2018年05月29日

幕下からの復活,大関へ

終わってみると順当な結果になった。当初期待されていた力士が,ハラハラするような場面も挟んだものの,概ね期待通りの実力を発揮した場所になったと言えよう。少なくとも鶴竜の出来は先場所よりもよく,優勝に値するものであった。全般的に相撲の内容がよく,私自身の仕事が忙しすぎてろくにまともに視聴できなかったことを除けば,満足度が高い場所であった。土俵の外の騒動も含めて過去5場所ほど予想のできない状態が続いたので,やっといろいろなものが落ち着いた状態とも言えそうである。なにせ昨年9月は上位陣が総休場で内容も低調,11月は日馬富士の暴行事件が場所中に発覚し,以降は先場所くらいまで諸々の事件があって余波が続いた。これで来場所以降も平穏な気分で相撲が見れるとよいのだが。

なお,今場所もAbemaで全日程を視聴した。以下はメモ書き的に。
・先場所までは「相撲ビギナー」枠としてアスリートでもなく相撲に欠片も興味もないような人がゲストで来ていて,非常に冷める回が何日かあったが,今場所は,先場所までにビギナー枠で来ていてその後ちゃんと相撲に興味をもってくれた人(ぺぇさん)や,アスリート寄りの売り方をしている人(先場所も来ていた稲村亜美)等,むしろ完全にアスリート(武井壮)と,人選がかなり改善された。やはり先場所で稲村亜美が評判良かったので,その方向で路線を固めたか。
・しかし,やはり聞いていておもしろかったのはビギナーでは全くない相撲好きアイドルの山根千佳と,相撲好き芸人のキンボシ西田の回。キンボシ西田と谷川親方を千秋楽に持ってきたのが良い采配。
・先場所まで解説で来ていた把瑠都が突然エストニアで政治家になると言って帰国してしまったので,Abemaに出なくなったのは残念。代わって今場所はいろいろな親方が来ていたが,やはり千秋楽の谷川親方が抜群におもしろかった。


個別評。優勝した鶴竜は,場所中に風邪をひいていて体調が万全ではなかったそうだが,ケガ等については先場所よりも良い状態だったと思われる。離れて取れば半ば悪癖の引き・はたきがよく決まり,密着すればもろ差しで入って技巧をこらした寄りを見せた。やはりこの横綱は上手い。四日目の松鳳山戦はそれだけに惜しく,まさに悪癖が出て負けたパターンだが,これがなければ全勝優勝であった。どうせなら全勝優勝してほしかったと思う。先場所11勝4敗という予測を立てていたことについてはこの場で謝っておきたい。一方,白鵬は事実上の2場所連続休場の明けとはいえ,ひどい出来で惨状を覆い隠せていない。得意中の得意で25勝全勝だった栃ノ心にがっぷり右四つで負けたあたり,右四つになれば絶対に負けない白鵬はもはや完全に過去のものという印象も強くなった。上半身はそこまででもないが,足腰が決定的に弱っている。張り差し・かち上げが禁止された影響もまだ強そうで,何番かやりづらそうな立ち合いもあった(単なる張り差しについては問題としない)。そして7場所連続休場となった稀勢の里の状態は,報道で伝わる情報で判断するにかなり絶望的である。もう一度だけでもいいから,あの強烈なおっつけを見たい。

大関陣……は何も書かなくていいですかね。もっとも二人ともそれほど心配していないが。来場所陥落ということにはならんだろう。

三役。大関とりに成功した栃ノ心の相撲は見事としか言いようがない出来であった。グルジア(サカルトヴェロ)人初の大関である。相撲ぶり自体は先場所・先々場所と変わっていないが,気迫の違いが13勝を引き寄せたと言えよう。起点が前頭3枚目とはいえ,3場所計37勝で優勝と優勝次点を含み,鶴竜と白鵬を1番ずつ破っているとあっては文句の出ようはずもない。昨年9月には前頭筆頭で4−11だったこともあり,この絶好調が3場所続くとは思っていなかったのだが,良い意味で完全に裏切られた。最終盤で右手首を負傷していて,四つ相撲はともかく突き押しは全く取れていなかったのが気がかりと言えば気がかり。来場所完治していることを願う。

逸ノ城は無理に痩せていたことで実力が発揮できていなかったことがわかり,225kgまで太ったことで復調したことが発覚した。そう聞くと体重の割に動きが良いのは確かである。痩せた方が良いと勧めてきた身としてはなんとも言えない気分。御嶽海は調子が戻ってきたけど,だからこそ9勝止まりというか,大関取りには地力が一段足りないことがまたしても立証されたというか。足踏みしている場合ではない。遠藤は不運なケガで悲しい。ケガまでの3勝3敗を見るに,調子は悪くなかったのでは。

前頭上位。上位初挑戦の阿炎は,ここに来て初めて壁に当たった様子で,かえって器の大きさが垣間見えた。負け越しとはいえ7−8であり,白鵬戦の金星もあり,悲観するような戦績ではない。突き押しのタイプとしては千代大海系で,突きの威力もあるが引いての勝ち星も多い。変化も上手く,相撲勘が良すぎて気持ちの良い動きをする。組んだときの弱さまで千代大海並なので出世が厳しそうであるが,期待して応援していきたい。

