2018年02月19日

女子シングルスを数値で見る

[プロ野球でわかる! ]はじめての統計学
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 バドミントンを数値や統計で分析できないかという試みの一環として、女子シングルスをとりあげます。

 試合はYonex Japan Open2015の準決勝、山口茜選手とWang Shixian選手が戦ったものを取り上げます。事情により、今回は1ゲーム目を取り上げます。

 山口選手についてはご存知だと思います。男子に近い強打・フェイントを持っており、非常に素早く、鋭い攻撃力のある選手です。

 一方、Wang Shixian選手は中国の選手で、コートを広く使ったラリー型の選手です。特徴的なのはカットの精度の高さと粘り強さです。典型的な昔ながらの女子スタイルに近いでしょう。

 試合の動画は以下になります。

 

 なお、使用したデータは下記のとおりです。手動でせっせと作成したため、信頼性は保証できません。

rallies.csv
strokes.csv

 では、さっそく数値を出しながら、解説します。

<1ラリー当たりの平均ストローク数>
9.78(323/33)

 一般的な学生、社会人の実際を考えるとそれなりに長い印象があります。

 一方、学生時代の練習を考えるとノックやストローク練習が10球ということはなかったので、想定よりは少ないという見方もできます。

 実際のところ、10球のラリーをスピードを上げてやりきる練習のほうが試合に近いのかもしれません。

<1ラリー当たりの最大ストローク数>
25(20球以上は4/33)

 体感的にはやはり長いと思います。長期戦が得意なWang Shixian選手がいてこれだけということは、ノックの最大数はどれだけ多くても30球とみるのがいいかなと思います。

 そしてそれだけのラリーが連続する可能性はほぼないでしょう。

<ストロークの分析>

 コースは正確に分析するのが難しかったので、コートを大雑把に9つに分けてとらえました。

 ・フォア前
 ・センター前
 ・バック前
 ・フォア中央
 ・センター中央
 ・バック中央
 ・フォア奥
 ・センター奥
 ・バック奥

 現実的にはもう少し細かいコース取りをすればさらに分析が捗ったと思いますが、手動の手間を考えるとここらへんが限界でした。

 そのうえで、ストローク時の姿勢のバランスを有利・普通・不利でとらえました。これは主観的なもので精度がさらに低くなります。

 また、打ったストロークがフォア面かバック面かを一応記録しました。主にハイバックかどうかの判定とセンターのストロークをどっちで打っているかの判定に使えると思います。

<ハイバックでの処理>
Wang Shixian選手の場合
バック奥の打球のうち、ハイバックで処理したものは9/33(27%)

【コース打ち分け】
 ・フォア前 0球
 ・センター前 1球
 ・バック前 1球
 ・フォア中央 1球
 ・センター中央 0球
 ・バック中央 0球
 ・フォア奥 4球
 ・センター奥 0球
 ・バック奥 2球

 比較的コースに散らしていますが、明確にクリア系に偏っています。これはレシーブに自信があるからそういう選択肢をとっているのでしょう。

 逆にドライブ系やカット系は少ないです。

 一方、山口選手はバック奥の打球を17球処理していますが、ハイバックは1度も使っていません。追い込まれた打球も何度かありましたが、すべて強引にラウンドで処理しています。好対照なプレイだと言えます。

<アンフォーストエラー>

 アンフォーストエラーは相手に仕掛けられたわけではない簡単なミスを指します。
Wang Shixian選手 5球(ネット2、サイドアウト3)
山口選手 2球(ネット1、サイドアウト1)

 2人の試合はネットプレイが少なくないうえにラリーもそれなりに長いことを考えると、かなり少ないと言えます。

 つまり、この試合においては得点は意図的にとられたものが中心で、相手のミスを待つようなプレイはお互いにしていないということです。

<エース>
Wang Shixian選手 5球
 ・バック奥からボディへのスマッシュ 2球
 ・バック奥からクロスカット 1球
 ・フォア奥からクロスカット 1球
 ・センター前からバック前へのヘアピン 1球

山口選手 9球
 ・バック奥からクロスカット 2球
 ・バック奥からストレートカット 2球
 ・バック奥からクロススマッシュ 1球
 ・フォア奥からストレートスマッシュ 1球
 ・フォア奥からクロスカット 1球
 ・バック横からクロスロブ 1球
 ・センター前からフォア前へのヘアピン 1球

 Wang Shixian選手はバック奥からの攻撃が目立ちますが、これはそもそもバック奥からの本数が多いためで、必ずしもラウンドが強いとは言えないと思います。これを見る限り、意図的にエースをとれるような球は持っていません。

 逆に山口選手はバック奥のタッチ回数が半分くらいにも関わらず、それ以上のエースを奪っているため、明らかにラウンドが得意といえるでしょう。

 ただし、とてもうまい決め球が1つあるというよりは、色んなストロークを見せながらうまくエースをとるという点の取り方をしています。スマッシュでガンガン得点ということはなかったです。

<レシーブコース>
Wang Shixian選手 29球
 ・ネット系 19球(うちセンター13球)
 ・ドライブ系 4球
 ・ロブ系 6球

山口選手 24球
 ・ネット系 16球(うちセンター8球)
 ・ドライブ系 4球
 ・ロブ系 4球

 傾向はほぼ同じです。多くの場合、ネット(特にセンター)にシャトルを切って、相手の攻撃を流しています。

 そのうえでぎりぎり追いついた打球に対してはドライブ系で流す、だいぶ余裕があればロブで読みを外すという使い方が目立ちました。

<ロングサービスへのレシーブ>
Wang Shixian選手 20球
 ・フォア前 4球
 ・センター前 0球
 ・バック前 4球
 ・フォア中央 2球
 ・センター中央 2球
 ・バック中央 1球
 ・フォア奥 6球
 ・センター奥 0球
 ・バック奥 1球

