フットボール・クレイジー
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2012年06月30日 01:00
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■
【EURO2012準決勝】ドイツ×イタリア
■2012年6月28日(木) 20:45
■Nationalstadion
準決勝はイタリアとの対戦となった。できればイングランドをボコボコにしたいところだったが仕方ない。日本時間では金曜日未明3:45からの試合で、6時半の出勤までに試合を見終わろうと思えばほぼリアルタイムで見るしかなかった。4時に起きて前半は追っかけ再生をしたが、ハーフタイムに追いついてしまった。
ドイツは準々決勝のギリシャ戦から中5日。イングランドとの準々決勝を延長、PKとフルに戦った上、中3日のイタリアと比べればずっと有利な条件であることは間違いない。しかし、レヴ監督は再びメンバーを代えてきた。トップにはクローゼの代わりにゴメスが先発、右SHにはクロース、左SHにポドルスキと前節から3人を交替させている。
ノイアー
ボアテン フンメルス バドシュトゥバー ラーム
シュヴァインシュタイガー ケディラ
クロース、エツィル、ポドルスキ
ゴメス
序盤はドイツが主導権を握る。対応の遅れがちなイタリアのDFに対しスピーディな展開から敵ゴールに迫り得点機を作るが得点を奪うことができない。そうこうするうちにイタリアも徐々にリズムを作り始め、20分、左サイドから上げられたクロスに敵FWが頭で合わせイタリアが1-0と先制。バドシュトゥバーがマークについていたが巧みにかわされてしまった。
先制されたドイツは1点が必須になる。この時点では時間もまだまだある訳で、主導権は握れており焦る必要はなかった。ドイツはボールを支配しながらチャレンジを続けるが、敵GKの好セーブにも阻まれ得点に至らず。この時間帯にしっかり追いつくことができなかったのが結果として大きく響くことになる。
すると36分、敵陣から裏に決定的なスルーパスを出される。完全に裏を取られラームが追いかけるが敵FWの抜け出しを許し、見事なミドルを決められて0-2に。前半のうちに2点のリードを許したことでドイツのゲームプランは完全に狂ってしまう。1点差はおそらく想定の範囲だったと思うが、この失点は敵にはボーナス・ポイントであり、この試合の最大のポイントだった。
この失点をきっかけにドイツの連係は見る影もなく失われて行く。一方で余裕の出たイタリアは主導権を奪い、さらに3点目を狙いに行く構えを見せることでドイツの攻撃のコストをさらに高めようとする。結局0-2で前半を終了する。
ドイツは後半開始からポドルスキとゴメスに代えてロイスとクローゼを投入。完全に消えていた二人の交替はやむを得なかっただろうが、それなら前節からメンバーを入れ替える必要もなかったということだな。ドイツはこれによって機動性を増し、チャンスを作るがシュートミスもありゴールが遠い。61分、ロイスが素晴らしいFKを枠に飛ばすが敵GKがバーに逃れる。
71分にはボアテンを下げてミュラーを投入。シュヴァインシュタイガーがCBに落ちてスリーバックになったようにも見えた。しかし時間の経過とともにドイツは焦りが出て攻撃が次第に単調になり、楽に守られるようになる。この時間帯になると、コンディションでアドバンテージがあるはずのドイツの方が明らかに疲れて見えた。メンタルなものも随分あっただろう。
アディショナルタイム、敵エリア内でハンドを誘いPKを獲得。エツィルがこれを決めて2-1と1点差に詰め寄るが時既に遅し。そのまま試合終了となりユーロ2012は終了した。
この試合、序盤は決して悪くなかったが決めきれずにいる間にワンプレーから失点し、さらに前半の間に裏を取られて2点差になったところで実際には勝負あったということだろう。ドイツは懸命に修正しようとしたものの、このレベルで2点の余裕を持たれると追いつくのも難しかった。
この大会、ドイツは完成度の高いサッカーを披露したがビハインドを背負ったときにピッチの中でチームを引っ張るリーダー的存在が見当たらなかった。本来ならシュヴァインシュタイガー辺りがそういう役割を果たさなければならないのだろうが、この試合ではシュヴァインシュタイガーの調子が悪く(足を傷めていたとも)、全体を鼓舞するような状況でもなかったか。
