「木偶」の会

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四月になりました。一日はエイプリルフールですね!罪の無い嘘なら・・許されますが・・。日本語では「四月馬鹿(四月バカ)」、漢語的表現では「万愚節」、フランス語では「ポワソン・ダヴリル」(Poisson d'avril, 四月の魚) 
   四月馬鹿の句を集めてみました。
 四月馬鹿ゴム靴ばかり洗ふ妻    辻田克己                       

 船酔の欠食五回四月馬鹿      大橋敦子 

 万愚節半日あまし三鬼逝く     石田波郷

 万愚節明けて三鬼の死を報ず    渡辺白泉

 養生は図に乗らぬこと春の草    藤田湘子

 万愚節ともいふ父の忌なりけり   山田ひろむ 

 馬鹿に陽気な薬屋にいて四月馬鹿  清水哲夫                                                   

 エイプリルフールの駅の時計かな  轡田進

 万愚節に恋うちあけしあはれさよ  安住敦

 ひつ込まぬびつくり箱や万愚節    北野平八

 あっさりと出ていく猫や四月馬鹿   六花

 こと切れしテレホンカード四月馬鹿 山田弘子

 どの辺で気づかれゐしか四月馬鹿  稲畑汀子

 四月馬鹿天下取りなる手相とて   品川鈴子

 深爪の痛みはまこと四月馬鹿    行方克己  
     
      
    桜・海・光・・いいですね!

 ちるさくら海青ければ海へ散る  高屋窓秋   

 山に花海には鯛のふヾくかな   松瀬青々

 灯台は光の館桜の夜       山口誓子

 ひく波の跡美しや桜貝      松本たかし 「鳳・俳句好風」堀瞳子より
  てふてふに草の光の波寄する  浅井陽子「鳳より」
  今月のお題は「草」です。お題二句と五句を4月7日に公開します。
                  

 

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  いわき市の俳誌「浜通り」151号から震災特集の俳句を紹介します。

岸壁の祭壇つつ抜けの北風   結城良一
白鳥飛来かの日津波の大川に  青木燁子
牛小屋に猪棲める避難むら   伊藤雅昭
三月の十一日の朝新た    笠間 杏
グランドと見紛ふ表土なき冬田   鍛冶邦雄
雁の列過ぎゆく屋根はシート被る  小松洋子
晴れ渡る空の眩しとかいつぶり   佐々木孝子
冬ぬくし仮設に移動郵便局    佐藤俊子
月の雨体内被曝誰も言はず   柴田郁子
秋刀魚さんまいわきは辛いばかりなり  長岡 由
廃砿区づない背丈の芒原   花貫 寥
鎮魂の沖水平に和みけり    林 十市郎
被災の子大海原に草矢うつ   古市 文子
復興の洋上発電大南風   仲田 昇
散らばりし消波ブロック鳥雲に  田崎武夫
  

       3 月     弥生いやおい)弥(いや)いよいよ・ますます生(おい)生い茂る 草木がだんだん芽吹く月 
啓蟄・蟄虫啓戸(ちつちゅうこをひらく)3月5~9日地虫や蟻、蛇、蜥蜴、蛙などが冬眠から覚めて土中の穴から出てくる
   桃始笑(ももはじめてわらう)3月10~14日
   桜より桃にしたしき小家かな  蕪村
   ふだん着でふだんの心桃の花 細見綾子
桃には災禍を防ぐ力があり、いろいろな呼び名がある。仙桃(せんとう)・桃源郷に実る桃 桃李・徳ある人は黙っていても人が帰服する三千年草(みちとせぐさ)・中国崑崙山に住む神女・西王母は長寿を願う漢の武帝に「仙桃」を与えたが、これを盗み食いしたものが三千年も長生きしたという伝説の桃の異名。
   菜虫化蝶(なむしかしてちょうとなる)3月15~19日 
 菜の花がしあはせさうに黄色して 細見綾子
 春の虫 踏むなせっかく 生きてきた 小林凛(8歳) 

 ゆっくりと 花びらになる ちょうちょかな 〃   (9歳)
 ブーメラン 返らず蝶と なりにけり  〃
『ランドセル俳人の五・七・五 いじめられ行きたし行けぬ春の雨――11歳、不登校の少年。生きる希望は俳句を詠むこと。』(小林 凜/ブックマン社)より
春分雀始巣 ずめはじめてすくう3月20~24日
     桜始開 (さくらはじめてひらく)
3月25~29日
 
