お知らせ

鳥井保和主宰「星雲40号」

       

鳥井保和主宰星雲40号を紹介します。

季節の一句掛け余る稲を案山子の手にも掛く 鳥井保和 
    第1句集「大峯」より
驚くほどの田舎住まいではあるが、ここの所案山子を見る機会が減った。子供の頃はいろいろな案山子を目にしては騒いだように覚えている。スカートをはいた案山子、大袈裟な化粧を施した案山子。そんな案山子を見付けては走って近寄って、いじり倒して、そして農夫に叱られたものだ。案山子が人でないと分ってる、それは鳥もこどもも同じだったのか。少なくとも鳥が怖れていたのは人ではなかった。掛け余る稲を捧げるかの様、案山子に与える句。また一つ日本の古き良き風景が無くなる。 
 
花尻 万博 (花尻氏は第二回攝津幸彦記念賞受賞)

天狼集

長考の投了の礼夏座敷  鳥井保和

海中のポストより夏見舞かな   〃

第一句集「大峯」10,11、12 より
今回の平成5年度を以て「天狼」誌に発表した最後の作品である。誓子はこの平成5年の夏ごろより・・句会に出席されなくなった。そして11月に「天狼」休刊宣言・・・誓子と12年間であったが、同じ空間で同じ空気を吸ったことが今となっては貴重な年月であった。誓子歿後は、俳句と決別,再開は平成10年からであった。 

寄りて見る流氷原の起伏せり(平成3年)

七五三鳩追ふ両の袖拡げ(平成4年)

炎天に溶岩ドーム屹立す(平成5年)

極星集 

白南風に乗りて帰港の実習船   竹正與

草の闇水の闇欲る恋蛍     成千代子

甘酒を卒寿の母と頒けて飲む  山田佳郷

六道の辻に迷へる道をしへ    澤禎宣
なかんづく産科の庭の花石榴   園部知宏
風誘ふほどにも伸びて蘆茂る    岩本たき代

素足の子十指を揃へ正座せる   小林邦子 

天星燦燦  鳥井保和選 

村ひとつ沈みしダム湖花は葉に  前田長徳

百年の校舎解体花は葉に   土江祥元

岩と化し山椒魚の動かざる   中川めぐ美

だんじりの稚児畏まる御簾の裡   加藤行惠

我が影をなくしてゐたり炎天下   平岡妙子

遠蛙一灯残る駐在所    新井たか志

退院の手土産として蝮酒    岡本 敬

夏料理見晴し良きは予約席    天倉 都

開け放つ国宝の間に若葉風   田島和子

一夜城の石の標や花瓢    小林永以子

一列のしんがりのなき蟻の列   中嶋利夫

掬はれて家族をなりし金魚かな   木下恵三

曲がりても松のみどりは天を指す   小川望光子

 誓子の句碑巡り40 岐阜市・境川中学校校庭

つきぬけて天上の紺曼珠沙華  誓子

校舎より吹奏楽や秋高し  保和

星座探訪39より 柘植史子氏の星雲の俳句探訪 

プロフイール;俳人協会会員・「ふう」同人・句集「レノンの忌」・第60回角川俳句賞受賞

 季節の作品 「畳み皺」より  

途絶えたる便りや後の更衣  柘植史子

畳み皺どほりに畳む秋の暮   〃

 天星集

雨雫春空まるめ零れたり  平岡妙子     

空をうつしている雨雫がまさにこぼれ落ちる瞬間をリアルに描写している。「まるめ」という把握は「春」が内包する柔らかさにも適い、ふくよかな雨雫を連想させる。思い切った独自な表現により類想から抜け出すことに成功した。

昴星集牛角力化粧まはしを柵に掛く   荒川くみ子

      巻きぐせの上に酒置く花筵   服部久美  

星雲集菜の花の畑に膝つく親子かな  南嘉子

 読み物

「熊野を駆ける」熊野古道伝説紀行12 大上敬史

夜泣き松  (湯浅町吉川 糸我峠)

行者石湯浅町吉川老人憩の家)

逆川(さかさかわ) (湯浅町吉川925 逆川神社)逆川は、都人が西から東に流れるこの川を見て名付けたが、後に土地の人が忌み嫌い吉川(よしかわ)に改めたという。

後白河法皇腰掛け石湯浅町吉川137  南側みかん畑)

後鳥羽上皇月見石湯浅町湯浅732 宝林寺 東) 

身体の俳句40「汗のこと」小川望光子(医療センター医師)

今生の汗が消えゆくお母さん 古賀まり子

汗は生きていることの証し。生と死のあわいを描いた名吟です。

マラソンの顔をふつては汗とばし   清崎敏郎

レスリングあしかの如く汗に濡れ  後藤比奈夫

目に入る汗だれよりもわれが好き  加藤静夫

  いい汗かこう。

昴星燦燦   選後評  鳥井保和 

送り火の消えてむなしき闇のこり 服部久美

能舞台笛の高なり火蛾狂ふ 森本潤子

芋殻折るかたへに母亡かりけり 奥井志津

相伝の絞りの技や藍浴衣   荒川くみ子

本流も支流も梅雨の出水かな  古谷とく

新茶汲む終の一滴芳しき  内山恭子

雨雫顔に弾けて実梅探る  大野良子   

 星雲集鑑賞  坂本登(OPUS

  季節の作品 「叱られて」より

月の出をくぐもり声で告げに来し     坂本登

曼珠沙華かごめかごめの回り出す    〃 

観賞/選    

こもごもの節目を想ふ桜かな 下村ツヤ子

片男波とは美しき春の海   岡本千恵子  

 片男波は山部赤人の万葉集「若の浦に潮満ち来れば潟をなみ・・」に由来する地名で、水の綺麗な海水浴場として有名。

       


