2016年09月12日

エロゲレビューまとめて(『乙女理論とその周辺』他)

レビューを書こうとして10行くらいにならず,それで1記事にするのもどうかと思って放置していた文章を,あきらめて一斉放出。ネタバレは一応伏せ字にしておいたが,見えてしまったらごめんなさいということで。プレイ期間は2013〜16年頃だが,新作とは限らない。

扱っている作品は『乙女理論とその周辺』,『月に寄りそう乙女の作法2』,『大図書館の羊飼い Dreaming Sheep』,『グリザイア』シリーズ,『ねこぱら』vol1,2。
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2014年11月24日

『WHITE ALBUM2』レビュー

一応致命的なネタバレは避けていて,本作の設定を知らなくても読めばそれなりに分かるように書いているはず。(むしろ『君望』はネタバレしている)

さて,三角関係を描いた本作の感想というと,まずもって来るのが「どうしてこうなった」「誰が一番原因だ」問題である。まずこれに意見を表明しておかないとレビューとはなるまい。私の立場は,「全員が平均的に悪い」というありきたりなものではあるが,これ自体が本作の重要なポイントであると思う。ちょっと説明を加えさせてほしい。

本作の三角関係の根本的な原因は,すれ違い,タイミングの妙が全てで,実際のところ究極的な悪者はいないというものだ。これは極めて丸戸らしい世界観で,「世界は貴方が思っているよりもちょっとだけ優しい」から全くぶれてない。絶対的な悪者がいない程度には優しいのだけれど,しかし運命は残酷で。「世界は」「貴方が思ってるよりも」「ちょっとだけ」「優しい」のがそれぞれ重要で,特定の誰かが優しいわけではなく,それは時と場合により移り変わり。人間は自らの将来について悲観しがちで。それよりは現実は少しだけ厳しくないけど,でも基本的には厳しくて。だからこそ,自分の想像を少しだけ超える優しさが垣間見えた瞬間が奇跡に見えて。やっぱ里伽子抄最高や!(唐突)……いや,真面目な話,あれが丸戸史明の世界観の中核じゃないかと。本作は怒りや邪念の無い,ただただ積り続けるどん詰まりの純粋な苦しさを味わうことが出来,最後にはそれなりの救済がやってくる。だから,物語の大半は余分なことを考えさせずにストレートに胃に来る。というか,脳みその方は綿密に張られた伏線の回収の方で忙しい。こんなもん,マゾヒストじゃなくても楽しいに決っている。

一方で,この「全員が平均的に悪い」というのはさじ加減が難しいもので,個人的には極めてうまくやってのけた作品だと思うのだが,実際には雪菜もかずさも春希も,特定の誰かが悪いという批評はそれなりに見られる。これは別にその人たちの読解力を問題視しているわけではなくて,読めばそういう観点ならと納得するものも多い。特にまあ,アンチ雪菜がそこそこ発生するのは理解できるところで。つまり,これだけ丁寧に描いてもどうにもならない感性のゆらめきというものはあり,テキストのバランス調整は至難の業なのだなと痛感させられる話である。しかし,そういった批評であっても概ね高い評価をつけているものがほとんどではあるのも,また本作のおもしろいところではあろう。

もう一つ。本作はIC(序章)・CC(本編)・coda(最終章)の三章に分かれていて,それぞれの時期でそれぞれの精神的な成長と,譲れないものが変わっていくのもポイントになる。「全員が平均的に悪い」「最悪のすれ違い」という点といい,「時間が最大の解決」になる点といい,本作は清く正しい『君望』の後継者である。言うまでもないが,だからと言って『君望』の偉大さが減じるわけではない。というか,厳密に言えば『君望』は「全員が平均的に悪い」わけではない。言うまでもなく遥は「運が悪かった」だっただけだ。あの事故にあらゆる「悪さ」の焦点を集めた点でやはり『君望』は画期的な舞台装置であった。一方,本作はあえて文化祭を焦点にせず,ICの後半,作中時間の半年をかけて作っていった。結果的に,一瞬の破壊力は劣るものの,破滅に近づく恐怖をじっくり味わうことができる。いずれにせよ,「平均的に悪い」三角関係を稼働させるには,整った舞台装置が必要で,それを綿密に作り上げた作品の系譜だと思う。丸戸さん,相当『君望』を研究してから本作にとりかかったのではなかろうか。ネタバレゾーンで後述するけど,サブヒロイン群の配置を見ても,ねぇ。どこぞで見かけた「ホワルバの型に君望の中身を詰め込んでHERMIT系の丸戸作品で味付けした感じ」はかなり的確な例えじゃなかろうかと。

そうそう,本作といえば「誰が一番悪いか」に引っ掛けられて「誰が一番嫌いか」もしばしば話題になるところだが,私は嫌いなキャラはいない。とはいえ,一番好きなのは誰かと言われれば,やっぱり冬馬かずさが好きだ。ただし,いわゆる「俺の嫁」というよりは,なんというか父性をくすぐられる感じ。それだけに,私は物語で特定の登場人物に感情移入しないのだが,本作のcodaは完全に冬馬曜子(かずさの母親)視点で読んでた自分がいた。それだけにcodaはどのエンディングに行っても,それぞれ別の意味で心に染みた。かずさが幸せなら,それでいい。

正直満点つけても良い気分なんだけど,冷静に考えると満点分楽しめたかというと疑問点がいくつか。それを含めて,各分野についてちょいちょいと。まずグラフィック。立ち絵は優秀だったけど,もう少し種類が欲しかった。特にcodaでは文章の感情表現に追いついてない場面がちらほら。一枚絵は誰てめ絵になりかかってるのが何枚かあった。しかもHシーンでそれが多いため絶妙に実用性が低い。種類が足りないのはBGMも同じで,CCの終盤あたりから聞き飽きた曲が出てくる。一方,ヴォーカル曲は数も質も圧巻。本作の『届かない恋』は,『AIR』の『青空』クラスの破壊力をもって私の人生に刻まれた。イントロだけで嗚咽が生じる,至高の胃痛ソングである。各声優さんの名演技も光っていた。特に雪菜役の米澤円。これは神がかっていたと言わざるをえない。

最大の問題点は,冗長さである。正直30〜40時間持っていかれるのは時間泥棒で,ICとcodaはいいとしてもCCは冗長な場面が多かった。あれは,あと2〜3時間でいいから削れただろう。あの冗長さは本作のシナリオ面での数少ない(が看過もできない)瑕疵になっていると思う。自分自身,長すぎて放置してたところがある。それを一気にクリアすることにしたのは,聖地巡礼の計画が立ち,それに間に合わせる必要が出てきたからだ(聖地巡礼は別記事にて)。一度再開すれば,おもしろさもあって一気に進んだが,それでも終わったのは海外旅行の前日,飛行機が飛び立つ9時間ほど前であった。これは丸戸史明の悪い癖で,どうでもいい会話の中にふっと重要な感情を吐露させる手法を多用し,テキスト自体のおもしろさを活かして気づかれるか気づかれないかのぎりぎりを攻めていきつつ時間を経過させるのが丸戸の脚本だ。これは反面,文章量がどうしても膨大になり,かつ一場面ずつ切り出して読んでみると大変に淡白である。いかにテキスト自体がおもしろかろうと,これだけ引き伸ばされて淡白になれば冗長と言わざるをえまい。しかも,本当にふっと挟まれるので,変にスキップしたり流し読みしたりできないのもまたつらいところだ。