      雷乃発声 (かみなりすなわちこえをはっす)3月30~4月4日

   
    今月のお題はです。
     三月七日にお題二句と雑詠五句を公開します。

         
  

  

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「浜通り」はいわき市の「浜通り俳句協会」の俳誌(結城良一代表)です。震災特集も11になりました。記事に「震災特集にアクアマリンふくしま復活日記 」 阿部義孝(ふくしま海洋科学館・アクママリンふくしま理事長兼館長)「大震災に思う」伊藤柚衣  ・  「私の一句を読んで」樋口葉 ・ 「震災作品」 会員の皆様 ・ 「中田昇さんの文学賞受賞を祝す」岩城良一 ・ 「福島県俳句大会を終えて」中田昇 など・・
「俳句ノート」結城良一の最初には「福島第一原発収束に四十年かかるという。しかも順調に行けばの話である。果たして収束作業が順調に行くかはなはだ疑問である。・・・・・・
 やませに泣く田や原子炉の火も哭くか   茨木和生

  一言  池端順子
(浜通りの池端さんの文章の一部と俳句を紹介します。) 
皆様の語句に力強く生き抜いておられる御姿を思い感銘を受けております。特集の中から皆様の句を一句ずつ挙げさせていただきます。・・・・
 サーファーの群れゐる津波廃墟かな  結城良一
 風評のこと忘却すぬくめ酒        佐藤きよし
 荒梅雨の洗ひ流せぬ負の連鎖     鍛冶邦雄
 ノーモアフクシマ炎天に叫びをり     中田 昇
 草の花原発知らず夫の逝き       佐藤俊子
 東電の謝罪幾度そぞろ寒        佐々木孝子
 万霊の沖へ久遠の晩夏光       林十市郎
 帰れない故郷に西日濃かりけり    長岡 由
 復興の苺ちりばめケーキ美味     青木燁子
 原発に故郷捨てたり若葉寒       渡辺ふみ夫
 ふるさとに今年は蛍もどり来し     古市文子
 鎮魂の曲白シャツのカルテット     笠間 杏 

 「浜通り」では引き続き震災特集を考えております。間もなく三年になりますが、復興は手つかずのままです。原発のいち早い収束と復興を願わずにはいられません。被災者の身になって欲しいものです。編集後記より。

           二月 

二月の呼び名もいろいろです。小草生月(おくさおいつき)・華朝(かちょう)仲春(ちゅうしゅん)初花月(はつはなつき)・梅津早月(うめつさつき)・建卯月(けんぼうげつ)立春の第一候は東風解凍(とうふうこおりをとく)です。節分の次の日は立春です。暦の上では春なのに・・・東風(こち)は春の兆し・春は来ています。梅の呼び名もいろいろです。風待ち草・風見草・匂草・香栄草(かばえぐさ)梅は四季百花に先駆けて咲く「春告草」ゆえに、花たちの兄「花の兄」と呼ばれます。ちなみに「花の弟」は菊。「花王」は牡丹、「花宰相」は芍薬です。

  梅やなぎさぞ若衆かな女かな  芭蕉

つまり、梅はいい男みたいで、柳はいい女みたいというわけだ。見立ての句。「立てば芍薬 坐れば牡丹 歩く姿は百合の花」などの類であるが、ひるがえって最近の美男美女は、とんと花に見立てられることがなくなってきたようだ。人間と自然との交感が薄らいできたせいだろう。「牡丹のようなお嬢さん」と言われたって、第一、誉められた当人がわからない。「隆達小唄」に、こんなのがある。「梅は匂ひよ 木立はいらぬ 人はこころよ 姿はいらぬ」。と、うたいながらも人に姿を求めている屈折した古人の「粋」を、君知るや。このとき三十九歳の芭蕉は、単なる野暮な男でしかないのである。
   ( 清水哲男 増殖する俳句歳時記より)
   

桜かと紛ふばかりに梅盛り  右城暮石S59作)

 暮石が好んで行った奈良県の梅林は、月ヶ瀬梅林、追分梅林、広橋梅林、賀名生梅林である。中でも賀名生梅林は、西の千本、見返り千本、一目千本などと傾斜地に二万本の梅の花が咲く。咲き満ちて日に輝く梅の花は桜かと紛うばかりである。
   ( 
茨木和生 脚註名句シリーズ・右城暮石集より)

