2014年08月08日

華麗なるギャツビー(映画)

恥ずかしながら原作未読。レオナルド・ディカプリオ主演の方の映画である。ストーリーについては全く予備知識無しに見たので,新鮮ではあったのだが,原作との違いが気になってしまいストーリー面で真正面から評価するのをためらわれることになってしまったので,素直に原作を読んでから見るべきだったと若干後悔している。この辺は人によるのだと思うが,やはり自分の場合原作が気になるのであった。これが再確認できただけあって見た意味はあったかもしれない。本作はやや犠牲になる形になってしまったが。ネットでざっと感想を見た感じでは,原作におおよそ忠実であったようで,気にしすぎなのかもしれない。

狂乱のアメリカ1920年代という雰囲気はよく出てたと思う。引いた位置からカメラを高速で手前or奥に移動させてズームアップし,画面にインパクトを与える手法や,上空からの俯瞰からパンをしながら近づいていく手法は,よく知らなかったのだがこの監督の特徴らしい。なるほど,どの映画でもこのカメラを多用するのであれば,それは確かに強い特徴だろう。本作においては効果的に動いていたと思う。それでカメラが寄ったときに飛び出してくるのが露骨に趣味のよろしくないド派手な衣装や部屋の内装であり,テンポの早いダンスである。ギャツビーの屋敷で繰り広げられていた,そして実際のニューヨークでもよくあったのであろう乱痴気騒ぎの雰囲気はとてもよく伝わってきたし,本作の最大の見どころと言っていいかもしれない。

そうしたシーンの多い前半に対し,ギャツビーの正体と目的が明らかになるにつれてパーティーの回数は減っていき,作品はむしろ落ち着いた雰囲気を見せ始める。ストーリー的にはここからようやく動き出すので,ストーリー面を中心に見る人は映像にだまされることができずに飽きてしまうかもしれない。実際にそういう感想はいくつか見受けられた。私はうまいことだまされた側の人間なので,気にならなかったが。映像の派手さとストーリーの動きが,ギャツビーの正体が明かされることでスイッチし,昼と夜のように切り替わるのは構成としておもしろかった。

原作が有名ではあるのだが一応ネタバレは無しで言うと,ストーリーはわかりやすく,オチは割と早々に気づく。が,王道は王道だからこそおもしろいを地で行くので読めても問題ないし,むしろ予想通りの道を特急で駆け抜けてくれるので気持ちがいい。主人公ギャツビーは「華麗なる(the great)」とつくだけあって,超大金持ち・イケメン・陽気で派手好き・好感の持てる立ち居振る舞いと非の打ち所のない人物に見えるが,謎めいていてどこかに影を持っており,心の底では信用ならない人物にも見える。そうしたつかみどころのない人物像はレオナルド・ディカプリオにとってはまり役であった。彼と言えばずっと『タイタニック』のイメージしか無かったが,うまく年を取って貫禄が出てきたように思う。あまりにぴったりすぎてむしろレオナルド・ディカプリオ本人も心の底では信用ならない人物に見えてきたという自分の中での風評被害が生じてしまったが,そのうち『アビエイター』でも見て上書きしておこう。あと原作はそのうち,おいおい。


華麗なるギャツビー [Blu-ray]
レオナルド・ディカプリオ
ワーナー・ホーム・ビデオ
2014-05-02



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