”物流”の“物”にフォーカス #7

浦和では今、河津桜が三分咲きです。次週は満開でしょうか。皆さんのご近所の桜はいかがでしょうか。

年末に二人の娘が相次いで結婚、入籍し、その他雑用もありブログ連載をサボってしまい失礼しました。
さて、
年が明けて新倉庫設計・システム構築(大阪)と倉庫プロセス改善(東京)の2件のコンサルが始まりました。前者案件は現在の倉庫が旧態依然として効率が悪いこと、ビジネス拡大に伴うスペース確保課題もあって他県に新規拠点作る計画があり、この倉庫オペレーション、在庫管理、現場マネジメントそしてスキルレスのシステム構築支援を行います。後者は現状の物流拠点の仕組みが古く、こちらもやはり拡大している業務量(商品群の増、Eコマースによるオーダー増など)などから現状のままではビジネスリスクになる可能性があるため今のうちに物流システムの改善と再構築を行います。中期レベルの流通チャネル、物量、オーダー数などを考慮してのシステムの検討を行います。こういった倉庫改善や再構築案件でもDFLの考え方は有効です。倉庫で保管、入出庫、流通加工などのハンドリングに適した形やプロポーション、重量にすることです。商品マスターカートンや小物用のコンテナなどのプロポーションが棚にマッチしていないために軽量棚からはみ出していたり縦置きにしたりと工夫はされていたものやはり生産性を悪化させていました。在庫する商品包装のサイズ/プロポーションが保管する棚のサイズ、高さなどとうまく適合させるべく包装を変えることも検討中です。DFLによる源流から最適サイズ化するかです。倉庫業務で最も人手のかかるピッキング、梱包作業の生産性を高まることにもDFLは有効なのです。部分的に荷姿変換してやることも含めての検討です。イントロが長くなりましたが今回はDFLプロジェクト推進のためのステップを順にご説明します。

Step-0 Pj活動枠組み造り

#6で全体最適指向のDFLにはプロジェクト化による推進が現実的だとお話ししました。組織 による活動でなくやや緩いプロジェクトによるものだとしても全体最適を目指すこのプロジェクトでは必ず組織間の利害関係を調整することが多くあります。多くのプロセス・組織に関係する“物”最適化活動ですのでやはり関連部門との協業プロジェクト化とし社内でオーソライズすることが重要です。そもそも全体最適を阻害している要因の一つに組織の問題があるのです。活動範囲は“物”が係るすべてのプロセスとして対象は部品、半製品、製品とその包装、輸送追加梱包、副資材等です。そしてこの“物”を決めることに関与する部門つまり商品企画、製品・部品設計、包装設計、製造、物流、品質、販売等による協業プロジェクトです。このあたりのことを整理して関連本部や事業部で経営責任を持つTopマネジメントにこの活動の主旨やプロジェクト化の必要性を理解していただく場面を作ってください。これは非常に重要なポイントです。ステアリングコミッティにも参加いただき、毎月の進捗報告会には必ず出席いただくのです。事業全体の責任を持つTopの理解と彼らをこの活動に巻き込むのです。進捗会議・議論の場を作ることなどは最適化に向けて非常に重要なのです。以下の項目を整理しこのプロジェクトの企画書を作成し事業部門Topに説明と理解を得るのです。このお墨付きがあるのとないのではその後の活動の進捗に大きな影響を与えます。企画書には Pjの背景、目的、方針、対象、期待効果、構成部門、期間、予算 他を整理です。 ご参考にプロジェクト方針例を以下に挙げておきます。

<プロジェクト方針例>     

商品企画・設計段階からトータルプロセスを考慮した商品の最適化設計活動を協業体制で推進し成果の刈り取りスピードアップと最大化を計る。
 1.サプライチェーンプロセスでの物(商品、包装)起因コストの最小化をトータル評価
 2.企画、設計、調達、製造、物流、販売部門が連携し源流から改善
 3.”物”最適化の仕組みづくり 
 
次回の#8で
Step-1 Pj活動のキックオフと活動のオーソライズ をお話ししたいと思います。

2月22日 ()北山コンサルティング代表 北山義弘 
        ホームページ:http://www.kitayamaconsul.com/

JILS(日本物流システム協会)セミナー”物流技術管理士認定講座”では、1110日第3回目の名古屋開催に続いて1117日に第4回目東京開催の講師をつとめさせていただきました。12月には今年度最後のセミナーが大阪でありますが、これまでの東京2回、大阪、名古屋各1回で既に約320名の方々に“物”にフォーカスした物流改善/全体最適活動が大幅コスト削減に有効であることをお話してきました。講義の後に多くの方々から“今まで考えもしなかったところにこんな改善余地があるのか!”、“今後のソリューション提案にぜひ生かしたい”との声をお聞きし私もこの考え方をさらに広めていこうと意を強くした次第です。

