2018年06月23日

世界史上の諸君主の出題頻度グレーディング:フランス王(カペー朝・ヴァロワ朝)編

要望のあった,フランス王編。基準はこれまでと同様に以下の通り。

A:基礎知識。センター試験世界史B以上の入試を受けるなら知ってないとダメ。
B:国立二次・MARCH以上の私大を受けるなら必要。
B-:教科書に載っていて用語集頻度もそれなりに高いが,便宜上掲載されているという色彩が強く,実際には入試にはほとんど出ない。ネルウァが好例。
C:高校世界史範囲内・外のグレーゾーン。用語集頻度が低いか掲載されていないもの,または旧課程では範囲内だったもの等,早慶上智対策としてなら見るもの。
D:高校世界史範囲外だが,早慶上智でなら見たことがある。満点が欲しいなら覚えてもいい(が当然推奨しない)。
E:完全な高校世界史範囲外で,早慶上智ですら10年に1回未満のレベルでしか見たことがない。

視認性を高めるために,グレーディングのアルファベットに沿って☆を付した。Aなら6個,Eなら1個である。ズレがあったら☆の数の方が間違いなのでアルファベットの方を信じてほしい。意外と思われそうな人は赤で表示した。また,感覚には個人差があるので☆半分くらいは異論があると思われる。特に綿密にデータを収集してデジタルな判断をしたわけではないので,DとEの差については多く異論がありそうだが,そこはご寛恕いただきたい。以下,本編。


《カペー朝(前半)》
君主名グレーディング
ユーグ=カペー     B-☆☆☆☆
ロベール2世      E
アンリ1世       E
フィリップ1世     E
ルイ6世        E
ルイ7世        E
初代ユーグ=カペーはほぼ必ず教科書には載っているが,入試ではあまり見ない存在。これを答えさせるなら「カペー朝」と聞く,という発想になるのは割とわかる。カペー朝というと後半に出てくる3人以外はぱっとしないという印象があるが,それぞれ長命な君主が多く,早々に共同統治者を指名して後継者を確定させる慣習もあり,当時の西欧では貧弱ながら随一の安定した王権を確立していた。その延長線上にフィリップ2世が登場するのであるから,後世の目からすると結果的に「自らが凡庸ならば,子孫に英雄が登場するまでじっと耐える」という戦略が功を奏したように見える(当然ながら当時の王たちにそのような意図は無い)のが非常に面白いところ。その意味で,フィリップ2世以前の王がそろってEなのは誉れ高き低評価と言えよう。なお,(西)フランク王国時代について一応書いておくと,シャルルマーニュはA,シャルル2世はCまたはD,残りはE。


《カペー朝(後半)》
君主名グレーディング
フィリップ2世 A☆☆☆☆☆☆
ルイ8世    E
ルイ9世     B☆☆☆☆☆
フィリップ3世 E
フィリップ4世 A☆☆☆☆☆☆
ルイ10世    E
ジャン1世   E
フィリップ5世 E
シャルル4世  E
極めてメリハリがあって,早慶上智なら出るという人がいないのが特徴的。トップ3がフィリップ2世・ルイ9世・フィリップ4世になるのは誰しもが想像のついたところだと思うが,そこからさらに頻出度を見ると,明らかにフィリップ4世・フィリップ2世・ルイ9世の順番になる。フィリップ4世はやはり三部会の開催が非常に大きい。アナーニ事件もあるし強行のバビロン捕囚もあるしテンプル騎士団の解散もあるのでどれだけでも出しようはあるが,三部会はその後のルイ13世・フランス革命でも登場するのでどうしても触れざるを得ないというところがあるだろう。それと比較すると,フィリップ2世は第3回十字軍か王権強化の開始のいずれか。ルイ9世はアルビジョワ十字軍の完遂で聞く形になる。ルイ9世は第6・7回十字軍でも問えるが,最近は十字軍自体の出題が減っている(第1・3・4回しか出ない)ので,ルイ9世も見なくなっている印象。ただしB-やCまでは下がっていないと思われるのでBとした。


