見た情景が的確な季語と結びついて感慨を呼んだ!    

作品&エッセイ

おたふく」  水野紀子 京丹後在住「参」所属、句集「旦」

宵込めの芋嵐とぞなりにける

蔓たぐり婆が引くまた蔓が引く

牧閉し連山空へ帰りけり

おたふくに皺永久に無しごまめ噛む

「平畑静踏と季語」 すずきみのる 

所属結社「参」「汀」「城」 、句集に「遊歩」・合同句集「俳句最前線」

静踏が関西から移住した関東の地で・・・農耕文化以前の風土精神性の残存・・縄文文化への着目・・・・

鹿谷を夢に黒曜石一個 静踏  (蛇笏賞受賞・「壺国」より)

上雪を除け縄文の雪を舐む 〃

新季語の発見が、俳句世界の拡充に繋がることは明らかであるが、その発見の方向性は、言葉自体の発見と従来の季語の本意の発見という両方向があるように思われる。平畑静踏の場合は、後者に属しており、季語の背景に縄文時代を設定することを通じて・・・俳句世界に新展開をもたらすことに成功した・・・季語と季語以外の部分との二物衝撃の相互作用を通じて・・日々季語の内実の拡充・深化・・

句句燦燦(3)    「季語に息吹を」  浅井陽子

歯固に鴨の砂肝造りけり   茨木和生

歯固のこは深吉野の猪ならめ   和生

歯固の鮑に小疵ありにけり    和生

搗栗のくちやくちやの皺毛の国の  森 澄雄

「季語を死語にしてはならない」との思いが強く、講演会などでも述べられる。この「歯固」は、長寿を願って年んお初めに固いものを食べる風習で、「歯」は「齢」の通じ、齢を固めて健康を増す意味だという・・「絶滅季語」になっているように思われがちだが・・・・・

エッセイ 「野鳥の楽園 伊良湖・藤前干潟」 森山久代「運河・晨」

 むかし、伊勢湾の奥には広大な干潟が広がっていて、・・「あゆち潟」と呼ばれていた。「桜田へ鶴啼き渡る年魚市潟(あゆちがた)潮干しにけらし鶴鳴き渡る」(万葉集・高市黒人)に詠まれている。現在の「愛知」という県名もここから・・(久代さんの好奇心が楽しく展開して文も句も好き)

三百年いま又鷹の来る季ぞ   中村草田男

鷹渡り過ぎたる空に何もなし  栗田やすし

やや冷えて鴨待つ水のひろさかな  鷲谷七菜子

日のあたるところがほぐれ鴨の陣  飴山 實

この旅の思い出波の浮寝鳥     星野立子

あかつきの月あるうちを鳥帰る   森山久代

初鴨に朝の空気の行き届く      〃

 私たちの暮らしと干潟・・では「一度失った自然を取り戻すことは、並大抵のことではないと切実に思うこのごろである。」と・・。

 

季語を味わう① 春を待つ  浅井陽子

春を待つおなじこころに鳥けもの   桂信子

少年を枝にとまらせ春待つ木    西東三鬼

なんとなく街がむらさき春を待つ   田中裕明

 季語「春を待つ」は、すでに情緒をふくんでいるので、その上に余情的な言葉はいらない。物を配して詠むことが、その気持ちをより鮮明に表わすことができるのではと思う。・・季語の本意を知ればしるほど俳句は楽しい。

二月・きさらぎ・February

二月きさらぎFebruary

立春、寒明、初春、早春、春浅し、睦月、旧正月、二月礼者、ニの替、絵踏、初午、針供養、奈良の山焼、 雪解、雪しろ、雪崩、残雪、雪間、凍解、氷解、薄氷、沍返る(いてかえる)、冴返る、春寒、余寒、 春の風邪、春時雨、猫の恋、白魚、公魚(わかさぎ)、鰔(さより)、野焼く、焼野、山焼く、末黒の芒(すすき) 麦踏、木の実植う、猫柳片栗の花、雛菊、春菊、菠薐草(ほうれんそう)蕗の薹(ふきのとう)、水菜、 海苔、獺の祭梅、梅見、盆梅、紅梅、山茱萸、木五倍子(きぶし)、黄梅、三椏(みつまた)、鶯(うぐいす)、下萌、いぬふぐり、菜種御供、磯竈、若布(わかめ)、バレンタイン、義仲忌、実朝忌、比良八講
節分の翌日が立春である。暦の上では春なのに・・梅の古名は「風待草」春風を待って咲くから・・日本の代表的な春の花木で、原産地は中国中部とされる。遣隋使が中国から梅見の宴の華やかな帰国と共に持ち帰ったものだろう。


今月のお題は「景」です。

2月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。
   

「景」と言えば、「景勝地」

日経新聞に間違えやすい景勝地編がありました。さて何県にあるでしょうか?

文化財編;1位・吉見百穴。2位・吉野ヶ里。3位・二重橋。4位・永平寺。5位・高野山金剛峯寺。

景勝地編;1位・北岳。2位・笹川流れ。3位・袋田の滝。4位龍泉洞。5位・田沢湖。

正解はコメントで・・


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浅井陽子集/自註現代俳句シリーズ12期 ⑪ 

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自註現代俳句シリーズ12期 ⑪

 浅井陽子集    発行者  大串章
公益社団法人俳人協会 出版
 この本は自選300句に自註を付したもの・・です。
たくさん紹介したいので、折りにふれて紹介したいと思います。