ゴメスの淡泊さも目についた。ツボにはまったときの決定力はあるが、チームメイトと有機的に絡んで動き、自ら敵のギャップを作るという点ではやはりクローゼに一日の長がある。前節先発させたクローゼ、ロイスを再びベンチに戻したのは、ギリシャは格下と見てメンバーを試したということか。結果論的に言えば、前節と同じ布陣の方が面白い結果にはなったかもしれない。
ドイツはまだまだ若いチームだし、このベースの上に次のブラジルでのワールドカップを見据えたチームを作り上げるのだろう。レヴ監督が続投することを期待したい。
採点(
採点の見方
):
ノイアー(4) 失点はノーチャンスか。それ以外は見せ場少なし。
ボアテン(5) 裏のスペースを再三使われた。クロスの質も今ひとつ。
フンメルス(4.5) 敵攻撃の対応にバタついた。
バドシュトゥーバー(5) 最初の失点ではマークにつききれず。
ラーム(5) 2失点目では裏を取られ後追いの屈辱。
シュヴァインシュタイガー(5) コンディションが悪かったのか精度欠いた。
ケディラ(3.5) 積極的に仕掛けようとした。
クロース(4.5) 消えている時間長し。ボアテンとの連係も今ひとつ。
エツィル(4) よくボールを触ったが有効射程になかなか入れず。
ポドルスキ(5) ほぼ存在感なし。今大会通じ下降線をたどった。
ゴメス(5) ここまでボール届かず。動きが少なく貢献見劣り。
===
クローゼ(4) 前線で身体を張ったが得点にはつながらず。
ロイス(3.5) FKには可能性を感じた。この経験を生かして欲しい。
ミュラー(-) 時間短し。
ああ、これで月曜日の朝は早起きする必要がなくなった。
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ドイツ代表
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EURO2012
2012年06月23日 10:28
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■
【EURO2012準々決勝】ドイツ×ギリシャ
■2012年6月22日(金) 20:45キックオフ
■PGE Arena
土曜日未明の試合なので、朝5時半に起きて録画を追っかけ再生。本当はもっとゆっくりでもよかったんだけど、子供が登校で7時半に家を出る前に見たいと言うので…。
グループリーグを3勝で突破したのはドイツだけらしいが、レヴ監督はメンバーをいじってきた。右SBに出場停止明けのボアテンが復帰した他、右SHにロイス、左SHにシュールレと両翼をミュラー、ポドルスキから入れ替え。さらにワントップは好調のゴメスを外しクローゼを先発させた。布陣はこんな感じ。
ノイアー
ボアテン フンメルス バドシュトゥバー ラーム
シュヴァインシュタイガー ケディラ
ロイス エツィル シュールレ
クローゼ
過去にギリシャ代表には負けたことがないということだが、楽勝ムードは禁物。一発勝負なのでワンチャンスでも決められればそのままやられるリスクはある。まあ、その辺は僕なんかに言われなくてもドイツの人たちはよく分かっているはずだが。
試合はドイツが圧倒的にボールを支配。ほぼハーフコートマッチの様相を呈する。ギリシャは自陣で引いて守り、ゴール前を分厚くして奪ったボールはカウンターで展開するという戦術を徹底している。
ドイツとしては主導権を握りながらもカウンターのケアをおろそかにして先に失点する訳には行かず、ギリシャの堅い守備を崩すのにも苦労して神経質な戦いを強いられる。前線ではこの試合で起用されたロイス、シュールレがエツィル、ケディラらとも絡んでチャンスを作ろうとするが、敵陣に入ってしまうとスペースが少なく、敵の人数も多く、動ける余地が限られてダイナミックな攻撃が展開しにくい。
スコアレスのまま推移するとワンチャンスでの失点リスクが高まる。早く先制点が欲しいドイツだが、それが焦りにつながると形を崩す怖さもあって、力の差のある一発勝負というのもそれはそれで難しいと実感する試合に。
敵陣でボールを持ち続けるものの手詰まり感が徐々に色濃くなる中で、ドイツが待望の先制を果たしたのは39分。ラームが左サイドでパスを受けると絶妙のトラップで敵DFを二人ほど置き去りにし、ボールを置き直してゴール右上にきれいなシュート。ドイツは前半のうちに先制できたことで一気に有利になる。1-0で前半を終了。
