2008年12月15日

皆さん、降圧剤を飲んで歯肉が腫れることをご存じですか?近年、高血圧の患者さんも増えています。それらの多くの方が、降圧剤を服用していますが、ここで問題なのがそのうちの何割かに歯肉増殖症が発症するという事実です。

特に、ニフェジピンによる歯肉増殖症が有名です。これは、一種の副作用です。服用者の2〜5割に程度の差こそあれ発症するといわれています。しかし、一般的に内科医はこういった歯科領域の副作用を患者に注意することはないようです。(多くの患者さんからの聴取では、医師からは全く聞いていないとの返事ばかりでした。)後にも述べますが、降圧剤服用+歯周疾患により発症する副作用なので、服用者であっても歯周病を治療することで必ず治ります。ですから、発症予防のためにも降圧剤を服用されている患者さんには、歯周病の治療をオススメいたします。



[ 症例:H.S. ]

ここに示す症例は、40代女性の降圧剤服用患者で、下顎前歯部の歯肉の腫脹を主訴に来院されました。

正面

ごらんのように、下顎前歯部に歯冠を半分以上覆うくらい歯肉が晴れています。

典型的な増殖症です。


初診・5枚法

前歯部の腫れが著名ですが、ほかの部分も歯周病によって侵され、発赤・腫脹しています。

この症例では、腫脹部以外も含めて歯周病の基本的治療であるスケーリング&ルート・プレーニング(徹底的歯石除去など)を全顎的に行いました。


BOP正面

前歯の歯肉は、腫れることで見かけ上、歯の周りに大きな溝=”ポケット”(仮性ポケット)を作っています。歯周病のポケット測定に使うプローブという器具でポケットを測ると深いポケットを形成して、出血が著しいことがわかります。

このポケットには、細菌の塊(プラーク)があってこれが悪さをして強い炎症を生じています。


時間経過

これは、腫脹部の治療過程を経時的に比較したものです。はじめは、患者さんにブラッシングだけしてもらいました。これによって少し腫脹の消退がみられます(0→1W)。さらに、超音波スケーラーでポケット内のスケーリング(除石)と洗浄をしました。この時点で顕著な腫脹の消退がみられました(1W→2Ws)。そして、手用キュレットで丁寧にスケーリング&ルート・プレーニングしました(2Ws→3Ws)。3Ws以降は、特に歯肉縁下には触れず、歯肉縁上を磨く(PMTC)だけで経過観察しました。3週目(3Ws)で、既に腫脹は消えています。3週(3Ws)以降は2ヶ月(2Ms)まで安定して、再発の兆候は見られませんでした。



術前・術後

術前・術後の歯肉の状態を比較してください。

前歯部の腫脹のみならず、他の部分も含めてお口の中全体の歯周病が改善され、引き締まった健康な状態となりました。

*降圧剤服用者で、歯間乳頭部(歯と歯の間の歯肉の三角地帯)が丸く膨らみだしたら、初期症状が始まっているかもしれませんので、歯周病治療をお受けください。


術後

きれいになりました。

メインテナンスの励行で、よい状態が保て再発を抑えられます。


・・・


[ 歯肉増殖症の話 ]

薬剤を服用していても歯周病でなければ、歯肉増殖症は生じません。また、増殖症を発症しても、歯周病の原因因子であるバイ菌(歯垢=プラーク)を局所から取り除けば(歯周病治療すれば)、必ず増殖症は改善されます。

○歯肉増殖症になる可能性がある薬剤

・ニフェジピンなど、降圧剤(カルシウム拮抗剤)
・ダイランチンなど抗てんかん薬
・シクロスポリンAなどの免疫抑制剤

現在、上の3種類の薬剤を服用して副作用としての歯肉増殖症を発症することが知られています。臨床上、見かけはニフェジピンと他の2剤の場合は同じで区別できません。また、全て治療方法も同じです。

○治療方法

使用を中止すれば改善されますが、原則的に各々薬剤の服用は中止できませんから、治療方法は発症するための原因因子(バイ菌=歯垢・歯石)を除去して治療することになります。ですから、具体的治療方法は以下の2つになります。

・スケーリング&ルート・プレーニングによる、オーソドックスな歯周病治療

・歯肉切除による方法(スケーリングも併用する)

今回は、浮腫性の増殖だったので、歯肉切除は行いませんでしたが、セルライト(オレンジ・ピールスキン)のようなぶつぶつした見かけの繊維性の歯肉増殖を起こしたケースでは、反応が悪いことが考えられるため、歯肉切除を選択することがあります。一度に悪循環を改善できるので、著しい改善が早期に得られます。

○その他気をつけること

・歯肉増殖症の患者さん(ニフェジピン服用者)が医科の病院に受診して、腫瘍を疑われて生検(バイオプシー)を採取されたり、各種検査を受けた方がいました。口腔内のことは、歯科にまずは受診すべきでしょう。こういった疾患は、医師には認識がないので大事(おおごと)になってしまったようです。ただ、残念なことにこの疾患を全く知らない歯科医師も多いので、歯科医院へ行っても治療できないかもしれません。

・改善しても、メインテナンスを含め口腔環境をある程度厳格にキープしていないと再発の危険性が大きいといえます。基本は、一般の歯周病と同じですがさらに徹底した管理が必要です。



*ご来院ご希望の方は、まずお電話にてご連絡下さい。

常時、歯科全般及び、上のような歯肉増殖症の患者さんをお受けしております。お気軽にご来院下さい。

(12:38)

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