プロフイール;京都府生まれ・平成3年「運河」入会、茨木和生に師事・

平成11年浮標賞受賞・平成13年「第二回俳句界賞」、14年「深吉野賞」、15年「北溟社賞」等受賞。平成14年「晨」同人参加。平成24年「鳳」創刊同人、現在「鳳」発行人、「運河」「晨」同人。句集「狐火」、「紅鏡」。俳人協会評議員、京都俳句作家協会幹事。大阪俳人クラブ会員。大阪俳句史研究会会員。

月山の鷹の座を月照らし出す  平成11年

 夫の定年を記念して東北地方を一周。出来るだけ「奥の細道」を辿った。一連の30句「月山」で第2回「俳句界賞」を受賞。励みになった。

杉山を日の移りゆく注連貰ひ  平成13年

 東吉野村や川上村によく通った。山を見ているとほっとする自分がいる。第9回「深吉野賞」を受賞。応募句30句の中のひとつ。

寒芹や水はひかりの玉ととび  平成13年

 谷水は日を弾きながら日の中へとぶ。日を含む水玉はひかりとなる。寒芹の紅を帯びた茎や葉が水玉に打たれて返すことを繰り返す。

水も日も神のものよと紙を干す  平成13年

 吉野町国栖の紙漉きを故藤本安騎生さんに連れて行っていただく。紙を干しながら呟かれた言葉が句に、川上の大峯山が輝いていた。

(かぜ)(まと)()(まと)となり()(うま)跳ぶ(とぶ)  平成20年作

 馬の肢体の美しさには惚れぼれする。仔馬もすでに親にひけをとらない美しさがある。風も日も仔馬にぴったりと寄り添っていた。

(はる)(ざし)(いし)白布(はくふ)(つつ)けり   平成20年作

 京丹波の大原神社は養蚕と安産の神様。季語は「春志」で秋の「秋志」には、春に鼠除けに貰った小石を返す。小石を猫と呼ぶ。

「星雲」37号

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鳥井保和主宰星雲37号を紹介します。

季節の一句さざ波のごと粉雪の地を這へり 鳥井保和   第3句集「星天」より

 海近くのホテルだと海産物中心の食事が出てくる。山の宿だと山の恵み中心の食事が出てくる。ぶっきら棒で申し訳ないが、街の食事はお金を出せば海も山もない。さざ波は水、粉雪は空、そして落ちてから地を這う。一見色んな活字が縄張り争いの喧嘩をし合いそうだが、読後感は思ったより澄明で安心(あんじん)。地の静けさの上を粉雪の静かさが微音を立て過ぎ去る。これが筆圧というものか。
花尻 万博 (花尻氏は第二回攝津幸彦記念賞受賞)

天狼集

海坂の琥珀に釣瓶落としかな 鳥井保和

岬角の枯の極まる枯木灘    〃

極星集 

台風圏縄文の森荒れゐたり   山田佳郷

沖雲の衰へそめし白露かな   岩本たき代

人の来る気配恐ろし芒原   小林邦子

凛と聳つ雲筒抜けて夏の富士  竹正與

老僧を囲む僧坊菊の酒   成千代子

天星燦燦  鳥井保和選 

鵙猛る無人駅舎の手配書  澤禎宣

百歳が曲り角でふ生身魂  園部知宏

星影の窓に人影秋灯火   前田長徳

尊徳忌陽のある限り畑にゐて  新井たか志

一笛に集散早し体育祭    土江祥元

糸瓜忌や処方の薬また増えし  岡本 敬

伊良湖岬いま打ち晴れて鷹の天 加藤行惠

化粧ふ山装ふ峡や日本美し   中川めぐ美

結界に入り佛恩の風涼し    平岡妙子

秋の蛇泳ぎきつたる水緊る(しまる) 吉田捷子

水底に一村沈む錦秋湖     小林永以子

手筒花火火の粉の滝を浴びにけり 田島和子

町石道抜けて大門天高し    中嶋利夫

華の字の脚を伸ばせば曼珠沙華 木下恵三

銀杏散る真只中に知事公舎  小川望光子

 誓子の句碑巡り37 岐阜県羽島市・圓隆寺

学門のさびしさに堪へ炭をつぐ 誓子

色変へぬ松を背に誓子句碑  保和

 特別作品

「十三夜」  園部知宏

豆稲架の乾き切つたる山日和

串に挿す落鮎旨し石かまど

城濠に鯉の清けき十三夜

星座探訪36より 柘植史子氏の星雲の俳句探訪 

プロフイール;俳人協会会員・「ふう」同人・句集「レノンの忌」・第60回角川俳句大賞受賞

 季節の作品 「春着の子」より  

町ぢゆうの仮名拾ひよむ春着の子  柘植史子

消えかかる水輪に浮かび鳰      〃

天星集夕立の初めの粒を掌に   新井たか志

一天にわかに掻き曇り激しく降りだす夕立は、雨のなかでもひときわ存在感がある。空の色や雲の動き、風の匂いからも、来るぞ、と思わせるこの雨。掌を空に広げて待ち構えていたのかも知れない。「初め」の措辞がいきている。

     祭笛吹いて漁師と思はれず   吉田捷子

昴星集歌舞伎座の天に隈ある朧月   内山恭子

一読、「隈」が歌舞伎の化粧の隈取を連想させるところが面白い。ぼんやりと霞んで見える月を「隈ある」と詠んだことで、銀座の空にあがった朧月が歌舞伎座の舞台上の月のようにも思えてくる。斬新な工夫がさりげなく巧みである。

星雲集ビアガーデン赤き夕日に囲まれて  岡本千恵子

 読み物

「熊野を駆ける」熊野古道伝説紀行9 大上敬史

御坂(みさか)  (海南市藤白)

 藤代の み坂をこゆと 白妙の 我が衣手は ぬれにけるかも

有間皇子事件の43年後、無名の付き人が詠んだのがこの歌である。熊野神が棲む山を「御山」と言うように、この坂に、最高位の「御」をつけて詠んだ。

丁石地蔵  海南市藤白   熊野古道藤白坂)

