2006年04月15日

第55回「モンテ・クリスト伯」アレクサンドル・デュマ著 中野義雄訳 岩波文庫

(旧題 日本でアニメ化されてたりする)

モンテ・クリスト伯を読み終えた。内容を知らない人も多いと思うので軽く説明しておこう。19世紀初頭のマルセイユで船乗りをやっていた主人公だったが、有能で美人の婚約者もいたためにねたまれ、無実に近い罪(実は完全に無実というわけではないのだけれど)で政治犯とされ、終身刑になってしまう。投獄先の島で一人の物知りな老人と出会う。彼もまた無実の罪で投獄されていた。老人は主人公に様々な知識を教え、最後に巨万の隠し財産のありかを教える。老人は死んだが、主人公は脱獄に成功。隠し財産を手に入れ伯爵位をイタリアで購入。モンテ・クリスト伯(キリストの山という意味)と名乗り、パリの社交界入り。自分を蹴落としたことで地位を築き上げた人々に対して復讐を誓うのだった……


感想の第一声として、果てしなく長かった。上の要約もかなりばっさり落としたのだが、それでもあれが限界だ。400P×7巻で、読了に半年はかかっている。よくもこれだけ壮大なストーリーが書けたものだと思う。正直冗長だと思うが、技量が無くて冗長なのではなくてわざと引き伸ばしているのだということを読者に悟らせられる辺り、作家の才能をうかがい知れる。henriが言っていたが、当時の小説は新聞連載だったのでうまく引き伸ばす必要があったようだ。

この引き伸ばしの技法は、モンテ・クリスト伯の場合情景描写に当てられる。特に舞台がローマやパリの社交界なので 新聞を読むような層にとっては憧憬の的だったのだろう。これは当時の社会に興味のある現代人にとってもそうで、なかなか興味深かった。本筋とはほとんど関係無いので、斜め読みでも支障ないのがありがたい。

ストーリーの筋自体は割と単調で、伏線がどこでどのように回収されるか誰でもすぐに気づくだろう。だがこの小説は探偵小説ではないのでそんなことはどうでもいい。どちらかというと、人物の行動に不自然さが感じられないにもかかわらず、まるで簡単なパズルを埋めていくかのような手軽さで、伯爵の復讐が次々に決まっていくそのシナリオ運びに脱帽する。おそらく連載期間が長かったこともあって、複雑なシナリオを組むよりもそのリアリティにこだわったのだろう。

基本的に伯爵の復讐に正義があって、悪役が完全に悪いのだが、こうも考えられる。主人公は14年間を棒に振った怪我の功名で巨万の富を得たのだから、復讐の必要は無いのではないか、と。そう思わせるのもデュマの狙いのようで、一見すると伯爵はパリの社交界をけっこう楽しそうに生活をしていて、復讐は片手間にやっているところがある。判断は読者任せといったところだろうか。

知識はまっさらでも読めるが、フランス革命から第二帝政くらいまでのフランス史をそこそこ知っているとさらにおもしろい。時間があれば、お勧め。


モンテ・クリスト伯〈1〉


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