2016年12月31日

2016年12月08日

非ニコマス系動画紹介 2016.8月下旬〜2016.9月下旬



狩猟生活を乗り越えて食料が充実したので,カメ五郎の遊びが見えておもしろかった。これからも短編をがしがし投稿してほしい。



ココル原人さんは本当に上手いなぁ。




MMD杯で知った曲だが,いろいろ聞いてみて良いなと思ったのはこのあたり。



爽快感とおしゃれさのある良いMADだった。




完結。こんなに強いアルティミシアは初めて見た,と言えるような運ゲーであった。というよりもアルティミシア以外は意外と苦戦しなかったとも。



なんでこれをRTAでやろうと思ったの。一発で成功してるし……




一気見した。前半のしんどさに比べて後半は意外とすんなり。そしてシドーよりもハーゴンが強かったりと,ドラクエ2の意外な側面の見えた縛りプレーだった。
  
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2016年12月07日

最近読んだもの・買ったもの(『NEW GAME』3・4・5巻)

・『NEW GAME!』3・4・5巻。
→ 「実は3巻からが本番」とは言われていたが本当にそうだった。断言するが,本作は3巻で化けます。アニメから入った人は5巻までまとめて買って損はない。これは「二期はよ」って言われちゃうわ。

・以下ネタバレ注意。3巻のハイライトはビジュアルコンペで青葉が勝ってしまった後の展開で,言うまでもなく昔のコウの経験があり,2巻ラストの青葉の「理想の上司です!」があっての,この展開。まだまだ“クリエイター精神”なるものがつかめておらず不用意な発言をしてしまう青葉に,自分が大人にならなくちゃいけないのに咄嗟にそうはできないコウ。仕事なので,クリエイター同士なので,人間そうそうなかなか上手くはいかない。その上で作品の質を上げていくにはどうしたらよいかというのは実体験を踏まえても身につまされる話

・4巻はキービジュアルコンペの話が最高であった。ここでもクリエイターの精神を尊重したい(そして青葉にも尊重するようになって欲しいと願う)八神コウと,尊敬する気持ちが上回って一歩引いちゃう青葉の関係性が,もう何とも言えず尊い。青葉がコウにけしかけられてクリエイターの挟持を身につけるシーンでもあるし,尊敬する人の凄さを再認識するシーンでもある。50話の青葉の「あぁ…凄いなぁ…」は思わず青葉にもらい泣きさせられた

・話の本筋以外でも本作は3巻以降でずいぶんと深まっていて,これについてはtoppoiさんが大いに語っているところなのでリンクを張っておこう。本当に1・2巻では単調でテンプレなキャラ造形に近かったものが,少しずつずれつつ重なっていくことでテンプレを脱し,飛躍的に引き出しが増えていっておもしろさも増していく。toppoiさんも挙げているが,ギャグ回でのハイライトは4巻の46話の肉じゃがメッセ回で,ひふみのコミュ障とコウの天然さ,りんの嫉妬心が見事にクロスした瞬間であった。ひふみが青葉やはじめ・ゆんほど年齢が離れておらず,ある程度昔のコウ・りんを知っているからこその関係性でもあるかなと。ひふみが本気でコウの鈍さに苛立っているところで一番大爆笑した。あのコウちゃんはいくらなんでもひどいw。

・5巻は本編から離れての全編書き下ろし,青葉の高校時代編。ねねっちはきらら女子大に進学するわけですが,アニメでモデルになっていた大学そのままとすると「私は入れそうなところに入る」「(選んだ理由は)近いから」という人によっては殺意の波動が生じそうなセリフを吐いているので,ある意味必見。多分,作者自身は全く考えていなかったと思われるが,「教科多い」「滑り止めの方は遠方」あたりは国立のあの大学とするとリアリティが微妙にあって怖い。



  
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2016年12月04日

「静岡大陸」と呼ばれるだけのことはある

・家から5分の金閣寺について(真顔日記)
→ 自分も割りと史跡の多い地域に長らく住んでるけど,今でも陳腐化しておらず,それなりのオーラを保っている。「ここに前田の屋敷があったんだよな」とか,「樋口一葉この辺住んでたんだよな」とか,散歩をしているとふと物思いにふける瞬間がある。これは,私が思い入れと憧れを持って住処としてここを選んだから,という影響は大きいように思う。その意味では,自分で思っていたよりも長いことこの土地への自分の思い入れが抜けない,ということに驚いてはいる。私はいつまで夢の中で生きていられるだろうか。


・ジュットランド?ジャットランド?ユトランド?(討死館)
→  なるほど。そういえばユトランドってどこから来たんじゃろ……とは思ってた。意外と受験産業だったりする可能性を指摘されて俄然興味がわいてきた。フランス東インド会社と同じオチだったりする可能性とも言える。受験産業マジで害悪だな。
→ なお,さすがに私も1979年以前にさかのぼるような古い山川の教科書は所持していません。ついでに,現在の高校世界史でユトラント沖海戦はほぼ範囲外(教科書・用語集収録対象外)で,ただし教科書の挿絵の地図や資料集には小さく名前を載せているものもある。1つ前の課程の時点ですでに範囲外になっており,範囲内だったのは少なくとも15年以上さかのぼることになる。とりあえず手元でさっと出てくる最も古い用語集(1983年版)でも用語集頻度は1で(最高は15),その当時の時点で早慶レベルのマイナー用語だったことがわかる。表記は「ユトランド」。同年度の山川の教科書(『詳説世界史』)でも「ユトランド」であった。
→ 本題自体は,半島の名前なら英語ならジャットランド,ドイツ語ならユ(ー)トラント,デンマーク語ならユーランか。あるいはドイツ語だとスカ(ー)ゲラク海峡からとっているようなので,まずそのいずれかから選ぶということになりそう。ただ,戦場を地図で見てみると,スカーゲラク海峡からは少し外側ではないか。「ユトランド」からの合わせやすさを考えるとドイツ語の「ユトラント」が最優先の候補になると思う。


