December 18, 2004

妥協としか言わざるを得ない反戦ビラ配り判決

ギリシャ神話の正義の女神「テミス」。目隠しをし、右手に秤、左手に剣を持っている。これは法や裁判の目指すべき理想を示す。目隠しで貧富や姿形などの予断や私的関係から判断が曇ることを回避して、秤は公平(衡平)を、剣は判決の実力による貫徹(権威、権力)を表すものと言われている。

さて、今回の「立川・反戦ビラ弾圧」判決はどうだったか、「予断や私的関係から判断が曇る」ことはなかったと言えるのか、どうなのだろう? あまりにも「妥当な判決」「穏当な判決」という礼賛の文章が多すぎ、臍曲がり根性がむくむくと出て来た、というのが正直な感想だ。

正義の女神「テミス」のように目隠しをしたのかというと全く目隠しをせず、むしろ全方位に目配りをしながらおずおずと「勇気ある判決」に踏み切ったというのが実情のようだ。考えても見よう、判決要旨(判決全文は未読)によれば違法な起訴だとして公訴棄却を求める弁護団の主張に対し、「ビラの内容を重視して起訴された面はあるが、違法な証拠に基づいたとはいえず、訴追裁量権の範囲内」とその主張を退けた(中日新聞)というのだから、これは検察・警察に対する気配りでなくてなんであろう?

被告となった三人が受けた弾圧の実態を考えて見よ。ビラ配布から一か月以上もたってから、前触れもなくいきなり逮捕、と同時に家宅捜索(ガサ)で根こそぎ資料を押収され、そして警察発表による報道の垂れ流し。さらに接見禁止をつけられての勾留が二ヶ月を越えている。起訴前の勾留時には長時間の取調べと称する恫喝と誹謗中傷の毎日が続いた。被疑者・被告は耐え難い苦痛を受けているのである。

この苦痛を裁判所は容認したのである。公訴棄却という検察や警察に対するペナルティがあってしかるべきなのに、公訴棄却は退けた。どう考えても警察・検察による弾圧目的の逮捕・起訴を追認したことにならないだろうか? というか、公訴棄却を避けたことにより、今後この種の弾圧があっても構わないという容認の姿勢が顕著ではないか。警察も検察もペナルティどころか控訴して失地回復する余地すらある。

なぜ、このような判決になったのかを考えてみるべきだろう。おそらく、アムネスティによる「良心の囚人」認定が裁判官の念頭にあったに違いない。そりゃ気になるでしょうよ。ここで有罪にしてしまったら、良心は咎める、だから憲法を援用して無罪判決を書くことにした。ただし、それでも上しか見ようとしない「ヒラメ裁判官」と較べてよほどましではあるのだけれど。

まぁ、ましではあるけれど、上(国家権力)も見、下(アムネスティなど)も見た結果出てきた妥協による判決と言わざるを得ない。アムネスティの文章がなければ、どうなっていたことか。

ということで最初の話に戻るけれど、正義の女神「テミス」のいう「予断や私的関係」がなかったどころか、「予断」=アムネスティの文章、と、それに「私的関係」=検察と上級審への気配りで「違法起訴」は認めない玉虫判決となった次第なのであろう。これ、貶しすぎ?

公訴棄却を認定しないで検察の起訴を追認したことにより、逮捕・起訴・接見禁止をすべて容認してしまったのは恐ろしい。評価すべきであるとともに、やはり超えてはならない一線を超えてしまった判決であるという思いが大きい。被疑者・被告とされ、勾留されて奪われた三人の時間(75日間)は戻らないし、金銭的補償が認められたとしてもわずかなものでしかない。


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 全国の警察のトップ「国家公安委員長」を務めた経歴がある元自治相・白川勝彦氏が、渋谷の街頭で突然、警察官4人組に取り囲まれ、動くこともままならない状態で違法と言うべき「執拗に身体検査をしようとする」職務質問を受けたと、自らのウェブに長文の一部始終レポート
十分に警察国家であると気付かれぬとは [ブログ時評04]【ブログ時評】at December 19, 2004 15:03
救援連絡センター掲示板No. 1395「反戦ビラ配り判決 手放し賞賛するな」の全文転載
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 ビラ配布をめぐる警察・検察の動きは、きわめて焦(きな)臭くなってきた。【「都議会報告」など戸別配布を住居侵入で現行犯逮捕】(Categories: News)の件は、どう考えても異常の一語に尽きる。その異常さも報道のタイミングで推測できる。重複になるがここでも説明する
検察・警察の暴走開始? ビラ配布の現行犯逮捕【虎視牛歩】at December 29, 2004 01:11
お昼やすみには、よくMSNなんかでニュースを見ます。 気になった記事があるといろいろと関連するものも見てみます。 今日は1つの記事が発端でいくつかのブログにお邪魔して、あらためて考えさせられました。  住居侵入:マンションでビラ配布、男性起訴 東京地検  MS
お昼やすみ【クラゲノゲラク*】at January 12, 2005 15:28
この記事へのコメント
思わず「ううむ」と唸ってしまいました。
某掲示板で見かけた文章を引用させていただきます。
「しかし、日本の場合は、代用監獄制度という恐ろしい制度があり、裁判抜きで、即ち司法の判断に委ねる事無く、警察は被疑者を23日間、警察署に拘束する事ができるという制度がある。実際に、ビラ入れで逮捕されるケースは数多くあり、そして起訴される事なく釈放されるというおきまりのパターンがある。これは23日間の拘束で、運動に対して十分なダメージを与える事ができるという意味です」
逮捕権の濫用や代用監獄の「活用」だけで、普通の市民運動なら充分に潰すことができる。起訴しなければ、裁判で逮捕容疑の正当性を争う必要もない。この逮捕したこと自体を問題にしなくては解決にならないと強く感じました。
Posted by 草加耕助 at December 20, 2004 07:17
これを不当逮捕といわないなら何を不当逮捕というのか。これを公訴権の濫用といわないなら何を公訴権の濫用というのか?検察は恥を知れ。それに比べれば常識的な判断をした地裁ははるかにまし。孤軍奮闘された3人の方をおそまきながら応援したいと思います。
Posted by maharao at December 20, 2004 13:02