「木偶」の会

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    春分

  雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす

  玄鳥至  げんちょういたる

    清明 

  鴻雁北  こうがんきたす

  虹始見  にじはじめてあらわる

  葭始生  よしはじめてしょうず

    穀雨

  霜止出苗 しもやみなえいづ

  牡丹華  ぼたんはなさく
                    

    佐保姫の胸乳(むなち)(なり)に春の山   松瀬青々

 円かな春の山を見て、佐保姫の胸乳の形を感じ取ったのである。春を司る女神、佐保姫に、青々は吉祥天女を思い当てていたかも知れない。「向上の賦」と言う新体詩を書き、封乳―盛り上がった胸乳- という言葉を持っていた青々だから。     茨木和生編・著「松瀬青々」蝸牛・俳句文庫10より
 種蒔きぬ地におだやかな眼を冠せ  茨木和生      
 盆の箸つくる麻種蒔きにけり        〃

 きれぎれの雲がより来る接木して     〃

 鷹の子が鳴くよ話さず歩かうよ      〃

 峰々は奥まで晴れて山桜         〃
     海市・蜃気楼の句 
  蜃気楼は、大気中の温度差(=密度差)によって光が屈折を起こし、遠方の風景などが伸びたり反転した虚像が現れる現象。貝櫓、かいやぐら、空中楼閣・・逃げ水
 狐雨海市を見んと旅にあり          加藤三七子
 蜃気楼沖にも祭あるごとし        鷹羽狩行
 呑み込みし言葉の行方蜃気楼       曽根治子
 跡継ぎは海市に入りてそれつきり    柴田佐知子
 わが海市溢れすぎたる自壊かな      豊田都峰

海市かと今津の海を見続くる      松村富雄

              今月のお題は「思」です。
    4月7日に お題2句と雑詠5句を公開します。
  
         

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3月21日、運河の句集祭が恒例の「俳句の宿・天好園」で行われました。

今年度は6冊の句集、句文集と評論の計8冊の出版をお祝いしました。

句集

  「桃の花」香江涼子

 春霞天上天下分かつごと

 青空のが大好き犬ふぐり

 スキップの子のうしろから春の風

 んぐんぐとおつぱいの子や日の盛

 はらはらとこぼれひらひらさくらかな

 「山河」小松美保子

 劇のキャラバンがる花菜畑

 家婦たりし日々懐かしき花貝母

 つい買うて畑には多き種袋

 花種蒔く光のめばえさうな土

 水に噎せ紙につまづき春深む

  「室生」 松田トシ

 田一枚養ふ山毛の目吹かな

 人麻呂を神を崇めて春田打つ

 命毛をすかして見たる芒種かな

 龍穴の水を引きをり苗代田

 時鳥神を柱とへけり

  「メメントモリ」「死を想へ」中野弘

 軒に注連田に帛を張る熊野

 睡りさめ睡りさめ熊野去る

 補陀落へ梛の病葉散る頃に

 メメントモリは「死を思へ」の意春愁

 閉づる力失せたるチュリップ散る

  「砂の輝き」杉田菜

 十も若く見らるる夏帽子

 実石榴やがすべてでありし頃

 おでん屋に一人で入る勇欲し

 結婚の話に及ぶさくらかな

 女ざかりきざかり晶子の忌

  「七野七種」山節子

 つらつらとつらなるいのちくわとのひも
 はやしけり京の七野の七種を

 お山から雨脚早し御田植

 懸想文ぎなたみしてゐたりけり

 鬼封じめたる春の雪
   
「藪山
里山地方の山きの日記と俳句」 佐保光俊句文集

 に水引ふれゐたり

 赤とんぼ向きふるとき光りけり

 山道を雉子立たせゆく二日かな

 大つらら樹液を含み濁りけり

 春の月子と自を買ひに行く
「熊野、魂の系譜」「歌びとたちに描かれた熊野」 谷口智行

(登場する人物)前登志夫、伊良子白、謝野謝野晶子、茂吉

釋迢空、スサノオ、梶井基次伊東雄、森敦、立原道造、

中村苑子、三島由紀夫、蕪村、萩原朔太中上健次

     
            

