フットボール・クレイジー
football crazy
  silverboy club presents


2010年12月30日 01:21      [posted by der_ball_ist_rund]

【天皇杯準決勝】鹿島×FC東京

快晴の国立競技場。2年ぶりの準決勝は地元で鹿島と戦うことになった。気温は低く日没とともに冷え込むことも予想される。午後半休をもらい会社からそのままスタジアムへ。青赤のネクタイ、スーツの中にセーターを着込み、革ジャンを羽織ってマフラー、手袋の完全防備だ。

東京はGKが権田、最終ラインは右から椋原、森重、今野、キム。徳永と米本がダブル・ボランチを組み、右に梶山、左にリカルジーニョ。トップは平山と鈴木というやや変則的な布陣。大黒の他、準々決勝で活躍した石川、大竹はいずれもベンチ・スタートとなった。

試合は序盤から高いテンションで始まる。12分、前線で張る敵FWにボールが渡り権田との一対一からシュートを放たれるが権田がセーブ、難を逃れる。だが、東京も粘り強く戦い、次第に中盤でのセカンド・ボールが拾えるようになると東京が鹿島陣内で優勢に試合を進めるようになる。積極的なパス回しから裏を狙ったボールやサイドからのクロスを取り混ぜて得点機を窺う。

33分、エリア内でパスを受けた梶山がこれをキープし左サイドのリカにラストパス。リカはフリーでシュートを放つがわずかにゴール右に外れる。39分、リカからのクロスに中央で平山がアクロバティックなオーバーヘッド。これがバーに当たりそのままゴール内に跳ねて東京が先制。ボールはピッチ内に戻り椋原が押し込んだがそれ以前にゴールしていたとの判定で平山のゴールとなった。

その後の時間も守りきり、東京が1-0とリードを奪って前半を終える。

後半に入ると鹿島が圧力を増してくる。東京は前線で起点が作れず、次第に自陣に押し込まれる苦しい展開に。59分、椋原のクロスに平山が頭で合わせるが敵GK正面に。67分、東京の右サイドから上げられたクロスにファーでヘディング・シュートを許し同点に。試合は振り出しに戻ってしまう。

72分、東京は最初の交替。鈴木に代わって石川を投入。石川は右SH、梶山がトップ下に回り平山のワントップになる。互いに激しくボールを奪い合い、素早く前線に展開する流れになるが、東京は自陣で戦う時間が長く、攻撃はカウンター主体となってしまう。89分、東京は椋原に代えて大黒を投入。徳永を右SBに下げ、梶山がボランチに戻る。東京としてはオーソドックスな布陣に戻る。

1点入れば試合が決まるという状況だったが、東京も鹿島も集中した守備で決定打を許さず、結局1-1の同点で後半を終了。延長となる。後半は前半より劣勢で、石川を投入してもそこを起点にできなかった。90分では東京がシュート数11本、鹿島10本ということで、ほぼ互角に渡り合ったと言っていいだろう。

延長前半に入った95分、米本が敵MFにラフなチャージをしたという判断でイエロー。米本はこの日2枚目のイエローで退場になってしまう。東京は守備的な戦いを余儀なくされる展開に。試合はほぼ東京陣内で鹿島の攻撃を受けてしのぐばかりで、クリアもすぐに拾われてしまい、基本的に耐えるしかない状態。

延長後半110分、前半から足を傷めた様子だったリカがベンチに交替のサイン。代わって大竹が入る。東京は鹿島の攻撃を受けながらも何度か鋭いカウンターでチャンスを作ったがシュートまで持ち込めない。鹿島の圧力に抗しきれず何度かFKを与えるが、敵のシュート・ミスにも助けられ何とかしのぐ。

だが、だれもがPK戦と思った延長後半ロスタイム、残り30秒ほどのラストプレーでゴール前に持ち込まれ、混戦からのこぼれ球を敵FWに押し込まれて失点…。ギリギリまで持ちこたえたもののPK戦を目前にして力尽き、準々決勝とは逆にラストプレーに泣くこととなった。

時間帯によって好不調はあったものの、前半途中からはしっかりとパスを回しながら崩す場面もあり、中盤でのセカンドボールへのアプローチ、競り合いでの球際なども鹿島をしのぐ迫力があった。後半に入って押し込まれる時間が長くなり同点にされたが、粘り強く戦って逆転を許さず延長に持ち込んだところまでは高く評価できる。