10月・神無月・October

10月・神無月October

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長月、秋の日、秋晴、秋高し、馬肥ゆる、秋の空、秋の雲、秋の山、秋の野、秋風、秋の声、秋の暮、秋の雨、初紅葉、薄紅葉、桜紅葉、茸、初茸、湿地、椎茸、松茸、松茸飯、新米、新酒、 濁酒、稲、蝗、ばつた、稲雀、案山子、鳴子、鳥威、落し水、秋の川、渡り鳥、小鳥、鵯、百舌鳥、鶉、懸巣、椋鳥、鶫、頬白、眼白、山雀、四十雀、鶺鴒、啄木鳥、木の実、桃、林檎、石榴、梨、柿、吊し柿、 無花果、葡萄、通草、椿の実、山梔子、杉の実、山椒の実、烏瓜、数珠玉、秋祭、菊、菊人形、野菊、温め酒、牛祭、後の月、砧、やや寒、うそ寒、肌寒、朝寒、夜寒、べったら市、落花生、蕎麦、葦、荻、 火祭、木の実落つ、樫の実、栗、栗飯、団栗、胡桃、銀杏、棗、稲刈、稲架、樅、秋時雨、露霜、冬支度、蜜柑、橙、朱欒、金柑、柚、秋深し、冬近し、紅葉、紅葉狩、柿紅葉、銀杏紅葉、蔦、蔦紅葉、草紅葉、鹿、猪、行秋、暮の秋、秋惜

神無月は陰暦10月です。季語では冬になります。
出雲に各地の神が集まるので、出雲では神在月です。
「かみな月」、「かんな月」の語源は不明である。

醸成月(かみなしづき):新穀で新酒を醸す月(大言海による)

神嘗月(かんなめづき):新嘗(にいなめ)の準備をする月

神な月(かみなづき):「神の月」の意

雷無月(かみなしづき):雷のない月

今月のお題は「素」です。

晴らしい句集を紹介します。

木下野生第二句句集「素ふたたび」

 句集序文 ;ただごとと、ただごとでないものとの違いは紙一重。ただ事と見える中に、ただ事でない瞬間がある。その瞬間を捉えるのは眼と心のはたらき。そして、それを詞で表現できるのは俳句詩形だけと信じている。   木下野生

 昭和6年、徳島生れ、青年のころ今枝蝶人の指導をうける。「航標」「塊」「家」などに所属

鰯雲両手に余るもの抱へ

天高しバケツに水をいつぱいに

境内を横切つてをり道をしへ

花芒一本抜いて喪の終り

秋燈や束ねて外れ籤ばかり

嫁入りの車の通りねこじゃらし

放課後の小学校や赤とんぼ

秋祭終へたる棒の横たはり

草紅葉紙飛行機の落ちてゐる

白菊も黄菊もおなじ菊畑

腰掛けるための切株秋の雲

前身に夕日のあたり穴惑ひ

足痛があるから歩き草の花

秋燕いまままごとの最中で

鳥渡る古き手紙を焼きをれば 
10月7日にお題「素」2句と雑詠5句を公開します。


九月・長月・菊月

九月・長月菊月色取り月September
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仲秋、八朔、二百十日、颱風、野分、初月、二日月、三日月(新月)、 夕月夜、秋の夜、夜長、夜学、夜業、 夜なべ、夜食、としよりの日、生姜市、花野、秋草、七草(秋の七草)、すすき、撫子、くつわむし、蚯蚓鳴く、螻蛄鳴く、地虫鳴く、蓑虫、芋虫、初潮、月、名月、月見、無月、雨月枝豆、芋、十六夜、子規忌、霧、蜻蛉、うすばかげろふ、蜻蛉、秋の蝶、秋の蚊、 秋扇、秋団扇、富士の初雪、秋彼岸、蛇穴に入る、雁、角切、曼珠沙華、鶏頭、二十三夜、秋の海、秋鯖、秋刀魚、鰯、鰯雲、鮭、鯊、鯊釣、鰍、竹の春、草の花、 蘭、コスモス、露草、蕎麦の花、糸瓜、唐辛、秋茄子、紫蘇の実、生姜、菜虫、 胡麻、玉蜀黍、黍、稗、、木犀(金木犀)、爽やか、冷やか、秋の水、水澄む
          
  金子敦 第5句集「音譜」

白南風や楽譜に大きフォルティシモ

 ハーモニカにあまたの窓や若葉風

 シンバルの連打のやうな残暑かな

 十二月八日やシュレッダーの音

 春を待つ八分音符に小さき羽

 トランペットより薫風の生まれけり

 ティンパニを叩けば風の光り出す

 楽団の荷に弾みたる木の実かな

 葱提げてピアノ奏者の帰りけり

 るるるるとららららららと萩こぼる
  萩こぼるるるるる~~~今月のお題は「萩」です。
          
 9月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。

                

 

俳句界2017・9「鳳」

俳句界のセレクション結社「鳳」紹介記事!
同人20名の一句・・
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八月・葉月・AUGUST

8月葉月August

               

