2018年07月29日

螺鈿と沈金で輝く琉球漆芸

黒漆雲龍螺鈿大盆(浦添市美術館)サントリー美術館の琉球王国展に行ってきた。サントリー美術館は琉球の染織を多く所蔵しており,過去に何度も琉球関連の展覧会を開いていて縁が深いとのことである。私自身は琉球は全く門外漢なので,新鮮な気持ちで見に行った。

今回の展示は染織(いわゆる紅型を含む)だけではなく,琉球の美術(絵画作品)や漆器の展示が豊富であったのが,非常に良かった。琉球の美術は基本的に中国の影響が強い。留学先というとまず福州であったようで,ほとんどの画家が琉球名と中国名を持っている。たとえば「座間味庸昌」であれば中国名は「殷元良」。レベルはさすがに高いというものではないが,よく模しているとは思う。言われなければ中国人や日本人の画家が描いたものと区別がつかないだろう。おもしろかったのは,そうして中国の絵画を模して成長したので,琉球人が雪中の花鳥図も描いているということである。おそらく御本人は雪を見たことがないか,朝貢使節の随行で行った北京で見たかどうかという程度だと思うが,本人としてはどういうリアリティでこの絵を映画いたのであろうか。

一方の漆器は非常にレベルが高く,オリジナリティも高い。日本らしい真っ黒のものもあれば,中国や南方の影響が強そうな朱塗りの漆器もあり。何よりも特徴的なのは非常に豪華な螺鈿である。夜光貝は本土だと屋久島・種子島が北限であり,夜光貝を豊富に産出する沖縄本島はそれだけで大きなアドバンテージである。黒い地に浮かぶこれでもかというほどふんだんに盛り込まれた螺鈿はきらびやかで美しい。それでいて朱色に蒔絵も使いこなしているのだから反則だろう。近世の琉球の漆器がこれほど高度なものだったとは恥ずかしながら知らなかった。なお,これらの優品を多く所蔵しているのは浦添市美術館である。今度(いつかはわからんが)沖縄に旅行したなら必ず寄りたい。

今回の展覧会の最大の目玉は,那覇市歴史博物館から借りてきている琉球王家伝来の品々(多くが国宝)である。前述の通りの豪華な漆器類と衣装類が中心で,その中心が王冠。ただし,期間中の8/21までは状態の良い復元品で,8/22〜9/2だけが本物の展示となるから,今回私が見れたのは復元品の方であった。こうして王冠が存在しているのを見ると,確かに別の国だったという実感も湧く。物体の力である。最終章は戦前の沖縄の風景の写真が展示されていて,今回の展示は豪華であるが,それでも戦災で相当に焼けてしまったらしいことが語られている。残念至極である。


なお,サントリー美術館にありがちなことではあるが,展示替えが非常に激しい。今回は中でも極端で,展示リストをよく見ると事実上同じテーマで2回の展覧会をやっていると言える状態である。そういうわけで私は少なくともあと1回は行くつもりなので(8/22〜9/2が狙い目),気になっている方はぜひお声がけください。同行者1名まで無料です。