ところが後半に入った55分、敵の鋭いカウンターを浴びる。ドイツの左サイドを抜け出され、併走したFWがクロスに合わせて同点に。敵FWについていたボアテンが最後に一歩前に出られたように見えた。
試合は振り出しに戻り流れ的にはイヤな感じ。だが、ここからがドイツのタフなところだった。再びリードを奪うべく攻勢を強めた61分、ボアテンからのクロスに中央でケディラがボレーで合わせゴール。ドイツが2-1と勝ち越す。この得点は試合の流れの中でも重要だったが、ケディラの技術も素晴らしかった。
ドイツは67分、シュールレに代えてミュラーを投入。68分、エツィルのサイドからのFKにクローゼが得意の頭で合わせ3-1に。残り時間を考えればセーフティ・リードとはまだ言えないものの、ワンチャンスで試合が振り出しに戻るリスクはなくなりこれでドイツはグッと楽になったはずだ。
さらに74分、クローゼのシュートを敵GKが弾いたこぼれ球にロイスがダイレクト・ボレーで合わせゴール、4-1として試合を決める。80分にはクローゼとロイスを下げてゲッツェとゴメスを投入。89分にはボアテンのハンドからPKを献上し4-2と一点を返されたものの、ボールを手放さず危なげなく試合をクローズ、ギリシャに完勝した。
リードが奪えるまではリスク含みの難しい試合だったし、先制しながら敵のカウンターを止めきれず追いつかれたことは反省材料だが、最後には実力を示してギリシャを突き放したのは大舞台での戦いを心得ているドイツらしい。
得点こそなかったがシュールレは左サイドからの仕掛けがよかったし、ロイスは消える時間帯がありポジショニングに戸惑っている様子もあったが得点で思いきりのよさを見せてくれた。ロイスとゲッツェの両翼を見てみたい気もしたが、この組合せは来季BVBでイヤというほど見られることだろう。
崩しきったというよりは「ズドン」みたいなゴールで勝った試合ではあるが、トーナメントなのでそれでいい。準決勝はイングランド×イタリアの勝者と戦うことになる。どちらが来てくれてもいいが、どちらかといえばイングランドに上がってきてもらってボコボコにしてやりたい感じがするな。
採点(
採点の見方
):
ノイアー(3) ほぼ仕事なかったがカウンターへの鋭い飛び出しは光った。
ボアテン(4) 攻撃参加では存在感を見せたが守備では二失点に絡む。
フンメルス(3) 中央を封鎖、いつの間にか守備の柱になりつつある。
バドシュトゥーバー(3.5) 手堅い守備で高いラインの後ろをケアした。
ラーム(2.5) 機を見た攻め上がりが先制点を生んだ。トラップが見事だった。
ケディラ(2.5) あのボレーは練習してできるものではないのではないか。
シュヴァインシュタイガー(3) 真面目にポジションを取り直し配球役として君臨。
ロイス(3) 消える時間帯もあったが得点は見事。名前を印象づけた。
エツィル(2.5) スペースがない中でもアイデアを出し続けた。
シュールレ(2.5) 得点はないが再三左サイドを破り敵ゴールを脅かした。
クローゼ(3) 連係は今ひとつだったがFWとしての仕事は十分果たした。
===
ミュラー(-) 時間短し。
ゴメス(-) 時間短し。
ゲッツェ(-) 時間短し。もう少し見たかった。
早起きして見た甲斐のある試合だった。準決勝は日本時間29日金曜日早朝。延長の可能性も考えると何時に起きて見るべきか悩む。中5日は有利だが流れを考えると空きすぎかも。準決勝と決勝とは中2日だし、難しいチーム・マネジメントになる。
ところで、3位決定戦はないんだな…。
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ドイツ代表
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EURO2012
2012年06月19日 23:20
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■
【EURO2012 B組第3節】デンマーク×ドイツ
■2012年6月17日(日) 20:45キックオフ
■Lwiw