立秋、八月、文月、初秋(はつあき)、桐一葉、星月夜、 ねぶた、竿灯祭、七夕、星祭、天の川、梶の葉、中元、 生身魂、草市、真菰の馬(瓜の馬)、角火、迎え火、盂蘭盆、魂祭、霊棚、棚経、施餓鬼、墓参り、 燈籠、岐阜提灯、走馬燈、盆の月、盆狂言、踊、精霊舟(精霊流し)、 流燈(燈籠流し)、送火、大文字、解夏、 摂待(門茶)、相撲、花火、花火線香、蜩(日暮し、かなかな)、 法師蝉(つくつくぼうし)、秋の蝉、残暑、秋めく、初嵐、新涼(秋涼し、秋涼)、稲妻(稲光)、 流星(ながれぼし)、芙蓉、木槿(底紅、花木槿)、鳳仙花、白粉の花、朝顔、弁慶草、大文字草、 みせばや、めはじき、西瓜(西瓜番)、西瓜提灯、南瓜、隠元豆、藤豆、刀豆、小豆、大豆、新豆腐、 大根蒔く、吉田の火祭り、韮の花、茗荷の花、鬱金の花、赤のまんま、蓼の花、溝蕎麦、水引の花、煙草の花、懸煙草、カンナ、芭蕉、 稲の花、宗祇忌、不知火 


 

今月のお題は「生です。

8月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。


論語 本立而道生  本(もと)立ちて道生ず
            

島村正 第14句集「不壊」

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島村正句集「不壊」を紹介します。

 人間に不壊(ふえ)の魂さくら咲く

プロフィール;昭和18年、静岡生れ

S39年「七曜」堀内薫に師事・七曜賞受賞、S42年「天狼」山口誓子に師事・コロナ賞受賞。H5年「宇宙」創刊主宰

句集「母港」「一條」「燈台」「天地」「歳華悠悠」「自註島村正集」「無双」「有情」「未来」「永劫」「冠雪」「富士」「伊勢」「飛翔」「一億」など

自選10句

日の本の国を鎮める雪の富士

いつまでも知れぬ消息冴返る

仏生会ひとの一生空無なる

一湾の割れんばかりに土用波

海底の山河にひびく土用波

仲秋の月より遠きひと思ふ

白鳥を俘虜の化身ともてなせる

雪富士に賜はる覇気と勇気かな

老農の愚直なまでに蓮根掘る

どこまでも一本の道枯野道

帯文;

今回の句集には東日本大震災の句が見られる。作者は被災者への思いを率直に詠む。文学になし得ることは、被災者への共感・祈りを表現する以外にはないであろう。坂口昌弘(「序」より)

 共鳴句
春の句からは「生」の字のつく句(8月お題)を選びました。

人間の生死は一重冴返る

仏生会われも人の子仏の子

仏生会われに仏心なくもなし

仏生会ひとの一生空無なる

 夏の句

人間にいのちの地球したたれり

海鳴りが海鳴りを呼ぶ土用波(前浜)

原発に(どよ)もす湾の土用波
一枚の青田に青の生気満つ

何どきも爪先立ちて蟹走る

七変化努々変化おこたらず

里居とは安住のよし螢飛ぶ

凹凸の凸にて蟻の立ちあがる

青山をライバルとして雲の峰

海鳴りのごと遠雷の鳴りやまず

夕立に多生の縁をたまはれる

天地が一体となる大夕立

堤撕(ていぜい)を旨にゆつくり浮いて来い

透明のグラスにもかげ夜の秋

香車にも桂馬にもなる水馬

雲海の上に影富士の横たはる

何どきも一徹のこゑ蝉時雨

怖るべき集中力の蝉時雨

完全燃焼蝉時雨蝉しぐれ

命惜し夜なく蝉のかく多し

  秋の句(一部に生の字)

俳諧に性根を据ゑし生身魂

一変晶々滂沱の白露かな

水澄みて耳で捉へること多し

秋天に不壊の航路飛行雲
人生は釣瓶落としと異ならず
  
冬の句(生の字)
寒星として一生の星仰ぐ
生年は発掘の年寒気凝る(
s18年、登呂遺跡発掘作業始まる)
生得の天分はなし日脚伸ぶ

  

               

 

 

 

「鳳」21号(2017年夏)

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「鳳」21号(2017年夏)を紹介します。

 「鳳」は平成24年の夏、四人の同人誌として創刊。四年間発行後、一年間個人誌としたが、今回より結社誌として継続することになった。「運河」主宰、茨木和生先生にもご快諾をいただいた。
「運河」を父とし母として・・・自然を、人をおおらかに詠み上げることを掲げ、研鑽の場にしたい・・・浅井陽子。 

山の荒れ        茨木和生(運河主宰)
 
旧東海道の宇津の谷付近の茶畑や梅畑の荒廃に寄せて・・

 師の句に学ぶ(1)

残り火を海へ投げたる虫送り  和生 (「生駒」所収)