延長では米本が退場し一人少ない状態になったが、鹿島の攻撃を必死に防ぎ、何とか失点を回避していただけに、最後の最後に集中が切れて押し込まれたのは本当に残念。数的に劣勢の状況でPK戦が脳裏にちらつく中、一瞬の隙を突かれたのはムリからぬ部分もあるが、ここを締めて守りきることができなかったのが、今季の東京の限界だったということなのかもしれない。残念ながら内容から見ればフェアな結果か。

選手は連携に勝る鹿島を相手に互角以上の戦いを見せ、強い意志を持って正面から攻め続けた。結果は酷なものとなり、決勝を目前にシーズンが終わることとなったが、決して下を向くような試合ではなかったと思う。最後までよく戦った。シーズンの最後が誇りの持てるいい試合だったことは、この何とも言えない一年の中で数少ない救いのひとつではなかっただろうか。

残念だったのは交替が後手に回ったこと。チーム事情はいろいろあると思うが、準々決勝であれだけの働きをした大竹をベンチ・スタートにし、リカの負傷離脱で延長後半からようやく起用するなど疑問が残った。石川の投入ももう少し早くてよかった。切ったカード自体はおかしくないと思うが、交替時期の意図が見えなかった。

採点(採点の見方):
権田(3) 序盤いきなりのスーパーセーブ。他にもFKのセーブあり。
椋原(3.5) 今季の成長を実感させる出来。平山のシュートへの詰めも見事だった。
森重(3.5) やや危ういところもあったが最終ラインを支え続けた。
今野(3) 気迫のボール奪取、対人と、まさに守備の要として活躍。
キム(3) 落ち着いた守備、正確なキック、いつの間にか代えの利かない存在に。
徳永(3) 難しい試合だったが中盤でバランスをとり続けた。キャプテン乙。
米本(4) 中盤でチャレンジし続けたが裏目に出るプレーも多し。退場は可哀相。
梶山(3.5) よくボールに触り試合を演出したが、うかつなボールロストあり。
リカルジーニョ(4) 突破はいいがその後の工夫がなくもったいない。
鈴木(3) 前線を引っかき回して敵にはすごく嫌がられていたと思う。
平山(1.5) 得点シーンは保存版。もう一本決まっていれば神だった。
===
石川(4) 押し込まれ同点になってからの投入では効果も限度あり。シュートなし。
大黒(4) 一発で勝負できるボールが来ず。マークもきつかった。
大竹(3.5) 短い時間だが必死でボールを前に運び続けた。投入遅すぎた。

正月のチケットは無駄になった。会社で鹿サポに進呈しようと思う。我々は今季起こったことのすべてを受け止め、噛みしめて来季に向けた態勢を作らなければならない。選手、スタッフ、サポ、その他、今季FC東京に関わったすべての人に、お疲れさま、有難うと言いたい。


Comments(4)TrackBack(0)FC東京 


2010年12月25日 23:16      [posted by der_ball_ist_rund]

【天皇杯準々決勝】福岡×FC東京

「あ~、何で東京と福岡が試合するのに熊谷」的な天皇杯の運営に関するあれこれはシーズン終わってからまとめてやるとして、セーターを着込みベンチコートを羽織って出陣。新宿の花丸うどんで軽く腹ごしらえしてから湘南新宿ラインに乗車。

750円を奮発しグリーン車に席を確保したのはよかったが、熊谷ってどこの次だっけと車内アナウンスに耳を傾けていたのに、停車駅に熊谷の名前がない。焦ってiPhoneに入っている首都圏鉄道路線図と照合すると、どうも乗っているのは宇都宮線で、宇都宮線は熊谷は通らないらしい。既に赤羽を過ぎており、そのまま大宮を過ぎてしまうと惨事になるところだった。よく大宮の手前で気がついたものだと思う。我ながらエラい。てか北関東は魔境すぎる。

大宮から乗り換えた高崎線も何とかグリーンに座れて1時半頃熊谷着。バスに乗ってスタジアムに向かおうとしたところバス乗場には長蛇の列。あわてて並んだがその後も列は長くなる一方で、最後の方の人はちゃんとキックオフに間に合ったのだろうか。ひどい状況だった。ムラバ社長もバス待ちの列に並んでいた。

2時過ぎスタジアム着。前回正田醤油で席がないのに懲りたので、今回はバックスタンドのSA指定席。前から2列目で、高い場所から全体を見渡したい僕としてはあまりいい席ではない。スタジアム自体は新しく立派で、陸上競技場としてはいいのかもしれないが、トラックもあってピッチが遠くスタンドの傾斜は緩く何となく柏の葉とかを思い出す。2列目でも臨場感がある訳でもなく。