殊勲賞の松鳳山は突き押しからのもろ差しへの移行がスムーズで,もろ差しを警戒すると突き押しのままやられるので,相手は取りにくそうであった。良い形が出来つつある。8勝しかしていなかったのは意外。千代大龍は立ち合いの出足の強さは本当にすばらしいが,そこで決めきれないと押しきれない。MSPを長らく封印しているが,あれなら復活させたほうが良い。立ち合いで崩したなら二の手で引いてみてはどうか。残りでは,大栄翔が5勝,豊山が3勝と惨敗を喫していたが,それぞれ印象が悪くなく,上位陣が好調だとこういう場所もあるよなという感じ。むしろ負けても不調にならないのはすばらしい。上位に定着するのに必要な素養だと思う。

前頭中盤。大翔丸は良いおっつけを見せていた印象。貴景勝は地力の違いを見せて10勝をあげたが,上りエレベーターにならないか来場所に注目したい。あとは隠岐の海が絶不調だった。特に10日目以降。休場した方が良かったのでは。高身長ゆえに棒立ちになるとどうしても目立ってしまう。

前頭下位。千代の国は,相撲ぶりが大きく変わったわけではないが,とにかく動きが良かった。今場所その意味で目立ったのは阿炎と千代の国になる。12勝は立派で敢闘賞は妥当。ケガがなければこれだけ動ける人なんだなぁと再認識した。あとは妙義龍と旭大星を挙げておこう。妙義龍は久々に彼の真骨頂というべき,綺麗な前傾姿勢のまま押し切る相撲が見られ,満足度が高い。やっと感覚が戻ってきたか。あれが持続するなら前頭中盤でも勝ち星を重ねられそうである。

旭大星は新入幕で10勝の敢闘賞。後半はやや息切れしたが,前半は見事であった。プロフィールを見ると得意な型は両前ミツとか右前ミツとか書かれているが,前まわしをうかがっての寄りや投げよりも,単純な動きの良さと技巧で勝ちを拾った相撲の方が目立ち,安美錦を裾払いで倒していたり,隠岐の海を突き出したりと,お前プロフィールに書いてあることとちゃうやんけと。正直今場所ではまだ全く様子のわからない力士であった。来場所にじっくり観察したい。

なんとなく予想しやすかった感じ。どの程度当たっているかはわからないが。入幕は阿武咲・琴恵光・明生で,十両に下がるのは豪風・大奄美・安美錦か。石浦と竜電も危ない星数だったが,十両上位での勝ち越しが少なくて救われている。


2018年五月場所
この記事へのコメント
千秋楽結びの一番まで優勝争いのもつれた、盛り上がりのある場所でした。同時に、怪我で休場の多い場所でも在りました。白鵬と隆の勝も目の怪我で休むかと案じました。

栃ノ心は、正代相手の黒星で怪我をするまで、まさに連続優勝する勢いでした。鶴竜は、琴奨菊相手に変化するなど、体調不良もあったようですが、栃ノ心に次ぐ安定感などもあって逆転優勝へ。白鵬は、勢戦あたりから妙に時間をかけるようになり、最後は及びませんでした。

阿炎は、強烈な突き押しで白鵬から金星を上げておきながら、終盤は下がる一方で負け越し。十両に上がって跳ね返されても出世してきたので、これからも対応してくれると良いのですが。逸ノ城と遠藤も、星勘定次第では大関昇進の話があったように思いましたが、かろうじて勝ち越しと休場再出場からは黒星続きと、残念でした。白鵬を転がした逸ノ城に期待したいところです。

再十両を逃した常幸龍と北播磨は惜しかった。炎鵬は、ひょっとしたら十両再昇進かもしれず、際どい。稀勢の里は来場所必ずしも出場しなくてもという風向きに変わったようで、今場所白星が無いまま終わった照ノ富士の進退も気になります。
Posted by EN at 2018年05月30日 17:08
どうもです。

ケガで休場が多いのは常態化していて,見ている方も慣れてきてしまいましたね。悲しいですが。
鶴竜の変化は,終わってみるとなんだったんでしょうね。あれが風邪引いてたタイミングだったんでしょうか。
白鵬はどう見ても足腰が弱ってますね。守勢に回ったときが脆すぎた印象です。

逸ノ城はここ何場所か安定してますね。大関は遠そうですが。もう何個か白星を積めないものですかね。
照ノ富士は本当に心配です。本人はまだまだ引退する気が無いようなので,再起を期待します。

幕下上位は天風を応援してたんですが,全然ダメでしたね。絶不調でした。それに負けた照ノ富士は……という話でもあるんですが。
照ノ富士・朝弁慶・誉富士の3人が下がるとすると,千代の海が当確として,炎鵬・村田・極芯道あたりで争う形ですかね。炎鵬は再十両,行けそうな気がします。
Posted by DG-Law at 2018年05月31日 23:51