桐集(1) 浅井陽子

愛宕山晴れて夕立の比叡山

陶片に織部のみどり蝉時雨

寂庵の葉擦れに畳む白日傘

みづうみの闇押しきたる夏祓

水亭へ水かげろふと入りにけり

一切について(そのⅡ・Ⅲ)すずきみのる

岩城久治氏は「はじめなかをはり一切大文字」を短冊に書くとき、

「はじめなかをはり

一切大文字」  と、二行に行分けするそうだ。文字の散らしと意味の切断の意図などの考察が、俳句の深いところに触れる評論である。

(らん)   陽子

蜘蛛の囲の一糸に雨の粒走る     森脇八重

跣の子忘れ潮より戻りくる       堀瞳子

ヨット真帆海は途方のなく蒼し     鹿島あけみ

来し方を引つぱつてゐる蝸牛     安藤加代

ほうたるのいのちをつつむたなごころ  野中千秋

水打つて翁の道を覚ましけり     福井緑

横ずれの地相あらはに麦熟るる    高森ひさ

山青くむらさき麦のよく熟れて     森山久代

暮れてきて風の見え来る菖蒲園    山近由美子

新緑や乾ききつたる空の色      田和三生子

鳴き頻る雲雀の空の暮残る      中畑隆男

春の雲かくありたしよ我が余生    前尾五月夫

花卯木闇にも白き香を放つ      吉田喬

時の日のダイヤグラムの点と線    工藤泰子

ゆつたりと風着るやうに更衣     武田和子

ぎながら次の実梅を視野に入る   廣岡ともゑ

賓客に向きかへて見る金魚玉     森敦子

潮の香の届く日溜り花蜜柑      草地明子

売れ残りゐる猫の仔の目のうつろ   井上宏子

青嵐竹林沿ひの笹穂垣       藤田駒代

手になじむ母の聖書の雲母虫    光本忠夫

山の子の塊解かぬ磯遊       野口修造 
      

俳句探勝1         堀瞳子

 正木ゆう子、小川軽舟、辻田克己氏など8句を鑑賞している。

エッセイ 銀龍草      河村美登里

旧街道を歩く        森山久代

鳳抄  一部

立葵咲き継ぎ空を高くする    久戸瀬孝子

鑑識木芽吹きの枝を広げたり    マサト

膝を抱く冷酒に波を聴きながら  山下卓郎

大空を谷瀬を自在鯉幟      新家明美

 

鳳集作品に寄せて    浅井陽子

季語を味わう(3)   浅井陽子   など・・ 
            

その時、俳句手帳(運河7月号より)

    

その時、俳句手帳

 「木石に手を触れ」   茨木和生

 師の右城暮石先生から、作句への思いが昂っていると、寝付かれないでいるときや夢うつつの中で句ができることがあるから、枕元に鉛筆をおいておくとよいと聞いたことがあった。日吉館句会の時、西東三鬼さんと枕を並べて寝ることがあったが、真夜中に三鬼さんは懐中電灯の明かりで、枕元の紙に何かしら書いている。翌朝この句どうやというて見せてくれた。その一つに

頭悪き日やげんげ田に牛暴れ    三鬼

があったと覚えている。授かるという句かなと聞いたことがあった。

その樹下に鹿立つ夜の山桜    和生

 私は暮石師の教えに倣って、枕元に紙とマジックやペンや赤のボールペンを置いて寝ているが、紙を忘れていたときに、テッシュペーパーの箱に書いていたのが句集「真鳥」に収めているこの句である。夢中吟であったと思い出す。別の夜だったと思うが、同じ箱の裏に、赤のボールペンで書いた二句がある。

その空に花吹き上げて屏風岩   和生

月明を雪走り来て山桜       〃

 かって見た景を思い遣って句を作ったのかも知れない。私は季語の現場に立つために、句帳を持って吟行に出る。作句は現場で作品の形に仕上げる。しかし今、手元にある句帳は5冊に満たない。家庭ごみと一緒に出して焼却処分しているからである。これまで収集した句帳や軸、色紙、短冊はたかすみ文庫、詩歌文学館に寄贈している。二人の息子から何も残さないでほしいと言われているからである。

自然が持つ秘密、その秘密に触れなければならない。

     松野靑々のことばより

  (「俳句四季」2017年6月号より転載)


俳句四季新人賞2017

涼野海音さんが「俳句四季新人賞」を受賞されました。作品30句と写真です。

5回俳句四季新人賞

 「天へ発つ」涼野海音

あたたかや畳に拾ふ貝ぼたん

紅梅につめたき顔を上げにけり

野遊の途中に開く手帳かな

屋上に一人のバレンタインデー

日曜は手帳開かずチューリップ

踏青のみな太宰より若きかな

滝水のひかりが胸に移りたる

空蝉や少年院へつづく道

大使館より白靴の出てきたる

日輪のかすかに暗し青芒

起し絵の幼帝に日の差しにけり

夏至の日の昆虫館のしづかなる

箱庭の真ん中に置く一樹かな

滴りのまはりの音の消えにけり

東京の地図に雨粒星祭

口笛は雲へとどかず秋澄めり

記念樹に傷ひとつあり鳥渡る

秋草のにほひの手紙届きたる

登高や亡き人の句をつぶやいて

秋の野のひかりに開く聖書かな

別れたる日のどんぐりのあたたかき

にごりなき川に沿ひゆく七五三

夕焚火イエスに似たる男立つ

手袋をはめてまぶしき街に入る

撃たれたる狐の眼にござらる

トランクに傷あまたあり冬

尾道の港に年を惜しみけり

革靴の先に海あり大旦

初旅や雲かがやいて雲の中

読初の銀河鉄道天へ発つ


dsc_0097しゅうごうしゃしん俳句四季dsc_0072UMINO酸と高橋睦郎  




鳥井保和主宰「星雲39号」


                   