東京は塩田が先発。DFラインは右に中村、左に徳永、CBに森重、今野。梶山、今野のダブル・ボランチに、SHは右に大竹、左にリカルジーニョ。平山と大黒がツートップを組むというなかなか重厚な布陣。チャンスをもらった大竹の活躍に期待がかかる。

二部降格が決まっている東京と一部昇格が決まっている福岡の戦いで、いったいどっちがどっちの胸を借りているのか分からない状態。試合は東京がボールを持って攻め、福岡が守ってカウンターという予想通りの展開。しかし東京はパスミスが多く、決定機のひとつかふたつ前でボールを失い逆襲を受ける。

13分、敵陣で奪われたボールからカウンターを受け、クリアのこぼれ球を蹴りこまれる。クリーン・ヒットしなかったもののボールはコロコロと東京ゴールに転がり込み先制を許す。リーグ戦最終節を思わせる立ち上がりとなった。

17分、少し前に傷んでいた中村が、しばらくはプレーしていたもののやはりムリということかキムと交替、キムは左SBに入り徳永が右SBに回る。東京は前半のうちに予定外のカードを切らされることになる。29分には大竹からのパスを中央で受けた平山が振り向いてミドルを放つが枠外に。31分には右20メートルほどのところでFKをもらい、大竹が巧みに枠に飛ばしたがGKがキャッチ。

東京はその後も積極的に敵ゴールをこじ開けに行くが、攻撃の連携を欠く感じで今ひとつしっかりパスがつながらず、またロング・ボールも前線に収まらず、ちぐはぐなまま0-1で前半を終える。

後半に入っても東京はボールを支配しパスをつないで攻め上がるものの要所のコンビネーションが今ひとつで攻撃に迫力を欠く状況が続く。49分、大竹のショート・コーナーからボールを受けた徳永がゴールにボールを蹴りこみ同点かと思われたがオフサイドの判定。現場ではよく分からずビデオ検証もしていないので分からないがだれかがオフサイド・ポジションにいてプレーに関与したとの判定か。

60分、大黒を下げて鈴木を投入。裏を狙わせて前線を活性化するということか。その後も東京が攻めながら決めきれない展開。73分、米本に代えてケガから復帰したばかりの石川を起用。残り15分で勝負に出る。大竹がボランチに回り、石川は右SHに。

この配置転換が功を奏し、右サイドが攻撃の起点になり始める。大竹の配球も気が利いていて徐々にチャンスが広がり始める。84分、リカが珍しく自分で切れ込んでシュートまで持ち込むがGKがセーブ。86分、石川が右サイドから入れたクロスがゴール前に入り密集になるが押し込みきれず。

何とか時間を使おうとする福岡とロング・ボールも増え始める東京。ロスタイム3分もほぼ終わりに近づき、何だか今季を象徴するような試合だなとか、東京のユニで見るのが最後になる選手もいるんだろうなとか、いろんな感傷が頭をよぎっていたとき、それは起こった。

徳永のクロスからゴール前で混戦となり、最後はこぼれ球を拾った石川が豪快にライナーを突き刺して同点に。一気に熱狂するスタンド。福岡がキックオフした瞬間にレギュラー・タイムは終了し延長戦に入ることになった。

こうなると流れは東京へ。決め手を欠いていた東京の攻撃も見違えるように生き生きとし始める。やはりこのチームはメンタルが問題だ。94分、大竹からのパスを受けて抜け出した平山が決めて逆転。98分にはやはり大竹のスルーパスに石川が抜け出して追加点。東京が3-1と大勢を決めるリードを手にした。

その後も東京は攻撃に時間を使って逃げ切りを図る。99分、石川のクロスに平山が頭で合わせるが敵GKがセーブ。101分、大竹のスルーパスから鈴木が左サイドに抜け出すがシュートは枠に飛ばず。

延長後半に入り福岡も必死の反撃。116分、CKからヘディングで合わされ失点。3-2と1点差に追い上げられる。さらに118分、ゴール前の混戦から何がどうなったのかよく分からなかったが気がつくとボールがコロコロと東京ゴールに。悪夢かと思ったがこれもよく分からないオフサイドの判定。いったい何があったのだろう…。