 白梅に昔むかしの月夜かな    森澄雄
 白梅の古木ならざる香を放つ   稲畑汀子
 早梅の名利もとめぬ暮らしして  小澤克己
 勇気こそ地の塩なれや梅真白   中村草田男
 梅かをり女ひとりの鏡冴ゆ    桂信子
 梅咲いて庭中に青鮫が来ている  金子兜太

      二月のお題は「新」です。
  二月七日にお題二句と雑詠五句を公開します。

           



     

       2014年
    新年明けましておめでとうございます

   今年も「木偶の会」をよろしく

お願いいたします。

とうとうたらりたらりら、たらりあがりららりとう。
  所千代までおはしませ。鶴と亀との齢にて・(翁神事)

 初富士の大きかりける汀かな   富安風生

   初霜に焚く櫻葉の匂ひかな    松瀬青々

   老斑のなきことうれし初湯殿   茨木和生

   俊成と定家の墓に初詣       藤本安騎生

  初風呂に赤子の手足上機嫌  結城良一
   初明かりもののかたちの生まれ来し 中村正幸

  初詣我が血の端の孫を抱き    勝井良雄

   初雪に富士の荒神鎮もれる    島村正

   初詣扇びらきに大樹の根    辻田克己

  参道は波の飛沫の初詣   鳥井保和
   読初は花鳥諷詠論序説      西村和子

  初日記月が見事としるしけり 浅井陽子

   翼あるものは光れり初御空  永田英子

 今月のお題は「初」!7日  にお題二句と雑詠5句を公開します。

                                        

        12 月   

     四海兄弟(しかいけいてい)

「四海」とは国を取り囲んでいる四方の海のこと。転じて、天下・全世界の意味『論語・顔淵』に「君子は敬みて失なく、人と恭しくして礼あらば、四海の内皆兄弟たらん(君子たる者は慎重にし、失敗のないようにし、人に対してはうやまう気持ちを持って礼を忘れず接していれば、世界中の人と兄弟になれる)」

  今年もいろいろありました。今月のお題はではありません。
今月のお題は「人」! 雑五句とお題二句を7日に公開します。
      お酒と人の俳句いろいろ!  
  三合の酒呑んでけふ冬至かな   角川春樹
 年酒酌むふるさと遠き二人かな  高野素十
 玉子酒思ひ屈する男あり     松瀬青々
 カフカ去れ一茶は来れおでん酒  加藤楸邨
 付き合ふと妻のいひたる寝酒かな 茨木和生

 スケートの濡れ刃携へ人妻よ   鷹羽狩行

 雪嶺やマラソン選手一人走る   西東三鬼

 後れ来し人も加はり年忘れ    右城暮石
 子祭や今宵抱へし奉公人   久保田万太郎
 冬帽子幾たび人と別れけむ    西村和子
       

             11月 

朝聞道、夕死可矣  論語(里仁第四-8)
 
朝(あした)に道を聞きては、夕べに死すとも可なり

吾道一以貫之哉(里仁第四-15)

 吾が道は一以(いちもつ)てこれを貫く
僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る 高村光太郎
「俳句の崖っぷちを覗いてみたい」と言うのが望みであるが、その途中の日々にこそ俳句はあるのだと思える。・・私は俳句を引っぺがしたりからかったり、時には裏切ったりしながら、たっぷり道草を食っている。
  嵯峨根鈴子句集「ファウルボール」の帯文より
 道の俳句あれこれ
春泥の道手入れせず植物園 茨木和生

強霜の畦道蜘蛛窟へと歩く  〃

磐座を巡る岩道木の実落つ  〃

霜晴の狐臭消えざる崖の道  〃 

踏青の途中の直哉旧居かな  藤勢津子

山道の舗装に疲れ花卯木    〃

菊に綿被せて大阪道修町  嵯峨根鈴子  

煮凝の途中なれども嗚呼をかし 〃

蜷の道堂々巡りしてゐたり  堀瞳子

伊勢道に峠十六秋澄めり   〃

春風や虚子知る人に道を聞く 〃

花道の後ろ風過ぐ 村芝居  〃
今月のお題は「道」です。11月7日にお題二句と雑詠五句を公開します!
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           10月       
   10月になりました。二十四節気と七十二候では
 秋分 9月28日ー 蟄虫坏戸(ちっちゅうこをはいす)
     10月3日ー 
水始涸(みずはじめてかる)
 寒露 10月8日ー 鴻雁来(こうがんきたる) 
     10月13日ー
菊花開(きっかひらく) 
     10月18日ー
蟋蟀在戸(しつそつこにあり)
 霜降 10月23日ー霜始降(しもはじめてふる)
     10月28日ー
霎時施(こさめときどきふる)
今月のお題は「山」です。  