・うたパス Presents あの人と音楽談 Vol. 6 振分親方(音楽ナタリー Power Push)
→ 高見盛がオタクなのは知ってたけど,曲のチョイスがあまりにも同世代のオタクすぎてここまで同族だったとは,ちょっと驚くと同時に笑ってしまった。高見盛は元々スーパーロボット大戦シリーズのファンだそうで,そこから入ってガンダムに行き,2000年頃流行ってたのはまあSeedだよな,でTMRevolutionか,ちょっとさかのぼって逆シャアからのTM NETWORK,それとは別に西川貴教とのコラボから水樹奈々,と大体予想がつく感じ。その意味で経路がよくわからないのがfripSideかな。


・こち亀:40年の長寿連載に幕 コミックス200巻で完結(まんたんウェブ)
→ 一応実家に全巻あって,1話から全部読んでいる身としては感慨深い。最近の単行本の出方とか話の展開を見ていて終わりそうとは思っていたが,本当に終わると言われるとやっぱり驚いた。しかしまあ,秋本治が執筆をやめるというわけではなくて,すでに今後の新作漫画をいろいろと考えているらしいのがすごい……『こち亀』連載期間中もMr.Cliceとかちょいちょい描いてたこともあったしなぁ。


・「JR禁止の旅」東京→大阪2016(Togetter)
→ 読み応えがあっておもしろいレポートだった。
→ 東京→小田原までは小田急線で,そこから箱根までは箱根登山鉄道がある。豊橋から先は名鉄・近鉄でゴールまで行けてしまうので楽勝(実質的に豊橋がゴール)というのはわかっていたが,間の静岡県は私としても未知のゾーンだった。こんなに苦戦するゾーンだったとは。静岡県の移動がバスだらけで,JR以外の鉄道の貧弱さがうかがいしれる。フェリーが出てきたのにも驚いたが,フェリー禁止にすると詰みはしないけど徒歩が約6km分増えるそうで。そうそう,新所原から豊橋までが徒歩とバスというのも意外だったところで,静岡は最後までとことんJR以外の公共交通機関が貧弱というのを見せつけられた感じがする。


  
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2016年12月02日

百合妄想はRPGプレイの必須スキル(大嘘)

・女同士は「百合」っていうけど(増田)
→ 思わず「薔薇」と答えたくなるものの,考えてみると「百合」がかなり広範囲を意味するのに対して,薔薇はかなり局所的になるので,非対称であるなと。薔薇の方が先であることを考えても,これはけっこうおもしろい現象かもしれない。
→ 実際問題面倒ではあるので,何か上手いこと「薔薇」と「BL」と「JUNE」と「やおい」を上手いこと統合するような概念ないですかね。しいて言えばやおいなんだろうけど,二次創作のイメージが強いので。


・ロリババアモノの類型(増田)
→ 『永遠娘』(発売日に即買いしました)を読みながら,全く同じことを考えていた。パターンがどうしても狭いので,類型化可能であるなと。
→ 基本的にどれもおいしくいただけるのですが,個人的に一番好きなのは1で一のパターン,次点で1で三のパターン。ロリババアにはやっぱり神秘的であり,かつ時間の流れで擦り切れてしまった哀愁があるとよいと思うのです。1で三だと昔愛した人の面影を子孫に感じてしまったりするのは王道だけど,王道だからのこその良さが(以下自粛)


・【株の知識ゼロ】バカが考えた株の漫画
→ 有限会社って今(ほぼ)存在してないだろwwwwwと思わずつっこんでしまったとこで降参である。これはおもしろかった。GOサインを出した三田先生は太っ腹である。まあ原作も「何言ってんだこの漫画……」ってなることあるけど。
→ ウォール街が出てくる有名なホラー映画って何かあったっけ……? と思い読んでいたら「エルム街の悪夢のことか?」とつっこまれていた。わかるか……そんなもん……! ちなみに調べてみたらエルム街の設定はオハイオ州である。


・石垣島 グリーンイグアナ捕物帳 〜食味レポートを添えて〜(デイリーポータルZ)
→ いろいろな珍しいものの味に興味があるので,これは普通に食べてみたい。ワニは昔某所で食べたことがあるが,鳥肉っぽかった。両生類やハ虫類はどれも鳥肉っぽいという話を聞くが,イグアナもそうらしい。
→ 接写の画像を見るとたしかに恐竜を連想する。こんなにいかつくてごついが,グリーンイグアナは草食なのだよなぁ。あらかじめ持っている知識と実物の乖離だ。



・主人公の性別が選べるゲーム、同性or異性どっちでプレイする? 大学生男女の多数派は……(ニコニコニュース)
→ 選べるゲームはほぼ必ず女性を選んでいると思う。ドラクエ3・4とか聖剣伝説LOMとか。なので,自分と同じ性別を選ぶ人の方が圧倒的に多いというのは,自分の感覚からすると意外な結果に思えた。
→ これはつまるところ「ゲーム中の主人公は自分自身か,意志を操作できるだけの別人か」というやつに突き当たるのだと思われる。主人公自身がそれなりに強い人格を持っていてストーリーに絡んだりするかどうかにもよるところは大きいだろうが(そうしたゲームだと性別を選べないことが多いが),自分と同じ性別を選ぶ人は割りと主人公は自分自身の分身という意識が強いのではないかと思う。
→ ひるがえって私が女性主人公を選ぶことが多いのは,第三者視点でゲームをやっているので,画面に一番映っているキャラが女性の方が単純に嬉しい。あと,パーティーも女性だけで組んだりして百合妄想するのはとても楽しい。聖剣伝説LOMなんかだと,ガチバトルの時はレディパールとして,お遊びの時はよくエレを連れ回していた。ペットはカーミラで。  
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2016年12月01日

