(日本人に似ている)
それが、継之助にはおかしかった。スネルが、トルコ人であると自称することがあるのはその髪の黒さ(トルコ人にはそういう特徴をもった者が多い)によるものだろうし、あるいはトルコ人の血も入っているのかもしれない。
現に継之助に、
「私にはトルコ人の血が入っています」
と言った。
トルコ民族とは、東洋史上の突厥であろう。ふるい時代、中央アジアの草原に活躍した騎馬民族のひとつで、その人種のうち西へ行った者は「ヨーロッパ・トルコ」といわれ、混血のために碧眼紅毛になった。しかしながらその言語の祖形は日本語とおなじウラル・アルタイ語族に属するものであり、その点でトルコ人は日本語をおぼえやすい。
司馬遼太郎『峠』新潮文庫、エドワルド・スネルに関する記述より
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このところ『トルコライス』という長崎名物がひどく気になっている。
単なる三品盛り合わせの“トリコロール・ライス”だと笑う友人がいる一方で、豚肉を羊肉に置き換えた伝統的トルコ料理がベースだという説も耳にする。
一度本格的なトルコ料理も食べてみたいな、などと「トルコ」という言葉が頭を離れずにいたら、読んでいる司馬遼太郎の本に「トルコ」という文字が出てドキッとしたのでメモしておくことに。
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追記:
突厥は「とっけつ」と読む。本を読みながらのメモは携帯電話の片手入力でしているが「厥」の文字がどうしても出てこず、「どうしてもこの文字でメールを書かなくてはならない」という時にはどうしたらよいのだろう。音読みの「けつ」では候補に登場しないのでお手上げである。「蕨」と書く「けつ」は候補に出てくる。「厥」の訓読みは「その・それ」である。当然「その・それ」でも候補に出てこない。PC用のATOKでは「突厥」が「とっけつ」と打って入力される。
ところで突厥とは何だろうと自宅に戻ってから辞書を調べてみる。
とっけつ【突厥】
トルコ系の遊牧民。また、その遊牧民が支配した国。6世紀中葉、アルタイ山麓に起り、柔然の支配を破って独立、伊利可汗と称し、モンゴル高原・中央アジアに大遊牧帝国を建設。6世紀後半、東西に分裂し、630年以後前後して唐に征服されたが、682年東突厥が復興し(突厥第2帝国)、744年ウイグルに滅ぼされた。東アジア遊牧民最初の文字を残した。
とっけつもじ【突厥文字】
8世紀頃に突厥民族が使用した音素文字。起源はアラム文字、またはソグド文字といわれる。8世紀前半のオルホン碑文が発見され、19世紀末にトムセンが解読。
広辞苑第五版より
なるほど。やはり凡庸な人間は辞書片手でないと本というのは正しく読めていないことが多い。
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さらなる追記:
友人から教えていただいたトルコライスに関する『トルコライス共和国』 というサイトに私見としてこんな書き込みがあった。
「この店の前に東郷公園と言う公園がある。 トルコではロシアのバルチック艦隊を破った東郷元帥は英雄とされている そうゆう関係で付けられたのではと考えた」
“トルコ東郷英雄説”というのは本当だろうか。
“フィンランド東郷英雄説”というのがあり、フィンランドではバルチック艦隊を破ってロシア帝国の脅威を取り除いてくれた英雄として「東郷ビール」というのが売られており故にフィンランド人は親日的であるという話しがあり、かなり眉唾物らしい。
眉唾ではあっても日露戦争がが日本人を狂わせた端緒だったと司馬遼太郎も書いていたような気がするけど、そういう浮かれ気分で“トルコ親日説”を捏造しながら「東郷トルコライス」が誕生したという説は有り得るなぁ、と思ったりする。港町長崎名物というのも日本海軍がらみで考えれば納得がいく。
こんなメモをちょびちょび思いつくままに書いている携帯電話がフィンランド製というのも………………単なる偶然に過ぎないよ!
フィンランドは親日国か
「東郷ビール」という伝説
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