早くもグループリーグ最終戦。ドイツは引き分けで勝ち抜けが決まるという状況でデンマークと対戦する。ポルトガル戦、オランダ戦で右SBを務めていたボアテンが警告累積で出場停止のためベンダーが先発した他はこれまでと同じ布陣。月曜日未明の試合のため、また4時半に起きて追っかけ再生した。週明けいきなりこれはキツい…。
ドイツは試合開始早々からボールを支配、パスをつないで主導権を握る。おそらくはボールを持っていることが最大の防御であり、その上先制できれば言うことないといった感じの入り方ではなかったかと思う。デンマークはポルトガル×オランダの試合結果次第では引き分けでも勝ち抜けの可能性があるが、やはり勝利を狙いに行かなければならない状況で、まずは慎重な立ち上がりに見えた。
ドイツは攻めながらもデンマークの堅い守備に手を焼いていたが、19分、ミュラーが右サイドから入れたクロスに、ニアでゴメスが触り、これをポドルスキが右足で蹴り込んでドイツが先制。試合をグッと楽にした。
ところが5分後の24分、CKから失点し1-1の同点に。得点直後の失点だけに普通ならばイヤな感じになるところだが、「何だよ、せっかく先制したのに同点になっちゃったじゃん」程度の余裕を感じたのは僕だけか。少なくともドイツには焦りとでもいったようなものはまったく見られなかった。前半はそのまま同点で終了。
後半に入ってもドイツが主導権を握る展開は変わらないが、それなりのスピードで攻守の応酬があった前半に比べれば、ドイツは明らかに慎重になり、無理して得点を狙いに行くよりはうかつな失点を避けることに重点を置いたように見えた。攻撃は効率よく少ない手数でフィニッシュまで行くことが戦術だったのではないか。
ドイツは64分、ポドルスキに代えてシュールレを投入。74分にはゴメスに代えてクローゼを起用する。80分、カウンターから右サイドに流れたボールをベンダーが蹴り込んでドイツが勝ち越し。この時点でポルトガルがオランダに逆転で勝っており、デンマークとしてはもはや勝つしかない状況になっている。
ドイツは84分、ミュラーに代えてクロースを投入。守備を固めたいということか。ドイツは残り時間を手堅く使いきり、2-1でデンマークに完勝した。
これでドイツはグループリーグB組3戦全勝となり、グループ1位通過を果たした。準々決勝はA組2位のギリシャと戦うことになる。
引き分けで構わないという試合で、そのためにしっかりと守備のリスクをコントロールしながら、それでも結局は勝ってしまうところがドイツの強さかもしれない。負ければデンマーク、ポルトガルと勝ち点で並ぶため、勝ち抜けできない可能性も残っていた試合で、こうやって落ち着いた試合ができるところがさすがだ。
この試合ではゲッツェやロイスなども見たかったが、不確定要素がある限りベスメンで臨むところもドイツらしい。もし事前に勝ち抜けが決まっていて、この試合が消化試合だったら、もちろん大胆にメンバーを入れ替えてきたのだろうが。
採点(
採点の見方
):
ノイアー(2.5) クリティカルなシュートをことごとくセーブ。
ベンダー(3) 積極的な攻撃参加がカウンターからの決勝点を生んだ。
フンメルス(3.5) 最も注意すべき敵FWをしっかりつかまえて仕事させず。
バドシュトゥーバー(3.5) 地味な仕事に徹したが存在感はあった。
ラーム(3.5) 再三に亘って左サイドで攻撃に参加。
ケディラ(3.5) 高い技術で前線の組立にもよく参加した。
シュヴァインシュタイガー(3) 配球役として攻撃を演出。彼のチームと言っていい。
ミュラー(4) アシストはあったものの全体として動きに精彩を欠く。
エツィル(3) トップ下でボールを収めては攻撃の起点になった。
ポドルスキ(3) 右足シュートには驚き。全体にもうちょっと精度が欲しい。
ゴメス(4) 一所懸命動いたとは思うが効果的に攻撃に絡めず。
===
シュールレ(-) 時間短し
クローゼ(-) 時間短し
クロース(-) 時間短し
準々決勝は土曜日の未明になるので早起きして見ることにしよう。
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ドイツ代表
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EURO2012
2012年06月14日 22:05