鳥井保和主宰星雲39号を紹介します。

季節の一句帰省子に空のあをさを褒めらるる 鳥井保和 

第2句集「吃水」より

大学と就職の関係で、東京・大阪と日本を代表する大年でそれぞれ数年間生活した。

どちらの街にも良い所あり厄介な所あり、住んでみて初めてわかる事なども多々あった。

「住めば都」という言があるが、残念なことに、両都市を都だと思えた事は一度もなかった。

結構いい年齢となった今、それらの街にすんでみたらどうだろうか、また違った思いが起るだろうか。

句は平易を怖れぬ詠みっぷり。気取った美意識など微塵も感じさせない。

優しい句の中に透徹した感性、力強さを感じた。

花尻 万博 (花尻氏は第二回攝津幸彦記念賞受賞)

天狼集

海うらら出窓に飾る貝細工  鳥井保和

鉛筆は先師の形見鳥雲に    〃

第一句集「大峯」8・9 より
昭和63年※俳句を始め8年、9年目の作品である。前年の昭和63年に、第24回「天狼」コロナ賞を受賞して・・回りの態度も一変・・少しこそばゆい感じもあった。

月鉾の上空真の月懸かる

白息が漉きゐる紙にまでとどく

蜑(あま)の子の日焼漁師の父よりも

一村が神と繋がる祭注連

極星集 

山桜一枝を強く湖へ張る   小林邦子

春水へ鱗光らせ鯉走る   竹正與

中空に春曙の月白し     成千代子

縄電車花菜畑を出て来たり    澤禎宣
風光る池畔に老いの気功かな   園部知宏
方言に方言答ふ花の宴    岩本たき代

天星燦燦  鳥井保和選 

月に触れみ空に触れて梅ひらく  前田長徳

観梅に空の青さも称へたる   土江祥元

菜の花の風やあやせる乳母車  平岡妙子

満願の脂びかりの遍路杖    吉田捷子

涅槃哭く釈迦の足裏に額づきて  中川めぐ美

満身の力を角に牛合せ     加藤行惠

満開の桜長子に嫁来たる    天倉 都

梅東風や辻に傾く塞の神    新井たか志

寄り道をしつつ膨らむ春の水   小林永以子

寄居虫の石火の如く宿替へる  岡本 敬

古都霞み大寺の塔浮かびゐる  田島和子

母親の赤子抱く手に花一片  中嶋利夫

白魚の喉仏にて踊りをり    木下恵三

しあわせに生きて幸せ福寿草   小川望光子

 誓子の句碑巡り39 洲本市・洲本バスセンター北隣の小公園

船の笛南風の中にて洲本呼ぶ 誓子

黒南風の沖タンカーの投錨す  保和

星座探訪38より 柘植史子氏の星雲の俳句探訪 

プロフイール;俳人協会会員・「ふう」同人・句集「レノンの忌」・第60回角川俳句大賞受賞

 季節の作品 「歳月」より  

葉桜やわざとしくじる曲芸師  柘植史子

旅はじまる泉に双手浸けてより  〃

 天星集

太き割箸龍神の牡丹鍋  土江祥元     

龍神温泉で詠まれたのだろう。「太き割箸」が野趣に富んだこの料理の特色を見事に言い留めている。手元にある箸に焦点を絞ったことで、鍋を囲む人々の熱気がリアルに伝わってきて、賑やかな声も聞こえてくるようだ。「俳句は物に語らせよ」という鉄則を思い出させる句である。 

昴星集歩いても歩いてもまだ芒原  古谷とく    

     落葉敷く耳朶ふくよかに羅漢仏 池田邦子  

星雲集戸締りの手を止め仰ぐ冬の星  前田汐音

 読み物

「熊野を駆ける」熊野古道伝説紀行11 大上敬史

玉坂  (有田市宮原町畑白倉427)日本霊異記にいう玉坂の故事。

爪書地蔵 有田市宮原町畑616 南 爪書地蔵尊)

伏原の墓  (有田市宮原町道459南)

中将姫 得生寺有田市糸我町中番229得生寺 )

糸我峠市有田市糸我町中番 糸我峠) 

 身体の俳句39「教えること」 小川望光子(医療センター医師)

七夕やまだ指折つて句を作る 秋元不死男

小学校2年生の頃から城山トンネルを越えて自転車で鈴木のそろばん教室に通っていたので、計算するのは好きでした。・・今でも覚えているのは一から百までの足し算で・・・算数好きは高校まで・・解析概論で挫折し、今では数学物語的な本を読むのを楽しむだけ・・小川洋子の「博士の愛した数式」を愛読しています。(テレビで見ました、原作とは少し違っていました。博士を寺尾聡、杏子を深津絵里。恭子の息子を√(ルート)と名づけたり、江夏の背番号28の意味など・・面白かったです・・私は数学に弱いので、理解ができたわけではありません・・)

算術の少年しのび泣けり夏   西東三鬼

昴星燦燦   選後評  鳥井保和 

土蹴つて血走る眼牛角力 荒川くみ子

引く波に月影とどく桜貝 奥井志津

松原を舞台に三保の薪能 服部久美
春節の獅子舞の脚酔うてゐる 森本潤子        

 星雲集鑑賞  坂本登(OPUS

  季節の作品 「当り散らして」より

昼顔はいつも視界の外に咲く     坂本登

かなぶんの当り散らして墜ちにけり    〃 

観賞/選    

まなうらの祖母や十能火消壺  前田汐音

一合の米研ぐ今朝の初炊き   岡本千恵子  


7月・文月・ふづき・July(2017)

  