山口選手 6球
 ・フォア前 0球
 ・センター前 0球
 ・バック前 0球
 ・フォア中央 0球
 ・センター中央 1球
 ・バック中央 2球
 ・フォア奥 2球
 ・センター奥 0球
 ・バック奥 1球

 機会が少ないですが、山口選手は全くカットを打っていません。そもそもつなぎのカットもそんなに打たないので、決め球専用という感じです。

 Wang Shixian選手は結構散らしていますが、明確にフォア奥を狙っています。そのうえで読みを外す工夫が多いというところでしょう。

<コート奥で追い込まれた対応>
Wang Shixian選手 35球
 ・フォア前 4球
 ・センター前 3球
 ・バック前 4球
 ・フォア中央 1球
 ・センター中央 1球
 ・バック中央 1球
 ・フォア奥 6球
 ・センター奥 5球
 ・バック奥 8球

山口選手 32球
 ・フォア前 2球
 ・センター前 1球
 ・バック前 11球
 ・フォア中央 2球
 ・センター中央 0球
 ・バック中央 6球
 ・フォア奥 3球
 ・センター奥 1球
 ・バック奥 6球

 相変わらず好対照です。Wang Shixian選手は散らしながらコート奥への展開を狙うことが多いです。追い込まれるとセンター線も結構使います。

 山口選手はクリアはフェイク気味に打つだけで、ストレート系のドライブとカットで何とかするほうが多いです。スタイル的にはやはり男子に近いやり方に見えます。

<打球分布>
Wang Shixian選手 146球
 ・フォア前 18球
 ・センター前 22球
 ・バック前 15球
 ・フォア中央 6球
 ・センター中央 11球
 ・バック中央 10球
 ・フォア奥 35球
 ・センター奥 9球
 ・バック奥 20球

山口選手 144球
 ・フォア前 12球
 ・センター前 14球
 ・バック前 26球
 ・フォア中央 7球
 ・センター中央 4球
 ・バック中央 25球
 ・フォア奥 21球
 ・センター奥 2球
 ・バック奥 33球

 Wang Shixian選手は山口選手のフォア奥を狙いながら散らしている感じですね。全体的にはコート奥への展開が多いです。
 
 山口選手は逆にバック狙いが目立つので、お互いにそちらを狙いながら半面で展開することが多いです。あとはやはりサイドを使う傾向が強いです。

 ただし、コースを狙いながらもコートを広く使っていると思います。

<まとめ>

 改めてまじめに見てみると、感じ方と違うと思う人が多いのではと思います。自分も現地で試合を見ていましたが、想像とかなり傾向が違いました。

 バドミントンを機械的にみると、自分の感覚が当てにならないことがわかります。

 実際のところ、1試合の1ゲームだけを切り取って女子シングルスというのはつらいのですが、このデータ作るのに半日つぶしたので残りはやる気があればいつかやります。

 男子シングルスもいずれはやってみたいです。

 たまにはこうやってデータを見ながら、数字でバドミントンをとらえるのもいいのではないでしょうか。

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dexia2 at 21:20コメント(2)数値遊び  

コメント一覧

1. Posted by ハム   2018年02月21日 00:17
面白い記事をありがとうございます。いつも、筆者様の発想や知識から勉強させていただいています。
自分はバド以外に野球が(見る専で)大好きなのですが、あちらはメジャースポーツなことと、バックにアメリカという大国が付いているからか数字いじりが活発です。そんな中でも、やはり守備を数値化して評価する試みには苦心しているようで、そういえば、バドミントンという競技って要は全て野球のフィールディングのようなものですもんね。
これをデータとして扱うのは大変な労力と人手が本来必要かと思いますが、それでも分析まで加えられた筆者様に敬服いたします。
いずれは、日本のベンチャー企業にでも、バドミントンのデータ化を進めて欲しいけれど、環境的に難しいのかなと思ったり。
ですが、バドミントンを理屈で捉えるための手がかりとして、参考にさせていただきます。
2. Posted by でぃあ   2018年02月21日 07:47
>ハムさん
コメントありがとうございます。自分でも特に苦労した記事なので、共感してもらえるとうれしいです。

自分も野球は好きです。データいじりまではしませんが、最低限のセイバーメトリクスを理解するくらいには見て楽しんでいます。

野球はデータが比較的とりやすい、とる文化があるのでうらやましいです。

守備は難しいですね。相手の打点、自分のポジショニング、打球速度、これまでの配球、打ち返すコースをすべてとらないと正確にはとれないでしょうね。野球よりまだ難しいです。

とりあえずデータはいろいろ探しましたが、BWFのスコアの統計くらいしかないですね。スコアの推移は面白いですが、技術の探求にはならないのでいまいちです。

野球やサッカーなどをみていると技術的に難しいわけではないので、需要がないのが正解なんじゃないかという気はしてます。

今回の記事はストロークを単発で評価しているので、流れの中の配球が課題として残っています。あとは姿勢や打ち方を考慮した技術的なところをもう少し。

なので、まだ深堀りできそうな感じはしています。

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