紫陽花の音

AJISAI NOTE

完全に受信してしまったと思う時がある。大塚愛の『TOKYO散歩』、「あなたと歩きたい」、「あなたに会いたい」ぐらい言うのかなと思って聴いてたら全く出てこなくて、単純に「お洒落して歩きたい」、「好きなものに出逢いたい」としか歌っていない、その潔さが良い。ここまで何でもないことをキャリア10年以上のミュージシャンが歌に出来るのは凄い。作家性みたいなものではなくて、音楽をやりたいという初期衝動みたいなものだけで続けてるんじゃないのか。昔、この人の『黒毛和牛上塩タン焼680円』という曲を聴いたらエグすぎて「男に弄ばれて身も心も滅びていく女」のストーリーを受信してしまって死ぬほど辛くなったことを思い出した。離婚秒読みというニュースを読みながら、新しいアルバムを聴いている。

「やよい軒に住みたい」というパンチラインを数年前ツイッターに投稿していたのはMCperoちゃんだったと思う。多国籍の居住区域であることを武器に魅力的な飲食店がひしめき合うこの街で、いつ行っても絶対に確かな安心感をくれたのはやよい軒だけだったのかもしれない。「だった」と言うのはなぜか、それは気づけば春が近づき、風の味が変わる、その過程について今ここで説明するなんて野暮だ、とにかくこうしている今でもやっぱりやよい軒にいると思わず「やよい軒にいる」と必ずSNSに発信してしまう自分がいる。それはただのムードだろう。けれど、その「ムード」を生んでいるのは店内の間接照明、微かな音量で流れるジャズ、巨大な釜から零れる湯気と艶やかな米の香り、その何もかもであるようで、何もかもではない。どんなに深夜でも、注文を取りに来るのは必ずパートの中年の女性で、それぞれが違う人物なのか、それとも全て同じなのかがいまだにわからない。そしてそれも仕方ないと思えるぐらいに、信じられないぐらいに稼働人数が明らかに多い。厨房でストームトルーパーのように整列して待機するおばちゃんたちを夢想する。隣りの席では四季を完全に無視してサンダルを履いた白髪の親父が、ビールを片手に文庫本を読んでいる。もう一つ奥には、30代前半ぐらいの美女が一人。その献立を推測するまでもなく、この空間そのものが最高だとまた思う。

去年、「大戸屋はなぜやよい軒に勝てないのか?」という記事をネットで読んだ。分析するまでもない。その数ヶ月後の日曜の晴れた昼間、ある廃れた商店街で大戸屋を見かけた彼女が「わたし行ったことない、行ってみたい」と言っていた。何と返事したか覚えていない。ただ、それでいいよと今は思う。

店を出るとすっかり夜風は温く、インド料理か中華料理か牛丼かハンバーガー、そこに潮風の匂いが混ざってゆくのがこの街だと今もう一度気づく。聞こえてくるのは自転車のブレーキ音と、カラオケスナックでサラリーマンが歌う下手くそな「前前前世」だけ。MCバトルの文字数を以てしても語り尽せないのが人生だ。と思いながらマンションの鍵をポケットから取り出した。あと20日。

小学生の頃、母親に「AKIRAのTシャツが欲しい」と控えめにねだったら兄と姉に爆笑されるほどバカにされて以来、自分のセンスに「わかってたまるかよ」根性が芽生えて今に至る。わからない奴がバカだから、という前提で常に生きているから全く問題ない。色んなものに感謝している。88risingが最近UPしたなぜか今さらAKIRAについて丁寧に説明しているだけの動画を観てふと思い出した。

オシリペンペンズが日本に存在し続けてくれているという事実だけで感動してきた。存在し続けるバンドは伝説化されにくいので正しく評価されていない場合があると昔ロッキングオンで読んだ、その通りなので特に付け足すことがない。最悪な時を、ニュアンスで耐えろ。

突然ですが今、人生で一番スウェードが好きだという情熱だけで書く。「スウェードに影響を受けたのではないか」と指摘されたことが過去に数回だけあって、的確すぎて震えた。自分たちはシティボーイのコミュニティからはみ出したゴミであり豚であるという自虐も、反モラルをアピールしたいだけのような性愛表現も、街の恋人たちや都会の喧騒に対する距離の置き方も、かと思えば唐突に登場するドラゴンという思春期の幻想メタファーあるいはサビでわりと強引にぶち上がるファルセット、自意識過剰気味にやたら前に出てくるファズギター、何より意図的にファッショナブルであることを避けているとしか思えない歌謡曲テイストのメロディーなど、他のどのバンドよりもスウェードから学習したことが多い、というかほとんど全てのことをスウェードからパクってきたとしか言いようがないという事実がまだ数人にしかバレていないことは不思議ですらあります。そんな想いを込めて今、来来来の新しい音源が完成に向かっています。そこで全然追えてなかったスウェード再結成後の曲も聴いてみると、これとか井上陽水みたいで最高だけどあまりに金かかってなさすぎ再生されてなさすぎで泣いた。

SNSDの"GEE"が一周廻ってアップデートされたように聴こえる。あれから8年近く経ってもK-POPはいまだにポップでかっこよくて、憧れです。今年の優勝!

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