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【EURO2012 B組第2節】オランダ×ドイツ
■2012年6月13日(水) 20:45キックオフ
■Metalist
グループリーグ第2節は強敵オランダとの対戦。日本時間14日未明3時45分からのゲームだったので、4時半に起き、出勤前に録画を追っかけ再生した。
ドイツは前節ポルトガルに勝ったメンバーをそのまま起用。試合はキックオフ直後から互いに激しく攻め合うハイテンポな展開になる。デンマークに負けて後がないオランダは厳しい寄せから中盤でボールを奪うと、ダイレクトでパスを交換しながら短い時間でゴール前に迫る。デンマーク戦での停滞がウソのようないい動きをしている。
しかし、ドイツも最後のところではしっかりと敵の攻撃を止め、ラインを上げてシュヴァインシュタイガーを中心にボールをつないで攻め上がる。中盤で激しい主導権争いが続く。24分、シュヴァインシュタイガーからのスルーパスをゴール正面で受けたゴメスが見事な反転からシュート。これが敵GKの手をかすめて決まりドイツが1-0と先制。
何が何でも勝たなければならないオランダに対し、最悪引き分けでも次につなげることのできるドイツはグッと楽な試合運びができるようになる。一方のオランダは失点を機にバランスが崩れていったように見えた。37分にはバドシュトゥーバーが鋭いヘディング・シュートを枠に放つが敵GKがセーブ。しかしその直後、再びシュヴァインシュタイガーのパスにゴメスが抜け出し、難しい角度からファーポストに蹴り込むシュートを決めて2-0。
ボール支配率はオランダの方が上回っていたが、ドイツは粘り強い守備でオランダの攻撃をしのぎ、効率的にチャンスを生かして2-0のまま前半を終える。
オランダは後半からブンデスリーガ得点王のFWら2人を投入、勝たなければならない試合で得点を狙いにくる。しかしサイド・アタッカーの攻撃を前半から引き続いてラームに封じられ、オランダは時間の経過とともに焦りの色が濃くなって、攻撃は単調に、次第に個人技頼みの傾向が強くなる。セカンドボールもドイツが拾うことが多く、オランダは攻撃を組み立てることができない。ドイツは72分、この日2ゴールのゴメスを下げてクローゼを投入。
それでもオランダは73分、FWがミドルをたたき込んで2-1と1点差に迫るが、ドイツは81分、エツィルに代えてクロースを投入、アディショナル・タイムにはミュラーを下げてベンダーを起用して試合をクローズ。残り10分は敵陣でパスを回しながらボールをキープなど勝利に徹し、2-1で大事な試合を勝ちきった。
この試合、ドイツとしては最悪引き分けでもよかった訳で、初めからそういう戦い方をしていたと思う。勝つしかないオランダが前がかりに出てくることもおそらく予想していただろう。ドイツは無理にリスクを取らず、まずは失点しないことを第一に、守備を重視した戦い方を選んだ。
もっともそれはガチガチに引いて守るということではなく、できる限り自陣ゴールから遠いところでプレーするということであり、ひとたびボールを奪われれば攻守の切替をできる限り速くして全員で守備をするということであった。前節、前線に張るだけで動きのなかったゴメスが、この試合ではハーフウェイ・ラインを超えてボランチの位置まで落ちてきて守備をするシーンも多かったのはその現れだろう。
ドイツの強みは、そうした冷徹な状況判断に基づくリアリスティックな戦術を監督と選手が共有し、その意識を個々の局面のワンプレーに至るまで表現できるということだ。それはチームの成熟の結晶であるとともに、長い間ユーロだのワールドカップだのを何度も勝ち上がってきたこの国のサッカーの「経験」そのものなのだ。
勝たなければならない試合か、負けてはならない試合か。「負けない」戦いをすることは本当は簡単なことではなく、だからたいていのチームは「勝たなければならない」と「負けてはならない」の区別なく「引き分けなんか考えません。全力で勝ちに行くだけっスよ」的なサッカーになりがちだ。「負けない」サッカーをしてきちんと勝つ、最悪でも引き分けるということができるのは限られたチームだけだ。
もうひとつついでに言っておけば、「負けない」サッカーとは「引き分けを狙いに行く」サッカーではない。それは失点しないことを最優先にしながら、できる限り効率的に少ないリスクで得点することを追求するサッカーであり、それが結果として引き分けならそれも受け入れる、ということなのだ。それが勝ちにつながったのがこの日のドイツだった。