筆捨松 (海南市下津町橘本1612地蔵峯寺 北東) 

藤代峠  (同上 北)

 家にあれば笥(け)に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る 

有間皇子は、護送の途中、この峠で・・椎の葉に盛られた一握りの飯を見る。死を覚悟した彼が口にする飯。この歌は死の「気(け)」と縊られるという「強(し)い」を詠みこんだ予言詩であるとの説もある。

御所の芝 (同上)熊野路第一の美景なり。花山法皇(花山院)熊野御幸の折、頓宮(仮の宮)の跡と伝わる。

 身体の俳句37「ハグとチュウのこと」 小川望光子(医療センター医師)

雪はげし抱かれて息のつまりしごと 橋本多佳子

「ハグ(hug)」とは「抱擁」のこと。「チュウ」とは「接吻」のこと。虚子の句に〈鞦韆に抱きのせて沓に接吻す〉があります。・・ハグすると安心感をもたらすセロトニンと快楽物質であるドーパミンという2つの物質が脳内で放出されるとのこと。・・・

いなづまの野より帰りし猫を抱く  橋本多佳子

大好きな苺ケーキの苺にキス    杉本 零

稜線にキスして富士の初日かな   佐々木敏光

黄落や朝の習慣ハグとキス     小川望光子

昴星燦燦   選後評  鳥井保和 

流星や父母が逝き兄も逝き   天倉 都

いちにちの命いたはる虫の声   服部久美

水の秋沼の底ひも空のあを   内山恭子
骨酒や嘉門次小屋の炉火明り  荒川くみ子
一湾の空の限りに鰯雲     大野良子
美しく世を生きたし水の澄む日なり 奥井志津
秋麗の遠海まろし空まろし    池田邦子     

 星雲集鑑賞  坂本登(OPUS

  季節の作品 「昔の顏」より

行きがけにごみ持たされる今朝の冬  坂本登

毛皮着て昔の顏を誰も知らず      〃     

  鑑賞

荒磯の潮の香りの焼栄螺    森本潤子

母の日や享年三十路の母の墓  岡本千恵子

車窓より植田みてまた田植見て 椎崎義孝

田植えのころの列車旅というのは気持ちのいいもの。植田終わったばかりの田があるかと思えばこっちの田は田植えの真最中。もちろん植えているのは人ではなく田植機だが。               



五十嵐藤重 句集「山揚げ」

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五十嵐藤重(とうじゅう)さんの第2句集「山揚げ」を紹介します。山揚げは野州烏山に450年以上も続く夏祭で、年明けにはユネスコ無形文化遺産に登録されるという、路上に上演される芝居のことだそうです。

帯文」 選句を終えて句集名は「山揚げ」以外に考えられないと思うようになった。というのは平畑静塔句集「漁歌」が上梓されたのは昭和五六年のことだが、その集の中にあった、

山揚げにまことの雲も道具立  静塔

紋白も出て山揚げの板につく  静塔

という昭和五十年作の二句に惹かれたことを思い出したからである。山揚げを地方季語として定着するようにもっともっと地に食い入って詠んでほしいと思ったからである。茨木和生(跋より)



自選一二句

虹立ちて卒寿の母の合掌す

静踏の生誕百年葡萄垂る

蜃気楼浮かび上がりしロシア船

新ワインゲルマン鬚の議論好き

ひらがなの母の便りと新走り

峯行の鉢巻締めしまま眠る

山里に一筋の煙芋煮会

野火の火の立ち上がりたる戊辰の碑

山揚げの蝦蟇の出どころ稲光

泣かぬ子をなほ差し上げて泣き相撲

囀に赤の広場の明けゆける

父の忌は終戦日なり風騒ぐ

山揚げの句

山揚げの山の裏より稲光    藤重

山揚げの山を崩して平とす    〃

早飯を食らふも得手と山揚げ衆  〃

峯雲に山揚げの山押し上ぐる   〃

若衆の跳ねて確かむ山車舞台   〃

共鳴句

誰よりも高く肩くま初詣

雪の壁押す除雪車の黒けぶり

満天の星に外せる神楽面

番犬の眼の前よぎる嫁が君

七福神巡りて雪に転びたる

どんど塚組む校庭のどまんなか

午祭金精様の注連吹つ飛び

着ぶくれの吾に鼻寄す麻薬犬

日向ぼこ古代ローマの浴場に

花粉症ベトナムに来て治りけり

一本の針金づくり兎罠

自在鉤一つ落として牡丹鍋

 プロフイール;福島生まれ、宇都宮市在住、S52年平畑静塔に師事、「天狼」「圭」「鉾」「白魚火」を経て「運河」入会。句集「棟木」(H23年)、第14回平畑静塔全国俳句大会静塔賞受賞。

 



一月・正月・太郎月・January

賀正2017平成29

一月正月太郎月January


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今年初めてのお題は「縁」です。
 本年も「木偶の会」をよろしくお願いいたします。

   17日にお題2句と雑詠5句を公開します。

 


 


兒玉充代 第一句集「沖雲」 (文學の森)

 
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兒玉充代 第一句集「沖雲」 (文學の森)

沖雲や飛魚(あご) 

表題を「沖雲」と決めたのは、沖への、遠きもの、遥かなるものへの憧れからではないかと思っている。

 俳人・兒玉南草の娘として、南草十七回忌を迎えるにあたって何よりの供養となる一本である。ここまでの充代さんの努力に南草さんも莞爾しておられるに違いない。茨木和生(「序」より)