最近読んだもの・買ったもの

・『君の名は。 Another Side:Earthbound』。本編『君の名は。』を補完する短編集。三葉の中に入った瀧くん視点の糸森の生活,テッシー視点の糸森の話,四葉視点の不審な三葉を観察する話,そして宮水父視点の過去編(二葉と出会って結婚し,二葉が死んで現在まで)。
→ どれもおもしろいが,やはり出色の出来だったのは宮水父の話で,本書のレビューでは散々言われている通り,本編のラストでそのシーンがばっさりカットされた,三葉がどうやって父親を説得したのかということを補完する話になっている。以下少々ネタバレ:あれは説得されたのではなく,宮水父が自分自身で納得したのだなと。宮水父が大学の研究者→神職→町長という謎すぎる経歴をたどったという設定がようやく生きてきた。背景となる日本神話の話が意外としっかりしていて驚いたし,確かにこれを本編に出すと違和感が強くなる。青春物にいきなり伝奇物がぶちこまれることになり,それは食合せがあまりにも悪い。それに,せっかく若年層に受けているのに,小難しい話はやはり引かれよう。それゆえばっさりカットせざるを得なかったという事情は納得がいった。それにしても,天香香背男とは。私的には『アカイイト』の印象が非常に強い神だが,知名度の割によく見るのは,やはり使いやすい神ということなのだろう
→ また,本編作中でテッシーが「腐敗の臭いがするなー」と言っていたが,実はほんの10年前までの糸水はむしろ宮水神社を頂点とする近世的な社会秩序で,これでも宮水父が町長になってから急速に近代化した(その副産物として一般的な日本の地方に存在する政治と土建の癒着も生じた),ということがわかって,本編の印象が少し変わった。
→ 一時期はどこの本屋も品切れでAmazon等も品切れの状態だったが,さすがに11月くらいから在庫が復活して入手が用意になった。本編もそうだが,こんなに売れるなど全く予想していなかったのだろう。





・『マリー・アントワネット』(惣領冬実)。
→ 『チェーザレ』の連載が止まっているのに何新しい連載始めてるんですか惣領先生,と始まったときは大いに戸惑ったが,無事短編4話で終わって安心した。一方で,この4話は,ルイ16世とマリーの結婚から打ち解けるまでという,非常に中途半端なところで終わっており,これはこれで本腰入れてもう少し読みたかった。マリーの刑死までとは言わないから,革命前夜くらいまで。
→ テーマとしては近年のルイ16世の再評価,啓蒙専制君主としての側面に焦点を当てたものだが,それこそ彼の改革意欲が描かれる前に話が終わるので,「意外と博識で悪い人物じゃなかったんだよ」アピールにしかなっていないのが,いかにも画竜点睛を欠く。一方のマリーは「彼女がなぜ孤立したか」について描かれていて,そもそも歓迎されていなかったことに加えて,フランス宮廷のガチガチのしきたり・儀式に耐えられなくなっていったところ,ルイ16世に助けられたがゆえに,かえって夫婦として孤立した,という形になっている。だからこそこちらもプチ・トリアノンが建設されて家庭生活安定する反面,社会情勢はそれを許さなくなっていくところまで描いて欲しかった。高評価するには短すぎるのが何とも惜しい作品。とはいえ,これ以上『チェーザレ』の連載が止まるのも困るしな……


・『聖☆おにいさん』13巻。
→ 聖母とはいえ一般庶民には違いないことにコンプレックスがあるマリアさんと,高貴な生まれながら「産んだけど育ててない」ことにコンプレックスがあるマーヤーさんという二人の対比がけっこうおもしろかった。なんだかんだ打ち解けていたが,確かに聖母たるもの同士,独特の悩みを共有していそうである。
→ 父さん「一発芸,Twitter」はアカンでしょwwwwww。13巻で一番笑った。
→ イエスがコーヒーの淹れ方がわからなくてひどいことになってたけど,イエスが生きていた頃にコーヒーはなかったからね。仕方ないね。原産地エチオピア自体はキリスト教圏だが,伝播の事情を鑑みるに,聖人の中ではムハンマドさんが一番うまそう(時代的に考えるとこちらもコーヒーの存在は知らないことになるが)。
→ そういえば「坊主がBOSE」という鉄板ネタ,13巻まで使ってなかったのだなというのはちょっと驚いた。意外なところにネタがまだ残っている作品である。


・『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です』7巻。表紙は知波単学園。黒森峰の出番はいつ来るのか。
→ 西住父こと西住常夫さん,この漫画で初登場どころか,漫画媒体全体で初登場か(アニメにも出ていないが)。戦闘民族西住家で唯一その血を引いてないから,まあこういう役割になるよなw
→ 確かに左衛門佐さんは今年の大河のおかげで一年中テンション高かっただろうなとw。おりょうさんと左衛門佐はそういう機会があるが,エルヴィンとカエサルは機会が少なそう。
→ 細見さんのあの髪型,この漫画ならネタにしてくると思っていた。しかしなんでまたあのデザインになったのか……  
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2016年11月30日

稀勢の里が大相撲の歴史に名を残した場所

混戦になるかに見せかけて,さらっと鶴竜が優勝した場所であった。しかし,そこに鶴竜の成長が見られるとは思う。場所の雰囲気が混戦になったらそれに巻き込まれるのは,どんな力士でも割りとある現象である。鶴竜も稀勢の里に敗れて1敗に下がった時には,そうなりそうな雰囲気があった。しかし彼は踏みとどまって,最終的には抜きん出た成績を残すことになった。「自分は自分である」として相撲が崩れなかったのは立派であり,先場所の豪栄道のような独走とはまた違った強さであると思う。見どころが序盤から中盤にかけて変遷したが,最後は全て鶴竜が持っていったというのは,何か不思議な爽快感があり,一年の締めとしてもふさわしい場所になったのではないかと思う。

