2009年01月26日

先日、終末医療の関連で代替医療を勧める医師やその代替医療を選択した患者さん達の人間模様の特集がありました。この特集に関しては、ネット上でも批判が沢山出ています。また、livedoorニュースでも取り上げられています。

ホメオパシーという、未だ解明されていない代替医療をガン患者にススメているシーンが出てきました。ホリスティック医学協会という会など見れば、ご本人が出てきます。どうやら、こちらの世界で有名な方のようです。


「 代替医療 とは 」

○代替医療に関しては、Wikipediaの引用を以下に書きます(カッコ内が引用)。

「代替医療(だいたいいりょう、alternative medicine) とは、「通常医療の代わりに用いられる医療」という意味が込められた用語である。代替医療は「補完医療」「相補医療」とも呼ばれる。米国でも日本でも学会等正式の場では「補完代替医療」(Complementary and Alternative Medicine:CAM)の名称が使われることが多いようである。通常医療と代替医療の二つを統合した医療は「統合医療」と呼ばれる。」

・・・

上のようなことだそうですが、凄く怪しいモノから、漢方などの一部そのメカニズムが科学的に解明され始めたモノまで幅広いモノを含みます。ですから、これ自体をひとからげにして語ることは難しいかも知れません。しかし、日常行う治療では現代科学でコンセンサスを得た治療法が既に存在していることから、代替医療を補完的に行うにしても、その療法の意義すら疑わしいモノです。代替医療を真っ先に行う(治療のファーストチョイス)ことは絶対に避けるべきです。

今回のTV特集のような、手の施しようのない末期ガンで”通常医療”に替わり”代替医療”を行うことには、私は反対するつもりが有りません。この点は、通常行われている臨床と区別して考える必要があります。ただ、TVというメディアで評価が定まっていないこれらの代替医療に関して、かなり肯定的姿勢で報道されたことには、一部の視聴者が批判的姿勢を持っても可笑しくはありません。



「 歯科における代替医療 」

ところで、歯科における代替医療にも、沢山落とし穴があります。先にも述べましたが、現代科学でゴールデン・ルールな通常医療を行うことなしに、代替医療を真っ先に行うことは大変に危険で、大抵の場合治療したことにならず、疾患は治癒もしないと思います。

○歯科における代替医療を行う医院や医療機関は、以下のような特徴的文句が歯科医院の宣伝に含まれています。概して、スタンダードな治療(通常医療)を高いレベルで習得した先生は、このような方法をあえて選択しません。えてして、以下のような方法論をウリにする先生は、”その反対”の先生が多いように思います。代替医療を通常医療を行わず、真っ先に行う先生も多いので、時には大変に危険です。

・東洋医学を利用して・・・漢方・鍼灸・・・

・西洋医学は体に悪い××・・・、体に優しい東洋医学的×××を使用して

・この方法は××学会の・・・認定医だけが行える治療法です。
(非公認の団体が学会を名乗り、認定医も作っている)

・ホリスティック医療を中心に・・・

・Oリングテストを行って・・・ 院長は、Oリング××の認定医です。

・Oリングテストにより顎関節症の治療を・・・

・自然治癒力を応用した体に優しい・・・

・自然食で免疫を強化、体の中から自然治癒力を・・・
(待合室に、有機野菜が置いてあったり...)

・全身の免疫を活性化して・・・歯周病や・・・

・歯周病は薬で治ります。(抗真菌剤で治せると言い張る困った先生)

・内科的歯周治療(勘違いをしているようです:コンセンサス無し)

・リフレクソロジーを利用して・・・ ハーブの××により・・・
(エステのような歯科医院”○○・サ○ン”とかいうのも??です)

・×××法による画期的な治療法!・・・
(我流な治療法の提唱をする困った先生・結構沢山います)


等々...

ココで、はっきり言っておきたいことは”代替医療”自体が悪いというよりも、それを施す側の取り扱い方を誤るなということです。我々が臨床で日常向き合う症例に、通常医療の替わりに代替医療を行うべきではないと考えます。

ex.「スケーリング(除石)を徹底的に行うこと無しに、漢方薬処方だけで歯周病を治そうとすること」などナンセンスです。



「 カルトな歯科医師 」

怪しい方法として有名な”Oロング・テスト”に関しても、あたかも科学的根拠が自明であるような書かれ方をしていることがありますが、きちんとした文部科学省・公認学会でのコンセンサスを全く得ていないのです。それどころか、真っ当な歯科医師からは”オカルトもどき”と扱われることさえあります。このような治療法を行う先生方の多くが、科学的根拠があるかのような書き方をするので素人を混乱させるのです。

さらに、事態を混乱させることには、科学的根拠が不明の方法論を行っている先生方が、自身の行う治療法に絶対的な自信を持っていることです。まじめな先生も多いことは困った事態に、さらに拍車をかけることになります。ちょうど、10年以上前に世の中を騒がせたカルト宗教団体の幹部が、学歴もあって道理や分別のありそうなまじめそうにみえるヒト(??)が多かったことを思い起こさせます。疑似科学を信奉する精神は、宗教に批判無く心酔する精神構造に似ています。(まさに、カルトの特徴です。)