プロフイール;福岡県北九州市生れ・平成22年「運河」入会、25年「運河賞」受賞、浮標集同人

  

自選10句

夕焼や遊び足りない子等の声

遠山の冬溜めてゐる雲の色

手枕に淡き夢あり初桜

花吹雪手を振れば影よろこびぬ

山暮れて空のこりたる半夏生

沖雲や飛魚(あご)の跳ぶ海まつたひら

馬の目は人を拒まず秋の風

涼風や稚の足指十つぶにて

ほうたるや川を距てて人住む灯

流れ星まこと短き詩なりけり

 

共鳴句

太古より今の円かさ冬の月

風よりも風のごとくに冬

父の忌やその日のごとく雪の降り

子供らに子供のはなし笹子鳴く

冬暖か一にはじまる九九の声

花八手日向跳ぶ子の声きらきら

一日の余白の時間毛糸編む

紙を漉く水の重さを掬ひあげ

冬山に山彦かへるすべもなし

父の忌の雪母の忌の雪女郎

あとがき

 俳句は言葉の芸術であり、心の文学でもあります。消え去ってゆく時間の一日一日の自分を十七文字に復活できればいいと思っております。これからは俳句を生活の軸として、平凡の中に非凡を発見し、心のひろがるような俳句を作っていきたいと思っております。

充代さんの御父上「地平」元主宰の兒玉南草先生の句集も合わせて紹介します。

兒玉南草 第七句集「山河」  収録作品より 岸原清行 抽出

落葉ふる音の遠くへ誘はるる

雪に雪降り鶴の遠こだま

なつかしき話となりし団扇かな

朱鳥なきあとの風吹く朴の花

蛇穴に入りしと樹々の小ごゑかな

ながき夜のうた垣明日へつなぐべし

かいつぶりころろと鳴けば雲が来る

冬山のこだまは鳥となりかへる

なんとこの贅沢な音落葉径

新しき年あたらしき世紀かな
    
  


句集「笑って五七五」 久松久子

 DSC_2056 笑って五七五  久松久子 

いざ見参!滑稽俳句集

滑稽こそが俳句の本質。滑稽と出会い婆の心に火が点いた。この十年、勢いに任せて作り溜めた四百句をご覧ください。滑稽俳句協会叢書として世に問うことが嬉しい。久松久子

プロフイール;

茨城県出身、馬酔木 燕巣入会 羽田岳水に師事、同人。百鳥入会 大串章に師事、百鳥同人。滑稽俳句協会会員 八木健に師事。第一句集「青葦」、第2句集「松の尾」第三句集「続松の尾」(文学の森)

 

自選十五句

コイン切れ仕掛け獅子舞そつぽ向く

やふいを衝かるる胸三寸

なめくぢら世の中舐めて塩振られ

節電に幽霊話聞かせけり

勿体ない勿体ないと黴させる

冷房の効き過ぎてゐる仏間かな

自然の風ほめそやされて扇風機

流しさうめん上目づかいに啜りけり

冷房の昆虫館に閉ぢ籠る

菊人形の夫婦の仲に水差して

毒茸の仏貌して羅漢山

六地蔵にスタツカートの赤とんぼ

虫の声夜明けのスキャットに終る

脱獄囚救急車呼ぶ寒さかな

寝違ひの首載せ歩く師走かな

  冬の句から

セーターの柄の縞馬肥り初む

一晩で町を消したる雪女

年の瀬やニュース転がす電光板

呼び鈴に蹤いて行きたる毛糸玉

猪鍋や山に獣を眠らせて

スケートショー見てゐて部屋で転びけり

裸木に飛びついてきたビラ一枚

屏風絵の虎の尾裏にまはしあり
      
   

第62回角川俳句賞  予選通過作品

第62回角川俳句賞  予選通過作品

  「森よ、」谷口智行

かつて火は鑚り出せしもの福沸

擲ちし炬火のごとくに雉走る

森まひるいうれいたけの向き向きに

峠灼く行路病者の霊寄りて

水飯に鯨の干物ふやけたる

卒塔婆の倒れつぐかに山の霧

色鳥や土中につづく巨樹の洞

地芝居に山の翁の来てゐたり

引き捨ててある大根にして立派

重畳と冥府つらねて雪の嶺々

        (高野ムツオ選)

「俳句」2016年十一月号より転載
 
     