  山は暮れて野は黄昏の薄かな  与謝蕪村 

  木曾山へ流れ込みけり天の川  小林一茶

  そのままよ月もたのまじ伊吹山 松尾芭蕉

  山と山つなぐ乳白色の霧    右城暮石

  知りつくす茸山へ客案内して   〃

  家よりも下の山にて鹿鳴けり  茨木和生

  山桜枯死してゐたる茸かな    〃

  山の雨縫うて気儘や秋の蝶   西村和子

    秋出水山を動かすことをせり 藤本安騎生



  磐梯山(車窓)               磐梯山(鶴ヶ城より)
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   10月7日 お題二句と雑詠五句を公開します。

          9月    

 九月になりました。読書の秋です!食欲の秋でもあります。そこで机上の美味しそうな”題”の茨木和生先生の「薬喰」を見てみましょう。薬喰は冬の季語ですが、まずこれを読破(食べて)みなくては・・この意味は都会の暮しをしている人たちには難しいですね!受験勉強の為に無理強い?とかではありません。そこで謎解きの為、句集のあとがきや、「運河」(茨木和生主宰)の特集や句を紹介します。

「私の家では、薬喰は験のものやと、年の暮に一度ふんだんに肉を食べて来た。験のものとは、それをしないとどんなまがごとが起るかも知れないと考えてしてきた習しである」句集あとがきより 

 死の一日前もがもなと薬喰  茨木和生

 死ぬ暇もなうてと笑ひ薬喰   〃
    運河「薬喰特集Ⅱ『薬喰』-その醇正と叡智について」 谷口智行  より  一部
  
古来より四足の肉は穢れがあるとし、原則的に忌避すべきものであった。しかしどの時代であっても極寒期となってはその栄養価を認めざるを得ず、薬喰の名目の下、むしろ推奨する風もあった。さすがに家畜は憚ったので、野生の猪(山鯨)、鹿、熊、兎などを食すようになる。「薬」は「奇し」と同源で、霊薬・神仙の意。霊妙な働きをするもの、特別な能力を与えてくれる不思議なものであった。古くは「日本書紀」の推古天皇の項に・・・以下略
   茨木和生 句集「薬喰」より12句

聴きすましをれば邯鄲なりしかな 盤座を巡る岩道木の実落つ

蛇を提げ来るかと見れば山の芋  沖雲のかがやき寄せ来健次の忌

海上も雲の出てゐず秋旱     水引の花こぼれずに先まで咲く

砂畑は畝づくりせず走り薯    石垣の高き山家の良夜かな

山脈は奥へと高く鰯雲      大峰の遙かに見えて稲黄ばむ

月の出の遅くなりゆく月夜茸   山からの水尽きずして澄みゐたり 
             
  今月のお題は「世」です。
 鮎落ちて美しい世は終りけり  殿村莬絲子
 人の世の花を絶やさず返り花  鷹羽狩行
 夢の世に葱を作りて寂しさよ  永田耕衣
 あをあをとこの世の雨の箒草  飴山 實 

   九月七日に「お題」二句と雑詠五句を公開します。
               

           
 

DSC_0067溜め池が二つありますが、一つは赤い藻に覆われています。
何ということでしょう!鴨の撮影にカメラマンも大勢来る池ですよ。
豪雨の被害はありませんが、旱が心配です。 
 
         






DSC_0178新幹線は岡山に向かっています!