しかし,もろもろ減点しても90点以上をつけていいくらいには楽しめたかなと。2010年代のゲームに限れば『穢翼のユースティア』と並ぶエロゲ史上の最高傑作の一つだと思う。まだやってない人は胃薬と十分なプレイ時間を確保して,是非。で,今私が悩んでいるのは,PS3版をやるべきか否か。というよりも,やりたいんだけどもハードを持っていない。PS1のゲームも久々にやりたいのがあるし,ドラクエ無双(通称)も出るし,PS4が出て値段も下がってるし,そろそろPS3を買わざるをえないかなぁ。


以下,ネタバレを含めて。
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2014年01月11日

最近買ったもの・読んだもの

・ねこねこソフトの『麻雀2014』。コミケの先行販売である。いつものストーリーモード,フリー対戦,サバイバルモードの3実装。ストーリーモードは,そらいろの愛衣ちゃん主人公で,最新作のキャラたち5人を倒していく。二人打ちで二周,一周目は全員16000で,二周目は32000。南4局でも終わらず,どちらかがドボンするまで続くので,ちまちま稼ぐのではなくドカンと一撃で削ったほうが早く終わる。前作までと違い,きっちり降りる子が多い(気がする)ので意外と苦戦した。それでも3・4時間あればクリアできると思う。問題は最新作をやってないので敵キャラへの愛着が今ひとつだったこと。やっぱ最新作やらないとダメかなぁ。当分そんな暇はない
→ フリー対戦は難易度が5段階で,今回も新宿歌舞伎町実装。今回はとうとう「得意技:国士無双」が3人そろったので,本当の地獄絵図を楽しめる。相変わらず信長様の豪運が異常。あとは八郎@スカーレットが強かった。調整ミスったのか,イスナさんが弱いのだけ残念。
→ キャラは本当に全員登場している感じ。セツミさんや一部コットンのキャラまでいる。中にはクレア@whiteとか小マル@ゆきいろとか,登場自体がネタバレ全開の子たちがいるので,その辺クリアしてない人は気をつけよう。


『シュヴァルツェスマーケン』短篇集2巻。グレーテル過去編,リィズ過去編,ファム過去編と,キルケ主人公のコメディ1編と全4編である。グレーテルとファムの話は想定の範囲内として,リィズ過去編が陰惨すぎて言葉がない。この容赦の無い救いの無さの上に,本編のあの悲劇とは……実は本編の最新刊をちら見してしまったので,落ちを知っているのだが,だからこそこれはとんでもない。あまりに悲惨すぎて,自分の中でテオドール君のいじけっぷりとか,さらに飛んでオルタのタケルちゃんの苦悩とかはなんだったのか状態である。全マブラヴ系作品で一番悲惨な人生送ってないかこの子。リィズさんは精神的に強すぎたがために,こんなことに。生きて生き抜いた結果があれとか報われんすぎる……
→ 冷静になって読むに,うまいなと思うのはアクスマンとベアトリクスの使い方である。本編だとどちらも悪役で,かつベアトリクスの方が悪しざまに描かれている。ベアトリクス率いるモスクワ派は,「東ドイツをソ連に売ろうとしている連中」であり「いざとなればシベリアに逃亡しようとしている連中」である。だからこそ,まだしもベルリン派の方が軍と妥協できそうな雰囲気があるが,この短編を読むと全く違う。アクスマンらベルリン派はソ連の後ろ盾がないからこそ立場が弱く,ベルリンにいつくためになんでもするから醜悪なのだ。短編で漏れる情報が本編にうまくつながっているし,またこの違いがベアトリクスとアクスマンのパーソナリティー自体にも現れているので,印象深くなっている。
→ 本編は反体制派(と西側)・国防軍・ベルリン派(シュタージ中枢)・モスクワ派(とソ連)の4つ巴の戦いで,「それぞれ隣り合ってる勢力とは妥協可能」,一方で「一番実力があるのはモスクワ派」という状況だが,ベルリン派の立ち位置絶妙だよなぁ。ちょうど反体制派との間で国防軍の取り合いになってて,国防軍を吸収できれば戦えるけど国防軍は反体制派よりでそう簡単でもない。どうなんのかねこれ。


・『UQ HOLDER』1巻。本作については連載開始直後に大きく取り上げている。『ネギま!』に対する私的落穂拾い
→ ここまでは思った以上に王道の少年漫画をしていておもしろい。この路線でやってくならそれほどお色気はいらんわな。
→ それでも,なんというか斬岩剣とかリク・ラク・ラ・ラック・ライラックとか読むと,こう胸にこみ上げてくるものが。やはり『ラブひな』と『ネギま!』は我が青春であった。


・『DIVB スレッジハマーの追憶』3巻(完結)。ハマさんも壮絶な人生である。こっちは報われてるからまだマシだが。後藤女史の「神様は何してるの!」「何でこの人ばかり…こんな過酷な目にあわなきゃならないの」がほんとその通りすぎる。
→ さて,エルデマン・レポートが世に出てからが第二部。どうなるのか,楽しみに待ちましょう。


以下,叛逆ネタバレ。

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2013年12月22日

WORLD END ECONOMiCA Episode.3 レビュー

Epi.2のレビューはこちら。Epi.3にて完結である。案外と致命的なネタバレ無しで書けそうだったので,ネタバレ無しで書いてみよう。

Epi.3を単体で見るならば,これは経済が政治に衝突する話である。政治が無力であった月面都市は,だからこそ壮大な実験都市でもあった。政治的しがらみの無い環境で,経済がどこまで羽を伸ばせるのか。そうして必要最低限の政治と,最大限の経済が都市にもたらすものは何か。この都市を格好の舞台として,政治と経済,国家と個人のかかわりに迫ったのがEpi.3と言える。もちろん,突然話が政治に移ったわけではない。ここはネタバレになるから書けないが,Epi.1・2,特に2での展開があったからこそ,うまいこと話が政治につながった。まさに,経済が徐々に歩み寄って,政治に衝突したのである。してみると,支倉凍砂が最初から書きたかったのはEpi.3で,1と2は舞台を整える作業に過ぎなかったのかもしれない。本作はEpi.1も2も刺激的なストーリーであったが,Epi.3はストーリーどころか,扱う題材自体が刺激的極まるものであった。

別に語られている政治思想が危険なのではない。ではなく,「政治の役割とは何か」というテーマに切り込んだこと自体が刺激的であったし,本作はこのテーマを投げっぱなすことなく一定の解答を出した。しかもそれは「経済を放任すれば恐慌が,格差が」という一般論ではない。人によっては受け入れがたい解答かもしれない。だからこそ,本作は名作と言ってよい。陳腐化が進み,ともすれば目を背けてしまいがちな昨今の現実の政治ではあるが,本作はそこで再び「政治とは何であったか」を問いなおしてくれたと言えよう。それも,極めて大胆にも,経済の方角から直球で。よく危険球退場にならなかったものだ,というか,だからこその同人という舞台なのだろう。この企画を通す勇気がある会社は,エロゲメーカーならありそうだが,その他の企業では無い気がする。