一方で,ある新聞記事で「今年の優勝者は全員30代で,世代交代が今ひとつ進んでいない」という指摘があったが,実際にその傾向は年々強まっている。横綱・大関陣どころか大関取りの面々まで長らく変わり映えがなく,栃煌山と隠岐の海も30代,宝富士と魁聖も29歳で,これからの大関取りはかなり難しかろう。若手も照ノ富士こそ大関になったが,高安は今場所失敗,遠藤と逸ノ城は前頭上位で定着できておらず,大砂嵐に至ってはケガに苦しんで幕内になかなか上がってこない。これから期待が持てそうなのは正代と御嶽海くらいか。実のところ,高齢化自体は力士寿命が伸びているということで悪いことだとは思わないし,なんだかんだでニューカマーが多くて話題は尽きない印象もあるが,一方で現在の幕内上位陣の年齢層が固まりすぎていて,2・3年後くらいにごっそり交代するのではないかという心配は割りとある。


個別評。鶴竜は飛び抜けて強かったという印象はないが,安定感はあった。そして,白鵬と日馬富士の次の実力者となると,やはり鶴竜が出てくるのであり,横綱という地位は伊達ではないというところを見せてもらった。あとはやはり,前述の通り,場所の雰囲気に流されず崩れなかった安定感は賞賛に値しよう。そういえば前に二度目の優勝をした時「自分は自分である」みたいなことを本人が言っていなかったか。白鵬はあからさまに相撲勘を失っていた相撲が多く,詰めの甘さが目立った。もう一歩踏み出すことは容易にできたのに踏み出さなかったせいで逆転負けを食らった相撲が遠藤戦と稀勢の里戦であり,この2敗でやる気を失ったようにも見えた。休場明けの試運転という意識が本人にもあったのかもしれない。今までよりも負けた後の表情が悔しそうではなく,落ち着いていたようにも見えた。日馬富士は,実は12日目に稀勢の里に負けて2敗目を喫するまで,優勝は固いと思っていた。あの相撲については稀勢の里が会心の相撲だったとしか言いようがないが,14日目の白鵬戦で負けたのは日馬富士側のスタミナ切れと言わざるをえない。

大関陣。稀勢の里は史上初の優勝なしの年間最多勝おめでとうございます。年間6場所制以後で初というのもさることながら,朝青龍と白鵬以外の最多勝は15年ぶり,日本人としては平成10年の若乃花以来18年ぶり,大関の最多勝は霧島以来25年ぶり,大関の最多勝自体が若嶋津・霧島に続く3人目という珍記録である。ほんとお前どうなんってんだよ。3横綱撃破後の13日目に栃ノ心戦は嫌な予感がしていたが,本当に負けるとは。ただまあ,あの一番について言えば栃ノ心の出来も良かった。そうそう,今場所の稀勢の里は,上半期のアルカイックスマイルでも,それ以前の無表情でもなく,何かを諦めたような悲しげで悟った表情だったのがとても印象的だった。彼自身,琴奨菊も豪栄道も優勝し,綱取り場所が途切れて思うところがあったのだろうか。

豪栄道は先場所ほどの好調さは無かったが,それ以前の8勝と負け越しを繰り返す相撲でもなく,まずまず悪くなかったように思う。星が9勝というのは意外ですらあり,平幕には全く落としていない。窮地の首投げも少なかった。照ノ富士は初日から2連敗した時には陥落かと思われたが,その後復調した。先場所までは組み方にあまりこだわりがなく,結果として外四つになって耐えられなくなって負けるというパターンが頻発していたが,今場所の照ノ富士は右でも左でもいいからまともな四つになろうという意識が見られ,それが勝ち越しの要因であろう。終盤再失速して8勝に終わったのは悲しい。琴奨菊はノーコメント。カド番がんばって。

三役。高安は,広い意味でのスタミナ切れではないかと。緊張の糸と言ったほうがよいか。人間半年も張り詰めているのは難しく,だからこそ大関取りの要件は「3場所」なのだろうけど。その意味で北の富士が「地力不足」と評していたのは正しい。その中で何とか7勝にまとめたのは,好材料ですらあるのかもしれない。先場所に「調子の波の変動が激しい人だが,何とか来場所まで持つか。」と書いたが,やっぱり持たなかった。御嶽海は上位挑戦二度目の場所だが,やはりまだまだ。玉鷲は突きの威力が異常に強かったが,前兆は先場所にもあって突発的な現象でもない。上位陣は対策をとってくるであろうし,大関取りまでは無理だろうが,まだしばらく楽しませてくれそう。

前頭上位。碧山はちょっと動きが重かった。太ったかな。遠藤は勝ち越せそうだったのに負け越してしまった。稀勢の里と白鵬を倒しておいて負け越しもなかろう……。しかし振り返ってみると,何かが致命的に欠けててどうにもならないというよりは,いろいろと足りないという様相なので,来場所で修正が効きそうな気も。正代は遠藤の後に出てきた世代(琴勇輝・御嶽海・錦木・輝)では完全に頭一つ抜けたか。何というか,頭のいい相撲を取っていて,その意味では鶴竜あたりに近いのかもしれない。琴勇輝は研究されていて,一時期に比べると相手にかわされているようにも見える。

前頭中盤。熱狂的なおじさんファンのいる栃ノ心は稀勢の里に勝ったのが今場所の全てです。貴方はよく頑張った。豪風は引き技の切れ味がすごかった。これはこれで1つの技術である。ところで,尾車親方がNHK解説に来るたびに「豪風には頭が下がる思い」と言っていて,もう何度も頭が下がっているので最近笑ってしまうようになってきた。それだけ親方が信頼しているというのはわかっているのだけれど。輝は先場所修正されたかに見えた相撲が元に戻っていて,相撲が縮こまっていた。腰も高い。荒鷲と千代翔馬は遠目から見ると本当によく似ていて,しかもどっちも取り口が技重視でよく似ているので余計に見分けが。荒鷲は右四つで左上手が生命線,千代翔馬は左四つで左下手が生命線という違いがある。あと荒鷲は実はスロー出世で現在30歳だが,千代翔馬はまだ25歳である。