「運河」の天水集同人、松井トシさんの句集を紹介します。DSC_0288

 帯文
町村合併によって室生村は宇陀市に編入されたが、唯一の公共機関だったバスも廃止になった。近鉄大阪線室生口大野駅から歩くと一時間半の所にトシさんの棲む在所がある。猪、鹿の害に困っている地だが、トシさんはそこで野菜作りもしている。在所には中世からの連歌堂も残っている。句集「室生」はそんな地に惚れ込んで棲み続ける作家の句に満ちている。  茨木和生
      茨木和生抽出
  仕留めたる猪の毛山神に捧ぐ
  賑やかに来て靑々の墓洗ふ
  古事記の名そのままの字稲の花
  床下に寒施行して連歌堂
  船霊は母の髪の毛鰆船
  晩年は再びひとり冬来る
  上布着る齢をなりて解ること
  歌垣の野に摘み来る若菜かな

  松茸を競ひて御饌に在祭
  手拭に剣の一文字頬被

  お日さんの出て来る山を恵方とす
  十本の指重宝に粽結ふ
  
    春の句をいくつか紹介します。

  犬箱も這子も並べ雛祭

  紙雛の暮石の軸を雛の間

  祖母の着しべべと喜ぶ雛祭

  家に鍵掛けずに来たり蕨狩

      土塊を起せばふたつ蕗の薹     
      田一枚養ふ山毛欅の目吹かな

      人麻呂を神を崇めて春田打つ


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  雨水

     草木萌動   そうもくきざしうごく  

  啓蟄

     蟄中啓戸   ちっちゅうこをひらく

     桃始笑     ももはじめてわらう

     菜虫化蝶   なむしかしてちょうとなる

     雀始巣     すずめはじめてすくう

     桜始開     さくらはじめてひらく
      今月のお題は「果」です

  果物、果実、果糖、果敢、果断、因果など・・果てないです。

「因果応報」人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。もと仏教語。行為の善悪に応じて、その報いがあること。現在では悪いほうに用いられることが多い。「因」は因縁の意で、原因のこと。「果」は果報の意で、原因によって生じた結果や報いのこと。
果報は寝てまて、「果報」を正確に言うと「果」の方は、善いことをおこなったときによい結果が出るというように、因果が正しく廻ってくることですが、「報」の方は行為の結果がその原因どおりにならないようなむくいのことです。 いずれの結果がでるにしろ、「寝て待つより方法がないのだ‥‥」と開きなおった姿勢を教えているものです。

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  蕗の薹の 舌を逃げゆく にがさかな     高浜虚子

  蕗の薹 寒のむらさき 切りきざむ      橋本多佳子

  山峡を バスゆき去りぬ 蕗の薹       三好達治

  蕗の薹 食べる空気を 汚さずに        細見綾子

  蕗のたう 手まりの如く 揚がりたる      黒田杏子

 蕗の薹 焚火に焦げし 花開く        茨木和生

  水ぐるま ひかりやまずよ 蕗の薹       木下夕爾

 

        お題2句と雑詠5句を3月7日に公開します。


 

 「宇宙」86号
「宇宙」の発行所は静岡県駿河区である。島村正主宰の創刊のことばの一部「今、地方の時代であり、個性の時代。同人各位は、個々の個性を充分に発揮する場を『宇宙』と心得、『宇宙』を最大限(フル)に活用していただきたい」
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表紙絵のカット・矢澤賢一、題字・欧陽詢
「宇宙」アルバムでは、「ミュージカルお菓子放浪記」静岡上演の写真や、第
20回静岡市民俳句大会の写真など多数。
前回は 加用富夫 句集「大龍勢」の特集を紹介した。今回も楽しめるシリーズが圧巻!
「ふしあわせという幸福」(13)西村滋
犬も歩けば(40)矢澤賢一  
二合庵便り(15)田島明志  
俳句千夜一夜(18) 田島明志
公孫樹(16)木下惠三

    『去来集』を読む(29) 二瓶洋子 
 雪の富士」山口誓子

  駿府より山越しに見ゆ雪の富士
眼の前に聳つ快晴の雪の富士

  富士の雪肌理の細かな雪に見ゆ
主宰の句

  「有明の望の月」 島村正

何もかも設へてゐて無月なる

而して納得尽くの良夜かな

捨てがたき月有明の望の月

名月として十六夜の月を愛づ

月蝕はさて必見のミュージカル 

 観劇・お菓子放浪記(西村滋 原作)