こうしたテーマ優先の作品はストーリーの側がおざなりになりがちだが,そこは支倉凍砂,経済の話ありの恋愛の話ありのでうまいこと話を引っ張った。この点,中だるみが起きたEpi.1よりも2や3はうまくなっていた。


一方,本作を三部作として見るならば,主人公の一代記にほかならない。彼は苦難の道のりを乗り越えて,夢と野望を捨てずに歩いていった。彼の努力と才覚が引き起こした大きな流れは,彼の活動領域を次第に広げていった。これは彼の扱う金額の大きさにもそのまま現れている。Epi.1では,せいぜい数百万から数千万の規模であった。それでも,一人のデイトレーダーが,そして周囲の数十人たちが人生を狂わせられるには十分な金額であったが。Epi.2は,取引が個人ではなく,企業体となった。結果として扱う金額は軽く億単位となり,企業間の抗争にも巻き込まれていく。そしてEpi.3では国家経済全体にかかわることで,数千億,数兆単位の資金が飛び交うことになる。段を追ってスケールが巨大化していく。各エピソード間には4年ずつ開きがあり,つまり作中で計8年の時間が流れているが,この時間的開きによって,突然数桁増えることの違和感を減らしている。終わってみるとうまい仕掛けであった。


なお,Epi.3を買うとEpi1・2は同梱されているので,今からやるのは十分にお勧めできる。ついでに言うと,次の冬コミで完結記念のファンブックを頒布するようなので,可能なら10日でクリアすると良い。全Epi.を通して経済学・金融知識を要求されるが,作中それぞれかなり丁寧に説明されるので,それほど心配はいらない。Epi.1-3までぶっ通しでやっても20時間はかからないと思う。






以下,ネタバレを少しだけ。
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2013年09月06日

最近買ったもの・読んだもの(放課後しっぽデイズとか)

・『放課後しっぽデイズ』クリア。エロゲレビューとして個別に記事を立てるほどのものではないので,ここで簡潔に。本作は新原画家を起用するにあたっての完全な実験作であるが,実験はおおよそ成功であったと言ってよいと思う。絵のクオリティは十分に高かった。べっかんこうに似ていることもあり,塗りで近い雰囲気を出すことに成功しており,これなら混ざっても違和感はあまりないのではないかと思う。
→ ただし,エロゲの原画家は脱がすとパースがとたんに取れなくなるパターンがをしばしば見るので,本当に実験したかったのなら,むしろちゃんとエロゲーにして発売するべきだったのではないか。15歳以上推奨というのは中途半端だ。
→ シナリオ等については超短編なので評価のしようがない。2時間ほどで終わるので,1500円という値段設定は妥当というよりはむしろ高いくらい(普通のエロゲーが8800円で15〜20時間とすると,時間あたりの値段は割高)。というわけで,夏野イオ原画の次回作に期待して70点。


・『大室家』1巻。基本的にいつものゆるゆりだが,どちらかというと京子がいないときのゆるゆりではあって,彼女がいない話が続くとこうなるのかという点では新鮮だった。櫻子では京子の役はできない(しする必要もない)。撫子の友人達も花子様の友人達もキャラが立ってておもしろかった。美穂から漂う清楚系ビッチオーラが半端なさ過ぎていつ見ても笑える。あとみさきちの「今日はなんか身長の調子がわるい」がツボ。
→ 撫子の彼女が明かされるのははるか先のことなんだろう。今のところ全員ありうる感じだが,注意深く読んでいきたい。隠してあることを念頭において読むと,それぞれの話に緊張感があってよい。


・『なもり画集 ゆるなもり』。外装が段ボール状で中は海産物という設定,「取り扱い注意」だの「きときとだよ」(富山県の方言で「活きが良い」の意)だの書かれているという超富山県愛あふれる仕様となっている。一方画集自体も小学生の学習帳を模した作りとなっており,なんとも徹底している。なもりが4人という設定はもはや公式の模様。
→ 中身は169ページにわたってみっちりイラストが掲載されているが,定価が3600円超と普通の画集と比べても高いので,これくらい載ってないと困る。グッズイラストやpixiv投稿作はもちろん,かなり昔のものやマイナーなものまで載っているので資料価値はそれなりに高い。これを見ると2007年から09年の間に超絶進化を遂げている。『ゆるゆり』連載開始頃にはおおよそ今の絵柄になっているが,ここで1・2巻を読み返すとまだ昔の絵柄の名残が読み取れておもしろい。すでに見たことのあるイラストが多いとはいえ買って損はなかろう。


・ガルパン「DEEP PANZER CD」。内容は大きく分けて3つ。まず,東富士の自衛隊の総合火力演習に,戦車道の面々が招待されて演習を行ったもの。これはまあおもしろかったが,同時にドラマCDの限界でもあるかなと。やっぱり走っている戦車の映像が欲しくなった。
→ 次にあんこうチームによる合唱2つ「戦車道行進曲」と「雪の進軍」。「戦車道行進曲」はとても良いアレンジなんだけど,合いの手はいらなかったのではないかと。もしくは合いの手ありと無しの両方のバージョンを収録して欲しかった。「雪の進軍」はあんこうチームより,作中通り秋山殿とエルヴィンの2人に歌って欲しかった。もしくはこれも両方収録して欲しかったかな。さらにあえて言うなら歴女チームに歌わせてもおもしろかったのではないか。これをあんこうチームが歌う意味はあまりなかったように思う。
→ そして作中の戦闘の名シーンの,BGMや台詞抜き。要するに戦車の駆動音と砲撃音しかないというマニアックな仕様だが,正直タイトルを見ないとどのシーンがわからない。
→ 総合して2000円分の価値があったかと言われると微妙なラインだが,まあファンアイテムと割り切ることにしたい。


『DIVB スレッジハマーの追憶』2巻。つなぎの話なので感想を書くのが難しいが,まず思っていたよりかなり早く出たなと思った。スレッジハマーがすぐに完結するとなると,これは第二部の開始もそう遠くないか。期待して待っておこう。
  
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2013年08月21日

トラベリングオーガスト感想

8/17,オーガスト初のコンサート「トラベリングオーガスト」に行ってきた。簡単に感想でも書いておく。

2階席の最後方で,はっきり言って歌手の顔は全く見えないレベルだったが,生音が聞けただけマシだったと思いたい。恐ろしい倍率だったそうで,かく言う私も抽選漏れ,その後の早い者勝ち決戦を職場からのサボリーマンで制し,ようやく席を手に入れたのであった。夏コミの小冊子に「最初は300人くらいの会場の予定だった」とあり,さすがはオーガストさん,ゲーム外でも笑かしてくれますねと言わざるをえない話であった。確かにガラガラなら赤字なので責めれはせんが,ソフトやサントラの売れ行きから言ってそれはないよそれは。結果的に,1800人収容の文京シビックホールが借りられて本当に良かった。

