2011年08月19日

『東方コミュニティ白書2011』覚書(1) pp.1〜56

本書は序文にある通り,「記録に残っていない記憶の歴史」については他者に譲り,あくまで記録・データの面からの東方コミュニティを分析したものである。そしてこの記事はあえてデータを中心にまとめたという本書の意図を出来る限り汲み,本書の内容についての覚書・注釈としての機能を果たすことを目標として書いた。また「記憶の歴史」としても補完できれば良いと思う。よって,できれば手元に本書を置きつつ読んでもらいたい。一応,なくても何を言ってるかはおおよそわかるように書いたつもりではあるが。先に総評を述べておくと,今回の結論は「拡大から成熟へ」ではないかと思った。

2010年度版(1)後半の(2)。一部にこちらからの変化を取り扱うので,先にこちらを読んでおいてもらえると幸いである。



p.8
永夜抄から風神録から丸2年空いたのと同様に(花映塚は一応正規ナンバーだが),2009〜2011年も正規ナンバー発売に2年を要した。この間に出たのが12.3弾の非想天則,12.5弾のダブルスポイラー,12.8弾の妖精大戦争の3本で,神主自身が細かく刻みすぎと言っていたように,東方projectとしては異例の事態である。もっとも,永夜抄から風神録の間では東方コミュニティの拡大が止まり,それが第一次東方ブームと第二次東方ブームを隔てる壁となったわけだが,今回の場合は細かく刻んでいる間でもコミュニティの膨張は全く止まらなかった。むしろ第二次東方ブームはそのまま「バブル」へと続き,実のところ神霊廟という正規ナンバーが出た最近になってようやくバブルは脱したかなと言える段階に入った。この「落ち着き」に関しては本書も数字として後段で触れているので,私もそちらで触れたい。


p.10
おそらく東方ファン兼K-1好き兼ニコマスクラスタは非常に少ないと思うので,自分が触れねばなるまい。選曲については本書にある通りで,知名度を高いものを選びつつ細部はきちんと凝っている。今回は本人は格闘技の練習に専念したため,ダンスはバックダンサーズが中心となった。バックダンサーズこと「応援する幻想郷の皆さん」はニコニコ大百科に詳しく,おおよそ全員中の人が判明している。決勝の「魔理沙は大事なモノを」のダンスは,アイドルマスターMADのものであり,つまりアイマスのダンスが下地になっている。以下に入場シーン,比較,しーなPのMADを貼っておく。




また,本書にもある通り,神主は自演乙に対して一回戦勝利を条件にコスプレ許可を出すという粋な行為をしたが,自演乙は優勝という結果をもって返した。本書では軽く流されているがこれはK-1 MAXでは現時点で日本最強ということであり,そうとうな快挙である。また,自演乙は今回東方を選んだことについては「東方ならば版権取りやすいから」と答えていた。さらに,自演乙とは直接関係ないが,勝利後の記事にて思いっきり『東方見聞録』と紹介され,さらに神主が東方の扱いになれないメディアを茶化すというオチまでついた。


p.12
>派生キャラ
のうかりんはガ板出身だがpixivで大繁殖したし,みとりはVIP板出身だがニコニコ動画で知名度を上げた。双方とも2ch出身で成長したのは他の場所という点で共通する。のうかりんに至ってはpixivに移住した後,容姿がゆっくりから本来の幽香に戻っていき,もはや別物であるとも言える。「ゆっくり化」はかなり多くの東方キャラで進んでおり,霊夢・魔理沙以外では「うー☆」ことゆっくりレミリアあたりは,割と市民権を得ているような気がする。この発展には多分に『うみねこのなく頃に』やアイドルマスターがかかわっている(『うみねこ』には「うーうー」,アイマスには「うっうー」と言うキャラがいる)。

先ほどの自演乙のダンスもそうだが,pixivやニコニコが絡んだ結果として東方世界が大きく広がると言え,隣接ジャンルとも絡みが生じやすい。ニコニコ動画上であればMMDの発展等も無視できない要素だろう。また以前であれば叩かれる一方であったこれらのコミュニティも落ち着いて界隈になじんできたとも言えるだろう。ゆっくりの起源についてはガチで誰もわからない。東方コミュニティ最大の謎である。発見できた人にはイグノーベル賞を進呈したいくらい。


pp.16-19
>東方二次創作の書店委託
秋葉原に限った話かもしれないが,委託された物を陳列するセンスについてはメロブが最も良い。ちゃんと市場調査をしているのだろう,また「メロブ積み」を行う上で赤字にならぬよう綿密な調査が必要なのかもしれない。いずれにせよ売れ線を見抜く力は抜きん出ていると思う。虎は数は多いが雑多で探しづらいものの,マイナーどころまでちゃんと置いてあるのはとらのあなである。ホワキャンは昔東方専売的雰囲気があって活用できたのだが,近年はメロブや虎も十分すぎる品揃えであるがゆえに特権的地位を失った。最近は全く活用してない。このように店,地方の店舗ごとの差などをまとめて「◯◯県ではどこが一番買いやすい」をまとめて発表したらその人は英雄になれると思うのだが,労力がとてつもなさすぎて多分誰もやらない。


pp.24-27
>東方の年齢層
いまだに若い人中心のコミュニティであることは変わりないものの,平均値が2年前の21.26歳から21.77歳へと0.5歳ほど上昇している。これは新規参入が多い一方で引退が少ないため,人口増加に伴って平均年齢が上昇したと思われる。だが,0.5歳上昇は母体の数が大きいだけに実はかなり大きな変化ではないかと思う。他のデータも照らし合わせて考えるに,東方コミュニティも拡大が限界に近づき,以後も大量の10代の参入を受けつつも23歳くらいまでは平均年齢が上昇していくのではないか。男女比は全体で見れば9:1だが,創作者の側には女性が多いという点や,コスプレをする人は女性が多い点などを踏まえるとそのプレゼンスは大きい。

pp.28-29
>東方の経済規模
わかってはいたが,少なくとも10億円以上という数字を出されるとやはりびびる。このデータは東方wikiの人気投票アンケートからとった概算なので,コミュニティ全体のものではない。本書にある通り,例大祭参加人数等から概算するに,本来は軽く20億に達しているだろう。エロゲー・ギャルゲー市場規模がおおよそ80〜100億円らしいので,東方単体でその1/4以上あると考えると実に恐ろしい金額が動いている。


pp.44-49
>ニコニコ動画内での東方
前述の通り,他ジャンルやMMDとの絡みがあり,ニコニコ外への影響力も増してきた。一方,ニコニコ動画内部でのプレゼンスはやや下がっており,ランキングでは目立たなくなってきている。ただし,月間投稿数が下がっているわけではなく,調べていないがおそらく再生数も下がっていないと思われるが,にこかかわらずこのような印象があるのは,ニコニコ動画自体が大きく多様化し,いわゆる御三家が突出した存在ではなくなってきたせいではないかと思われる。また,投稿数が増えたのに見る専の数は増加しないと,動画一本当たりの再生数はどんどん下がっていき,また動画間・作者間の伸びにも大きな格差が生じていく。これはアイマスやボカロで先行して起きた現象だが,おそらく東方にも起きているのではないか。この辺は私はそれほど詳しくないので,他の方の補足が欲しい。


(2)に続く。

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