2018年06月16日

2018ロシア・ワールドカップのグループリーグに見る世界史

本ブログ的に恒例企画なので。この目線だとグループB・F・Gがおもしろいかな。

グループA(ロシア・サウジ・エジプト・ウルグアイ)
エジプトがムハンマド=アリー時代に,サウジの前身の第一次ワッハーブ王国を滅ぼしていて,またロシアはエジプト=トルコ危機では第一次・第二次を通じてオスマン帝国の支援者だったので,エジプトの近代化を妨げた。関係が薄いようで,19世紀の「東方問題」では意外とつながりが見えるグループ。その意味ではウルグアイだけ浮いてる。あとはエジプトとサウジは20世紀後半にアラブの盟主をうかがうライバルだったというのは当然すぎるけど一応。

グループB(スペイン・ポルトガル・モロッコ・イラン)
すでに指摘があるが,4つともウマイヤ朝の旧領というすごいつながりがある。というか,よくよく考えたらこのグループ,イラン以外が地理的に近すぎないですかね……スペインはモロッコの旧宗主国,ポルトガルも1580〜1640年はスペインに占領・支配されていた。その占領の引き金となったのが,当時のポルトガル王セバスティアン1世によるモロッコ遠征で,彼が遠征先で客死(おそらく戦死)してしまう。セバスティアン1世に嫡子がいなかったために国政が混乱,それを見たスペイン王フェリペ2世が強引に同君連合化を提案して,という流れである。というように,地理的に近いだけあって,この3国は非常にいろいろある。モロッコとイランは西サハラを巡って対立があり,つい最近断交した。こんな新聞記事が出ている。
モロッコ、イランと断交 西サハラ独立派巡り (日経新聞)
→ 以前はモロッコはスンナ派の中ではシーア派に対して寛容な国で,イランとも融和的だった数少ない国だったが,これについては正直イランが余分なことしたよね,という感想。

グループC(フランス・デンマーク・オーストラリア・ペルー)
因縁がありそうであまり無いグループ。フランスとデンマークに限ればいろいろあるが,それは書いてもつまらんしな……一応4つとも二次大戦時の連合国とかいう大概当てはまりそうなくくりが無くはない。

グループD(アルゼンチン・アイスランド・クロアチア・ナイジェリア)
ここもそれほどつながりが無いか。ハプスブルク家の旧領は大体サッカーが強いが,アルゼンチンとクロアチアはオーストリア系とスペイン系に分かれた関係で同一の家系に支配されていた期間がかなり短い珍しいパターン。ところで,アイスランドとアルゼンチンの緯度差がすごい。

グループE(スイス・セルビア・ブラジル・コスタリカ)
ヨーロッパ2国とラテンアメリカ2国という偏ったグループだが,スイスとセルビアはどちらもEU非加盟国。ブラジルはメルコスール原加盟国だが,コスタリカは未加盟。世界史じゃなくて地理の話になってしまった。

グループF(ドイツ・メキシコ・スウェーデン・韓国)
フランスのナポレオン3世はメキシコ出兵の失敗を契機に政権が不安定になり,普仏戦争の敗戦で退位。フランスのいるグループCと両国のいずれかが当たるとしても,早くても準決勝になる。同じくドイツ統一戦争から,シュレスヴィヒ=ホルシュタイン危機に際して,スウェーデンがデンマークに肩入れしてスカンディナヴィア連邦を組むという計画があった。良いところまでいったが実現せず。そのデンマークもグループCというのはなかなかの因縁である。あとはドイツとメキシコというとツィンメルマン電報事件か。韓国だけどうにも何にもない。

グループG(イングランド・ベルギー・チュニジア・パナマ)
ベルギー・チュニジア・パナマといずれも地政学上の要点にある。ベルギーは言わずとしれた「道」と揶揄される国で,パナマは運河建設のために作られた国,チュニジアは地中海の真ん中,イタリア(シチリア)の対岸。ちなみに,フランスが1881年にチュニジアを植民地化しようとした際,対岸が植民地化されることについてイタリアが抗議するも,同年勃発したエジプトのウラービー運動の単独鎮圧をフランスに承認させる見返りとしてイギリスがフランスに肩入れし,結果フランスの植民地化が成功したという間接的なつながりはある。これで英仏への不信感が増したイタリアはドイツに接近して三国同盟が成立するという流れ。そのイタリアは今回予選敗退で本大会に出場できなかった。パナマを除く3つはローマ帝国の旧領。これはグループBのイラン以外もそうで,もっとありそうなものだが,意外にも4分の3以上はこの2グループだけ。ベルギーとイングランドは因縁がありすぎるので割愛。

グループH(ポーランド・コロンビア・セネガル・日本)
グループD以上に世界史上のつながりが希薄なグループ。これだけ言及できることが無いグループも珍しい。それも寂しいので,世界史には全く関係がないが将棋ブームであることだし,カロリーナ女流棋士には言及しておきたい。




この記事へのコメント
一応グループHは全部米軍駐留国ですね(むしろ出場国で米軍がいない国の方が少ない気もしますが
Posted by 紅茶 at 2018年06月17日 10:38
なるほどw
米軍が全世界的に散っている分,ハプスブルク家の旧領とかローマ帝国の旧領よりも当てはまるグループが多くなるかもしれません。
Posted by DG-Law at 2018年06月17日 23:44
グループDは、クロアチア以外はイギリスと因縁があるという共通点が。

・アイスランド、アルゼンチン:紛争の経験あり(タラ戦争、フォークランド紛争)
・ナイジェリア:元植民地

前者は世界史というか、現代史に近い気もしますがw
Posted by とーます at 2018年06月25日 12:36
いえいえ,現代史も世界史の一部ですよ。
それは気づかなかったですね。イングランドがグループGなので遠いのが少し残念ですね。
Posted by DG-Law at 2018年06月26日 07:22