前頭下位。新入幕の北勝富士は勝ち越し。突き押しがここまで通じているが,中盤に上がってどうなるか。逸ノ城はかなり痩せたが,不自然に痩せたため同時にパワーも失っていた。鍛え直しである。最後に石浦。低い重心と機敏な動きで,里山に近いというべきか嘉風に近いというべきか。特異な動きであるので周囲がまだ慣れておらず,勝ち星を稼いだところはあると思う。対策を立てられる来場所に真価が図られることになるだろうとはいえ,ひとまず今場所の10勝は見事であり,また見ていておもしろかった。今場所の17時より前の取組で,見ていておもしろかったのは石浦と千代翔馬・荒鷲であった。

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2016年11月28日

「ロボットは東大に入れるか」成果報告会 in 2016(11/14)レポート

昨年のものはこちら。また,朝日新聞によるまとめ・結果一覧はこちら。

以下は聴講の記録だが,大部分は昨年と解法などが変わらないため,文章短縮化のため変わらない部分は「昨年と同じ」と同じとして省略するのでご了承願いたい。

昨年はマーク模試・東大模試ともに駿台・ベネッセのものであったが,今年はマーク模試がベネッセ,東大模試が代ゼミのものになった。東大模試は一昨年まで代ゼミのものだったので,出戻りになった形になる。私自身風の噂で聞いただけなので話半分として書くが,駿台とは何やら揉めたらしく,代ゼミに戻ってきたそうだ。まあ,そもそも駿台の東大実戦は配点がおかしいので,河合の東大オープンか代ゼミの東大プレを使うのが無難ではあろう。


[解法についての教科全般の話]
・例によって,OCRで直接文章を読み取って東ロボくんに流し込む,というのは未実装。ほとんどの科目は問題文をXMLに書き下すところまでは人力。ただし,数学のみMathMLとせず,テキストデータの状態のまま解答まで全て人工知能だけで行う“完全自動化”に成功したそうだ。

[総評]
・リンク先の朝日新聞にあるが,消えた時のために転機しておくと,マーク模試は950点中525点,900点満点に換算すると517点。偏差値だと57.1という成績が出る。昨年の偏差値が57.8なので,やや下がっている。ただし,これは東ロボくんの武器であり,昨年は152/200(偏差値64.0と65.8)を叩き出した数学2つが今回は不調で,129/200(偏差値57.8と55.5)であった影響が大きい。にもかかわらず総合偏差値が0.7しか下がっていないのは,他の科目が若干ではあるがそれぞれ偏差値が伸びているためで,一応研究が進展しなかったというわけではない。
・結果的に英語・国語・世界史という一般的な私大文系の受験型(3教科)に絞ると偏差値は55を超え,これは法政大学や関西大学なら,学部学科によってはA判定が出るラインになる。……ただ,ご存じの方はご存じの通り,関関同立MARCHの中で関西大学と法政大学は一番入りやすいところなので,これをもって「関関同立MARCHに受かるようになった」というのはかなり無理があり,語弊があるようにも。各マスコミの報道を見ると,すっかり「難関私大にも届いた」のようなことが書いているが,実際のところ関関同立MARCHは大学・学部により偏差値帯が大きく異なり56〜64くらいまで含むので……
・ところで英語・国語の偏差値が50前後で,社会科の偏差値だけ65オーバーというのは,私大文系の浪人生の5月頃の成績で非常によく見るパターンで,要するに直前期に社会科の知識は叩き込むので急激に偏差値が伸びるが,英語・国語の地力不足はごまかせていないという奴である。こういう子は血反吐を吐きながら英語と国語の成績を伸ばして早稲田に手がかかるか,結局最後まで社会科だけを武器に不安定に戦ってMARCHのどこか(下手したら日東駒専)に落ち着くかのいずれかになる。
・東ロボくんの東大模試の成績は文系数学が46/80(偏差値68.1),理系数学が80/120(偏差値76.2),世界史が16/60(偏差値51.8)であった(他科目は未受験)。数学の成績は伸びていてしかも抜群であるが,世界史は昨年とほぼ変わっておらず,ほぼ平均点である。


[東ロボ手くん]
デンソーウェーブが開発した,代筆機械。ただし,ぶっちゃけて言うと電王手くんシリーズの技術の応用であり,そう目新しさはない。とはいえ,手にボールペンを持ってきっちり文字も数字もアルファベットも書けているのはなかなかすごかった。これで東大模試はちゃんと解答用紙に記述できるようになった,とデンソーウェーブの技術者は誇らしげであったが,代ゼミの担当者からは「東大は本試も模試も解答は鉛筆またはシャーペンのみという規定があるが,東ロボくんは筆圧の関係でボールペンしか使えないので,実際0点では?」と辛辣なツッコミを受けていた。来年度の東ロボ手くんには,シャーペンを持てるようになっていることを期待しよう。ちなみに,字はかなり上手いものの,書き順はめちゃくちゃである。書き順を守ると字がひどく下手になるのだと思うが,これは左利きの私自身書き順滅べと思っていることを書き添えておく(漢字の書き順は右利きが書きやすいようになっている)。