             

 岩城眉女

春落暉雑木林を焦がしけり  

「夕日が雑木林を焦がす」という表現がなかなか思いつきません。景が目に浮かびます。

雪眼鏡外し暗きを出でにけり

立山を雪眼鏡で歩いてみました。外した時の眩しさ解ります。

鬼の爪かとも梯姑の花咲けば

あの花の形と色、確かに鬼の爪ですね。言われて初めて気づきました。

魔が差すと言ふ断崖の涼しさよ

怖い俳句です。引きずり込まれそうです。でも、涼しさが好き。

さくらんぼ買ふ幸せを買ふように

幸せって小さな所にあるものです。さくらんぼは幸せという言葉が似合います。大好きな句です。

  坂東恭子

梢より鳥の声降る宮相撲

神社の大樹、その陰から小鳥たちまで声をかけ、勢いづかせている宮相撲に、微笑ましい感動を覚えました。

千年の樟に日傘を畳みけり

歳月の大樟に近寄れば母の膝ある如く穏やかなひと時、称賛の思いです。

村に入る峠ゆるやか柿の花

やがて来る秋の穏やかな山里の風景が連想されます。

襟巻きのきつねの並ぶ足湯かな

奇抜な着想に感心しました。

春潮の沖の日暮れてすみれ色

なかなか暮れそうで暮れない春の夕暮れを眺めて称えている素晴らしさ。

   松村公美子

明け易し干魚ほどよく乾きゐて

風があれば一夜干しの魚はほどよく乾いて美味しい。

甲冑も仏も売られ歳の市

色々な品が入り混る歳の市。掘り出し物を見つける醍醐味もある。

生徒から夫へ卒業証書かな

生徒から慕われた先生の一生に一度の記念日になりました。

深吉野にかなふ青空朴の花

山深い緑の中の大きな朴の白い花、青空の広がり、深吉野にふさわしい。

魔が差すと言ふ断崖の涼しさよ

人を惹きつけ思いがけない行動をとらせる不思議なスポットというのがある。この断崖もその一つ。

 新居三和

石垣にまひまひの殻水温む

まひまひの殻という命のないものと命あるものが活発になる季節「水温む」の取り合わせ。余韻。

引く波のすぐに押し来て裸の子

波打ち際、波に戯れる子どもの情景がよく描けている。

獣の毛混りてゐたる古巣かな

この巣の主や子どもは獣に襲われたのであろう。物に語らせた句。

生地厚き磯着卯の花腐しかな

卯の花腐しの季節感を物、即ち「生地厚き磯着」で表現してよい句。

ゆっくりと減りゆく水位山眠る

冬山の状態をそうだそうだと改めて納得させられる。


     堀瞳子 自選句
 安達太良の八十八夜の桜かな  星を見に行くといふ子に綿入れを

 翼あるごとく滑降夏スキー     蝶のキス貰ふ昆虫館の中

 魔が差すと言ふ断崖の涼しさよ  雪橇に乗せ火祭の山毛欅運ぶ
 春潮の沖の日暮れてすみれ色  鳥帰るアルプス越えに死ぬもゐて

 さくらんぼ光零さぬやう抓む   何ごともなき川なれど鮭上る

 また空の見えぬところへ雛納  国覓(ま)ぎの磐座見ゆる夏の潮 


    ダイヤモンド富士です!!瞳子さんおめでとう!!


           
  瞳子さんが句集「山毛欅」BUNAを上梓されました。初学から11年間の句を纏められたものです。運河、湖心(昨年終刊)の句など懐かしいもの、各賞受賞の句など、ステキな俳句が詰っています。お祝いのメーセージを込め”木偶の人”の鑑賞と共鳴句を紹介します。
 
     野中千秋
 瞳子さんは、百名山を登った山ガールです。もちろん冬山登山もありますが、瞳子さんと言えば、「夏」のイメージ(あくまで私の)。そこで夏の句を抜いてみました。
 六甲は雲の高みに青葉潮
六甲は、瞳子さんのお住まいの所。日常の中で、ふと雲を突き抜けた六甲の雄大さに心奪われた作者の気持ちを、夏の生い茂る青葉潮で見事に表現しています。雄大さとともに産土に対する限りない思慕と畏敬の念が感じられる俳句です。
 翼あるごとく滑降夏スキー
 魔が差すと言ふ断崖の涼しさよ
もしかして落ちてしまったらと思ったのでしょうか。絶壁の心理が良く分かります。「魔が差す」と夏スキーは、雪は少ないが、季節もよく眺めも抜群。滑り降りるスキーヤー達。その軽快な姿を翼があるようだと比喩を使って描写。スキーヤー達と、夏山の雄大さを対比させながら、増幅させているところが巧みに感じました。
「涼しさ」の真逆の取り合わせが絶妙です。
 万葉の歌碑は恋歌ねぶの花
万葉の時代になると、文化も少しずつ落ち着いてきます。まだまだ素朴なところもありますが、男女の愛も少し優美になってきた時かと思われます。万葉の歌碑は恋歌とは、どなたとご覧になったのでしょう。心満たされているゆえ、「ねぶの花」の季語になったのだと思います。
 新涼や三和土に下ろす母の靴
最後は、母の句にしました。介護をしているのでしょうか。新涼の清々しい一日だったのでしょう。それゆえこのような日にお散歩をと、作者の優しい心が感じられます。このように見て参りますと、瞳子さんの俳句が、いかに幅広いかが分かります。
句集には、見事な写生の句から、家族、友人に対する思いを詠んだもの、しみじみと人生を考えさせられるものと様々ありました。句集上梓おめでとうございます。(千秋)  