もう一つやらかしたのは物販で,1800人の客席で2限かけたんだったら,CDやパンフあたりは3000以上はけるのは自明だろうと思うのだが,アキバのほうでやった物販で想像以上に売れてしまったのか,売り切れの嵐だった。特にCDが買えなかったのは痛い。後日通販及び一般販売するそうだが,通販で9/13,一般発売日は9/27とはちょっと遠い。その物販,オーガストにしては開演前に列をさばききれなかったというのも,コミケの列さばきに命をかける企業にしては珍しいやらかしだなと思ったのだが,後から話を聞くに,やっぱり文京シビックホールを借りたのが苦しかった原因らしい。前日まで戦争関連で埋まっていて,前日設営ができなかったらしい。確かに前々日が8/15だから,そういうことにもなろう。ちなみに途中休憩も,どころか閉演後も物販列は稼働していた。私も閉演後の物販列でなんとかパンフレットとTシャツだけ買えた。CDは後で通販せねばなるまい。

コンサートそのものはすばらしかった。オーケストラアレンジもピアノアレンジも,それに乗る歌声も。ライブにしなくて正解だったと思う。榊原ゆい曲あたりは観客も歌いながら飛び跳ねてもよさそうなもんだが,『明け瑠璃』の他の曲や『ユースティア』の曲でそれはちょっと難しい。BGMのアレンジを聞く時間も長かったから,それでライブ形式は味気ないと思う。やっぱり座ってゆっくり聞きたい。

と言いつつ,最後は皆で叫んだり手拍子打ちながらTravelingAugustだったりでかなりテンション高かった。やっぱりゆいにゃん圧倒的に盛り上げ上手である。全プログラム終了後は幕が降りる前にスタッフロールが流れ,ああやっぱエロゲメーカーだわと思った。あれは良い演出だった。

ここでもう一つだけケチをつけさせてもらうと,背景で流れるムービーが深刻な素材不足状態であった。使えるCGはまだ沢山あったように思うのだが,どうも一部CGしか使っていないがためにそうなっていた。かと言ってネタバレを防いでいるわけでもなく,例えば『フォアテリ』なら思いっきり伽耶様が出てきており伽耶様超可愛い,よくわからない。どうせあの場にいる人なんて多くが多くをクリアしている可能性が高いので,バリバリネタバレすれば良かったのでは。

やはり,コンサートにはtwitter上のフォロワーさんが何人も来ており,考えてみると1800分のでそれはわりとすごいんないかと思う。なんというか,フォロワー同士のつながりでたどれば3手以内にほとんど全員捕捉できるんじゃないか。そういうわけで比較的よく交流のある人と話したいなと思い,自分にしては珍しくがんばって声をかけて,pomさんとOYOYOさんと話をしてきた。最後まで楽しい一日であった。

  
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2013年06月14日

闇色のスノードロップス レビュー

本作はネ右の勧めでプレイした。自分の感じたことも大体書いてくれているので,彼のレビューを読んだほうが良い。
→ 闇色のスノードロップス レビュー(凍てつくが如く、哀槌を鍛つ)
「凌辱と純愛が綺麗に住み分けられており、ルート毎に結末が大きく異なる。大別すると、純愛展開・凌辱展開・ハーレム展開の三種類。」であることさえ押さえられていれば,本作をプレイする前情報としては十分であろう。当然,私も同人版未プレイである。

さて,本作に対する私の感想の第一は「日常がたるい」の一言に尽きる。無論,日常があることで物語が暗転した時の落差が激しくなるので,本作のテーマから言って日常描写は不可欠だ。また,そのような目的である以上,過剰におもしろい必要はなく,ギャグが盛ってあればいいというものでもない。が,本作はそれ以前の問題で,あまりにもたるいのである。原因は物語の筋とテキスト双方にある。同じ事の繰り返しで,ただ漫然と日々が過ぎていく。テキストもあからさまに乗っておらず,同じような言葉が続く。ここまで書けば歴戦のエロゲーマーなら大体どういう状態か,想像がつくのではないか。もうちょっとなんとかならんかったのか。

また,確かに純愛展開・ハーレム展開・陵辱展開と綺麗に分岐するものの,あからさまに純愛展開・ハーレム展開(の一部)は物語が適当で投げっぱなしである。同人版を知らないのでこの点あまり強く言えないのだが,元々は無かったのなら付け足す必要があったのか疑問になる出来である。実際,同人版もやっている人のレビューを読むとそういう指摘もされている。ただし,純愛展開・ハーレム展開を作ったおかげで,あるおもしろい現象が生じた(Kanon問題)。これに関する考察は後述する。

一方,陵辱展開についてはなかなかおもしろかった。情報管理については巧みといってよく,日常の節々で小出しにしつつ,ルートに入った途端にどーんと一気に放出する。主人公が気づいたときにはすでに手遅れであり,完全に逃げ場がない状態が演出される。プレイ時間ものの10分の間にして,主人公の人生が一気に暗転する急転直下の展開は,急激すぎておもしろい。主人公は解決策を持ち合わせていない。彼は極普通の一般人であって,力があるわけでも知恵が回るわけでもない。だから,うまく行くときは「愚かな勇気」を発揮した時だけであって,しかも「愚かな勇気」そのものが功を奏するのではなく,その結果何かしらが起きて偶発的に助かるのである。偶発的ではない助かり方をしては”愚か”とは呼べず,かと言って助からないのでは”勇気”の意味が無い。絶妙なバランスの上で,本作のテーマは成り立つ。「愚かな勇気」をテーマに据えただけのことはあり,とても良かった。

絵について。立ち絵は基本かわいいのだが,一枚絵になるとパースが狂い脱がすとさらに頭身がおかしくなるという,一部エロゲンガーに共通する現象は,なんと表現したらいいものか。誰か命名してください。せっかくの陵辱展開が,これで萎えたことがなんと多いことか。音楽。ボーカル曲は良かった。BGMは平凡で,正直全く記憶に残らなかった。システムは可も不可もない。使いづらいとまでは言わないが,使いやすいとは言いがたい。この辺は総じて同人上がりらしい,という感想でまとめておきたい。


総評。光るところが無かったわけではないものの,眠いテキスト・共通パートが大きく足を引っ張り,絵・音・システムでも特に褒めるところがないので,終わってみるとどうにも中途半端さが目立つ。多くのレビューにあった文言だが,同人上がりならもっと尖った作品でも良かったのではないか,と私も思う。70点弱を付けておく。


以下,ネタバレというか,本作におけるKanon問題の話。遡及的過去形成,という言葉を見て何のことだかわからない人は先にそっちでぐぐるか,回れ右を推奨します。
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2013年04月28日

大図書館の羊飼い レビュー

ユースティアから再び学園物に戻ってきた本作だが,スタッフの「ユースティアでの成果を取り入れつつ」と言っていた通り,テキストや演出と言った点では明確にポスト”ユースティア”であった。その意味で,界隈の反応がおもしろかった。ネガティブな反応は,言辞こそ多種多様であったが,その内容はおおよそ全て同じで,最も端的に表現していた言葉を引用すると「守りに入った作品であったのに,守りきれていない。」