結局、ロスタイムも何とか逃げ切り、東京が劇的な逆転勝利で準決勝進出を決めた。

この試合、結果的には後半ロスタイムの石川の得点に救われ、延長戦ではようやく攻撃が形になっていたが、それまではボールこそ持ってパスを回すものの、縦に入れるボールの質が高くなく起動スイッチが入らない状態。つないでくさびを合図に流動化するムービングなのか、ロング・ボールを入れ落としを拾って押し上げるのか、意図が中途半端で敵にすればスカウティング通り戦える「想定の範囲内」のサッカーしかできなかった感は否めない。

それが変わったのは石川の投入と大竹のボランチへの移動。右サイドで起点になる石川の存在、広い視野からテクニカルなパスを出すことのできる大竹の配球が光ったし、それに引っ張られて疲れているはずの平山までが前線で猛然と敵と競り合っていた。この、同じチームとは思えない落差の激しさ、ムラ気の多さは今季東京が苦労したポイントであり、まさにメンタルなもの。勝っていても負けていても実力を最大限出しきることのできるメンタルの強さが東京には足りず、それは降格の原因と同じものだ。

準決勝は水曜日に国立競技場で鹿島と対戦することになった。あと2試合、意地を見せてJ2からACLに出たい。

採点(採点の見方):
塩田(3) 久しぶりの出場だったがコーチング、キャッチングでチームを鼓舞。
中村(-) 古巣相手に身体を張っていたが負傷で早い時間に無念の交替。
森重(3.5) 敵のカウンターにも概ね冷静に対応できた。
今野(4) 前半はうかつな横パスを何度かカットされピンチを招いた。
徳永(3.5) 途中から右SBに移動。終盤には積極的な攻撃参加でチャンス・メイク。
梶山(3.5) しっかりボールを落ち着かせたがパスの出しどころは少なかった。
米本(4) 中盤であらゆるボールにチャレンジ。奪った後はもう少し落ち着いていい。
大竹(2.5) ボランチに入ってからセンスを遺憾なく発揮。使い続けたい。
リカルジーニョ(4) 左サイドで起点になったが軽いプレーも多かった。
平山(3) 最後まで戦い続けた。逆転ゴールは素晴らしかった。
大黒(4) チャンスを窺い続けたが今ひとつ動きが合わなかった。
===
キム(3.5) 急な起用に応え安定した守備と正確なフィードで左サイドを締めた。
鈴木(4) 裏を狙う動き、スピードは嫌がられていた。シュートは惜しかった。
石川(2) 決定的な働き。石川一人に救われた試合。

僕は試合終了のホイッスルとともに席を立ち、待機していたバスで熊谷駅に戻ったが、その後、バス待ちの列がまたしても異常に長くなり、完封吹きすさぶ中、試合終了後2時間近く並ばされた人もあったようだ。

運営については最初に書いた通り別稿を用意したいが、公共交通機関で来いと告知しておきながら、これはちょっとないんじゃないかと思う。正田醤油スタの時も似たようなことがあったようだし、天皇杯の運営には言いたいことがいろいろとある。JFAもちょっと真面目に考えて欲しい。




Comments(4)TrackBack(0)FC東京 


2010年12月25日 00:31      [posted by der_ball_ist_rund]

【2010年】FC東京シーズン・レビュー(1) 総評

まだシーズンは終わっていないがそろそろ人事異動の噂も出始めているし、今年のシーズン・レビューを始めよう。

今年は何と言っても考えられないことが起こってしまった。そのことの総括が即ちシーズン・レビューである。だれが今季の初めに降格を予想しただろう。サポはもとより、メディアや評論家もFC東京が二部に降格するとはだれ一人考えもしなかった。クラブの目標は真の優勝争いをすることであり、首都東京のクラブとしてポスト・ワールドカップの主役になることを自らに課してシーズンに臨んだのだった。

陣容も、ポジションごとに厚さ、薄さのバラつきはあったものの、各ポジションに代表級の選手を揃えた。2008年、2009年と城福監督の下で躍進を果たした東京が、満を持して勝負に出る年だとだれもが位置づけていた。

それがなぜ降格してしまったのか。

原因はもちろんひとつではない。鍵になる選手にケガ人が相次いだのは痛かった。チームが悪いスパイラルに陥ったときに声を出して叱咤し鼓舞できるベテランがいなくなったのも大きかった。カボレが抜けた後のFWの穴が埋まらなかったのも重要だ。長友がシーズン途中で移籍し、赤嶺をあろうことか残留争いの直接の相手である仙台に(東京戦出場禁止の特約も付けず)期限付き移籍させてしまった。

