2006年04月04日

第53回「ローマ人の物語10 全ての道はローマに通ず」塩野七生著 新潮社

今回は少々異色で、どこかの年代を扱った政治史ではない。ローマのインフラについて述べた本である。このタイミングでこの本を著したのは、11巻からはローマ衰亡史であるために、けしてなくなるわけでは無いが、新規の建築物が少なくなるからであろう。

この巻で著者が強調していたのは、インフラは経済が発展しているから行うのではなく、経済を発展させるために行うものである、ということだ。何せローマのインフラ建築は、ポエニ戦争前、まだローマが地中海の覇権はおろか、イタリア半島の覇権も保持していたか時代から始まっているのである。そしてもう一つの主張は、いかに堅固な建築物といえど、メンテナンスすることを忘れたとき文明は滅びる、ということ。

この本を読んで痛感したのは、やはり中世は暗黒だったということだ。メンテナンスさえし続ければ、現代までつかえる技術水準のものを。必要性への無知とはかほどに恐ろしいものか。ヨーロッパが、いや、世界が紀元2世紀のローマ帝国のインフラ建築の技術水準を取り戻すのは、実に17世紀以降である。ローマインフラの最高峰、網の目のようなローマ街道の規模にいたっては19世紀になっても追いついたか少々怪しい。現代に近いことを先進的というなら、ローマ人の公共意識は非常に先進的だったといえる。

ローマ人の物語にしてはカラー図版も多く読みやすかった。といっても、9巻まで全て読んでいることが前提であるかのように書かれているので、そういう意味では今まで通り、読みづらいのだが。単に古代ローマの通史を追いたいだけなら、パスしてしまってもかまわないだろう。


ローマ人の物語〈10〉― すべての道はローマに通ず



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