《ヴァロワ朝(前半)》
君主名グレーディング
フィリップ6世 C☆☆☆
ジャン2世   E
シャルル5世  E
シャルル6世  E
シャルル7世  B☆☆☆☆☆
ルイ11世    E
シャルル8世  C☆☆☆
フィリップ6世はCにするかDにするか微妙なところ。ヴァロワ朝初代にして百年戦争勃発時の君主であるが,意外にも入試では見かけない。一応Cにしたが,私が指導者だったら覚えなくてもよいと言う。一方,エドワード3世は二院制議会の確立もあって頻出である。百年戦争の終点シャルル7世は用語集頻度は最高のГ世,入試に頻出かというと難関大以上に限られる印象。シャルル8世はイタリア戦争を起こした王で,彼もCかDかというところ。2014年の課程改定で範囲外になった。

さて,ヴァロワ朝の前半といえば百年戦争であるが,その重要人物の賢明王ことシャルル5世,高校世界史では一切出てこない。というよりも百年戦争自体,始まったと思ったらジャックリーの乱の次はもうジャンヌ=ダルクなので,シャルル5世もデュ=ゲクランもヘンリ5世も登場しない。加えて言えば,昨今の用語削減の流れから,クレシーの戦いでB,ポワティエの戦いでC,アザンクールの戦いでDくらいの出題頻度になっている。私自身,百年戦争の流れを細かくやってもしょうがないのでこの辺の人名が登場しないことに異議はないのだが,であればジャンヌ=ダルクを強調するのも英雄史観の古臭い話ではないかという違和感がぬぐえない。百年戦争を中世的封建国家から絶対王政への脱皮の総仕上げと見なすのであれば,かえってシャルル5世の方が重要人物だと思うが,どうか。


《ヴァロワ朝(後半)》
君主名グレーディング
ルイ12世    E
フランソワ1世 A☆☆☆☆☆☆
アンリ2世   D☆☆
フランソワ2世 E
シャルル9世  C☆☆☆
アンリ3世   D☆☆
フランソワ1世以後をヴァロワ=アングレーム朝とも呼ぶが,高校世界史では区別しない。フランソワ1世はイタリア戦争におけるカール5世のライバル,レオナルド=ダ=ヴィンチを勧誘した人物として頻出。イタリア戦争自体,2つ前くらいの課程(2007年以前)だとそれほど重要事項ではなかったが,近年ではルネサンス・大航海時代・宗教改革に並ぶ近世のスタートと位置づけられている。その影響でフランソワ1世の名前もよく見るようになった。その割にシャルル8世は範囲外になっているのは,用語削減の流れとのバランスがとられたようで,おもしろい現象である。

アンリ2世はカトリーヌ=ド=メディシスの夫で問うパターンしかない。カトリーヌ自身の出題頻度はCくらいで,一応範囲内(用語集頻度はぁ法シャルル9世はユグノー戦争の勃発及びサンバルテルミの虐殺発生時の王として問われることがあるが,出題頻度は高くない。アンリ3世は見覚えがあるような気がしたのでDにしておいたが,私の気のせいでEかもしれない。一人だけ先取りしておくと,アンリ4世は当然Aである。

ブルボン家もやるつもりだったが,長くなってきたので今回はここまでで。次はノルマン朝・プランタジネット朝をやるか,このままブルボン家・ボナパルト家をやるか。

この記事へのコメント
 こんにちは! 今回も楽しく、そして興味深く拝見させていただきました!! 私もまさにこのグレーティングのように教えており、何か安心しました。

 ルイ9世は、モンゴルにルブルックを派遣した国王としても教えますね。

 シャルル7世は、やはりジャンヌ=ダルク関連で教えることになってしまいます・・・。ランス大聖堂でうんたらかんたらと。

 この辺りは、確かにメリハリがあって割り切って教えることができるので比較的楽ですね。
Posted by もぐたん at 2018年06月26日 20:13
ありがとうございます。
ルイ9世は確かにそこでも出てきますね。インノケンティウス4世はマイナーですが。
カペー朝やヴァロワ朝の前半は,教えるべき人とカットしていい人がけっこう綺麗に分かれていていいですね。
Posted by DG-Law at 2018年06月30日 00:55
とても面白いです。
受験勉強の休憩時間に見ています。
Posted by たなか at 2018年07月08日 13:19
それは嬉しいです。
休憩の範囲で楽しんでください。
Posted by DG-Law at 2018年07月10日 19:13