2018年12月09日

世界史上の諸君主の出題頻度グレーディング:ローマ教皇編

要望と自分なりの目標を鑑み,今回はローマ教皇編。残りはホーエンツォレルン家・ロシア皇帝・オスマン皇帝・アメリカ大統領まではやる予定。困っているのは中華王朝。非常に多いのだが,ローマ教皇と同様にEは省略にすれば何とかなるか? 基準はこれまでと同様に以下の通り。

A:基礎知識。センター試験世界史B以上の入試を受けるなら知ってないとダメ。
B:国立二次・MARCH以上の私大を受けるなら必要。
B-:教科書に載っていて用語集頻度もそれなりに高いが,便宜上掲載されているという色彩が強く,実際には入試にはほとんど出ない。ネルウァが好例。
C:高校世界史範囲内・外のグレーゾーン。用語集頻度が低いか掲載されていないもの,または旧課程では範囲内だったもの等,早慶上智対策としてなら見るもの。
D:高校世界史範囲外だが,早慶上智でなら見たことがある。満点が欲しいなら覚えてもいい(が当然推奨しない)。
E:完全な高校世界史範囲外で,早慶上智ですら10年に1回未満のレベルでしか見たことがない。

視認性を高めるために,グレーディングのアルファベットに沿って☆を付した。Aなら6個,Eなら1個である。ズレがあったら☆の数の方が間違いなのでアルファベットの方を信じてほしい。意外と思われそうな人は赤で表示した。また,感覚には個人差があるので☆半分くらいは異論があると思われる。特に綿密にデータを収集してデジタルな判断をしたわけではないので,DとEの差については多く異論がありそうだが,そこはご寛恕いただきたい。

なお,ローマ教皇は高齢になってからの即位が多い&初期は地位が安定していなかった関係で数が多すぎるため,グレーディングがEでありかつインパクトの薄い人物は大幅にカットした。対立教皇も極力カットした。結果的に全266代+対立教皇のうち,ここに示したのは25人程度になる。先に結論じみたことを書いておくと,ローマ教皇は異様にCになった人物が多く,おそらく全君主の中で難関私大対策とそれ以外の落差が激しい。旧課程には載っていたが現行課程で消えた割合も高く,というよりもローマ教皇を覚えるのが昔は教養だったのだという西洋中心主義的なものを感じた。以下,本編。


《最初期・中世前半(1〜10世紀)》
君主名グレーディング
ペテロ       A☆☆☆☆☆☆
レオ1世      C☆☆☆
グレゴリウス1世  B☆☆☆☆☆
レオ3世      A☆☆☆☆☆☆
ヨハネス12世    C☆☆☆

最初期は登場する人が少なすぎて,最初の1000年で該当者は5人のみ。ペテロは説明不要。レオ1世はアッティラを説得してローマを劫略から救った人物。カルケドン公会議の主要参加者の一人でもある。CにするかDにするか迷ってCにしたが,早慶上智対策ではよく教えられている印象。個人的にはそれでも覚えなくていいと思う。驚くべきことに旧課程では範囲内だった。かたやグレゴリウス1世はこの間の音楽史についての指摘であったところだが,用語集は「聖歌の作成」とばっちり表記。ただ,最近の入試でグレゴリオ聖歌から引っ張っているものはほとんど見ず,ゲルマン人への布教の強化で出題される。レオ3世は当然のA。ヨハネス12世はオットー1世にローマ皇帝の帝冠を授けた教皇。稀にオットー1世じゃなくてこちらの名前が聞かれる。用語集には項目がなく,オットー1世の説明文にのみ登場するので範囲内というにはグレーゾーン。レオ1世に比べるとまだ出題頻度があるか。


《叙任権闘争〜教皇権の絶頂期(11〜13世紀)》
君主名グレーディング
レオ9世      D☆☆
グレゴリウス7世  A☆☆☆☆☆☆
ウルバヌス2世   A☆☆☆☆☆☆
カリクストゥス2世 C☆☆☆
インノケンティウス3世  A☆☆☆☆☆☆
インノケンティウス4世  C☆☆☆

盛期なだけあって,キャラの濃い連中が並ぶ。レオ9世は1054年の教会東西分裂の時の教皇であり,後のグレゴリウス7世を引き立てて教会改革の先鞭をつけた人物とされる。入試で出題されたところは見たことがないが,稀に載せている参考書があるので,私の知らないところで出ているのかもしれない。念のためDにしておいた。グレゴリウス7世は,ひょっとして一番出題頻度の高いローマ教皇なのでは。ウルバヌス2世とどっちかな。カリクストゥス2世(シクストゥス2世)はヴォルムス協約の時のローマ教皇。これぞ難関私大対策というような人。国立大受験生は覚えてなくても不思議ではない(例外は一橋大受験生)。インノケンティウス4世は3世の誤植では? と思われがちなのを利用して出題される人。プラノ・カルピニをモンゴル帝国に派遣した人物である。この人も旧課程では範囲内だったが,現行課程では消えた。こうして見ると,十字軍の提唱者は意外に入試に出ていない(1回と4回だけ)ということがわかる。