これには,なるほど,と。私的にはユースティアで学んだことを取り入れた結果として進化した部分のほうが多かったと思ったのだが,このような反応を批判できないのは,確かに中途半端さも感じたからである。特に,描写の丁寧さはユースティアから引き継がれたものと言って間違いないと思うが,一方であまりにも長大な共通ルートや,それに付随する展開に比べてテキスト量が多いことなどは”肥大化”と言えるかもしれない。基本的に本作に対して好印象しかない私でも,共通部分は長かったと感じた。ここでやっとOPムービーか,と思ったら即分岐し,個別ルートに入ったので,確かにバランスは悪い。(もっとも,OPは共通の前半に設置しなければならないということ自体が先入観ではあるが。)

一方,批判している感想であっても,ほとんどの場合で「共通が楽しかったのが救い」と書いている通り,それでもユースティアで培ったものを用いた成果はあったように思う。この描写の丁寧さは他のブランドではなかなか見られない。単にわかりやすいだけでなく,テキストの力を使って凡なテーマをなんとか楽しめるシナリオに昇華させているところはある意味本作最大の目玉だったのではないか。言ってしまえば,ちょっと突飛なテーマだったのは鈴木のルートとトゥルーエンドのルートくらいで,あとはまあ大した話はしていないのである。にもかかわらずちゃんと読ませるシナリオだったのは大したもんだと思った。その意味で,批判のうち「個別ルートが適当」というのには納得できない。5人とも個性をきっちりと描いていた。あとはまあ,やや細かいところで,白崎つぐみの思想を茶化して「白崎教」とセルフ揶揄していたところは地味に良かった。その他,読者からツッコミを受けそうな不自然なポイントは先回りしてつぶしていたところが見受けられ,その辺も指して丁寧だなと思う。


さて,学園物としての本作を評すると,楽しいは楽しく,とりわけ私には割りとド直球であったのだが,それだけに一般性を持った話だったかどうかと言われるとちょっとわからない。この話の大意は「学校から阻害されていたものたちが集まり,逆に学校を主導する立場になっていくカタルシス」でしかなく,そこに共感できるかどうかは感想を大きく分けたのではないか。ポイントは現実の生徒会(特に高校の)も似たような機能を持っているということだ。私自身生徒会関係者であったが,オタクの隠れ蓑組織だったということは我が母校ならずネット上でしばしば聞く話である。そこに本気で焦点を絞って本作の大枠を定めたのならば,おそらく顧客層のど真ん中は突いているが,ど真ん中すぎてダメだったんじゃないかという気がしてならない。

これがめんどくさいのは,単純に阻害されていた生徒だったというだけではなく,生徒会活動をそれなりに楽しんでいた層でなければならないところだ。たとえば,「生徒たちが22時・23時まで学校に残ってなんの活動をしてるんだ」という指摘をしていたレビューがあったが,生徒会活動をしていると割りと普通のことで,日付変わるまで残っていた結果セコムに捕まった勢としてはどちらかというとそこで突つかれるのが驚きであった。実際のところド直球だった人はどの程度いたのか,気になることころである。アイドル的人気の高い生徒会を不自然ながら持ってきた『フォアテリ』,主人公もヒロインたちも別に阻害されていない『明け瑠璃』に『はにはに』,と比して本作は,同じ学園物ながら随分と毛色が違うものが持ち込まれた。

その他の点について。絵・音楽・システムについては文句の付け所がない。システムについては,多くのレビューにある通り「次の選択肢までスキップ」が無いのが画竜点睛を欠いたが,スキップがそこそこ早いのでなくて困るということはさして無かった。また,「サスペンドでゲームを終了すると次回起動時にタイトルを経由せずいきなりそこから始まる」のがすばらしく使いやすかったので,これはエロゲ界の新スタンダードになってほしい。プレイ時間は25時間はかからなかったくらいだが,批評空間見ると中央値が30時間とのこと。一般的なエロゲが20時間前後らしいので,やはり本作は長い。点数は83点とする。


以下,ネタバレ……というよりも,鈴木の圧倒的人気について。
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2013年04月05日

美少女万華鏡2 −忘れな草と永遠の少女− レビュー

1のほうから続けて。 

シナリオは1の方でちらっと書いたが,2の方は割りとしっかり怖かった。主人公が白昼夢を見ているらしきことは序盤からしばしば現れてくるのだが,それ自体単純に怖いし,プレイヤーは真相が非常に気になるのにもかかわらず主人公はなかなか重い腰を上げず,その乖離もまた怖い原因だと思われる。で,その真相なのだが少し難解なこともあってか評価が分かれているようで,おもしろかったという意見もあればこのシリーズに凝ったシナリオは不要だろうという意見も多いようだ。確かに怖がる一方で実用するというのは困難かもしれない。ついでに言うと「シナリオが矛盾している」という声もあり,なんのことはなく本作は主人公が白昼夢を見ていることに加えておそらく……なのだろうが,この辺りはネタバレに隔離しておきたい。バッドエンド・ノーマルエンド・ハッピーエンドと3つあるので,攻略する際は気をつけよう。全部見ないとCGもシーンも埋まらない。

メインヒロインのキャラはどちらのどっちのほうが好きかと言われたら,属性も性格も1の霧枝のほうになる。が,Hシーンのエロさはどちらかと言うと2のほうが優れていたと思う。八宝備仁氏の原画だと,こういうむっちりした子のほうが合うのではないか。アニメーションもよりしっかりと動くようになっていたし,数も多かった。ただし,前作は吸血鬼という設定を生かしていろいろ特殊な衣装やシチュエーションに挑んでいたのに対し,こちらは単純なイチャラブの和姦が多く,シチュエーションには若干乏しい。また,卑語の乱舞は本作も変わらず,ただし設定的に本作のほうが違和感がなかった。しかし,とあるシーンは卑語乱発というレベルではなく,もう笑わせようとしてやってるだろうあれは。やった人はどのシーンを指しているかわかると思う。

CGは33枚でうち26枚がHシーンのもの。やや割合が下がったのは通常のイベントCGが増えているためで,要するにエンディングが分岐するせいだろう。回想数は16で,前回の1シーン1枚体制よりもややマシになっている。多くのHシーンが前作よりもやや長く,CGを2枚使うようになったため,さらにボリューム感がある。音楽は曲数こそ変わらないが質は悪くないと言ってよい。怖いシーンはちゃんとBGMも怖い。システムは進化した,というか既読スキップが増えてようやくまともなシステムになったと思う。前作はエンディングが1つしかなく,CG埋めるためにやるとしても2周すれば十分だったが,今作はエンディングが3つあるから,既読スキップがないと耐えられなかっただろう。

プレイ時間は前作よりも少し長くなっていて,それでもHシーンをじっくり読んでエンディングをコンプしたら6・7時間はかかると思う。3000円弱でよくこれだけのボリュームをもたせたものだと本当に思う。点数は80点をつけておく。少しだけ下がったのはキャラの好みの差なので,実質的に差は無い。


以下はシナリオについて。完全ネタバレ。ひょっとして解釈が間違っている可能性もあるので,容赦なく「こうなんじゃ」と指摘していただきたい。
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2013年04月04日

