2005年12月13日

『The First Christmas Morning』 ダン・フォーゲルバーグ

※クリスマス特集 期間限定再掲載 (2009.12.2. 初回掲載 2005.12.13. 22:21)


6ec7bbd7.jpgダン・フォーゲルバーグ(以下DF)が1999年にリリースしたクリスマス・アルバム。発売当時、店先で偶然見つけてその場で買ったものの、最初1回通して聴いた後はしばらくケースから出すことはありませんでした。というのも、『The Wild Places』(1990年)で以前のような温かい音楽に戻っていったDFだったけれど、『River of Souls』(1993年)も路線的にそのままで、『No Resemblance Whatsoever』(1995年)は先日ご紹介した『Twin Sons of Different Mothers』(1978年)の続編的意味合いが強く(しかも前作を超えられなかった印象がありました)、それから4年ぶりとなるこのアルバムも、何か目新しさが感じられないように私の目には映ったからです。

しかし、一昨年リリースされた『Full Circle』(2003年)ですっかりDFの世界に引き戻されてしまった私は、改めてこの『The First Christmas Morning』を聴きなおして、その素晴らしさに初めて気がついたのでした。最初聴いた時に何の感動も受けなかったのは、ひょっとするとそのときに自分の心が曇っていたせいかもしれません。

このアルバムでは、DFによるオリジナル曲と昔から伝わるクリスマスキャロルがほぼ半々の割合で収録されています。それでも違和感を覚えないということは、やはりDFがキリスト教文化圏で育った人間だからなのだ、と実感させられます。日本人には到底真似できないことだと思います。ライナーノーツにはDF自身による曲の解説がつけられています。私が購入した物は日本で発売された物なので、中身のCDとライナーノーツは輸入された物ですが、日本語訳の解説とスリーブケースが付けられています。このCDについてのDFのコメントの一部を引用してみましょう。

「......私にとってのクリスマスの大部分は音楽だ。クリスマス・ソング、賛美歌、中世の、ルネッサンスそしてバロック風の聖歌をずっと書き続けてきた。ミュージシャンとして作詞すること、多くの人たちにこのアルバムを聞いてもらうことは、私の人生で素晴らしい喜びのひとつだ。私の些細なやり方で、世代を超えてクリスマス・スピリッツや、キリストの誕生をほめたたえるために、作曲された音楽の真髄を増やし続けられたら。

あなたが幸せに、そしてすばらしいホリデーになりますように。クリスマス・ライトと愛が、あなたの心をその年中ずっと満たしてくれるように。」
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DF クリスマスアルバムの導入部はフェイドインしてくる鐘の音に合わせて、誰でも聞いたことがあるクリスマスキャロル、「Hark the herald angels sing(賛美歌98番、天(あめ)にはさかえ)」が流れます。導入部なので、DFの歌ではなく合唱の歌。クリスマスの雰囲気が伝わります。この曲を聴くと思い出すのが『素晴らしき哉、人生!』(1947年)という映画のラストシーン。この映画もクリスマスの時期という設定で、ハッピーエンドのラストシーンで、集まった町の人たちがこの歌を歌っています。

アルバムを通じて電気楽器の使用は極力抑えられ、アコースティック・ギターとピアノがメインの伴奏楽器となっています。アルバムのところどころにインストゥルメンタル曲が置かれ、安らぎを感じさせてくれます。アコースティック・ギターがメインのインストゥルメンタル曲である「Winterskol」の通奏部は雪が降る情景を思わせますし、クラシック・ギターがメインのインストゥルメンタル曲もあります(「Feast of Fools」、「Yule Dance」)。

その他フィドル、バロックトランペット、ハープ、ハンマー・ダルシマーなどの楽器が使われており、DFは現代のクリスマスではなく、中世から続くクリスマスの世界を頭に描いているのだと思います。「グリーンスリーヴス」の別名で知られる「What Child Is This」ではDFによるオートハープが中世的な雰囲気を出しています。

『The First Christmas Morning』 CRCL-80011(MSPCD 8001)

Bell Fantasy/Hark the Herald Angels Sing
At Christmas Time
Winterskol
The First Christmas Morning
This Endris Night
Feast of Fools
I Saw Three Ships
Snowfall
In the Bleak Midwinter
Yule Dance
What Child Is This?
O, Tannenbaum
We Three Kings
Christ, the King



dennismoore1988 at 22:21│Comments(2)clip!Dan Fogelberg 

この記事へのコメント

1. Posted by Mistral   2009年12月03日 09:58
クリスチャンでない私でも、クリスマスには特別な思いがあります。
街の雰囲気や何度か経験した教会のイベント、家族との時間…。
ましてキリスト教文化圏で育ったミュージシャンたちのクリスマス観が反映される音楽は
味わい深いものでしょう。
DFの才能や温かみがいっぱい詰まったクリスマス・アルバム…良いですね!

音楽というのは不思議なもので、最初から入りこめるものと、月日がたって
感動するものがありますね。
こちらもそれだけ人生を経て、変わってきているのでしょう。。
2. Posted by Arthur   2009年12月03日 23:12
§Mistralさん

同じくクリスチャンではない私にとっても、プレゼントがもらえてケーキが食べられるクリスマスは特別な日でした(笑)。

>ましてキリスト教文化圏で育ったミュージシャンたちのクリスマス観が反映される音楽は
>味わい深いものでしょう。

これは本当に感じますね。日本人が生半可に作るクリスマスソングとは何かが違います。映画でもきっとそうでしょう。

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