 主星集より 一部

凩を来て弔問の襟正す        岡本虹村

御遷宮正殿址の天高し        梶野定義

 三猿をふところにして山眠る     亀山直江

 帆船に千の結び目天高し       杉山昌平

 カルストに欠片を落としうろこ雲   田島明志

 逆立ちの足が舟漕ぎ海鼠突く     富田兼雄

 いてふ散る空より生れて来しごとく  中塚久恵

 一面を栗が覆へる輪つぱ飯      二瓶洋子

 寒星を仰ぐ渋谷のど真ん中      馬場一扇

流れ星星にも身丈ありぬべし     八木裕子

蔓引けば蔓に落暉の烏瓜       八木斌月

案山子にもある軸足の土踏まず    矢澤賢一

こすもすの茎のひ弱し中也の忌   結木桃子

 大鷲に二つの握り拳かな       秋本惠美子



 特別作品

「雪蛍」 小林邦子

爽やかに見ゆ(まみゆ)白山下山佛

雪蛍ふはりと列の最後尾

綿虫のはつかの命囲ひけり

 「二足の草鞋」 篠原なつ子

きつかけは細やかな波青田波

水の街三島風鈴鳴りやまず

さはやかに二足の草鞋履きにけり

新連載季語の周辺「事物の季節」1   結木桃子

­―「春の季語となる事物」(1)―

 ”鞦韆・ふらんど・ふらここ・ぶらんこ・ゆさわ(は)り・半仙戯”

  鞦韆の語源は中国・唐代の宮中儀礼”鞦韆の戯れ”・・
皇帝の玄宗が、「羽化登仙」の感を味わえると言い「半仙戯」と名付けたと。

 ふらんどにすり違ひけりむら乙鳥(つばめ)  一茶

  鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし        三橋鷹女

  鞦韆に腰かけて読む手紙かな        星野立子

鞦韆に夜も蒼き空ありにけり         安住敦
   着物きてふらここを漕ぎゐたりけり   加藤三七子   

起源として、紀元前七世紀ごろの中国北方の遊牧民から・・古代ギリシャの祭り、インドの農耕儀礼として、女性がぶらんこに乗ったなど・・季語の背景がわかる。

特別作品「無窮の空」島村正

里山を搦 めとりたる葛の花

変哲もなきみんみんよ子規忌なる

穴まどひ七十にして惑ひけり

大綿に無窮の空のありにけり

一夜にて普天率土の雪の富士 

       2月   
     大寒   鶏始乳   にわとりはじめてにゅうす  1月30日~2月3日
     立春  黄鶯睍睆  こうおうけんかんす  2月9日~13日
          魚上氷   うおここりにのぼる 2月14日~17日
          土脈潤起  とみゃくうるおいおこる 2月18日~22日
          霞始靆    かすみはじめてたなびく 2月23日~27日
          草木萌動  そうもくきざしうごく  2月28日~3月3日

  何ごとも移りのみ行く世の中に
       花は昔の春にかはらず   
良寛

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春めくといふものに闇ありにけり 茨木和生

春めくと雲に舞ふ陽に旅つげり  飯田龍太

魂の一句を梅ケ枝に結ぶ     山田六甲

どこやらが冬どこやらが春の雲   後藤比奈夫

大試山の如くに控へたり     高浜  

村ぢゆうの畦あらはるる雪解かな  長谷川櫂  

鴨のしづこころを眺むしづこころ  上崎暮潮

下萌えて大地に詩のちにけり   竹下陶子   

岩あれば岩のりこえて下萌ゆる   鷹羽狩行

下萌や神の計とは不思議      畑廣太 

 今月のお題は「結」です。2月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。
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   猫柳の芽と辛夷

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 鳥井保和主宰 「星雲」29号を紹介します。

季節の一句 はじかれて千々に乱れし恋歌留多  鳥井保和

            第二句集「吃水」より

 諸々の技法や思索を飛び越えたところに身を置き、ただ詩と向き合いたいと思う、そんな混じり気のない気質が生んだ句ではないだろうか。潔い。歌留多の冴えた渇き、「乱れし」と「恋」の字が視覚と情念の間に不安定に収まる。歌留多の句にして力感あふれた作品。 花尻 万博 (花尻氏は第二回攝津幸彦記念賞受賞)