美少女万華鏡1 −呪われし伝説の少女− レビュー

こっそりクリアしていた。お前大図書館のレビューどうしたんだよという声は聞かなかったことにして,先にこっちのレビューを書いておきたい。

ロープライスの抜きゲーである。その意味ではレビューもくそもなく「やっぱり吸血鬼は最高だった」の一言で終わらせてもいいのだが,それだけでは終われないのでもう少々何か書いておきたい。吸血鬼物のエロゲーというと『彼女たちの流儀』にしろ『FORTUNE ARTERIAL』にしろ大体エンディングが2つあって,一つは普通の人間である主人公が最後まで人間のままで終わるものと,主人公がヒロインの眷属となり,永遠にともに生きていく,というもの。片方が個別エンドでもう片方がトゥルーに配置されることが多い。上に挙げた以外では『こなたよりかたなまで』や『とらいあんぐるハート1』で吸血鬼が出てくるが,これらは1つしかエンディングが無く,強制的に片方のパターンしかない。で,本作『美少女万華鏡1』もエンディングが1つしかないわけだが,これが(ネタバレ)後者の「永遠」エンドであった。私個人の嗜好としては,どちらも好きだがその中で選べばこちらなので,ここは好感を持った。プレイ途中ではもう片方の方で終わるのか,もしくはバッドエンドかと思っていたので,終盤の展開は少し意外であった。(追記:『こなかな』の両方エンドがあるようだ。やったのが昔過ぎて記憶が無い……)

本作のジャンルはオカルティック官能AVGである。実は2もすでにプレイ済みで,あちらはけっこう怖かったのだが,こちらは全く怖くなかった。シリーズ通してホラー物というわけではないらしい。しかし,ちっとも怖くないことと古典的な構成の吸血鬼物であること,かつ物語自体の方向性から言って,ゴシック小説的と言えるかもしれない。ここまでの文章で分かる通り,物語はあってないようなものというわけでは決して無い。無論基本的には抜きゲーなので,Hシーンに継ぐHシーンであり,それ以外の文章はシチュエーションのつなぎに徹している状態である。が,キャラクターの心の機微,変化はそれでもきちんと表現されており,よくこの短いつなぎの文章でがんばってるものだと思う。かつ,最小限なのでHシーンの邪魔にはなっていない。とはいえシナリオに期待して本作をやるのは完全にお門違いなのでお勧めしない。あくまで吸血鬼のお嬢様とのH三昧を送りたければ本作をやるとよい。

肝心のHシーンについては,ド直球に言えばキャラに萌えられれば実用性は抜群と言っておけば十分だろう。シチュエーションもコスチュームもバリエーション豊かだ。ただし,これは本作を私に勧めた友人からも言われていたことだが,非常に卑語が多く,場面にあわなくても乱発するのでそこだけは萎えるポイントである。このような不満は『Before Dawn Daybreak』や『Euphoria』あたりでも感じたので,抜きゲー(とそれに付随する黒箱系)に共通する欠点かもしれない。とりあえず卑語を言わせておくというのが抜きゲーのある種の流儀だとするなら,それは安易すぎる流儀だと思う。卑語連発でも物語に即していれば別に問題ないので,『美少女万華鏡2』のような設定ならまだしも納得するのだけれど。

CGは23枚中21枚がHシーンのもの。シーン回想は15。この辺りからも推測できるように,ほとんどの場合で1シーン1枚である。そこで区切るのはシーン回想の水増しだろうというなものもなくはないので,数字はあまり信用しないほうがいい。もっとも,それでも本作は十分にHシーンのボリューム満点だが。CGは差分が非常に多く,こまめに表情が変わることも含めて,この価格にしては十分がんばっている。音楽はやや曲数が少ないものの,プレイ時間を考えれば聞き飽きるということはないだろう。システムも軽くて使いやすいが,既読スキップが存在していない気がするのは気のせいか。

プレイ時間はHシーンも割りとじっくり読んで5時間ほど。点数は80点強をつけておく。
  
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2012年12月14日

ゆきいろ レビュー

いつも通りのねこ……とはちょっと行かなかった。行かなかった理由を探ると,そもそも新生ねこねこソフトの存在意義にかかわってしまう。つまり,昔の通りとは行かずとも,できうる範囲で,コットンソフトの制作の合間に,片岡ともの企画をやる,ということである。できうる範囲で,というのがミソで,『そらいろ』,『white』とプレイしてくると突貫工事具合や,数合わせのサブルートの駄作具合がどうしても出てきてしまっているのがわかる。『ラムネ』や『朱』は,おもしろかったかどうかを別とすれば,完成度が高く片岡ともの世界が明確に表現されていた。なお私は両作品とも好きだ。

とはいえ,『そらいろ』や『white』は駄や凡なルートであっても異色感はなかった。……と書くと次の文が予測されてしまいそうなので,あえて次の次の文を先に書いておこう。早狩武志とpikazoはほとんど悪くない。彼らは呼ばれて仕事を受けただけである。早狩さんのシナリオは,『ゆきいろ』に合わなかっただけでつまらないシナリオではなかった。pikazoに至っては,あの絵じゃないとマルはマルとして成立しなかっただろうというぐらいに,シナリオにぴたっとはまった絵であった。が,ご両名が浮いていたことはどうにも否定しがたいのである。特にマルと樹奈が並んで立ったときの違和感がぬぐえないまま,コンプリートにまで至ってしまった。いっそのことpikazoが全員分描けば丸く収まったと思うのだが,作業量的にpikazoが死んでしまうので実現は苦しかろう。

邪推になるが,『終わる世界とバースデイ』の制作とぶつかってしまったのが大きな原因ではないか。それで今回コットン陣の手があまり借りられないので,新ライターに外注原画を頼んでみた,という流れでこうなったのではないか。ゆえに,本作は冒頭の通り,新生ねこねこソフトの存在意義を問うことになってしまった。コットンソフトの企画の”合間”で制作できなかったときの対処法は?確かに外注で頼めば質は保てるかもしれない。でも,それは片岡ともの企画とマッチするものなのか?また,コットンソフトの制作陣と調和できるものなのか?この推測が外れていたとしても,問題の本質は変わらない。四作目はそれほど労力がかからないであろう『サナララR』となったが,五作目はどうするのだろうか。『white』のレビューで書いたことを再掲しておく。「複数ライター制自体がダメとは言わないが,片岡ともの場合は表現したいものが非常に独特なので,相当綿密に打ち合わせて欲しい。」

シナリオは下段ネタバレゾーンで書くとして,絵について。原画陣のうち,pikazoは立ち絵はすばらしく繰り返しになるがマルの立ち絵に関しては神がかった出来。一方で一枚絵はときどき不安定。旧来の原画陣については文句なし。樹奈の立ち絵のバリエーションがとても多かったのはとても良かった,あんころもちさすが。演出は飛び抜けてすごいというものは無かったが,寒い中キャラがしゃべると白い息が出る演出は細かいがとても冬らしくて良かった。本作は背景の雪の積もり具合といい,キャラの寒がりようといい,「ザ・冬ゲー」というのが全面に押し出されていて良い。音楽は普通だが,ボーカル曲は3曲ともすばらしい。特にOPはムービーの出来もあって名作感がとんでもないので,本作をプレイする気がなくても一度は見てほしいと思う。



