2009年02月20日

皆さんは、歯周病の治療を受けたことがありますか?

歯周病の発症は、口腔内に常在する細菌によって起こされます。ですから、これら細菌を歯周病に罹患している歯周組織から除去することで治癒するという、原因除去療法を行い治してゆきます。診査を行った後、具体的には、まずスケーリングやルート・プレーニングという除石(歯石を除去すること)を行います。また、細菌の住み家になり得る環境を修整したり(*)、歯内療法(歯の神経などの治療)やう蝕治療を行い、口腔内感染巣から細菌感染を除去します。こういった一連の処置が、歯周病治療における”初期治療”です。

*マージンの合っていない不適合冠の除去・修整など。冠を除去した歯には、暫間的にレジン性の冠(テンポラリー・クラウン:TEK)を被せます。


では、歯周病治療における基本である”初期治療”の内容を簡単にご覧頂きます。


◎ 初期治療 


「 診査・診断 」

口腔内撮影

問診を行った後、初診時の口腔内の状態を、写真撮影します。当院では、基本的には口腔内を5枚法で撮影しています。
詳しいことは、以前のBlogを参照してください。

*レントゲン撮影を先に行う時もあります。



X線14枚

口腔内を全顎的にレントゲン撮影します。当院では、デジタルX線撮影を行っております。現像を必要としないため、撮影後すぐにディスプレーで確認できます。また、当院のデジタル装置によるデンタルフィルム撮影での放射線線量は、従来型の1/8〜1/16程で、安全性もより高い方法です。得られたレントゲン像から、歯槽骨の破壊状態が確認できます。

この後、患者さんの歯周組織をプローブという器具で診査します。


probe

これが、プローブ(probe)という診査器具です。
沢山のカタチのプローブが存在していますが、世界中の専門医や教育機関で推奨されている直径0.5mmの目盛り付きプローブであるPCP-11を主に使用しています(写真上のプローブ)。

*残念ながら、このようなプローブがない医院もあります。またあっても、ルーティンで使用していない医院も多いようです。歯周病の治療は、こういった医院ではできませんので、まともな医院へ転院しましょう。


probe先端

プローブ先端には、目盛りが付いています。
直径0.5mm


probing

これは実際に、上顎中切歯の遠心をプローブで測定しているところです。
歯の周りには、溝が存在しています。解剖学的には、健康で正常な場合は歯肉溝(gingival sulcus)と呼びますが、歯周病など病的状態の場合には、これを歯周ポケット(periodontal pocket)もしくは、単に”ポケット(pocket)”(以後こう呼ぶ)と呼びます。

プローブでポケットを測定することをプロービング(probing)と呼びます。プロービングによって、ポケットの深さや出血の有無を測定・確認します。

ポケットが深いほど、歯周病の侵襲が進んでいると思われ、より重度と考えられます。


BOP(+)

中切歯遠心部のポケットを測定した後、同部に出血が認められました。

プロービング時に出血が認められることをBleeding on probing(BOP(+)と記す)と呼び、この部位には炎症が存在していると考えます。特に、初期治療終了時などの再評価時にはBOP(+)部を記録します。BOP(+)部は、炎症が残存するため、更に何らかの治療が必要であることが示唆されます。

概して、再評価でBOP(+)の割合が高くなるほど、歯周治療の効果が無かった(=更に治療が必要である)もしくは、患者さんの清掃が不良(の可能性が大)もしくはその両方だと疑われます。



ペリオチャート記入

プロービングで得た測定値を記録しているところです。

この記録用紙をペリオチャート(periodontal chart)と呼びます。世界中で沢山の形式のペリオチャートが存在します。各々特徴がありますが、当院のチャートはスウェーデン・イエテボリ大学・歯周病科で使用しているモノを採用しています。(積極的な歯周病治療の対象になる4mm以上の箇所だけ記録されます。)

1本の歯をその四隅で近心・頬側・遠心・舌側の四面に分け、各々の最深値を記録します。ポケット底の最深部を探し記録することが必要です。任意の何点かを測定して記録している術者が多いので、そういった場合は深いポケットを見逃してしまう可能性があります。