星戀集

 杉の秀の高野仏都の霜月夜   鳥井保和

 海の門の白瀬逆巻く十三夜    〃

流星集

 敬老日嘘を上手に聞いてあげ  大倉義正

 蜜柑熟る紀文船出の碑の岬    〃

極星集

  胴太くうろこ密なるいわし雲    小林邦子

  稲光り亀裂の走る天の壁    竹正與

  橋脚へ来てとぐろ巻く秋出水  成千代子

  美丈夫の官兵衛が立つ菊人形  山田佳郷

普段着の衿を正して赤い羽根  岩本たき代

天星燦燦  鳥井保和選  一部

 軍配を高く軍師の菊人形  岡本 敬

 民宿の女将は漁師猪捌く  澤 禎宣

 秋澄むや巍巍堂々の紀州富士  園部知宏

 略歴な農ひとすぢや村歌舞伎  加藤行蕙

 白壁に影絵となれり風の盆   中川めぐ美

 フルートの細き指より秋の風  新井たか志

 新米の湯気高上がる竈釜    田島和子

 誓子の句碑巡り29(鳥羽ミキモト真珠島)

  眞珠島白葉牡丹も眞珠なり  誓子

    貝を手に浮上の海女に天高し   保和  

星座探訪28より 津川絵里子氏の星雲の俳句探訪 

 津川絵里子氏プロフィール;句集「和音」により第30回俳人協会新人賞受賞、同年第53回角川俳句賞受賞。2013年「はじまりの樹」により、第1回星野立子賞、第4回田中裕明賞受賞。現在「南風」主宰(村上鞆彦と共宰)

  季節の作品   「蓬莱」  津川絵里子

    甲子園春風町へ初電話

    蓬莱や赤子はわらふこと覚え

    餅花に集まるごとく相席す

    鳶・鴉・鷗を放つ寒さかな

    断面のやうな貌から梟鳴く

 天星集  青田風青田を越えてうすみどり  木下恵三

      あぢさゐや木戸の開く音下駄の音 中島利夫

      風鈴の時には風を突き放す    小林永以子

  風鈴はいつも風のままに鳴っている。この句は風鈴を「風を突き放す」と擬人化して詠んだところが面白い。風の言いなりになるばかりではないとばかりに、風鈴は大きな音を立てたのではないだろうか。

 昴星集  桜餅黙黙と食べ恋もなし      岸 穆

 星雲集  デニムシャツぱつと膨らみ青嵐    津本けい

             

 読み物では、大上敬史さんの「熊野を駆ける」熊野古道伝説紀行が始まった。伝説の地を訪れた写真と地図で判りやすい。新シリーズ! 

 身体の俳句29「触ること」 小川望光子

お医様のエッセイです。「医療とは触ることである」が、今では「画診」の時代!という触り(さわり)に「聴診器一本で済む時代は終りました」とのこと!納得しました。 
   星雲集鑑賞  坂本登(OPUS)     リレーエッセイ  など

             2015年  
  
   新年あけましておめでとうございます
     
「木偶の会」の応援ありがとうございます。
       今年もよろしくお願いします。 

  元日の事皆非なるはじめかな  虚子

  正月の地べたを使ふ遊びかな  茨木和生

  元日の広げし絵図の中にをり   小澤克己

  元日や鶏のあとより牛の声    鷹羽狩行

  元日の苔のみどりが堂かこむ  阿部ひろし

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     今年初めてのお題は「頭」です。
   1月7日に お題二句と雑詠五句を公開します。
   

                 
  
 運河俳句賞おめでとうございます。毎年12月「運河俳句賞」の発表があります。9月締切までに「20句」をそろえて応募するので、大変です。しかも毎月の20句を欠句しての応募は認められません。今回は茨木和生選のみを掲載します。
    茨木和生選
 第一位   真野の卯波      山近由美子
      渦潮をならず潮色変はれども
      崩れたる山肌あらは山桜
      濁りをれども湖に稚鮎汲む
      夕暮れの真野の卯波の荒れ来たり
      上陸は年に一度よ島祭

 
第2位    山河賛歌       檜尾とき魚
      蝮酒指す元気かと問ひたれば
      杣小屋の屋根は杉皮蛇の衣
      涼しさよ電気水道なき暮らし
      指笛の谺透きゆく良夜かな
      秋の虹山河讃へてゐるごとし

 第3位  雪だるま       たなかしらほ
     農小屋の半ば埋もるる深雪かな
     余呉百戸つなぐ小径の雪を掻く
     融雪の湯の出ぬここら余呉も奥
     寒雲の垂れをり賤ヶ岳の上
     吹雪けり呟きほどの日が差して

 第4位  皇居観桜      代田正雄
     ボディチエック受けて皇居の花人に
     列乱す人なく皇居花の道
     引き返すことは御法度花の道
     遠く来て皇居観桜日和かな
     道尽きて黒大門に花吹雪