第二十三回運河俳句賞

第二十三回運河俳句賞

茨木和生選

第一席 「墓標」 土屋隆一郎

バルカンの荒野を春の霰打つ

国境に難民の列春遅し

信仰の果てなる墓標春寒し

波高きドナウの岸辺春めけり

バルカンの国境超えて雪解川

第二席 「春の蝶」 山近由美子

左義長の組み方字ごとに違ふ

教会を通り抜け子ら磯遊

遅れ来る人待ちをれば春の蝶

三席 「精霊舟」 木下敦子

盆路を少し広めに刈りにけり

赤飯も添へて精霊舟流す

仏舟引く水脈なくて沈みけり

四席 「七五三」 中川悦子

角巻の少女来てゐる氷川さま

袴着や供花の榊も小ぶりなる

五席 「帰省子」 本郷をさむ

 山羊放し飼ひせる駅の草いきれ

五席・次席 「山桜」 高木幸子

 居合はせて志功の話山桜

谷口智行選

一席 「蟇」 木塚眞人

藻の花に雨の来てゐる日曜日

金亀子夜具の白さを転げくる

蟇とすぐ判る感触躓けり

味噌蔵に蛇の消えゆく野分かな

ゆつくりと大樹朽ちゆく処暑の雨

二席 「八千草」工藤泰子

きちきちの草叢の基地跳びだせり

古瓦積まれしまんま草の花

てつぺんに穂の付く木賊折りにけり

八千草に八百万の神おはします

青空へ継ぎ足してゆく蜘蛛の糸

三席 「浦神」上野山明子

岬宮の鈴にしほさび黄雀風

孝行のひとつと鰹釣ることを

他所者を見抜く女ら鯵捌く

木端ぐればかりが釣れてかんかん帽

グラマンの飛来せし浦風死せり
       
他の選者の方々の選は一句、重なった句の場合は別の句を挙げさせていただきました。。

藤勢津子選  実物の河童のミイラ夏期講座   木塚眞人

浅井陽子選  大堰を越えて伸びやか夏の川   木塚眞人

森井美知代選 魂棚の細き梯子を蟻登る     木下敦子

水野露草選  けふ植女なりをなご衆もをみなごも 池田緑人

田辺富子選  たんぽぽの囲むテレサの碑に祈る 土屋隆一郎

松村幸代選  浦々に神々多し椎の花      上野山明子

山内節子選  海に出る夏野を歩き続け来て    山近由美子

井上綾子選  木々芽ぐむ錆びたる戦車残る村  土屋隆一郎

大石久美選  内戦に死す若者の碑にミモザ   土屋隆一郎

           

十二月・師走・極月・December

 十二月師走・極月・ecember

12月の季語あれこれ十二月、霜月、短日、冬の日、冬の朝、冬の雲、冬霞、顔見世、冬の空、冬の鳥、冬の雁、梟、木兎、冬田、 水鳥、浮寝鳥、鴨、鴛鴦、鳰、初雪、初氷、寒さ、冷たし、息白し、冬木、冬木立、枯木、枯木立、枯柳、 枯山吹、枯桑、枯萩、枯芙蓉、枯茨、冬枯、霜枯、冬ざれ、枯草、枯蔓、枯蔦、枯葎、枯尾花、枯蘆、枯蓮、枯芝、枯菊、枯芭蕉、苗代茱萸の花、枇杷の花、臘八会、大根焚、漱石忌、風呂吹、雑炊、葱、根深汁、 冬菜、白菜、干菜、干菜汁、干菜湯、胡蘿蔔、蕪、蕪汁、納豆汁、粕汁、闇汁、のっぺい汁、寄鍋、鍋焼、 おでん、焼藷、湯豆腐、夜鷹蕎麦、蕎麦掻、蕎麦湯、葛湯、熱燗、玉子酒、生姜酒、事始、神楽、里神楽、冬の山、山眠る、冬野、枯野、熊、熊穴に入る、熊突、熊祭、狩、猟人、狩の宿、薬喰、山鯨、狼、狐、 狐罠、狸、狸罠、狸汁、兎、兎狩、鼬罠、笹鳴、鶲、鷦鷯、都鳥、千鳥、冬の海、鯨、捕鯨、鯨汁、河豚、 鮟鱇、鮟鱇鍋、鮪、鱈、鰤、鰤網、杜父魚、潤目鰯、塩鮭、乾鮭、海鼠、海鼠腸、牡蠣、牡蠣むく、牡蠣船、 牡蠣飯、味噌搗、根木打、冬の蝶、冬の蜂、冬籠、冬座敷、屏風、障子、炭、消炭、炭団、炭火、埋火、 炭斗、炭竈、炭焼、炭俵、炭売、焚火、榾、炉、囲炉裏、暖房、温突、ストーヴ、スチーム、炬燵、置炬燵、助炭、火鉢、火桶、手焙、行火、懐炉、温石、温婆、足温め、湯気立、湯ざめ、風邪、咳、嚔、水洟、吸入器、竈猫、綿、蒲団、背蒲団、肩蒲団、腰蒲団、負真綿、衾、毛布、夜著、綿入、紙衣、ちゃんちゃんこ、ねんねこ、厚司、胴著、毛衣、毛皮、皮羽織、重ね著、著ぶくれ、冬服、冬帽、頭巾、綿帽子、頬被、耳袋、マスク、襟巻、ショール、手袋、マッフ、股引、足袋、外套、コート、被布、懐手、日向ぼこり、毛糸編む、飯櫃入、藁仕事、楮蒸す、紙漉、藺植う、薪能、一茶忌、北風、空風、隙間風、鎌鼬、冬凪、霜、霜夜、 霜柱、霜除、敷松葉、雪囲、雪吊、薮巻、雁木、フレーム、冬の雨、霙、霧氷、雨氷、冬の水、水、水涸る、冬の川、池普請、狐火、火事、火の番、冬の夜、冬の月、冬至、柚湯、近松忌、大師講、蕪村忌、クリスマス、社会鍋、師走、極月、暦売、古暦、日記買ふ、日記果つ、 ボーナス、年用意、春支度、 春著縫ふ、年木樵、歯朶刈、注連作、年の市、羽子板市、飾売、門松立つ、注連飾る、煤払、煤籠、煤湯、 畳替、冬休、歳暮、年貢納、札納、 御用納、年忘れ、餅米洗う、餅搗、餅、餅筵、餅配、年の暮、節季、 年の内、行年、 大年、大晦日、掛乞、掃納、晦日蕎麦、年の夜、年越、年取、年守る、年籠、除夜、 除夜の鐘
クリスマスの俳句

グロリアインエクシェルシスデオクリスマス  稲畑廣太郎

アイビー館どこを向いてもクリスマス   稲畑康太郎

灯の海へ高度下げゆくクリスマス    鷹羽狩行

暗がりに耳もつ花瓶クリスマス     鷹羽狩行

『星空とメルヘン』祝すクリスマス    小澤克己

よき笑ひよきクリスマス乾杯す      小澤克己

神父また俳人にしてクリスマス      三村純也

クリスマス聖書は文語よかりけれ     三村純也

クリスマスケーキの薔薇は砂糖です   日野草城

東の星の光やクリスマス        日野草城
   2016年もいろいろありました。   

今年の流行語大賞は何になるでしょうか?
今月のお題は「超」です。
オリンピック選手の活躍!テニスの錦織君や卓球の水谷君のスーパープレイ「超絶」な試合!思い出しますね。
12月7日にお題「超」2句と雑詠5句を公開します。