だが、そんなことはどこのクラブにも起こり得ることだ。問題は我々がなぜそうした問題を克服できなかったかだ。問題が山積で優勝争いどころじゃなく中位に終わったとかいうならともかく、なぜジリジリと足場が悪くなって少しずつ目線が下がり、時間を切り売りして目標を切り下げながら、最後は降格という最悪の結果に至るまでその悪い流れを修正できなかったのかということがいちばんの問題なのだ。

端的に言ってしまえばそれが東京というクラブ、選手、サポも含めたステークホルダーすべての甘さだったということだ。これだけの戦力を揃え、観客動員もリーグ3位だか4位だかを誇り、昇格10年を経てJ1に定着し首都に確固たる足場を築いた我々のクラブが、まさか降格なんてする訳ないとだれもが思っていた。僕も思っていた。だから我々は降格したのだ。

精神論のようなことを言うのは気が進まないが、その危機感のなさ、現実認識の緩さが最後に自分の首を絞めることになった。例えば最終戦、東京は勝つか神戸が負ければ残留だった。相手は既に降格の決まった京都。残留争いの相手である神戸は浦和と対戦。このとき、「さすがに浦和は神戸に勝つだろう」、「こっちは京都が相手なんだから楽勝」といった目を疑うようなツイートやmixiの書き込みがいくつもあった。

城福浩は優秀なモチベーターでありオーガナイザーでありストラテジストであったが、危機に瀕したときに力ずくで麻酔のない手術を敢行することはできなかった。クラブはシーズン途中で城福監督更迭という手を打ったが、それも結局は無駄に終わった。大熊監督はチームに闘争心を取り戻させようとしたが、城福サッカーの何を生かし、何を変えるのか僕にははっきりとは分からなかった。

僕たちもこれはさすがにマズいと頭では分かっていても、それを具体的なイメージとして自分の中に思い描く力、つまりは想像力が足りなかった。僕たちは僕たち自身の想像力の欠如に負けたのだ。僕たちにはよりどころにできる成功体験も、バネにできる挫折もなかった。最後には何とかなるという根拠のない楽観を頼りに手なりで戦い続けた結果が降格なら、僕たちにはそれを一度は経験する必要があったということなのかもしれない。

最終戦、勝つしかない試合で0-1のまま後半を迎えた我々のチームは、25分頃から目を覆うようなプレーを繰り広げた。可能性の感じられないロング・ボールを闇雲に放り込んでは京都の固いCBに跳ね返される無惨な光景を、僕たちはただ見守るしかなかった。そこには、ムービング・フットボールを掲げ、だれが相手であろうとリアクション・サッカーを頑として拒否し続けた東京の姿はなかった。焦り、迷い、不安、疲れ。僕たちはあまりにもナイーヴで、そうした目に見えない敵と戦う術を知らなかった。ギリギリの局面で、僕たちは自分の甘さに負けた。

幸い、主力選手はその多くが残留する見込みのようで、降格に伴ってチームが空中分解する最悪の事態だけは避けられたのかもしれない。だが、J2の予算規模でこれだけのチームを維持できるのは1年限定だと思った方がいいだろうし、だとすればこの編成は来季昇格を果たせなければクラブが存亡の危機に陥る背水の陣に他ならない。明日、我々は熊谷で天皇杯準々決勝を戦う。これはもう来季の始まりだと思った方がいい。

次回以降はポジションごとの回顧と展望を行いたい。




Comments(0)TrackBack(0)FC東京 


2010年12月18日 21:23      [posted by der_ball_ist_rund]

【ブンデスリーガ第17節】グラードバッハ×HSV

もう何かレビューするのも正直情けないというか面倒臭くなってきたけどな~。金曜日開催なのでさっさと寝て今朝結果だけ確認した。シーズン前半のラスト・マッチ、ホームでHSVと対戦。

グラードバッハは前節警告累積で出場停止だったロイスがマトモアに代わり先発に復帰。逆にブラウアースがケガで、レヴェルスが警告累積で欠場となり、ヴィッシングが左SB、カルセン・ブラッカーがCBで先発。その他ノイシュテターが先発しイドリスーが押し出される形でベンチ・スタートに。

グラードバッハはデムスとカルセン・ブラッカーがCB、右にシャハテン、左にリーグ戦2試合目のヴィッシングと、まさに急造というか週替わりというか間に合わせのディフェンス・ラインとなったが、HSVの攻撃が精彩を欠くのにも助けられ主導権を握る。前半、何度かチャンスを作るが敵GKの好セーブに阻まれて得点ならず。