第5位  三和の御田   山田悦子 
     降臨の祝詞のさなか夏鶯
     白シャツの豊年議員祓ひ受く
     麻緒結ふ青竹すがし水戸祭
     燻炭にそだつ早苗の濃き緑
     田の神の鳥居は丸太抜穂祭 
                       
     
   

        

小雪   朔風払葉  さくふうはをはらう    11月20日~12月1日

橘始黄   たちばなはじめてきなり 12月2日~6日

大雪   閉塞成冬 へいそくしふゆとなる  12月7日~11日

熊蟄穴  くまあなにちっす     12月12日~16日

魚群  けいぎょむらがる     12月17日~21日

         「鱖魚」は中国に住む口の大きな魚。アサジ、オイカワ、ヤマベ、鮭         
冬至   乃東生  だいとうしょうず 12月22日~26日

      麋角解  びかくおつ 12月27日~31日

    201411252307000宮本ジジ絵

        松瀬青々 

 蕪こそ肥えて美人に似たりけれ    

 寒雀氷の珠を啄みぬ        

 狼藉と去来も見しか柿落葉

 ぽつかりと雪ほどのもの世にあらず

 の下に雷を感ずる冬至かな

     右城暮石

 風呂吹の湯気室内を甘くせり 

 かじかみて何をするにも腹だたし

 性格の違ひ障子を洗ふにも

 気象図の線美しく寒波来る

 に雪のあるところまで遠く来し

     中村正幸

 去年今年軸足いまだ決まらざる

 遥か来て白炎となる大白鳥

 キューピーのでこにあつまる寒さかな

 裸木となりてその影独立す

 底冷の鞄の底に旅の

   茨木和生

 空中で力強めて鴨飛べり

 囮鴨流れを切つてゐたりけり

 ほとけより神はおほらか公孫樹散る

 冬の海荒ぶ熊野が鳴りして

 水仙が自生す灯台敷にも
   
             

    今月のお題は「地」です。12月7日にお題二句と雑詠五句を公開します。 

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  霎時施  こさめときどきふる     1028日~111
  楓蔦   ふうかつきなり       112日~6

  山茶始開 さんちゃはじめてひらく    117日~11
      
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 最近稲架はすくなくなりました。今年は風で倒れた稲が多くて、稲刈りは大変だったようです。
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 風倒田風の踏みたる跡とどむ   






風倒の
稲を異草かと思ふ

(

 風倒の稲穂き左

 高低のまま泡立草立たせ置く

 近江の田泡立草のの割

    右城暮石

 藁ばかりなる藁塚のもたれ合ふ

 藁塚も神菩薩像なるよ

 新しき藁塚やわが詩も太れ

 コンバイン停めず運べり籾袋

 黄ばむ樹になんじやもんじやの名札吊る

    茨木和生

 ばらばらに立つ藁塚の意思ならず

 狸藁塚とはなまくらなつくりやう

 薄墨の紅葉の雨雫山
 桜
もみぢのときも一樹にて
 山の雲切れ紅葉かな

    今月のお題は「運」です。
     11月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。

             

 

  季刊「鳳」10号を紹介します
  
「台」 人はなにかしか、愛や希望や遺恨などの思いを台として、日々生活しているのではないだろうか。人によって異なるのはむろんであるが、誰もがなにかしらの思いを台として立っていることは確かである。松瀬青々の句に 霞けり鈴鹿の山の断頭台 があり、高柳重信の句に、身をそらす虹の 絶巓 処刑台  がある。これらの句の内容は、他者により思いの台を強制的に、無念の台とされている句である。だが、青々、重信は無念を反転させて、ある種の愉悦をなしているように思う。    高道章

 特別作品 

「地図に無き道」より   藤 勢津子

    敢へて行く地図に無き道穴まどひ

    蜻蛉にこの上なきの空と海

 「胡桃割る」より       浅井陽子

    ななかまどロープウェイが傾斜上ぐ

    胡桃割る秘密の部屋を覗く如
 俳味箪笥より

   堀瞳子 菜洗ひ終へひっそりと村はあり  木村蕪城

 菜洗う」は冬の生活季語で白菜や水菜などを洗う事を言う。昔はどこの家でも、秋の終から初冬にかけて、家族が食べる分量の漬菜や切干を作る暮らしがあった。中略 掲句の菜洗ひの句、「ひつそりと村はあり」に、雪に閉ざされた村の有り様を見ることができる。