 

       


季刊「鳳」18号

季刊 18号 
あるいは山を、あるいは海をありえるであろう、自己の魂を覓ぐべく、
ほうほう(鳳々)と声にして跋渉する。

 「どんなに変わってゆくか」

アトリエには未完成作品がいっぱいになった。おそらくは完成作品よりこれら未完成の方がどれほどか楽しい。いや楽しいというより関心がより大きいかもしれぬ。どんなに変わってゆくか。三岸節子 1987年11月12日の日記より(82歳)

明治、大正、昭和、平成と激動の時代を生き、情熱あふれる作品を発表し続けた三岸節子。没後発見された日記をもとに代表作品展「没後十年記念 三岸節子展 心の旅路―満開の桜のもとに」が平成二十一年に開催された。その時の図録に収められている作品「花」に節子の日記が添えられている。 多くの花の絵が残されているが、この」花」は九十四歳の絶筆の作品。節子の「花」は赤が多いのだが、黄色と白い花が画布から溢れそうに描かれている。ときどきこの図録を開き、絵から元気を貰い、日記からは気概を学ぶ。浅井陽子

 作品  「今日の月」浅井陽子(鑑賞・感想少し・・工藤泰子)

滲みよき紙を机に今日の月
滲みよき紙・・上五に物語の予感があります。今日の月!これですべてを包括する素敵な俳句です。  

ひかるもの水に零して雁渡る   

きらきらしているのは才能!ひかるもの!の意味は言わないから余情があふれる。私は涙だと思いました。

西行の墳が代なる桜茸      

奇跡の一句ではないでしょうか?

木は風をつつむかたちや小鳥来る  

自然賛歌ですね!つつむかたち・・すばらしいです!

巻き上げて山遠くなる秋簾    

これは宇治にお住まいだけのことは・・雅です~~~~

紫蘇の実や母の高さに物を干し  

母の高さ!この一見簡単そうな言葉にたくさんの意味があるのです。優しさ!英知!そこに俳句の意味を盛り込んだすごく好きな句です。

作品&エッセイ  

「大切な人」   浅川正(雲の峰) 

高校時代のクラブ活動(生物部)が俳句を作るグループへと発展!

 下賀茂神社から京都植物園をハイキング(10名)の一部

雨除けてなほ余りある青葉かな  悦子

いささ川の水音かしこき茂かな  ただし

「おしゃたか舟神事」 堀瞳子(運河)

明石の祭「おしゃたか舟神事」JR明石駅あら明石港に向かって10分ほど歩くと、材木町の岩屋神社に出る。明石城主の氏神でもあるこの神社は、光源氏のゆかりの神社としても知られる。・・「おしゃたか」は方言で、「おじゃったか」「おいでになったか」と言う意味である。明石の前浜六人衆が一族郎党を引き連れ淡路島に渡り、御遷座の神を船に乗せ明石海峡を渡ろうとしたが、潮が激しく明石浦に上陸出来ず、隣の松江海岸沖に一夜を過ごすことになった。この時ハマチなどの出世魚、精白した麦にはったい粉をまぶしたもの、やまもも、白酒を供えて無事に明石浦に付く事ができた。この明石最古の古事が「おしゃたか舟祭」の起源で夏の風物詩となっている。以下略俳句のみ

神を呼ぶ声が波間に舟まつり

海みゆる社の茅の輪潜りけり

菅抜の窮屈さうに浜名主

神の乗る舟は小さし浦祭・・・・他
 

句句燦燦(2) 「旬のもの」 浅井陽子

見る限り戻り鰹の潮色に   茨木和生

百貫目山と呼んだる菌山      和生

空に声放ち人呼ぶ菌山      和生

毒茸採りよと笑ひ過ぎゆけり   和生

句の背景や関わり合った人びととのエピソードなど・・読みどころ満載!

 旬とは魚や野菜、果物の最も旨い出盛りの時期で、物事を行うのに最も適した時期である。季語は旬の言葉であり、地球の温暖化が物の旬を狂わせる。収穫の秋、実りの秋、「旬のもの」で心身を養いたいと思う。

エッセイ四季桜と杉田久女」森山久代「運河・晨」

 豊田市小原地区・小原和紙の里・四季桜(冬桜、十月桜)の名所に杉田久女の屋敷跡を取材・・・久女の俳句とモデルになつた小説松本清張「菊枕」、田辺聖子「花衣ぬぐやまつわる・・」などにも触れて詳しく、興味深いエッセイだ。

俳枕(2) 鞍馬   浅井陽子

「俳枕」とは歌枕という周知の言葉を俳句に転用したもの。

鞍馬と言えば6月の「鞍馬の竹伐」や10月の「鞍馬の火祭」が知られている。

火祭や焔の中に鉾進む    虚子

火祭の戸毎に荒ぶ火に仕ふ  橋本多佳子

火祭の火の雄叫びとなりにけり   菖蒲あや

火祭やまだ暮れきれぬ杉木立  鈴木真砂女

 女性三人の解説がおもしろい!