    7月 JULY

「木偶の」は7月7日で6年目となります!みなさまのあたたかいコメントが推進力です。これからもよろしくお願いします。

2016年7月から2017年6月までの「お題」の俳句

2016年 7月「風」

海月浮く風に吹かれてゐるごとく  佐藤八重子 

天辺を風の私語過ぐさるすべり   野中千秋

山峡の風が玉解く芭蕉かな    安藤加代
海風の湿り具合もついりかな    堀瞳子

 8月「音」

音の壁うすばかげろふなら破る   谷口智行

踊り果つ三味の音闇へ遠ざかり  松村公美子

遠花火遅れてきたる闇の音    中村敏之
沼涼し音叉のような細波よ    岩城眉女

  9月「白」

青年の白色白光貝釦     新居三和

月白や水駅より鳥が立ち    堀瞳子

童謡はみすゞ白秋小鳥来る   工藤泰子
鎮魂の白石踊りの振りあまた  佐藤八重子

  10月「久」

鹿増えし話屋久島にも及ぶ  堀瞳子

久闊を叙する夜長や月鈴子  岩城眉女  

久留米発絣モダンな秋袷   松村公美子
秋彼岸永久保存の肖像画  坂東恭子

 11月「遠」

幽遠と鏡合はせの冬田道    谷口智行

海遠く無花果の実の熟れ始む  山田紳介

団栗の屋根に落つ音遠き里   池端順子

遠き日の記憶は白き花芒    野中千秋

  12月「超」

極月や超過勤務の申請書   中村敏之

超新星爆発しきりに木の実落つ 山田紳介

冬空に最期輝く超新星    新居三和
超然と宙つかさどるうつた姫  工藤泰子

  2017年 1月「縁」

戦争と無縁に生きて鍬始   岩城眉女

良縁に華やぎまさる春小袖   坂東恭子

縁側に伸びる日差しも冬至かな 池端順子
初手前畳の縁を踏まぬやう   野中千秋

   2月「景」

野火分け来る竹下景子似の女 谷口智行

幽谷の景観をなし祖谷の雪  坂東恭子

初景の富士に神々集まりぬ  野中千秋
朽舟も園の一景山眠る    安藤加代

  3月「森」

森光子のでんぐりがえり春の風  池端順子

かたつむり真昼の森の底を這ひ  山田紳介

懐かしきタラの芽採りし森の道    髙下眞知子

幸せのひとつに春の森の声    堀瞳子

  4月「東」

花菜東風分けて施設のバスが着く 佐藤八重子

スカイツリー東西南北みな朧   山田紳介

強東風や(いくり現る潮境         安藤加代

強東風に一串五匹雑魚を干す  松村公美子

  5月 「村」

律儀なる山村の四季ちるさくら   谷口智行

百堂念仏舞の形振(なりふり)響く初夏の村  髙下真智子

夏燕一村然と傾れ畠       新居三和

花うばら畠を捨てて村捨てて    工藤泰子

  6月「尾」

鳩尾から背まで広がるアイスティ  岩城眉女

尾を切りて蜥蜴賽銭箱に逃ぐ   中村敏之

片蔭に尾鰭を付けて艶話      佐藤八重子

再生の尾は瘤の態青蜥蜴    新居三和
 昨年のお知らせには、開設当時の俳句や写真も紹介しました。アーカイブで、見ていただけると光栄です。
 今月のお題は「俳」です。俳句の「俳」!原点に立ちたいです!
7月7日にお題2句と雑詠5句を公開します!
      


6月・みなづき・JUNE

 六月・みなづき・JUNE 

六月、皐月、花菖蒲、アイリス、グラジオラス、あやめ、杜若、著莪、一八短夜(みじかよ、明易し)、競馬(賀茂競馬、競べ馬、ダービー、勝馬、負馬)、花橘、蜜柑の花、朱欒の花、橙のの花、オリーブの花、柚の花、柿の花、紫陽花額の花、葵、紅の花、鈴蘭、入梅(梅雨に入る、ついり)、梅雨(つゆ、ばいう)、五月雨(さみだるる)、出水、五月闇、黒南風(白南風)、黴(黴の香、黴の宿)、苔の花、魚梁(やな)、鰻、鯰、濁り鮒、蟹(磯蟹、山蟹、川蟹、沢蟹)、蝸牛蛞蝓、蚯蚓、蝦蟇雨蛙、河鹿さくらんぼ、ゆすらうめ、杏、実梅(青梅)、紫蘇、辣韮、玉葱、枇杷、早苗、代田、田植、早乙女、植田、火取虫、アマリリス、ジギタリス、ベゴニア、蛍(源氏蛍、平家蛍、初蛍、蛍火・蛍合戦)、蛍狩、螢籠、蛭、田亀、源五郎、あめんぼう、目高、浮草水草の花、藻の花、藻刈、手長蝦、田草取、草取、夏の川、鮎(鮎釣り、鮎狩、鮎掛、鮎の宿)、鵜飼(鵜舟、鵜飼火、鵜篝、 鵜匠)、川狩(網打)、夜釣、夜焚釣堀、鰺、いさき、べら、虎魚、鯒、黒鯛(茅海、ちぬ釣)、鰹(鰹舟、鰹釣)、生節、青蘆、青すすき、葭切、翡翠、雪加、糸蜻蛉、蠅、蠅除、蠅叩、蜘蛛の囲(蜘蛛の巣)、ゲジゲジ、油虫、守宮、蟻、羽蟻、蟻地獄、蛆、ぼうふら蚊(蚊の声、蚊柱、泣く蚊)、蚤、蚊帳、蚊遣火(蚊遣、蚊火、蚊取線香)、蝙蝠、青桐、葉柳、南風(みなみ、大南風、南吹く、はえ)、青嵐、風薫(薫風)、白夜、夏至、老鶯、時鳥、閑古鳥、仏法僧、筒鳥、駒鳥、瑠璃鳥夏木、夏木立万緑、緑陰、木下闇、青葉、夏の蝶、夏野、夏草、草矢草茂る、夏蓬、夏薊、草刈、干草、昼顔、木苺、苺、蛇、蝮、百足虫、青芝、青蔦、ガーベラ、サルビア、虎尾草、孔雀草、釣鐘草、雪の下、蓼、若竹、竹の皮脱ぐ竹落葉、雹、水鶏、青鷺、五月晴、暑さ、夏衣、単衣、夏服、夏羽織、夏帽子、夏襟、夏帯、夏袴、青簾(葭簾、伊予簾、絵簾、玉 簾)、葦簀、葭戸、網戸、籐椅子夏暖簾、皐月富士  