プロービングが簡単だと言っている先生もいますが、実はなかなか難しいものです。正しくトレーニングができていないと正確に測定できません。正確に測定できないと、正しい治療は不可能です。例えば、かなり進んでいる歯周病でも、過小に進行度合いを評価してしまうからです。私は講習会で歯科医師を指導した経験から、臨床医の多くが正確なプロービングさえできない現状を見てきました。これは、一度も正確な臨床トレーニングを受けていないからです。こういったことは、臨床全般に関して言えます。



このように、歯周組織を診査をした結果、歯周病の診断がつき治療計画が立案されます。

*患者さんには、最初に歯ブラシの仕方など口腔清掃法に関してご指導しますが、ここでは割愛し、また別のブログで解説します。



「 スケーリング&ルート・プレーニングなど 」


キュレット

当院で用いるグレーシータイプのキュレット(GRACEY11-12、GRACEY13-14)

チャートが記録完了したら、実際に歯周組織の清掃を行います。ポケットの中にキュレットと呼ばれる手用器具を挿入して、根面に付着した歯石を除去します。



キュレット先端

刃部の小さいminiタイプ(写真上2本)とregularタイプ(写真下2本)

キュレットの先端は、このようにスケーリング部位に合わせて適切な角度設定がなされ、先端部の刃部も軸に対してオフセット(offset:ある角度を付与)が付いています(図参照)。

実際に器具をご覧頂けば解りますが、刃の先端部は3ミリ弱〜5ミリほどの小さなモノです。これを正確にシャープニングして、目に見えないポケット内を十分にスケーリングなどするのは、かなり繊細な技量が必要になるのです。


スケーリング

スケーリングしているところ

ポケットの中にある歯石は、歯根表面に付着しています。歯肉縁下では、直接根表面が見えないためこの操作は難しいのです。また、歯石を取り残さないようにポケットの最深部(=底)までキュレットの先端を到達させ、そこに付着する歯石を除去することが必要です。ですから、ポケットが深くなるに従いスケーリングやルート・プレーニングは難しくなります。よって、特に深いポケットを有する進行した歯周病の場合は、初期治療後の再評価(再診査など)で治りきっていない部位が明らかになります。こういった部位には、再スケーリング(もう一度スケーリングをし直す)や明視下でスケーリングするために歯肉を剥離する”歯周外科手術”を行う必要性が出てきます。

*一般に前歯より臼歯に向かうほどスケーリングは難しいのです。前歯である切歯・側切歯・犬歯は、単根で根の断面も比較的楕円形に近くスケーリングも比較的し易いのです。一方、臼歯の一つである小臼歯は主に単根、一部複根(2根)で単根でも断面が前歯より陥没した形態がありスケーリングはより難しいのです。また、大臼歯は複根(2根や3根が多い)でより根の断面のカタチもバリエーションがあり、根の間には分岐部と呼ばれる又のような部分が存在します。分岐部を清掃することは非常に難しく、分岐部に細菌が侵入すると分岐部病変を生じることで治療が更に更に難しくなります。

♣ 歯石とは:

 もともと細菌の塊であるプラーク(dental plaque)が、唾液やポケット内の浸出液由来のカルシウムを取り込んで石灰化したモノです。歯石自体は細菌の死骸の固まりで、病原性は無いと言えますが、歯石表面が粗造であり、ここに新たなプラークが付くので問題になります。歯石表面に生きた細菌の塊であるプラークが付いていると考えて間違えないのです。ですから、ポケット内から”歯石を除去すること=細菌を除去すること”と考えているのです。


♣ ルート・プレーニングとは:

 スケーリングで歯石を除去するのみならず、除去した後の根面から壊死物を除去し、プラークの再付着を防ぎ治癒を促す滑沢な根面にする操作をルート・プレーニング(root planing)と呼んでいます。臨床的に厳密にはスケーリングと区別していませんが、概念的にはスケーリングの延長上にルート・プレーニングが規定できます。我々臨床家は、単に歯石を除去することから根面を滑沢に仕上げることまでを含んでこの操作を、スケーリング&ルート・プレーニング(SRPと略す)と呼んでいます。換言すると、SRPを丁寧に全顎に行うことが歯周治療の基本であるといえます。