日々是俳句      浅井陽子 

 日々の吟行や参加行事と俳句・・

9月11日 京都桂句会吟行、大原野周辺・・宮相撲

御朱印のつきたる回し神相撲

9月19日 宇多喜代子先生と茨木和生先生の受賞をお祝いする会を天好園の四阿で開催。前泊し木通や秋草を飾り設えたとのこと・・。(有難うございます)

四阿に祝辞途切れず新走り

10月10日 琵琶湖の葭簀を編む人を訪ね・・フナずしの熟れ具合に心を寄せる。

鮒鮨の小屋に人影上り月

 

 

11月・霜月・November

   11月霜月November  

十一月の季語のあれこれ

冬、文化の日、立冬、十一月、初冬、神無月、神の旅、神送、神渡、神の留守、初時雨、初霜、冬めく、炉開、口切、亥の子、御取越、達磨忌、十夜、酉の市、熊手、箕祭、茶の花、山茶花、柊の花、八手の花、芭蕉忌、鉢叩、冬安居、七五三、帯解、袴著、 髪置、新海苔棕櫚剥ぐ、蕎麦刈、麦蒔、大根、大根引、大根洗ふ、大根干す、切干、浅漬、沢庵漬く、茎漬、酢茎、蒟蒻掘る、蓮根掘る、泥鰌掘る、鷲、鷹、隼、鷹狩、 鷹匠、小春、冬日和、冬暖、冬耕、青写真、帰り花、冬紅葉、紅葉散る、落葉、銀杏落葉、柿落葉、枯葉、木の葉、木の葉髪、凩、時雨、冬構、北窓塞ぐ、目貼、風除、お火焚、勤労感謝の日、神農祭、報恩講、網代、柴漬、竹瓮、神迎、大綿

草紅葉

木道に十字路ありて草紅葉  鷹羽狩行

草紅葉少年虚子を幻に   山田弘子

草紅葉岩にやうやく日のぬくみ  宮津昭彦

尾瀬いっさい傾げてやまず草紅葉  山元志津香 

草紅葉気丈な母で通しけり    安住敦

蔦紅葉

蔦の葉はむかしめきたる紅葉かな   芭蕉

師の句碑の声か一縷の蔦紅葉  能村研三

甲子園球場怒濤蔦紅葉    稲畑廣太郎

雨筋の光りどほしや蔦紅葉   岡本眸

蔦紅葉岩のあわひに溢れ出づ 山田六甲 

櫨紅葉(はぜ)

櫨紅葉見てゐるうちに紅を増す   山口誓子

太陽の傾きそめし櫨紅葉    稲畑汀子

櫨紅葉華僑の屋根と色競ふ   品川鈴子

切り岸に日差しを返す櫨紅葉  堀博子

櫨のほか紅葉を急ぐこともなく  片山由美子 

  今月のお題は「遠」です。

11月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。
      

たなか游 第二句集「ゆりの木の花」     

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「ゆりの木の花」たなか游

著者略歴;神奈川県在住

著書:詩・エッセイ集「流れのままに」、句集「Venus」、共著「あなたに贈る愛の花束」

「帯文」

 たなか游さんは純な眼差しの持ち主である。だからその眼の捉えた句の世界は澄んでいる。常乙女のような眼差しの捉えた新しさに句がかがやいている。游さんは加藤楸邨に学び、その門下だった石寛太さんに学び、そして私の主宰する「運河」に、今井聖さんの「街」に入会された。第二句集『ゆりの木の花』はこれからも純な眼差しを研ぎ澄まそうとする決意の一本である。  茨木和生

自選十二句

花さびた天領の水ゆたかなり

春の山ブラウニングの詩を諳じ

願文を写してをりぬ春の雪

楸邨の句碑へなだるる天の川

ひらがなの手紙八月十五日

コスモスの百本の揺れあたたかし

筆筒の螺鈿のひかり色鳥来

悴みて弁慶の笈重さうな

笹鳴た落款の位置決めかねて

牧野先生ゆりの木の花咲きました(博士お手植えの樹なれば)

福寿草芯にひかりを束ねけり

秋灯「巨石文明」と書いてをり

  

淡海(平成十二年~十四年)

海の色だんだんと濃し雛納

阿波の木偶そろひ祭の絶巓へ

祭果つ身八ッ口より阿波の風

天の川(平成十五年~十七年)

空海と同じふるさと桃の花

カラヤンの生家真紅の薔薇あふれ

小鳥来るアンリ・マチスの切絵かな

草の絮運ばれてゆく柩かな(弟逝く)

笹鳴(平成十八年~二十年)

玄室を出でにぎやかな春野かな

麦畑風の道筋見ゆるかな

シャガールと妻のベラ飛ぶ大花野

冬薔薇(平成二十一年~二十三年)

花吹雪牧野植物園の空

早春のハイドパークの桜かな(ロンドン)

朝ぐもり紺地金泥一切経

冬薔薇指の先まで血が通ひ

止め撥ねをきつちり伝へ年終ふる

風神図(平成二十四年~二十五年)

たんぽぽやハイジの村に塔ひとつ

八朔やおどけてゐたる風神図

どんぐりのことさら大き不破の関

福寿草(平成二十六年~二十七年)

子規の書の若々しさよ蕗の薹

骨抱きふるさとの山みどりなる

たましひの漂つてゐる青山河
 

「星雲」36号

鳥井保和主宰星雲36号を紹介します。

季節の一句 千体の水子地蔵に散紅葉 鳥井保和     第3句集「星天」より

 供養のための水子地蔵が千体あればどうだろう。物悲しいだろうか。「放心の極み」の様な鑑賞が似合うだろうか。私はきゃっきゃっと声を上げ、喜び走り回る子どもたちの姿を想像した。深く積もった紅葉がまるで敷きつめられた布団の様、走り回る子どもたちの足元をぽふっぽふっと包み込む。その全てが決して時間流れない幻想の世界。清浄とした詩心、観賞の幅は思うより広い。 