 閑さ(しづか)や岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉

 前回紹介した人類学者・中沢新一さんの「俳句の海に潜る」から引用します。この句はまさにアニミズムの極地でしょう。〈岩にしみ入る蝉の声〉と言うとき、蝉を流れるスピリットと岩を流れるスピリットが、相互貫入を起して染み込み合っています。それが〈閑さや〉というわけです。この立石寺という寺は、昔は死者の谷と言われたところです。山の中にはいっぱい横穴墳墓があって、あの地帯に住んでいたエゾ系の人々の埋葬地として使われていました。そこに立石寺というお寺が建てられた。お寺というのは先ず例外なく埋葬地に建てられるものでした。芭蕉にもその知識は十分にあったと思います。人間の体(骸むくろ)から自由に、つまり休止点から自由になって見えない流れに戻った霊が、しばらくの間はあの谷にうじゃうじゃ居るのです。・・・元禄当時ならそういう知識もまだ日本人の中に十分残っていましたし、立石寺のお坊さんであれば、そのことを怖いほどリアルにしゃべっただろうと思います。・・・今は観光バスが停まって開けた場所ですが、昔は一面の森に覆われた細い一本道をたどっていく場所です。・・人っ子一人いないような山道を、小一時間歩いて、ふっと見上げるとそこにお堂があらわれてくる。・・そんな世界・・・だから人間の体という容器から外に出て来たばかりの霊たちが、いっぱい群れ集まっている。そういうところに、土中から出てきたばかりの蝉が鳴くのです。そこには土中から立ち上がってきた岩もある。大地、岩、蝉、死者霊、それらすべてが相互貫入しあう世界。芭蕉は全感覚を開いてその全体運動を感知しています。そしてこの俳句が生れたこれは。とても凄まじいアニミズム俳句です

中沢さんの仕事はアースダイバーと言う。直訳すれば、大地(地球)に潜る人のことだが、思想的に潜る!と理解しよう。今回は「俳句の海に潜る」という切り口で「俳句が、言語の中でも特にメタファー(暗喩)の能力をフルに使う」ことと、アニミズムとの深い本質的なつながりに言及している。彼によると【詩は人類最初の芸術です。人類が生れたとき、詩も同時に発生したのではないかと思うのです・・脳の中に流動的知性が発生すると、今まで分れていたジャンル同士をつないでいく精神の運動がおこります。その能力が発生した瞬間に、根源的なアニミズムが同時に発生するのです】とある。

 ブラックベリーの花です。ほのかにピンクがさして 爽やかな花です。

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今月のお題は「尾」です。6月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。

           尾のあるもの?

中川めぐ美句集「葭切」

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中川めぐ美 句集「葭切」を紹介します。

滝壺は渾身で滝受けとめる

「もの」の本質を即物的に捉え、情景の空間を雄渾(ゆうこん)に詠う情趣は間然するところがない。まさに「景」と「情」が渾然とした「景情一如」の境地は深い。 「星雲」主宰 鳥井保和

プロフイール;中川めぐ美

昭和14年和歌山県生まれ

平成10年「圭」入会、津田清子に師事

平成23年「星雲」入会、鳥井保和に師事

平成24年「圭」終刊

平成26年「星雲」第6回昴星賞受賞、天星集同人

 俳句協会会員



平成10年より28年までの作品より465句を精選収録

津田清子の師は「七曜」の橋本多佳子、「天狼」の山口誓子であるから、作品の底流にあるめぐ美さんの作風にも清子の抒情性と誓子の知的構成の融合、所謂「即物具象」に「硬質の抒情」が感じられるのである。そして、この一巻を読み進めてゆくと、めぐ美さんの信念である現場主義の作品で貫かれているのが感得できるであろう。

鳥居保和 抄出

蝲蚯の痙攣しつつ脱皮せる

蒼穹に吸ひ込まれゆく鷹柱

乾坤の空の限りを鷹渡る

鶴歩く豊芦原の日射し浴び

天空を焦がす火柱燈籠焼

青田風天へ抜けゆく千枚田

的を射し残心凛凛し弓始

火の列が激流となるお燈祭

葭切や母漕ぐ舟で登校す

海光や枝の先まで梅開く

滝壺は渾身で滝受けとめる

金色の佛陀乳首風薫る

泰子選

初蝶(平成10年~14年)

初蝶や未知の己と出会ふ旅

遠足の列のしんがり城に入る

でで虫の角ひつこめて登校拒否

埋もれつつ蔓伸ばしゐる浜昼顔

百日紅少女の秘密増ゆるばかり

曼珠沙華(平成15年~19年)