どの試合も勝手に「絶対に負けられない戦い」にされてしまう日本代表には気の毒だが、我々がこの領域に達するにはまだまだ十年単位の時間がかかるだろう。ドイツのサッカーを見る楽しみはこういうところにもある。
採点(
採点の見方
):
ノイアー(2) 絶体絶命の一対一も確実にセーブ。失点はやむなし。
ボアテン(3.5) フィジカルを生かして敵のサイドアタックを止めた。
フンメルス(3) 守備に強さを発揮したのみならず攻め上がりも魅力的。
バドシュトゥーバー(3.5) 敵の厳しい攻撃を受け止めた。シュートは惜しかった。
ラーム(2.5) 手の内を知ったクラブでの同僚に完勝。勝利の立て役者。
シュヴァインシュタイガー(2.5) この日はさながら監督兼演出家の趣か。
ケディラ(3) 高い技術で中盤を支配、敵のイライラを募らせた。
ミュラー(3.5) 効果的に攻撃に絡むシーンは少なかった。
エツィル(4) この日は精彩を欠いた。序盤のミドル以外見せ場なし。
ポドルスキー(4) 存在感を発揮できず。
ゴメス(2) こういうのを決定力というのか。
===
クローゼ(-) 時間短し。
クロース(-) 時間短し。
ベンダー(-) 時間短し。
まあ、ドイツのチームとしての完成度が高いのは、いつもバイエルンで一緒にプレーしてる選手が大半だからというのもあるけどな。
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ドイツ代表
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EURO2012
2012年06月11日 20:00
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【EURO2012 B組第1節】ドイツ×ポルトガル
■2012年6月9日(土) 20:45キックオフ
■Lwiw
ユーロ2012が開幕した。ドイツはオランダ、ポルトガル、デンマークと強敵の揃った「死のB組」でグループリーグを戦う。日本で聞く限り今回はドイツが本命とか前評判も高いのだが本当なんだろうか。ここ数年、ユーロもワールドカップもレヴ監督の下で安定した結果を出してはいるが、事前にこんな高い評価を受けていたことはなかった。ほめられると逆に心許ない。バラックやフリングスの後を引き継いでチームの核になるようなベテランが見当たらないのも心配だ。
ドイツの第一節の対戦相手はポルトガル。ドイツの布陣はこんな感じだ。
ノイアー
ボアテン フンメルス バドシュトゥバー ラーム
ケディラ シュヴァインシュタイガー
ミュラー エツィル ポドルスキ
ゴメス
若く勢いのある選手を中心にした、今の時点ではほぼベストのメンバーか。
このところのドイツのサッカーの特徴は、手堅い守備からボールを奪取して、小気味よくパスを当てながら短い時間で前線に展開し、前の選手が流動的に動いてゴールを狙うというもの。しかし、この試合ではポルトガルがかなり引き気味であったため、ドイツは敵陣まではボールを運べるものの、ここでいったん動きが停滞し、パスは回るものの敵のブロックを崩せず可能性のあるシュートを放てないというどこかのクラブチームのような状態にしばしば陥った。
せっかく奪ったボールの展開も正確さを欠き、敵陣に入ってからは使えるスペースもなく足許へのパスが主体で敵のブロックにギャップを作り出すような無駄走りが見られない。特に前線に張るゴメスは、解説の奥寺康彦も再三指摘していた通り、ポストをする訳でもなく、ボールを受けに降りてくる訳でも、スペースに動き出すでもなく、「前線に張る」以上の動きがない。左右にクロスが往復するのに中央でゴメスが合わせられず、おろおろするだけのシーンでは笑ってしまった。
これに対してポルトガルは自陣で待ち構え、ドイツが手詰まりになって放り込んだボールや不正確なパスを奪っては、前の選手に渡して個人技で勝負というサッカー。もちろん失点のリスクはあり怖いといえば怖いのだが、組織的に押し上げてくる訳ではなく、ケアのしどころははっきりしていて、そこを抑えられるかどうかの勝負になる。ボアテン、フンメルスらが我慢強く対応する他、ノイアーも的確に仕事をこなし敵に得点を許さない。