花尻 万博 (花尻氏は第二回攝津幸彦記念賞受賞)

天狼集

大渦の修羅の帯ゆく観潮船   鳥井保和

天も地も歪むまぼろし原爆忌    〃

極星集 

木の根径塞ぐ磐座苔の花    成千代子

ナイターの三万人の大合唱    山田佳郷

万緑や島を縁どる波真白    岩本たき代

古墳より草笛聞こゆ応へたり   小林邦子

むらさきの山より昏れし桐の花   竹正與

天星燦燦  鳥井保和選 

金髪の白衣の異人滝の行    澤禎宣

古代蓮背に古墳供華(くうげ)めく 中川めぐ美

白日傘太平洋を入れにけり   新井たか志

雪渓を天に懸けたり飛騨高嶺  前田長徳

行啓碑生絹の艶の落し文    加藤行惠

うつし世を照らして盆の月上る  吉田捷子

旭日旗掲げ出港昭和の日   土江祥元

折をりの風に彩とく花菖蒲   平岡妙子

梅漬くる婆代々の塩梅で    岡本 敬

老鶯や真田蟄居の地をめぐる   園部知宏

不動尊火焔に滝の飛沫かな   田島和子

白鷺の水色となる夕間暮れ   小林永以子

薫風や高野伽藍を開け放つ   中嶋利夫

明滅のやがて滅裂恋螢     木下恵三

掌に祇園太鼓の桴の肉刺(まめ)  小川望光子

        

誓子のオノマトペ    鳥井保和

① かりかりと蟷螂蜂の(かほ)を食む  誓子

② するすると岩をするすると地を蜥蜴 誓子

③ たらたらと緑に滴るいなびかり   誓子

④せいせりと薄氷杖のなすままに  誓子

⑤月光の中じゆんじゆんと時計鳴る 誓子

⑥鵙は尾をくるりくるりと吾が首途(かどで)  誓子

(伊勢湾台風の罹災を機に西宮市苦楽園に転居した時の作)

⑦新緑の茶の畝もぐもぐ丘を越す  誓子

各句の詠まれた背景が丁寧に考察されている・「俳壇」7月号より転載

特別作品

「天空の寸土」 成瀬千代子

天空の寸土に老婆田を植うる

果無しの山脈遥か夏霞

「今生の風」 正與

潮の香の南風吹き抜けし浜の路地

今生の風に戸惑ふ蓮の花

「空蝉のごとし」  吉田捷子

狩座を歩きて摘めり夏蕨

空蝉のごとし父母なき古里は

「水澄む」  大野良子

月掬ひひたすら盆を踊るなり

一村をダムに沈めて水澄めり

「日本晴」 天倉都

飛魚や鳴門海峡日本晴

職辞すと決めて見上げし夏の月  

星座探訪35より 冨田正吉氏の星雲の俳句探訪 

    季節の作品「冬」  冨田正吉

 日向より人現はるる冬泉 

 踏切に夜汽車を通す冬祭
天星集  畳屋の女将も来たる針供養   園部知宏

平素使っている針を休め、折れた古い針を供養する行事。和歌山市加太の淡島神社では2月8日である。畳屋の女将をもってきたので成功した。

     行く雁の湖より昏れし近江かな 吉田捷子
昴星集
  野仏の形に雪の降り積もる   内山恭子
星雲集  飼主も犬も着ぶくれ散歩かな  南壽子

 

 読み物

「熊野を駆ける」熊野古道伝説紀行8 大上敬史

熊野一の大鳥居  (海南市鳥井257、大鳥居伝承碑)

 住宅に埋もれた大鳥居址。東に向かってそびえていた鳥居は、熊野参詣者に輝く西方の海を望ませ、どのような影を落としていたのであろうか。(文中)

藤白の獅子舞  (海南市藤白448、藤白神社)

有間皇子の神社 (海南市藤白448、藤白神社内) 

藤白松  (海南市藤白353、有間皇子遺跡)

 有間皇子墓(写真);春になると椿の花が周囲を覆い、地元の人たちは「椿の地蔵さん」と呼ぶ。

藤代坂  (海南市藤白333、熊野古道南入る)

 

 身体の俳句36「オリンピックのこと」 小川望光子(医療センター医師)

愛ちゃんが泣いて笑つて夏終はる  木下蕙三

私にとってのオリンピックはなんといっても東京オリンピック。

円谷とヒートリー、女子バレー、柔道(ヘーシンクに負けた神永)、体操(山下とびとシライ2のあまりの差)、市川昆の映画(多くの記憶はこの映画から)・・・

秋風や楕円形なる競技場      植野康二

灼くる大腿ハードルを倒し倒し  今井聖

背泳の子の手が長し原爆忌    小川昇一

平均台さはやかに身をきらめかす  松永浮堂 

 

昴星燦燦     選後評  鳥井保和 

炎昼や鴉口あけ声もなし   古谷とく

ままごとの花のご飯にお菜かな 内山恭子

奥飛騨の夕星涼し朴葉焼     池田邦子 

 星雲集鑑賞  坂本登(OPUS

  季節の作品 「朝礼台」より

半島の端のふるさと天の川  坂本登

廃校の朝礼台の露けしや    〃     

  鑑賞

 あらたまの海風受けて露天の湯  南壽子

楤の芽の膨らむ明けの空円し   伊藤亨

踏青の園児光の子となりぬ    組口庄司 
列をなして郊外へ出かけてきた園児たちが目的の野原に着き、一斉に放たれる。自在に野を駆け回り、青草を踏んで遊ぶ子供たちはやがてまばゆい春の光と一体化してゆく。               

 

リレーエッセイなど

 

 

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