だが、前半をスコアレスで終えるとHSVは後半頭から気合いを入れ直してくる。開始早々の46分、ヒールパスから敵FWに決められ先制を許す。だが、直後の48分、ブラッドリーからのクロスにデ・カマルゴが頭で合わせ同点に。試合を振り出しに戻した。

その後は激しい展開となり、互いにボールを奪っては敵ゴールに迫る。57分にはブラッドリーのミドルが敵GKにセーブされる。70分にもフリーになったマルクスがゴールを狙うが敵GKに阻止される。すると72分、シャハテンがファウルで敵にFKを与え、これを直接決められて2-1に。痛い失点を喫する。

グラードバッハは78分にブラッドリーに代えてイドリスーを、81分にはマルクスに代えてヘアマンを投入して勝負に出るが、リードを奪ってシュアなサッカーに徹するHSVを崩すことができず、むしろカウンターでピンチを招くシーンも。結局1-2でシーズン前半最終戦も勝利することができなかった。

今季、内容的には決して悪くないが、ケガ人も多く、我慢のしどころで持ちこたえられなかったり、ここぞというところで得点できなかったりで勝ち点を積み上げられなかった。最下位でウィンター・ブレイクを迎えることになるが、幸い監督の更迭論は出ていないようだし、ブレイクの間にしっかりメンバーを揃え、態勢を立て直して欲しい。

ミヒャエル・フロンツェク監督談話:
「我々のシーズン前半のホーム戦の典型のような試合だった。我々はそもそも悪くないゲームを見せたし、できる限りのことはやった。チャンスも作り3人も入れ替わった4バックで敵を自由にさせなかった。だがまたしても敵には数少ないチャンスを生かされ、そのために試合には負けてしまった。0-1となった後すぐに追いつき、2-1とできるチャンスもあった。1-2で負けたのはもちろん苦々しいことだ。いずれにしてもシーズン後半が恐ろしく厳しいものになるだろうということは分かっているが、私の見るところ、我々はそれをなしとげることができるはずだと思っている」


Comments(0)TrackBack(0)Borussia M'Gladbach 


2010年12月13日 23:08      [posted by der_ball_ist_rund]

【ブンデスリーガ第16節】フライブルク×グラードバッハ

グラードバッハはドライザムでフライブルクと対戦。日本時間では日曜日の夜11時半のキックオフ。翌日の仕事を考えれば最後まで聴くのは辛いなと思いつつ、いつものようにブンデスリーガ公式サイトのウェブ・ラジオと「kicker」紙のサイトのティッカーで経過を追った。

グラードバッハはボバディラが前節レッドカードで、ロイスが警告累積でいずれも出場停止。代わってマトモアとイドリスーが先発。またブラウアースが復帰してデムスとCBのコンビを組み、シャハテンが左SBに。カルセン・ブラッカーとアンダーソンはベンチとなった。ところでフライブルクには日本人のFWがいたはずだが…。

序盤はグラードバッハが優勢に試合を進める。「驚いたことに」と「kicker」のサイトは書いている。立て続けにチャンスを迎えるが、敵GKの好セーブにも遭い得点できず。この局面で先制できていればよかったのだが。19分、左サイドから正確なクロスを上げられ、頭で合わされる。ハイメロートは逆を突かれて失点。チーム状態の悪いときに先制点を献上するのは痛い。

その後、敵のバックパスのコミュニケーション・ミスからイドリスーがボールを流し込もうとしたが敵GKが何とかクリア。すると41分、グラードバッハのゴール前で放たれたシュートをハイメロートが確保しきれず、これを押し込まれて0-2に。グラードバッハはさらに悪いことにブラウアースが脳震盪の疑いで41分にカルセン・ブラッカーと交替を余儀なくされる。結局0-2で前半を終了。

既に0時半だったので寝たかったが、後半もちょっとフォローしてみようと夜更かし。グラードバッハは後半からイドリスーに代えてヘアマンを投入。だが59分、FKに合わされて失点。0-3となり僕はここで寝た。

その後は見どころのない試合となり、グラードバッハは77分、デ・カマルゴに代えてノイシュテターを投入したが得点には結びつかず。結局0-3で今季好調のフライブルクに完敗した。

早いものでシーズンも次節で前半を終了する。グラードバッハはここまで2勝10敗4分と惨憺たる成績で最下位。ウィンター・ブレイク前の最後の試合となる次節はホームにHSVを迎えるがどうなるかなあ。もうウィンター・ブレイクにしっかり立て直してくれればいいや…。