[英語(筆記)・リスニング]
・基本的な解法は昨年までと同じ。今年は文法・熟語・構文(第2・3問)の分野を強化した。母体となるテキストデータを約50倍に増やし,3300万文から19億文(10億語から500億語)に増やし,そこを検索して問われている構文と同じ(または極めて似ている)文を探し出して正解を当てはめるので,増やせば増やすほど有利になると考えた。実際に500億語まで増やすとかなり精度は高くなり,第2・3問の正答率は大幅に向上した。
・にもかかわらず点数・偏差値ともに昨年からほとんど伸びていないのは他の大問で苦戦したからで,運にも見放されて全く点数が取れなかった。第4問以降が昨年並の正答率だったなら120点程度にはなっていたようで,であれば偏差値は60台に載っていたかもしれない。
・会話文の空欄補充や,第4問以降の長文読解の分野はまだ苦手である。発表者の推測によると,これらの分野の攻略にはまだまだ母体のテキストデータが足りず,500億語ではなく500億文(1兆語オーバー)が必要になるのではないか,しかも単調な文ではなくあらゆる文法や構文が入っている複雑で高品質な文章の,と話していた。しかし,そうなるともう膨大なデータを持ってそうなGoogleさんしか取り組みようがない分野なのでは……私見だが,会話文・長文はもう別の手法で取り掛かるしかないように思う。
・というかGoogleさんがSATやSATの科目テストに挑んでアイビーリーグ合格水準を叩き出したらすごくおもしろいと思うのだが,そういう研究はやってないのだろうか。
・また,今年はディープラーニングを導入してみたが,全く上手くいかなかったという。ついでに書いておく。東ロボくんに対する反応として,「人工知能の研究であるのにディープラーニングを頑なに使わないのはなぜか」というものをたまに見るが,使わないのではなく使えないのだそうだ。ディープラーニングは成績向上には全く結びつかなかった。


[国語(現代文・古文)]
・いろいろ解法を工夫した結果,選択肢を2つまで絞り込むことまではできるようになったという12月くらいの受験生みたいなことを言っていた。しかも評論が得意で小説と古文が苦手である。身に覚えのある読者の方も多いのでは。
・古文はようやく本格的に取り掛かった。解法は現代文と同じで,現代語訳して,訳があってればそれで行けるだろうという予測だったようだが,現代文の小説が今ひとつ解けていないのにそれで解けると思う方が間違いであると思う。結果は割りとひどい16/50で,特に現代語訳問題は3問全て落としたとのこと。おい現代語訳の精度。
・漢文は未実装。まあ古文がようやく本格参戦したところではあるので。
・思うに,入試に出る古文・漢文のバリエーションなんて大したことないので,英語で50億文のテキストデータをインストールなんてできるんだったら,古文・漢文もよく出る文の本文と現代語訳を全てインストールしておけばけっこう攻略できてしまうのでは? それで50億文も行くまいし……と私がここで思いつくことはやっていないはずがないので,多分やって何かしらの理由でダメだったのだろう。
・なお,ここでもディープラーニングは明らかに向かないので試しすらしなかった,と語られていた。


[物理]
・解き方を昨年と大きく変えた(というよりも研究者が変わった)。昨年まではシミュレーションを動かして,実験結果から解答を出すという手法だったが,入試問題で必要になるシミュレーションが意外と複雑で,挫折していた。そこで,問題文を読解する過程で無理やり数学的な問題になるように人工知能に読解させた上で,限量記号消去(QE)で解答を出すという戦法に変えた。数学の分野では上手く行っているからという意味では正しい発想だが,まーたQEかという笑いが思わず。
・結果としてはこれが上手くいって,昨年までは偏差値40前後だったのが,今年は偏差値59.0まで伸びた。今後の課題は,どうがんばっても数学の問題に変換できない類の問題だそうで。


[数学]
・解法は今までと同じだが,自然言語処理をほぼ完全に自動化した点が新しい。これについて,研究者陣営は「比較的容易」と考えていたようだが,やってみると意外と困難だったという。自然言語の「一見して複数の意味に取れる曖昧さ」が苦戦の理由で,たとえば「また」とくるとその前後がつながっている並列なのか,それとも完全な話題の転換なのか,人間ならどちらかぱっとわかるが,人工知能が人間の手を借りずに判断するのは非常に困難であったようだ。それでも何とか完全自動化したのは大きな成果だろう。やっと「人工知能が入試問題を解いてると言っても,入試問題を人工知能が読解できるところまで書き換える作業は人間の手が入っているじゃないか」と謗られなくても済むようになった(数学だけだが)。
・あとはQEソルバーの高速化などを行ったが,マーク模試の方は相性もあって苦戦した。東大模試の方は成績が向上し,好成績を残した。こと数学の筆記試験限定ならば人間の受験生の最高峰レベルまで到達したと言ってよい。人間の受験生で東大型の理系数学で80/120を取れるようなやつは理傾膤糞蕕砲靴いない。