私的に2012年ベストOPムービーとしたい。さて,点数的には,3姉妹(ちとせ)・あきらのルートは55〜60点くらい,樹奈は他のゲームならまだ75点ついたけど『ゆきいろ』として考えると65点くらい,翠子先輩は75点満点75点という感じ,マルはさすがに80点くらい。で,ムービーやボーカル曲の出来などを勘案して総合70点前後。ぷちファンディスクは今からやるので,何か印象的なことがあったらここに追記する予定。


以下はネタバレ。
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2012年11月23日

WORLD END ECONOMiCA Episode.2 レビュー

前作,Epi.1のレビューはこちら。Epi.3で完結する作品で,Epi.2はつなぎに徹した作りになっていた。そのため,この作品単体で,ネタバレ無しで語るのは苦しいし,ネタバレ込でも書けることは少ない。短く思ったことでもまとめておこうかと思う。プレイ時間は5〜6時間ほど。

以下,Epi.1プレイ済orネタバレ上等の方は。Epi.2のネタバレは伏字にしてるのでそこはご安心を。
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2012年11月14日

月に寄りそう乙女の作法 レビュー

大変に気分がいい。

とりあえずこう言っておかねばならないのかな的な。さて,本作は女装物である。そして本作が女装物(あるいは男の娘物)として成功していたか否かはやや疑問があるが,私自身それほどこのジャンルに興味が無いため,割りと評価には関係がなかった。というよりも,うまく「処理」したようなところはある。女装物として使えるギャグの大半は共通ルートで消化したし,お約束としてのシナリオは瑞穂ルートでやっているからこそ,他3ルートは別のテーマで引っ張ることができたように思う。無論のことながら,他のルートでは女装の意味が無かったというわけではなく,少なくともルナのシナリオは主人公が女装でなければ成立しない。が,ルナシナリオの本質は主従物である(プレイ済みの人には言うまでもないことだが)。

しかし,それ以上に私が強調したいのは,本作は天才たちの物語としてとても美しかった。努力する天才の姿とその輝かしき栄光は美しいものだ。湊のシナリオは練り込み不足だが,ユーシェとルナのシナリオはそれぞれ別方向に努力する天才たちの物語として良い物であった。細かいところはネタバレのところで書くこととしよう。横道にそれて少しだけ自分語りをすると,私自身も三国志だと曹操が一番好きな人物であるあたり,割りと衣遠の才能至上主義には共感を示すところはある。とりわけ芸術のセンスは稀有なものだと思う。しかしながら才能も上を見れば切りはなく,わずかながら学問の世界でそれを見た身としては彼らの苦悩もわかるつもりであるし,挫折した側の苦悩も身にしみてわかっているつもりである。そうした人種にとって,「才能」を認められるというのは,「人格」を認められるのとは別方向に,無上の喜びと言えるかもしれない。ましてやその両方が重なれば。いずれにせよ,女装物としても主従物としても,ある種の芸術家小説的に読んでも楽しめるのではないか。

あとシナリオ・テキスト面であと書いておくべきことというと,twitter上では服飾面の知識の中途半端さについて指摘があったが,これは私自身門外漢であるのでなんとも言いようがない。ギャグはいつものNavel。インタビュー記事いわく「俺つば,セカジョに比べると抑え気味にした」らしく,確かにあれらに比べるとぶっ飛んで無かったかと思う。が,基調のところでは変わっていない。世界設定としてはセカジョ世界と共通しているが,あちらをやっていなくても全く問題ない。むしろ,やっていても2,3箇所「ああ,これ亜子orアルメンドラのことだ」とくすりと笑えるものがあるだけである。まあそれはそれとして,本作がおもしろかったならセカジョもきっと楽しめると思うので,未プレイの方にはお勧めしておきたい。難易度は無きに等しく選択肢数は少ない。ただし,バッドエンド(ノーマルエンド)だけはやや入るのが難しく注意しておきたい。あのバッドエンドを見ておかないとルナシナリオが一部わかりにくい箇所があるので,先に見ておくこと。実際,それで本作の評価を落としているレビューはいくつかあった。


絵は西又&鈴平のコンビ復活。ただし,各種インタビューを見るに主導したのは鈴平で,塗りもそれにあわせて今までのNavelのものとは少し違ったものになっている。西又のファッションセンスで服飾物というのはちょっと,と思ったが,実際のところ彼女の担当した瑞穂・湊では服飾がそれほど強調されないため,さして気にならなかった。逆に,鈴平はさすがのセンスと言える。一番気合を入れたであろうドレスのCGはユーシェもルナもこの上なく美しかった。音楽は印象にあまり残っていないものの悪くはない。OPの歌(とムービー)はとても良く,今年のエロゲソングの中でも出色の出来。システムは使いやすく,シナリオスキップも実装されている。起動時に解像度を選択できるのがやや目新しい要素か。

総じて,個別ルートのシナリオの出来の差が激しいところだけが大きな欠点になってしまっている。全シナリオがルナ・ユーシェレベルで仕上がっていれば,『まほよ』『古色』あたりを押しのけて今年の界隈の評判を独占するような評価を得ていたと思うのだが,実際にはそうもいかなかった。瑞穂は王道が好きなら良,そうでなければ凡。湊は誰が見ても凡,厳しく見れば駄という出来であろう。点数的には80点弱。同じNavel作品で並べるなら,世間的評価は「俺つば>つり乙>セカジョ」になるだろうし,セカジョを偏愛している自分の目からすれば「俺つば>セカジョ>つり乙」になる。プレイ時間は20時間は行かないくらい。共通が4〜5時間,個別が3〜4時間×4。

が,逆に言って,このレベルの作品がコンスタントに出せるならNavelはAugust並に安定していると思うし,少なくとも次は無条件で買ってもいいかなという気になった。世間的にもかなりNavelを見なおさせる作品になったように見え,とても喜ばしい。驚いたことに,本作は一般的なシナリオ分業をしておらず,真紀士の持ち込んだものに,残りのメンバーが手を入れて形にしたのだそうだ。本作でもギャグの部分はかなり王雀孫や東ノ助が書いていたようにも思えたが,いずれにせよ彼ら二人に加えてこれだけのシナリオがまとまって書ける人が増えたなら今後も安泰だろう。  続きを読む
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2012年10月23日

まどマギ劇場版と今期のアニメ

・まどマギ劇場版。前後編を,昼ごはんを挟んで一日で見た。基本的には総集編でしかないので,あまり新たな感想というものはない。その中でまあ2つほど。以下ネタバレ注意。
→ TVアニメ版,BD版と同じシーンを見るのは3回目で,漫画版に脚本本も含めれば都合5回も同じシーンを味わっているはずなのだが,やっぱり9,10,12話は涙腺破壊ポイントなわけでして。何度見ても耐えがたい。三箇所ともこっそり泣きかけたのだけど同行友人は気づかなかったか気づかなかったふりか。
→ 前編は1〜8話,後編が9〜12話。なので,前編はカットが多め,後編は逆に追加がある。前編は丸々カットされたシーンもあったが,基本的には話のペース自体が巻き気味で,会話の間も微妙に狭くなっていた。TVアニメ版が頭にあるとちょっと違和感があるかもしれない。そんな前編は要するにさやかの魔女化まで進むわけだが,4〜8話まで一気に駆け抜けるためにジェットコースター感がTVアニメ版よりも強い。逆に後編はほとんどTVアニメ版そのままで,追加された部分もさして重要ではないものであった。その意味では,劇場版としての見所は前編のほうがあるのかもしれない。
→ 後編の最後に,三作目の予告。改変後の世界の話。とても気になる引きではあったのだけど,うかつなことは言えない感じ。期待して待ちましょう。