落葉焚バベルの塔の火柱よ

鳥になる願望銀杏黄葉飛ぶ

 竹動書屋の白木蓮 津田清子先生宅

白木蓮素顔を天へ向けて咲く

天帝に告ぐる事あり揚雲雀

梅雨茸やダリの口鬚はね上る

曼珠沙華鋼のごとき蕊張つて

鷹柱(平成20年~24年)

すかんぽは苦し中学同窓会

椎若葉して一島の盛上がる

ちちろ鳴く古墳の封土崩れ落ち

若布舟海峡の門に列なして

蚊喰鳥玄室の闇揺れ動く

 津田清子先生の畑にて

トマト畑トマト黄色い花つけて

梅開く(平成二五年~二八年)

蛍火の北斗の杓へ消えゆきぬ

岩窪に取り残されし水母かな

花五倍子(ぬるで)野猿で渡り落人めく

新緑や山に貼りつく祖谷の里

 津田清子先生ご逝去

虹二重はせをと清子出会ひしや

海外詠

大き星混むチベットの冬の天  中国

雪催ひ峠の標祈り石    ブータン

棚田植う腰に赤ん坊くくり付け ネパール

草原の闇天の川斜かひに  モンゴル

焼栗を買ふイスタンブールの夕べ トルコ

国境の花野つづきに有刺線  アルメニア

石柱たつのみの墳墓星流る  アイルランド

象でゆくクメール遺跡青葉風  カンボジア

滝壺は渾身で滝受けとめる  ラオス

蜃気楼砂漠に高き砂の城  サハラ砂漠

口許に蠅の集りてマサイの子 サバンナ(ケニア・タンザニア)

朝焼の川沐浴の巡礼者   インド

青い罌粟咲くヒマラヤの空青し  ヒマラヤ

        

「俳壇」6月号「俳壇ワイド作品集」

俳壇」6月号「俳壇ワイド作品集」  今月の有力同人
 北信五岳・・・堀瞳子「運河」

三月の半ばに、野沢温泉の毛無山から千曲川の集落へ滑り降りるスキーツアーに参加した。途中で羚羊(かもしか)に出合ったり、熊棚や鷹の巣を見つけて胸が弾んだ。自然と呼応して生まれる俳句を大事にしたい。「大景を詠め」は師の言葉だが、どこまで迫れるだろうか。

春の虹代るがはるに席ゆづり

湿原の鳥散らばれる涅槃かな

朽舟は鳥の止り木水草生ふ

蛇崩れの一筋ひかり雪解川

流水は影をうつさず春の月

水温む北信五岳力ぬき

夕空の燃えだしさうな古巣かな

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五月・皐月・早月・May

五月皐月早月May


立夏、初夏、卯月、卯浪、
牡丹、更衣(ころもがえ)、袷、鴨川踊、余花、葉桜、菖蒲葺く、端午、菖蒲、草合、武者人形、幟、吹流し、鯉幟(こいのぼり)、矢車、粽(ちまき)柏餅、菖蒲湯、薬の日、薬玉、新茶、古茶、風呂、上族、繭、糸取、蚕蛾、袋角、松蝉、夏めく、薄暑、セル(毛織物の一種)、母の日、夏場所、夏炉、芭蕉巻葉、苗売、苗物、苗植う、茄子植う、根切虫、練供養、葵祭、祭、筑摩祭、安居、夏花、夏書き、西祭、若楓、新樹、新緑、若葉、柿若葉、椎若葉、樟若葉、常磐木落葉、松落葉、杉落葉、夏蕨、筍、篠の子、筍飯、蕗(ふき)、藜(あかざ)蚕豆(そらまめ)、豌豆(えんどう)、豆飯、浜豌豆、芍薬、都草、踊子草、駒繋、かくれ蓑、文字摺草、羊蹄の花(ぎしぎしのはな)、擬宝珠、ゲンノショウコ、車前草の花(おおばこのはな)、罌粟の花(けしのはな)、雛罌粟(ひなげし)罌粟坊主、罌粟掻、鉄線花、忍冬の花(すいかずらのはな)、韮の花、野蒜の花(のびるのはな)、棕櫚のはな(しゅろのはな)桐の花、朴の花、泰山木の花、大山蓮華、手毬花、アカシアの花、金雀枝(えにしだ)薔薇、茨の花、卯の花、卯の花腐し、袋掛、海酸漿、蝦蛄、穴子、鱚、鯖、飛魚、烏賊、山女、綿蒔、菜種刈、麦、黒穂、麦笛、麦の秋、麦刈、麦扱、麦打、麦藁、麦藁籠、麦飯、穀象

中沢新一「俳句の海に潜る」小澤實  角川書店  より

はじめに;・・NHKの俳句講座で、その回の季語は「蚕豆」であった。

そら豆はまことに青き味したり・・細見綾子

この句を見て私はいきなり古代ギリシャの哲学集団ピタゴラス派の戒律のことを思いだしてしまったのである。ピタゴラス派は教団内で蚕豆を食べる事を厳禁した。・・ある哲学者の説によれば、女性を連想させるが故だそうだ。エロティックな俳句ですことと、私は口走ってしまった。これが、小澤さんと出会いだそうだ!・・・中沢さんの「アースダイバー」(講談社)に現代俳句に重要な視点がちりばめている・・・そうです!
五月のお題は「村」です。
五月七日にお題2句と雑詠5句を公開します。

 
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