2014年08月

2014年08月22日

矯正のための上顎拡大か、無呼吸治療のための上顎拡大か?

8月2日にISMSJという睡眠関係の学会に参加してきました。
今回の目的のひとつは、スタンフォード大学の睡眠センター(睡眠医療の世界的中心です)でフェローをされているK先生にお会いして、小児の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療の実際をおききすることでした。
スタンフォード大学をはじめとする欧米の大学病院では非肥満小児のOSA治療として
Adenotonsillectomy(アデノイドと口蓋扁桃を切除する手術)
⊂絣楜淆拡大(RME; 上顎急速拡大)
を行い、良好な成績をおさめていることが論文で報告されています。

歯科が関わるのは△任后
初期の論文では『「歯列不正で歯科矯正治療が必要」かつ「小児OSA」の患者にRMEを行った』と書かれていました。つまりRMEの目的は歯科矯正で、歯科矯正が必要な患者に限定されていました。しかし2013年のスタンフォード大学のギルミノー教授の論文では、歯科矯正のためにRMEしているというニュアンスが希薄で、むしろOSA治療のためにRMEしているようにも読めたので、気になっていました。

K先生に質問したところ、答えは…

「スタンフォード大学では、OSA治療を目的としてRMEしている」
ということでした。

疑問が解決して、スッキリしました。
また、K先生は「現在小児OSA治療のガイドラインにのっていないが、いずれRMEはスタンダードになるだろう」考えておられるそうです。
私も賛成です。
子供たちが健康な人生を送るのに、歯科が貢献できるのであれば、大変嬉しいです。

DSCF0445 - コピーK先生ありがとうございました。またテニスコートでもお会いしたいです。(K先生とは大学院の時に、数回テニスをご一緒したことがあります。)

dentakahiro at 00:22|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2014年08月18日

睡眠呼吸フォーラムに参加してきました

7月24日に滋賀医科大学の睡眠学講座主催の「睡眠呼吸フォーラム」に参加してきました。
今回のテーマは小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)でした。
講師は山梨大学小児科の杉山剛先生と獨協医科大学の中島逸男先生。
主に小児のAdenotonsillectomy(アデノイド・口蓋扁桃摘出術)についての講演でした。

Adenotonsillectomyは一般的には「へんとうせんを切る手術」と知られている手術です。
現状ではアデノイドや口蓋扁桃肥大があっても、オペではなく経過観察されることが多いのですが、近年小児OSAとの関わりから再注目されています。小児OSAに取り組まれている医師たちは、小児の成長への悪影響を最小限にするため、経過観察よりも低年齢でのオペを選択するように変わっていっているようです。

杉山先生の講演のまとめ
・未就学児でも、OSAがあると心臓への負担があり、Adenotonsillectomyを行うことで心臓への負担が軽減することが示唆された。
・乳児でアデノイド増殖、OSAがある場合もある。
・山梨大学医学部付属病院では、2歳あるいはそれ以下の年齢の小児のAdenotonsillectomyを行っている。
・小児OSAは、やせてひょろひょろの小児と、肥満の小児の両方にみられる。日本ではやせている小児の方が典型的。
・3〜6歳でAdenotonsillectomyを行うと、小児の行動が変わり、不注意や多動・衝動が改善する傾向がみられた(「話かけても聞いていない」「決められたことを守れない」「話しを最後まで聞かずに行動することが多い」などが改善)
・3〜6歳でAdenotonsillectomyを行った後、小児のたくましさやQOLが増す傾向がみられた。保護者への問診で84.6%の小児は「食欲が増しよく食べるようになった」。約50%の小児が「かぜをひきにくくなった」「急な発熱が減った」。
・全身麻酔での手術だが、3〜6歳のAdenotonsillectomyに対する保護者の満足度は非常に高い。

中島先生の講演のまとめ
・OSAが原因で多動になっている小児が、ADHDと診断されてしまっているケースがある。
・日本には、小児のフルPSG検査(入院での睡眠検査)ができる施設は20程度しかない。
・自宅での夜間のビデオ撮影は、小児OSAの診断に有効。
 (頭からおへそまで撮影。パジャマはめくる。スマートフォンの動画でよい)
・小児のOSAの診断に、必ずしもフルPSG検査は必須でない(簡易検査のみでよい)が、内視鏡検査は必須。
・小児のAdenotonsillectomyは後戻りする場合、再オペが必要となる場合がある。オペ後の長期フォローが必要。

杉山先生と講演後にメールで意見交換させていただきました。
先生は、「未就学児のOSA治療は、小児科、耳鼻科、歯科での連携で完成する」とのお考えでした。私もこの意見に賛成です。また杉山先生は、先日の小児歯科学会にも参加され、私の所属するスタディグループのポスター発表をチェックされていたそうです。嬉しいサプライズでした。
日本では、まだ小児のOSA治療に歯科はほとんど関わっていませんが、今後変わっていくのではないかと思われます。


IMG_3905 - コピー口をあけて、のどちんこの左右に見えるうめぼしみたいなふくらみが「口蓋扁桃」です。肥大して気道を狭くしています。アデノイド(口からは見えません)や扁桃肥大が重症だと、夜間に気道閉塞がおこりOSAになります。慢性的にいびきをかいているお子さんは要注意です。