いずれにしても難しいグループの初戦とあってどちらも負けたくないという意識が強く、リスクを取って攻撃するという姿勢は気迫で、慎重で神経質な展開の試合になる。ドイツは、エツィルにボールが渡ったときには唯一チャンスになる可能性を感じさせるものの、それ以外はアイデアを欠き、ボールを支配して主導権は握りながらも攻めきれない時間帯が続く。シュートも遠めからのものが多く、敵を崩してエリア内に侵入するシーンは見られない。
45分にはポルトガルのCKから敵が放ったシュートがバーを叩いて真下に落ち、そこからピッチに戻るシーンがあり肝を冷やしたが、リプレイで見てもボールはライン上でバウンドしておりノーゴールの判定は妥当。この大会では試験的にゴール裏にも審判を配置しており、このシーンはよく見ていたと思う。いつかのイングランド戦が脳裏に甦った。
この試合、ドイツとしては最悪引き分けでもいいという目算があったと思う。ポルトガルに負けて勝ち点3を与えることを思えば、勝ち点1を分け合うことは受け入れられる。タレントを揃えた難しい相手だけに、まずは負けないことが優先だったはずだ。そしてその事情はポルトガルも同じだったに違いない。後半に入っても前半同様、引いて守るポルトガル相手にドイツが攻めあぐねるゲームになる。
70分、ドイツはようやく重い腰を上げて勝負に出る。前線で今ひとつ機能していないように見えるゴメスを下げるためクローゼを準備させたのだ。しかし、72分、皮肉なことに、ゴメスがケディラのクロスに頭で合わせ、これが敵GKの動きの逆を突く形でゴール右隅に決まりドイツが先制。喜びを爆発させるゴメス。クローゼはいったんベンチに戻される。
失点でゲームプランの狂ったポルトガルは前線に圧力をかけてくるが、ドイツも必死にこれをしのぐ。80分にはゴメスを下げてクローゼを、87分にはエツィルに代えてクロースを投入。アディショナル・タイムにはさらにミュラーに代えてベンダーを投入して試合をクローズ、貴重な勝ち点1を手に入れた。
ポルトガルが引いて来たこともあってドイツは攻撃のリズムを欠いた形になったが、それでも1点をもぎ取ってこの試合に勝ちきったことの意味は大きい。何よりも結果が大切になる大会で、強敵相手に勝ったことで内容も改善してくるだろう。前線でゴメスが今ひとつ機能しなかったことは懸念材料だが、エツィルの動きには希望が見えた。
同組ではオランダがデンマークに負けた。次節、ドイツはオランダと戦うが、ここでオランダに勝てばもちろん、引き分けでも勝ち抜けに大きく近づく。強敵と目されたオランダとポルトガルが初戦で勝ち点を得られず、最高でも勝ち点6にとどまることとなったのは星勘定的には大きなアドバンテージだ。デンマークは侮れないが、こうなるとむしろデンマークとグループ突破を分け合うことも考えられる。
引いた相手に苦しめられ、必ずしも狙いどおりのサッカーができない中でも、最低限の結果を出したところに、ドイツの底力を見た思いのする試合だった。次節、ドイツは「負けない戦い」に徹してくると見るがどうか。
採点(
採点の見方
):
ノイアー(2) 何度も窮地を救う。安定感のある完封で勝利に貢献。
ボアテン(3.5) 対面の相手に手を焼いたがしつこく食い下がった。
フンメルス(3) 抜擢に応え中央を封鎖。ルシオばりの持ち上がりもステキだった。
バドシュトゥバー(3.5) 身体は張ったがもったいないファウルも。
ラーム(3.5) 守備と攻撃のメリハリはさすが。
シュヴァインシュタイガー(4) あまりボールに触れてなかったような。
ケディラ(3) 積極的な攻撃参加でアクセントをつけた。
ミュラー(4) スペースを見つけられずクロスも精度を欠いた。
エツィル(3) 彼の仕掛けだけが引いた相手への脅威だった。
ポドルスキ(3.5) シュートが枠に飛ばず、プレーが雑に流れた。
ゴメス(4) 得点はあったものの動きが少なくブレーキになっていた。
===
クローゼ(-) 時間短し。
クロース(-) 時間短し。
ベンダー(-) 時間短し。
次は木曜日未明の試合。いつどうやって見るか、それが問題だ。
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ドイツ代表
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