   高道章 片月見しての男女に情の齟齬  玉出雁梓幸(かしりこ)

 片月見とは、雁梓幸の自註を引くと「八月十五夜に月見をして九月十三日に月見をせぬ片見月は忌むべき事とされているが今それを信じる人は少なかろう。ただこの様な事態が起こるならば」とある。・・ちなみに、十三夜の月見は、宇多天皇が「無双の月」をほめたのが始まり智、醍醐天皇が始めた宮中行事が起源かとも言われている。      
古句交響より

 秋風の吹わたりけり人の顔  上島鬼貫

秋の風夕日湖面を揺蕩ひて   勢津子

双眸を吹きわたりけり秋の風  瞳子

秋風や礫に欲しき石ひかる   章
   風筋を人の過れる鹿の声    陽子

文章は「俳句好風10」堀瞳子、「脳を鍛える」藤勢津子

   「スタンレー伯への挨拶2」高道章

   「月三昧」浅井陽子  など
        
 香り立つ新米であり祖も来よ      高道章
 乗りごこち良きものでなし地車は      〃
 月の夜のゆたにたゆたに汀女の忌    堀瞳子
 月代や塒の鳥がかうと鳴き         〃
 秋の蝶過ぐる三面鏡の右        藤勢津子
 おうつりの松茸といふ果報かな       〃
 川上に雲の湧く山鮎下る        浅井陽子
 原稿に檸檬を載せて人をらず        〃 

          

 蟄虫坏戸 ちっちゅうこをはいす(9月28日~10月2日)

 虫類が巣篭もりをはじめる季節

  虫たちの饗宴はクライマックス・・そしておひらき

 水始涸  みずはじめてかる(10月3日~7日)

 稲田の水を干しはじめる頃合い・・まもなく稲刈り
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今月のお題は「月」です。

ひとつ家に遊女も寝たり萩と月      芭蕉

名月を取ってくれろとなく子哉      一茶

はなやぎて月の面にかかる雲       高濱虚子

名月や巡りて見する風車         正岡子規

名月や浪速に住んで橋多し        夏目漱石

夕月のたへにも繊き案山子かな      水原秋桜子

真っ向に名月照れり何はじまる      西東三鬼

鎌倉の月高まりぬいざさらば       阿波野青畝

月隠す術なき屋根となりにけり      久保田万太郎

稜線を刻々鎮め月のぼる         横山白虹

      10月7日にお題2句と雑詠5句を公開します。

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                   彼岸花の俗称

 狐の剃刀・死人花・幽霊花・死人草・しぶとばな・仏花・数珠花・じゅじゅばな・じゅずかけばな・曼珠沙華・極楽花・天蓋花・・・

山内節子 第一句集 「七野七種」 角川学芸出版を紹介します。
つらつらと つらなるいのち くわとのひも

山内節子さんの作品が安心して読めるのは、どの句も現場に立って物を見つめて真摯に詠んでいるからである。・・・序文より 茨木和生
        自選句
BlogPaintお山から雨脚早し御田植

左義長の竹伐りに行く小舟かな

憧れが恋の始まり雲の峰

豆筵広げ相場のラジオ聞く

正倉院正面にして暦売る

夫にもと買ふ歌神の宝船

歌貝の句を諳んじて雛の客

産み月の髪を切りきて夏帽子

汐汲と決めて羽子板市に行く

つらつらとつらなるいのちくわとのひも

満員の川舟連ね紅葉狩

はやしけり京の七野の七種を
共鳴句

懸想文ぎなた読みしてゐたりけり

鬼封じ込めたる巌春の雪

竜穴の口に日の入る彼岸かな

端午鰤甑隼人の裔の海士

年表を皇紀でしるし献氷祭

天窓の小さき包パオの夏炉かな(モンゴル)

御花園(ぎょくわゑん)の岩の築山菊の宴

午後からも山影退かず石鼎忌

涅槃図の沙羅は黄金に枯れゐたり

うすがみのふくれきつたる葱坊主

昼は子と貝掘りに来て十三夜

この案山子煙草のにほひしてゐたり

猫よらず虫こないも苗四月馬鹿

湿原の荒れてをりたる花野かな

星落ちし所を祀り山桜

野遊びの続きに乗れる渡し舟

毒茸見とれて人に遅れたる

夜神楽の中入りに投ぐ福の種

ケンケンと朱書きの札も初鰹

落葉掻寒山似よと言はれても
                 

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