さて”物“にフォーカスしつつ、この全体最適設計をいかに進めるか?の話に戻しましょう。

前々回の#4で物流コスト削減を図るときにはそのコストが委託費用として発生しているのか自社リソースによって発生しているコストなのかによってそのアプローチは異なることをお話ししました。前者は本質的なコストではなく契約で決められる値であって後者の実質的コストとはやや異なるものです。削減対象つまりコストを正しく掴むことは非常に大切です。一般的な話ですが改善するときには常に目的を明確に、対象も正しく掴むことが第一歩です。そうでないと改善成果がなかなか出ないと頓挫してしまうことがありますので留意が必要です。DFLはモノづくりのトレードオフ問題を扱うことです。製品強度を上げようとすれば製品材料コストUpなどを招くことが多いでしょう。一方、物流途上の衝撃緩衝用のクッション厚は薄くでき包装体のサイズは小さくすることが可能となります。結果、輸送や保管等の物流コストは低く抑えられるわけです。つまり材料費アップなどで製品コストは大きくなった物流費は下げられたわけです。この案の場合には採用するかどうかの意思決定段階ではコストトレードオフ関係があることを理解してください。もちろんトレードオフ問題/DFLを議論することもなく包装サイズの微調整で積載効率最適化していることもあります。このようなトレードオフ関係にあるいくつかのパラメータを洗い出して案の比較評価を行うことです。

全体でこうかがあるのかどうかを公平に評価して初めて全体最適を論ずることができます。一つの組織ですべてを成し遂げることは不可能です。“物”はすべてのサプライチェーンで動き回り影響を与えます。つまりこれらの影響がどこに発生してその影響度はどのくらいあるのかを客観的に評価することが必要なのです。

しかしこのようなコンカレントなエンジニアリング活動を進めるのは組織が大きくなればなるほど難しくなります。

部分最適を指向しサイロ化した事業部制などはその活動の阻害要因になることがあります。全体最適を指向するデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)を推進するにあたってはまずはプロジェクト化して実績をだしこのデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)プロジェクトで策定、導入された実績のあるプロセスを組織機能に落とし込むという流れを作るのが現実的でしょう。以下はデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)プロジェクト推進ステップです。次回にはこのステップごとにその活動例をご説明しましょう。

Step-0 Pj活動枠組み造り、 Step-1 Pj活動のキックオフと活動のオーソライズ

Step-2 DB・標準整備と共有、 Step-3 設計・評価

 

1117日 ()北山コンサルティング代表 北山義弘 

http://www.kitayamaconsul.com/

 

4からすこし間が空いてしまいましたが、今回は”物“にフォーカスした改善例をいくつか紹介します。具体例でどんな活動なのかご理解ください。これらは物流を考慮した設計活動でありデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)といいますので覚えておいてください。

例1)   中物商品、Boat輸送

⇒製品カートン寸法変更 ・・・海上コンテナへのモジュール化

カートン奥行寸法▲5mm(500mm㎜495㎜)のみで積載効率10%Up

Airバッグ削減、同作業費削減

⇒関連部門:設計、物流、製造部門

例2)部品包装 ・・・・内部空間圧縮

内部仕切を変更し内容の員数増

10個入り11個入り/カートン 

積載効率10%Up、包装材料費▲10%、工務作業費▲5%

⇒関連部門:設計、製造、調達、物流

例3)中物商品、国際Air輸送 ・・・・・製品自体のサイズ変更と軽量化

          ⇒同梱付属品のサイズ変更

10g軽量化  Air輸送費▲3円/台

⇒関連部門:商品企画、設計、製造、調達部門

上記の例1)では “物”つまり包装サイズを数ミリ変更するだけで積載効率が約10%改善と貨物固定用のエアバッグを排除できました。これはカートンのサイズを海上コンテナサイズに合わせモジュール化設計をした結果です。例2)では製造部門から入数が10点法管理できなくなり管理性が悪くなると強く反対されましたが工場の部品管理工数やハンドリング工数の増減なども総合評価を行ったうえで最終的に工場長の理解も得て導入をしました。例3)では商品自体の変更を行って軽量化した例です。これらはすべて“物”特性を変更しているわけですがその是非に当たっては発生/変化する費用の評価を行うことが必要です。調達物流領域では包装材料、包装作業、保管・ハンドリング、部品輸送、積み込み作業、作業時間、Dコスト等。工場内物流ですと受入・保管時の荷降ろし作業、ハンドリング、在庫スペース、皮むき作業、空箱処理、通い箱返送,部品包装材廃棄、製品包装・包装材料、包装作業、製品一時保管、積み込み等。製品物流の領域では輸送、Dコスト、拠点保管、ハンドリング、ピッキング、流通加工作業、展示性等です。これら関連する主要項目をもれなく全体評価が必要することが重要です。単にロジスティクスを考慮した包装設計にするということではなく全体最適になる設計でなくてはなりません。 事例からも分かるように物流に適した包装設計自体はさほど難しいことではありませんが全体最適を実現する包装・製品設計となると一気にハードルが高くなります。それは組織の壁などがあるからです。”物“にフォーカスしつつ、この全体最適設計をいかに進めるかは次回以降でお話しします。

 

10月17日 ()北山コンサルティング代表 北山義弘 

http://www.kitayamaconsul.com/

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