《中世末期(14〜15世紀)》
君主名グレーディング
ボニファティウス8世 A☆☆☆☆☆☆
クレメンス5世    C☆☆☆
グレゴリウス11世   D☆☆
マルティヌス5世   D☆☆

衰退期も負けじ劣らず,キャラが濃い。憤死ってなんだよ,と日本中の高校生に言われてしまうボニファティウス8世からスタート。クレメンス5世は「教皇のバビロン捕囚」の最初の教皇。この人もCにするかDにするか迷うところで,例によって用語集の項目にないが教皇のバビロン捕囚の説明文に出てくる&旧課程では範囲内。グレゴリウス11世は大シスマ(教皇の並立)の契機となった,アヴィニヨンからローマに帰還したローマ教皇。マルティヌス5世はコンスタンツ公会議で一本化された時の最初の教皇。最近だと『乙女戦争』ですごい悪人面で描かれていたのが印象深い。


《ルネサンス・宗教改革期(15世紀末〜16世紀)》
君主名グレーディング
アレクサンデル6世 C☆☆☆
ユリウス2世    C☆☆☆
レオ10世      B☆☆☆☆☆
クレメンス7世   D☆☆
パウルス3世    D☆☆
グレゴリウス13世 D☆☆

アレクサンデル6世はチェーザレ=ボルジアの父親,イタリア戦争勃発時の教皇。入試ではこれらではなく教皇子午線で出る。ユリウス2世はボルジア家を追い落として即位したライバルのローヴェレ家出身。サン=ピエトロ大聖堂の再建を本格化させ,ブラマンテを起用した人物。Cに分類した中では,なぜだか比較的出題頻度が高く,割とBに近いと思われる。例によって用語集には項目なく,サン=ピエトロ大聖堂の説明文に登場。レオ10世はメディチ家出身,贖宥状の販売開始によって「九十五箇条の論題」を突きつけられた人。クレメンス7世もメディチ家出身。ローマ劫略の時のローマ教皇。同様に用語集に項目なし,ローマ劫略の説明文にいる。前3人に比べると出題頻度は低い。パウルス3世はトリエント公会議を開催した教皇で,ヘンリ8世を破門した人,イエズス会を認可した人でもある。現行の用語集にはどこにも載っていないが,旧課程では驚きの範囲内。旧課程,本当にローマ教皇を掲載しすぎでは。ここの5人は在位期間の極めて短い2人を挟んでほぼ連続した在位年代であり,いかにこの辺りの密度が濃いかわかる。最後に,少しだけ時期が離れたグレゴリウス13世は16世紀後半の教皇で,グレゴリウス暦の制定者。天正遣欧少年使節に会ったのもこの人。グレゴリウス暦の用語集頻度が,靴ない上に,その説明文にのみ登場するだけである。入試でもめったに出ず,「グレゴリウス暦」の名称から想像がついてしまうから出題しにくいのだろう。


《その後(17世紀〜)》
君主名グレーディング
ピウス7世    D☆☆
ピウス9世    E
ピウス11世    E
ヨハネ=パウロ2世 C☆☆☆

以後,ローマ教皇は高校世界史にほとんど出てこなくなる。あまりにも出てこないのでEを2人ほど掲載した。次の教皇は200年飛ぶ(典礼問題の時のクレメンス11世とか出題されてそうでそうでもない)。ピウス7世はフランスとコンコルダートを結び,ナポレオンの戴冠式に呼ばれた教皇。かの有名な絵画で所在なさげにしている人である。用語集に項目なし,コンコルダートの説明に登場。ピウス9世は1848年革命で一時ローマから逃れ,その後イタリア統一戦争で教皇領が消滅した時の教皇。実は同一人物である。ピウス11世はラテラノ条約の時の教皇。そして最後を飾るヨハネ=パウロ2世,実は範囲外という衝撃。旧課程にもいない。これなぜなんでしょうね。もっとも入試ではいつ出てもおかしくないのでグレーディングはCにしておく。




この記事へのコメント
改めて見ると教皇の盛衰が一目瞭然ですね

自分は大学受験で教皇と皇帝に関して異常に変態的な所を受けたのでちょっと懐かしいです

教皇と皇帝の関係からヨーロッパの社会変化を眺めるのとか結構自分的に面白かったですが、中世ヨーロッパは現代日本とかけ離れすぎて理解するの世界史で一番しんどかったような...
あと、堕落した時の教皇のクズっぷりなんかも好きですね(受験には関係ないですが)

次回も陰ながら楽しみにしてますm(_ _)m
Posted by めいす at 2018年12月11日 23:37
やっぱりルネサンスと宗教改革が終わると途端に教科書に出てこなくなりますね。
グレゴリウス7世より前もかなり少ないですし。

縁遠いって意味では,やっぱりイスラーム世界が一番想像がつきにくくて苦しむ受験生が多いみたいです。中世ヨーロッパは,なんだかんだで日本の中世と似ているところはあるので,連想が働けば割とマシかもしれません。当然キリスト教は中世の日本に無いので,そこは差が大きいですが。

次回は年内には書く予定です。がんばります。
Posted by DG-Law at 2018年12月12日 23:06