ミヒャエル・フロンツェク監督談話:
「我々はもう何週間も非常事態にあり、毎週こんな調子で、ウィンター・ブレイクまでは簡単に変えることはできないだろう。試合前には8人もの欠場者があり、また何人かがそれに加わった。これは関係者のだれもにとって厳しく、苦しいことだが、私たちが克服しなければならない状況だ。0-1になるまでは悪くない入り方をしていたし、ヘディングで先制する大きなチャンスもあった。我々はそれをものにすることができず、フライブルクはそれができたということだ。0-1になった後もモー・イドリスーが同点にするチャンスがあったがそうは行かなかった。フライブルクの勝利は妥当なもので、どうして彼らが5位につけているのかをしっかり示したと思う」



Comments(0)TrackBack(0)Borussia M'Gladbach 


2010年12月06日 22:18      [posted by der_ball_ist_rund]

【ブンデスリーガ第15節】グラードバッハ×ハノーファー

何だかよく分からない間にシーズン前半もあと3節。ホームにハノーファーを迎えての第15節は土曜日の日本時間夜11半のキックオフであり、いつものごとくブンデスリーガ公式サイト」のウェブ・ラジオと「kicker」紙のサイトのライブ・ティッカーで一応経過を追っていたのだが、この日はあいにくもはやサッカーの試合に集中できる状態ではなく、ほぼ聞き流し状態。

グラードバッハは前節先発のヘアマンとイドリスーに代わってアランゴとボバディラが先発。試合は慎重なグラードバッハに対しハノーファーがコンパクトな守備からショート・カウンターで鋭く攻める展開になるがチャンスを形にできず。

すると19分、ブラッドリーが長めのFKをペナルティ・エリアに放り込むと、飛び込んだデ・カマルゴとボバディラがこれに合わせらなかったものの、ボールはそのままゴールに入りグラードバッハが先制する。ウェブ・ラジオを聞き流していた耳にもこの「Tor!」の叫びはちゃんと聞こえた。

グラードバッハはこれでスイッチが入ったか、37分にはデムスからパスを受けたアランゴがロイスにパスを出そうとしたが精密さを欠きモノにできず。43分、ボバディラが競り合いの中で敵に対するレイト・ヒットを取られ一発退場に。グラードバッハは一人少なくなった状態で前半を1-0で折り返した。

グラードバッハは当然ながら数的不利の状態で自陣深くに引いて守りを固め、あわよくばカウンターで追加点を狙う戦術に出る。実際、51分にはマルクスからのスルーパスを受けたロイスがカウンターで敵ゴールに迫るがシュートはわずかに枠を外れてしまう。

その後流れは次第にハノーファーに傾く。グラードバッハは72分、デ・カマルゴに代えてイドリスーを投入するが、その直後の73分、左サイドからクロスを入れられ、これを交替したばかりの敵FWに頭で合わされて同点に。さらに75分にも失点を喫してあっという間に逆転されてしまう。ガックリだ。ダメな日は何をやってもダメだ。悲しい。

82分にはマルクスに代えてマトモアを投入、得点を狙いに行くが不発に終わり、もったいない逆転負けを喫した。何かもう順位表を確認するのもアレだが、え〜と、ああ、最下位だな。まあ、もともと最下位だったクラブが負けたんだから普通は最下位だわ。2勝しかできてないんだからな〜。あ〜。

ミヒャエル・フロンツェク監督談話:
「我々は非常にうまく試合に入ることができたと思うが、その後、何だかよく分からない、合理的には理解できないような理由で自ら弱くなってしまった。我々が積み上げてきたものを、我々自身がもう一度ぶち壊してしまった。我々がこのような順位にいるのはそれなりの理由があるということだ。ケガ人が戻りさえすればうまく行くと考えるのは間違っている」



Comments(0)TrackBack(0)Borussia M'Gladbach 


2010年12月04日 22:51      [posted by der_ball_ist_rund]

【Jリーグ第34節】京都×FC東京

起こってはならないことが起こってしまった。前節残留を決められなかった時点で可能性の認識は当然あったが、どこかで東京が落ちる訳がない、最終的には何とかなる、と考えていた部分があったのか。悲観は要らないと言いながら、危機感が足りなかったのか。

それはクラブや選手にしても同じだったかもしれない。真摯さが足りなかったということではない。J2に落ちるのがどういうことなのか、落ちるとどうなるのか、落ちないために何をやり、何を捨てなければならないのか、そういうことの具体的なイメージができていなかったということだ。