[世界史]
・マーク模試の方はほぼ改良なし。成績は80/100前後で安定し,これ以上の改良は難しいようだ。
・東大型の二次試験の方も,基本的な解法は昨年と同じ。第1・2問の論述問題は,指定語句や問題文を頼りに教科書や用語集・Wikipedia等から該当する文を抜粋し,指定字数に至るまで解答に挿入した。ただし,今回は前回と違って単純に抜粋するのではなく,問題文もちゃんと読んでテーマを探ったり(第1問),あらかじめ用語集の項目をラベル付した上で,問題文の要求もラベル付してラベル同士が一致した項目の説明文を出力するようにする等(第2問),解法のレベルアップが図られた。
・結果的に点数は伸びていないものの,解答のそれっぽさは上がり,若干なり人間に近い解答に見えるようになった。ただし,それでも時系列や地理的な配置がぐちゃぐちゃで,例えば「ユスティニアヌスがミラノ勅令を発布した」という文の後に「中国では五胡十六国の時代になった」という文が入り,その後にまた「ユスティニアヌスがミラノ勅令を発布した」という全く同じ文が入るという,ツッコミどころしか無い文章構成になっている。お前は健忘症か。また,「ゾロアスター教を国教と定め,突厥と結んでエフタルを滅ぼした。」という一見して正しい歴史的事実を述べているように見える文だが,ササン朝という主語が無いために非文になっていて加点されないというようなミスも散見された。結果的に点数・偏差値は昨年の東大模試から全く伸びていない。
・これは要するに,人工知能はある程度問題文の要求するところを(見せかけ上)理解できるようになっているが,東大の問題文が要求するような細かいニュアンスは当然読み取れておらず,本質的な歴史的理解があるわけでもないので,結果的に問題文の意味を全く取れないまま解いているのとさして変わりない点数にしかならないということである。逆に言って,東大の問題文のようなめんどくさいものではなく,単純な論述問題であれば,精度は昨年に比べて向上しているのではなかろうか。昨年は東大以外の論述問題にもチャレンジしていたが(そして昨年の段階でかなり解けていた),今年は無かったので比較できず残念である。
・第3問のクイズ問題も,問題文からどんな種類のもの(人名・国名・宗教名・事件名・建物名等)が問われているのかを判断させてから,解答を出力させた。ここは人工知能の得意分野に思われたが,東ロボくんにインストールされている教科書や用語集が古く,新課程に対応していないため新課程で重要度が上がった単語を解答できないという思わぬトラップに引っかかって,点数が伸びなかった。また,問題文がひねられていると解答が難しく,例えば「魏の文帝の父親は誰か」と問題の東ロボくんは「曹丕」である(曹丕は「魏の文帝」であるから誤り,正解は曹操)。問題文の意味を理解して解いているわけではないので,この程度のひねりであっさり引っかかるのである。前に私は「東ロボくんは早慶上智の世界史の方が得意なのでは」と書いたが,撤回します。早慶上智の世界史はこんなやわなひねり方はしません。
・ただまあ,代ゼミの講師の講評によると,「受験生の解答も,たとえば曹操の問題だったら「曹丕」がやはり多かった。第3問の他の問題を見ても,人間の受験生の誤答と東ロボくんの誤答は酷似している」そうで,まあそうだろうなと私の実感としても思う。国語といい世界史といい,人工知能が人間に似ているというよりは人間が人工知能のような思考しかできていないのではと思わせられたわけだが,これは東ロボくんプロジェクトに携わる研究者の側も同じことに気づいたようで,これが[今後の東ロボくんプロジェクトについて]に続く。
・しかし,新課程に対応していないせいで点数が伸びなかったのは人工知能のせいというよりもデータ提供元の山川出版社の責任では。おそらく無料で提供していると思われるし,虎の子のデータなので万が一の流出を考えると最新の教科書・用語集のテキストデータは提供したくないのだろうけど。


[今後の東ロボくんプロジェクトについて]
・巷に流れている情報が錯綜していて,明らかな勘違いも流れているので,ここで整理しておく。
・東ロボくんプロジェクトの目標であった2022年までの東大合格は断念する。正確に言えば,英語・国語・物理・日本史等は,人工知能自体にそれこそシンギュラリティ(技術的特異点)が来るようなレベルの大規模な進歩がない限り,点数が大きくは伸びないこと,そしてそれがすぐには来ないことが予測されるので,一度挑戦を凍結し,来るべきときが来たら再開する。ある程度結果が出ている数学と世界史は研究を継続し,むしろ現行の人工知能の範囲でどこまで人間の受験生を超えられるのかに挑む,またそこからの産業への応用を目指すそうだ。
そもそもこのプロジェクトは「現行の人工知能の自然言語処理における可能なことと限界を探る」ことが本質的な目的であり,東大合格は「可能か不可能かすら全くわからない」目標として掲げたものだった。そこで偏差値55程度の学力で東大はまず無理という「限界」が示せたから,目的は達せられたという。最初から東ロボくんプロジェクトをウォッチしている私自身も証言するが,この目的は東大合格に失敗したから突然出てきたものではなく,初年度の成果発表会からずっと出ていたものだ。東大合格を諦めたからといってプロジェクトが失敗だったと見なすのは,それこそ“その人の読解力不足”でしかない。
・そして東大入試挑戦の本体を凍結してどうするかというと,前述の通り,「人工知能は問題文の意味を理解して問題を解いているわけでは決してないのに,ほとんどの教科で偏差値50を超えてしまったのはどういうことか」という点や,国語や世界史といった文系分野では人工知能と人間の解法・解答が極めて似通うという点から,むしろ人間の受験生が問題文の意味を理解しないままに問題を解いているのではないかという疑問点にたどり着いた。
・そこで基礎的な読解力を測ることに特化した「リーディング・スキル・テスト」を開発し,15000人の中高生を対象に実施したところ,無残な結果であった。これについてはここにまとめると非常に長くなるので,問題とそれぞれの正答率がNIIの方で公開されているので(pdf注意),そちらを参照してほしい。まあ,成績にかかわらないテストであるので生徒の側のやる気がなく,適当に解答した輩がそれなりに紛れ込んでいた結果として正答率が低いという可能性も否めないが,それにしても確かに低い。宗教の問題の間違え方何かは明らかに人工知能っぽい間違え方である。とりわけやる気のわかない状況では人間の側が人工知能っぽい思考になりがち(キーワードを拾った斜め読み)というのは,案外コロンブスの卵なのではないかと私は思う。
・人工知能の進化が予測されるからこそ,人工知能が苦手な分野の読解力を人間は磨くべきではないか。あるいは人間の読解力の本質を調べていくことで,人工知能の進化に貢献できるのではないか。というわけで,このプロジェクトは今後「リーディング・スキル・テスト」のさらなる開発とその結果を用いた研究にシフトしていくようだ。

  
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2016年11月26日

16年間で100本は密度が高すぎないか

・「シン・ゴジラ」での政府の意思決定プロセスについて書いてみた(ツイッターに書ききれない長文を書くブログ)
→ 内閣府防災の中の人による『シン・ゴジラ』解説。『シン・ゴジラ』は石破茂氏など様々なリアルサイドからの言及があるが,ある意味これが一番貴重かも。