     池端順子
 教会の椅子冷たくて花ミモザ
早春に咲き始めるミモザの花そして教会の椅子は大抵木製。

しぃ~んとした教会の中、座る椅子の肌感覚が伝わってきます。

 富士登山小まめに靴の石を出す

本格的な登山などしたことのない私でも近くの山に登ったことはあります。登山に靴は基本中の基本。小学生の頃、ズック靴に入った石を取り除いた思い出も蘇ってきます。

 鳥帰るアルプス越えに死ぬもゐて

三浦雄一郎さんがヒマラヤ登頂に成功されて間もなく登頂を目指され、亡くなられた女性登山家河野千鶴子さんが思われます。アルプス越えが出来なかった鳥達のけなげさが伝わってきます。

     安藤加代

 星を見に行くといふ子に綿入を

 添木して秋草に丈生まれけり

 砂地には砂地の色の飛蝗とぶ

 迫り出せる磐が祭神月涼し

 甲斐駒は雲に聳えて稲の花

 雪橇に乗せ火祭の山毛欅運ぶ

 鳥帰るアルプス越えに死ぬもゐて      

     工藤泰子          

 翼あるごとく滑降夏スキー

 蝶のキス貰ふ昆虫館の中

 空耳と思ふ間もなくほととぎす

 甲斐駒は雲に聳えて稲の花

 掛稲や大江山より日がこぼれ
 
       
       

句集「山毛欅」の目次は
序・茨木和生  綿入 夏スキー 春遊 稲の花 鳥帰る 寝物語 あとがき 
    2013年七月七日初版発行 
フランス堂

    帯;深吉野にかなふ青空朴の花

 対象に向ける眼差しの穏やかさ、鋭さ、こまやかさ、優しさを称えておきたい。 茨木和生


          (2)では堀さんの自選句も紹介します。

          8       

   白雨(ゆふだち)にはしり下るや竹の蟻   内藤丈草
げりら豪雨の被害は凄まじいですね!昔から雨には様々な名前がありました。

大抜け(洪水になるほどの大雨) 脅し雨 夏雨(かう・苦しみの最中に恵みをもたらす)神立(かんだち) 鬼雨 喜雨 雨遊び 雨祝い 雨喜び 雨降り盆 狐雨 日照雨(そばえ)虎が雨 猫毛雨 天泣(てんきゅう)銀箭(ぎんせん・箭は矢) 銀竹(ぎんちく) ・・・・天からのおくりもののはずでは
本当の雨ではありませんが、袖の雨 血の雨 火の雨 蝉時雨 虫時雨 地獄雨 
  「命短く渡る浮き世は雨もつらいぜ、お富さん、エーサーオー、地獄雨」
歌謡曲「お富さん」作詞・山崎正、作曲・渡久地正信、歌手は春日八郎
      歌舞伎「与話情浮名横櫛」切られ与三とお富より

  
今月のお題は「富」です。お題二句と雑詠五句を7日に公開します
 
 下界まで断崖富士の壁に立つ  誓子

 富士山頂剣が峰(3776メートル) 日本一の高さに建てられた句碑

  富士測候所先の大沢崩れの源頭部付近   85年前後?
       
  山開き不入の山も開かるる   島村正  句集「富士」より

  雲海の果て日本の尾根が見ゆ   〃

  誰よりも強力富士を畏めり     〃

  拝みて鳥居をくぐる登山隊     〃 
  青富士の裾より美しき青はなし   〃

  

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