具体的に想像できないものと戦うのは難しい。今日の僕たちの敵は京都であると同時にそうした僕たち自身の想像力、あるいはその欠如だったのだと思う。今日の試合は大一番だ、大変な試合だと言いつつ、そして実際にそう思いつつ、しかし、それが本当にどれほど大事な試合であるかが僕たちには実感としては分かっていなかった。

シーズンの総括は別にやるつもりだが、今季の東京はまさに実感のないままズルズルと後退し、ここ2シーズンの功労者であった城福監督を解任し、実感のないまま残留争いに巻き込まれて、最後には勝ち点が2足りずに降格の憂き目を見ることになった。すべては、気分や感覚でなく手に取ることのできる事実に即して物事を現実的に、具体的に考えて、問題をひとつずつ解決する力が、クラブにも監督にも選手にも、そしてサポにも欠けていたということではないのか。

そういう意味では今日の試合は今季を象徴していた。気合いだけは十分だったかもしれないが、この最終節の状況を踏まえていかに戦うかの意思統一はどのレベルでなされていたのか。攻めながらもミスからボールを失い、敵ゴール前でも引いた相手をひっぺがすアイデアは見えないまま。

前半のうちに軽く失点して苦しい展開になり、後半になるとまだ15分以上あるにもかかわらず可能性を感じさせないパワープレーで放り込むのみ。最後にはカウンターを浴びて権田が敵FWを倒しPK、ロスタイムに2点目を取られて事実上終戦。勝ち点1のビハインドから4点を挙げて浦和に完勝し残留を決めた神戸とは対照的な戦いだったと言う他ない。

東京が早々にパワープレーを始めたとき、正直ガックリ来た。その時点で神戸は既に2-0だか3-0だかでリードしており、東京は2点取って逆転する以外に残留の途がないということは分かっていた。だからそのためにパワープレーという選択をすること自体はおかしくない。しかし、苦しんで苦しんで追い込まれたシーズンの最後の試合の最後の局面で、結局ポンポンとロングボールを放り込んでは京都の固い守備に易々と跳ね返されるのは悲しかった。

ムービング・フットボールを掲げてスタートしたシーズンの最後は、得意でもなければそのための訓練を積んだ訳でもない運頼みのクソサッカーだった。せっかく大竹を入れたのなら、もう少し選手を信じてつなぐ気概を見せて欲しかった。

敗戦の瞬間、不思議と涙も出てこず、悔しいとか悲しいとかいった感情も湧いてこなかった。ただ、そこにある降格という現実をまるで珍しいものでも見るように眺めていただけだった。その実感のなさこそが僕たちの大事なクラブを降格させたのだ。

この現実を受け入れるのは難しいが、結果を変えることはできない以上、僕たちはここから次を考える外ない。1年でJ1に戻ると口で言うのは簡単だが、実際には予算規模が縮小する中で選手を維持するのは容易なことではないし、J2は単にレベルの高いサッカーをしていれば勝てるという場所ではない。

J2ではいろんな局面でこれまでとは発想を変えることを余儀なくされるだろう。そのとき始めて僕たちは降格の悲哀を現実に知るだろう。だが、僕たちはそれをひとつひとつクリアしながら、J2の水に慣れてしまうことなく再び上を目指さなくてはならない。J2に対する違和感を持ち続けなければならない。

それは簡単なことではない。慣れるのは楽だが、違和感を持ち続けるためにはエネルギーが必要だ。そのエネルギーが捻出できず、J2でそこそこの戦いをすることに満足してしまっては再昇格することはできない。

まずは主力選手の慰留から始めなければならないが、魅力的なクラブから魅力的なオファーを受ければ、今はクラブに残るつもりの選手も櫛の歯が欠けるように一人また一人と去って行く可能性はあるし、それは責められない。クラブだって今のスケールの給料は支払えないかもしれない。降格というのはそういうものだ。最初の試練はそこにあって、僕たちはまずそこで現実を知ることになるはずだ。

僕は来季も年チケを買い、味スタに足を運ぶだろう。今日でサッカーが終わった訳ではない。ボールは転がり続けるのだ。


Comments(5)TrackBack(0)FC東京 


!!注意!! このブログは…
このブログはウェブ・サイト「Silverboy Club」内のコンテンツになっています。外部リンクから直接このブログに飛んできた場合、サイトのメニュー・バーが現れず、サイト内の他のコンテンツにリンクできません。その場合、このリンクでメニュー・バーを表示し、是非サイトの他のコンテンツもお楽しみください。
 
月別アーカイブ
最近のコメント




Copyright Reserved
2005-2006 Silverboy & Co.
e-Mail address : silverboy@silverboy.com