また、上のような医院へ受診し続ける患者さんの多くは、カルトにおける信者に似て、その院長なり治療法を信じ、信奉しています。それにより、一種の”偽薬効果”で時には何らかの症状の改善が見られる点があることは否めません。では、偽薬効果のような不確実な効果のみに因る治療法を支持するだけのメリットがあるでしょうか?しかも、多くのケースでは通常医療で確実に治療できると解っているのに... この点は、皆さん良くお考え下さい。


*代替医療ではないのですが、3MiXMP法を行っている先生方にも、こういった傾向が見られます。また、業界にデタラメに真似をする先生が多くなると、勝手に作った任意の団体でありながら”学会”(もしくは、研究会)を名乗り、”認定医”や”指導医”なるものを作って正当化する傾向も見られます。怪しい治療法と知っていれば、この”認定医”や”指導医”を”特殊な治療法ができる名医”などと勘違いする患者さんはいなくなると思います。意味のないこういった”認定医”や”指導医”が野放しなのは、時に患者さんには大変な迷惑をかけることになります。



Onion


これは、Oリングテストをしているイメージ映像です。



「 当院へ逃げ込んだ患者さん 」

 ー 顎関節症の治療にご用心 ー

この一年間に数名の患者さんが、ホリスティック歯科治療など、ある種の”代替医療”を掲げる医院から転院してきました。まず、このうちの一人は、顎関節症の治療のためある先生に通っていたようです。しかし、歯周ポケット内には歯石を放置したまま(スケーリングせずに)であり、う蝕治療すらしないまま、怪しげな療法を延々と行っていたようです。もちろん効果はなかったようですが... 顎関節症が治る前に歯周病で歯を失いそうになったくらいです。私が日常行っている教科書に載っている基本的治療で歯周病も治り、う蝕治療を完了した結果、顎関節症状も良くなりました。この方は、西東京から遠路通っていただき大変だったと思います。

また、ある患者さんは、麹○のオフィス近所の”賞状(講習会の修了証書)が沢山飾ってある歯科医院(患者の言*)”で、上下左右の臼歯部の補綴処置を受けたそうです。 しかし、誤った咬合挙上の治療(かみ合わせを上げる治療)をされたため、前歯部が咬合せず開口状態(open bite)になってしまったようです(画像参照)。この結果、顎関節症になったようです。そのため、ある国立大学歯学部付属歯科病院で診てもらったそうです。ここでは、補綴科も受診していますが、顎関節症状から由来する僧帽筋周辺の疼痛を緩和するため、ある科でマッサージのようなリラックス法を繰り返して受け続けているそうです。(一応。補綴科では補綴し直しを提案されています)

↑のごとくこの患者さんは、二重の道理に合わない治療を受けたことになります。(当院へは、セカンドオピニオンを得るため来院したようです。また、お気の毒な方ですが、予約が守れないので当院ではその後の治療をお引き受けしませんでした。)

*時々、医院の待合室や診療室の壁に”講習会修了証書(サーティフィケート)”など沢山飾っている先生がいます。もちろんその先生の趣味ですから、かまわないのですが、これはその先生の技量や医学的見識を保証するモノでは全くありません。度を過ぎると下品ですし、何も解らない患者さんに”立派な先生だ”と勘違いさせるための手段にしているヒトもいます。お間違えないように!!


panorama

X線写真(パノラマ像)からは:根充不足、穿孔、根破折、過剰な量の歯質削除、不良な補綴物...ひどい状況が解ります。パノラマ像で開口状態が解るのは珍しいですね。まさに、これは歯科医師による医原性疾患の典型例です。この症例の治療には、全顎的リコンストラクション(補綴処置による咬合の再構成)する必要がありますが、慎重に行う必要があります。私も簡単に引く受けられないような大変難しい症例だと思います。治療したつもりが、状態を悪化させる可能性もあります。

・・・

とにかく、治療の基本は原因を取り除くことです。この部分を間違えると合理的・科学的な治療方法としては認められません。上のリラックス法など対症療法で時間稼ぎに他なりません。ですから、顎関節症が絶対に治りません。

この治療の基本概念が十分に守られ、行われた場合にのみ補足的療法としてのある種の代替医療も意味を持ってくることがあります。

疑似科学のような似非(えせ)治療法に惑わされることなく、科学的根拠に基づいた正攻法での治療をしっかりしてくれる先生を捜してください。









(16:16)

この記事へのコメント

1. Posted by 電池スト5    2010年10月24日 22:08
田中義篤様 貴重なご意見を有り難うございました。

私は学問に対して真摯で、すなわち科学の教えるところに従い合理的思考で臨床的観点で妥当かつ患者さん本位に診療して参ります。以上が信条であります。どうか、宜しくお願い致します。

> 本当に、おっしゃる通りよく分からない道具を使ってバランスを見て、足のツボを押して治療するといった人達もいますが、まずは歯科医師として誰に見せても恥ずかしくない手技を身につけてから、他のことに手を出すべきですよね。

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