・英BBCが「21世紀の最も偉大な映画 TOP100」を発表(amass )
→ 21世紀と言いつつ2000年含みである。この中で見たことがあるのは意外と少なかった。『戦場のピアニスト』『A.I.』『ブロークバック・マウンテン』『ロスト・イン・トランスレーション』『グランド・ブタペスト・ホテル』『千と千尋の神隠し』『マルホランド・ドライブ』で全部だろうか。『善き人のためのソナタ』と『アクト・オブ・キリング』はいつか見るリストに入っている。
→ 1位が『マルホランド・ドライブ』は私も好きな映画だけど,さすがにひねくれ過ぎではw私の感想はこれ)。そこがBBCのセンスと言われればその通りなんだろうけど。あとは『グランド・ブタペスト・ホテル』『ブロークバック・マウンテン』『戦場のピアニスト』は確かに非常に面白かった。『ロスト・イン・トランスレーション』は微妙というか,あれがおもしろいというのは若干オリエンタリズムが入っているような気がしないでもない。ある意味リアルな東京の風景ではあったが。『千と千尋の神隠し』はおもしろいとは思うけど,これらの映画と同じ尺度でランキング付する感覚が私の中にないのでノーコメントとしたい。『A.I.』だけは納得行っていない。あれはスピルバーグ監督作品の中では微妙では。


・ブルキニ禁止、仏国務院が凍結判断「基本的自由を侵害」(朝日新聞)
→ さすがに司法はまともな判断をした。
→ フランスは政教分離と多文化共生を両立させたいなら,そろそろ「宗教的標章」とはなんぞやという問題に,まじめに社会的に取り組むべきではないか。他の宗教の信徒がそれを身につけた時に,宗教的意味合いを持つか否かという点はやはり重視されよう。その意味で,ブルカやブルキニが「宗教的標章」というのはかなり無理があろう。顔面を全て覆うタイプのブルカが,コンビニにフルフェイスのヘルメットで入ってくるバイク乗りと同じ理屈で咎められるのはまだわかるが,それ単体で見れば“ただの頭巾”であるので,十字架のアクセサリー等よりもよほど宗教的な標章ではないだろう。ブルキニとて身体を全面的に覆っているだけであり,ムスリム以外の女性の需要もあるとのことで,宗教的に咎められる筋合いは無い。


・PCデポ 高額解除料問題 大炎上の経緯とその背景(Yahooニュース)
→ 今時これだけアコギな商売をして,よく炎上しないと思っていたなと思った。これまで炎上しなかったのも不思議ではあるが,それだけ「ねらい」が良かったということだろうか。店側の対応が悪手すぎたのも気にかかるところで,今時悪質なクレーマーではない人をクレーマー扱いしたら爆発炎上するのは当然であるし,アコギな商売である自覚があれば,今回の案件が悪質なクレーマーによるものではないことくらいすぐにわかりそうなものだが。仮にアコギな商売である自覚が無かったのだとすると,会社全体で感覚が麻痺しているし,余計にどうしようもない。


・「まず、根性論を捨てる」日本柔道復活を成し遂げた、井上康生流「大改革」そのすべて(賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社])
→ 五輪の時の柔道は良い話が多かった。ようやく脱根性論世代が指導者層になり始めた,その幸先の良いニュースであるかもしれない。世代交代が進むうちに,いろいろな分野・業界でも悪しき風習は廃れていって欲しい。  
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2016年11月21日

8月末の五輪関係あれこれ

・表彰台での勇気ある行為が原因で、母国で生涯を通して除け者扱いされ続けたオリンピックの銀メダリスト(イミシン)
→ 美談ではなく,オーストラリア政府の対応が醜すぎる一件と言ったほうがよいと思う。非政治的なことが建前になっているオリンピックではあるから,いかに正義のある行為といえども罰せられるのは仕方がないとしても,一人のアスリートの人生を丸々つぶすのは重すぎる。しかもその後,オーストラリアが多文化主義に舵を切る中でこれを放置し続けたのは,明らかに国家のメンツをつぶされたことに対する報復であろう。2006年に亡くなったのに国家の謝罪が2012年というのは,シドニー五輪が2000年,サン・ノゼ州立大学の銅像が2005年ということを考えても遅すぎる。
→ なお,サン・ノゼ州立大学の銅像にノーマン氏の姿が無いのは,本人の希望によるとのこと。次の記事を参照。
・オリンピックに斬り込んだブラックパワー:1968年メキシコオリンピックで米国の人種差別に抗議して黒い拳を揚げたジョン・カーロス(アフリカンアメリカン・フォーカスブログ篇)


・女を否定され、競技人生を絶たれたアスリート 性を決めるのは性器かホルモンか?(BuzzFeed)
→ 出てきた人たちの中で,南アフリカのキャスター・セメンヤ選手だけは当時の報道で見た覚えがある。
→ 性器の外形・染色体・ホルモンのいずれでも決定的には確定できないのであれば,どれか1つに絞るのではなくて,総合的に判断するしかないのでは(そもそも外形のチェックは記事中にもあるように過剰なプライバシーの侵害になるので極力やるべきではない)。
→ 少なくともテストステロン値だけによる区別は本質的ではないと思われる。記事中に「テストステロンの値が高いことが競技に有利だというなら、背が高いことや肺活量が大きいのはどうなのか。」とある通りで,男性に近いというよりも単純に個人的な特徴の範囲ではないかと思う。しかも,意図的にテストステロンを増加させるドーピングもあることを考えると,これを性別の検査に使うのはますます危ういと思う。



→ 五輪関係のゴタゴタを一切忘れて横に置いておくなら,このプレゼンテーション自体の出来はすごく良かったと思う。高層建築の建つ現代都市・技術立国(工業国)・伝統ある国・アニメや漫画というコンテンツという,実態はともかく世界が抱く日本・東京のイメージを上手くすくった形である。RIOからのMARIO,ドラえもんが地底探検車ならぬ土管,そして安倍さんご本人がマリオのコスプレをして会場に登場という流れは,これらの要素をつなげていて上手かった。
→ 招致の時のムービーといい,五輪関係のアピールだけはけっこう高得点で,なぜこれが他の分野で発揮できないのかというと,まあやっぱり利権が絡むと人間おかしくなるのだろうなと。もしくは,これは椎名林檎他すごい人選で,他の分野は人材不足ということなのかも,と考えると余計に悲しくなるのでやめよう。
→ パラリンピックの方も負けじ劣らず良い映像なので是非。  
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