エッジがダル

キュレットのエッジ(刃)がシャープなモノと鈍くなったモノ
*鈍い場合はエッジが光って見える(右のエッジが鈍い場合=光っている)

ある程度スケーリングやルート・プレーニングを行うと、先端の刃部(エッジ)が鈍くなり、除去効率が下がります。術中何度もエッジをシャープニング(研ぐこと)する必要があります。



シャープニング

シャープニング方法は、主に上の2種類の方法があります。
左:砥石をテーブルに置きシャープニングする方法
右:砥石を手で持ってシャープニングする方法

*手ではなく機械を使用してシャープニングする方法もあります。



キュレット図解

キュレット先端部の名称など参照


stone とfaceの角度

キュレットのfaceと呼ばれる面と砥石との角度は、110度でこの位置づけを一定にしてシャープニングする必要があります。刃の幅は1ミリ強です。小さいキュレット先端をシャープニングするのは難しく、トレーニングが必要なことがご理解いただけると思います。

SRPでは、シャープニングを正確に行うことが必要です。術中1回もシャープニングをしない衛生士や先生がいますが、こういった場合には鈍い刃先により歯石の取り残しを生じますし、歯石の表面を擦った(varnish)だけで済ませてしまうことになります。つまり、これでは治療したことになりません。シャープニング一つとっても、適切にできない術者が多いのが現状です。これは、徹底した基本的臨床教育を指導できる水準の高い機関が少ないことも大きな原因です。残念ながら、日本の大学がその機能を果たしていません。


エアースケーラーでスケーリング

エアースケーラーでスケーリングしているところ

手用キュレットにかわり、このようにスケーラーという機械でスケーリングする場合があります。スケーラーという機械は、先端の金属製チップが振動することでスケーリング効果を得るモノです。種類としては、写真のようなエアースケーラーや超音波スケーラーがあります。

一般に、スケーラーを使うとスキルに関係なくあるレベルのスケーリングが可能なものと考えられています。多くのリサーチで、手用キュレットと同等な効果が得られるとの結果がでています。

しかし、リサーチのデータや実験条件を参考にすると、操作時間(5〜8分/本)・術者の解剖学的な知識による違いなどにより効果が異なることが解ります。理屈から考えれば、ポケット底までチップ先端が至っている必要があり、根面にチップが良い状態で当たっている必要もあるので、これらは手用キュレットと同じです。一般臨床の状況を考えると、時間だけでも(数秒から数十秒程度)この条件(5〜8分)に至っていない場合が多いし、経験の浅い術者の場合も取り残しが多くなることが考えられます。換言すると、十分な時間をかけて、知識のある術者が超音波スケーラーやエアースケーラーを使ってスケーリングするときに十分な治療効果があるといえます。

*一般の歯科医院で行われているスケーラーを主体にした短時間のスケーリングでは、中等度以上の歯周病の場合には、歯石のポケット内での取り残しを生じ十分な治癒は難しいと思います。ですから、患者さんが完全な治療を望む場合は、歯周治療の本質を理解して実践している医院に来院する必要があります。



スプラソン&オドントソン

当院で使用している超音波スケーラーのスプラソンP-MAXとオドントソン

当院では、エアースケーラー&超音波スケーラーと手用キュレットを共に使用しています。非外科的処置では、手用キュレットによる根面の性状を関知しながらのSRPは完全な根面清掃には必ず必要と考えています。また、外科手術の際の根面清掃の仕上げには、超音波スケーラーを使用しております。いずれも、上に述べた特性や基礎的コンセプトを理解して行っているのです。



POLISHING


スケーリングやルート・プレーニングを行った後は、ポケットの入り口や縁上周辺を研磨ペーストを付けたゴム製のチップやブラシでポリッシング(研磨)します。ポリッシングは表面に存在するプラーク、歯石の沈着を助長する付着物や歯石の粒を除去し滑沢に仕上げるため行われます。

また、メインテナンス時などでも縁下のプラークの除去と共に、ポリッシングします。専門的にはプロフェッショナル・トゥース・クリーニング=”PTC”や、”PMTC”(←商業的用語)などと呼んでいます。これは、質の高いメインテナンスにも必須です。







(11:29)

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