・今期のアニメの1話の感想。
→ 中二病でも恋がしたい。中二病というよりは邪気眼だよね,と言うべきなのだが作中の言葉自体が邪王真眼なのであった。ここで中二病定義論争をしてもしょうがないので黙っておく。1話の痛々しさは割と好感触で,六花もかわいいので良かった。2話まで見たが,先がどう進んでいくのかさっぱり読めない。とりあえず視聴継続で,それほど期待値が高いわけではないが多分最後まで見ると思う。
→ さくら荘のペットな彼女。設定はまずまずおもしろそう。1話はあまり期待してなかった割りにはおもしろかった。ダメなヒロインはよく見るものの,"要介護系ヒロイン"レベルまで来ると確かに新鮮かもしれない。ニコニコで見れる気軽さは強みで,意外と切らずに見続けるかもしれないが,凡百のハーレムものになりそうな雰囲気もあってちょっと怖い。
→ リトバス。まあこれはよほどのことがない限り最後まで見るだろう。2話まで見たけど,どうも個別ルートは一本道に再編成し,鈴ルートを基本につまみ食いしていく感じらしい。確かにあの個別ルートをだらだらとやってもしょうがないし,世界についての細かい説明もめんどくさそうなので,これでいいのだと思う。
→ サイコパス。2話まで見たところ,まどマギの手前素直に褒めるのはやや悔しいが,おもしろい。設定もストーリーもベタこの上ないのだが,どちらかというとまどマギが例外的で(だからこそあれはカルテット作品ではある),こちらの「どっかで見たことあるけどおもしろい」というほうが虚淵らしい。期待して見ることにしたい。
→ ロボティクス・ノーツ。2話まで見たけど,正直に言って微妙。主人公がああいうやる気に欠ける感じなので,動き出せば違うのだろうけどそこまで耐えられるかどうか。前評判では綯さんが出てきたところくらいまでは我慢という話も聞くので,そこまではがんばりたい……けど無理かもしれん。


・淫蟲猟域クリア。エロゲレビューとして単体で投稿するほどの感想もないので,日記の一部として。エロとしては快楽堕ち,痛めつけて殺すの2パターンで,無論のことながら全部触手。ストーリーはHシーンを除くと極めて短いが,HPに書いてある設定と,ライターが和泉万夜,登場人物に夢美がいる,という時点で大体想像のつく感じ。
→ (『EXTRAVAGANZA』ネタバレ注意)久しぶりに会った蟲クンはやっぱりかっこよかった。ただ,右腕に合体したエンドだと,蟲クン死んでない?ファンサービスだから気にしないほうが良いとは思うけど。  
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2012年10月14日

白衣性恋愛症候群リセラピー レビュー

工画堂の作った百合ゲー……のはずなんだが,フタを開けてみるとなんというかカオスであった。なお,百合ゲーであることは間違いないのでその点は大丈夫である。

タイトルからも分かる通り,舞台は病院。主人公及び攻略ヒロインの過半数は同じ看護師である。残りのヒロインもすべて患者であり,完全に病院の内部で完結している。物語は主人公が新人看護師として病院で働き始めるところから始まるが,その後の決して短いとはいえない共通ルートは,百合ゲー的いちゃいちゃというよりも「使えない新人の成長物語」兼「看護師の仕事紹介」がその大半を占めている。主人公の沢井かおりは新人ゆえにしかたがないとはいえ,あまりにも看護師として未熟であるため,序盤は割りと叱られっぱなしである。その姿は多くの人が通ってきたであろう世間一般の職場の新人の姿を彷彿とさせられ,社会人ゲーマーにはなかなか心に鈍痛を与えられた人も多かったに違いない。

それにしても本作の主人公は看護師知識が乏しく,よく国家試験通ったなと思わないでもなく,そりゃこんだけ叱られるわなとは思った。これが多くのプレーヤーは医療知識に乏しかろうから,シンクロさせるための配慮としてこうなったのだとしたら,正直余計なお世話であった。せっかく辞典を実装していて,ある程度詳しい説明はそちらに任せているのだし,もう少しでいいから沢井かおりが最初からできる子でも良かったように思う。あまりにも叱られすぎてプレイ中にややフラストレーションが溜まったところがあったのは否定出来ない。医療現場の描写としてはとてもおもしろく,さすがにライターさん自身が現役看護師というだけはある。

一方で,社会人(労働者)が主人公・ヒロインの作品自体が少ないこともあり,こうした職場組織がADVで再現されるとこうなるのか,という点自体がかなり新鮮な体験であった。新人がいて,1年上の先輩がいて,若手のまとめ役がいて,主任(リーダー)がいる。私事ではあるが,私の実生活がまさに若手のまとめ役(やすこ)のポジションではあって,割りと共感するところは多かった。もっとも,私はあんなに叱れてないが(基本甘やかし主義なので)。

後半になると,ルート分岐の兼ね合いもあってかやや百合的な雰囲気になるが,一方で病院や主人公にまつわる謎にも切り込んでいく形になり,こちらも割りと物語が急展開する。ルートによってはファンタジー的な要素も入り,カオスに磨きがかかっていく。ここまで展開が急激だと場面ごとに雰囲気が違いすぎ,一つの物語の筋として崩壊していそうなものなのだが,本作では不思議とそれが少ない。まあ,まったく無かったわけではなくて,仕事でミスしてわんわん泣いてた次のシーンではけろっと別の患者さんといちゃついてたりするので,おいお前さっきまでのシリアスはどこいった!という。いずれにせよ,百合+医療物+社会人物にさらに様々な要素をつっこんだ闇鍋状態というのが良くも悪くも本作の姿である。個々の味も悪くないし妙な調和も感じるのだが,カオスには違いない。エンディングもぶっ飛んだものが多い。本作を「怪作」と評し,エロゲーの領域でやっていたらもっと話題作になっていたかも,と言っていた人がいたが,割りと同感である。

百合物としてどうかという話をすると,まず本作は女性同性愛が一般的な社会として描かれており,そこら辺の葛藤は全くない。当然のものとされているため,悩むだとかそれ以前の話として異性愛と比較する描写自体がまるで存在しない。描写の質・量としては,共通ルートでは前述のように別の要素に押されてやや少なめ,後半は多いものの物語自体のカオスさと百合要素を,プレーヤーの側がうまく切り分けられるかどうか。具体的な描写としては,18禁ではないので必然的に下着姿,キスシーン多めになっている。攻略ヒロインの年齢層は,過半数が看護師ということもあって高め。「三十路との百合なんて見たくない」という方には決しておすすめできないゲームである。楽しんでクリアした側としては,それがおもしろいゲームなのよ,とは言っておく。

プレイ時間としては20時間ほど。共通ルートがその半分以上を占めると思う。個別ルートは,ルート別で大きく分量が異なることを注記しておく。本作はPSP版からPC版への移植を兼ねたリメイクであるが,元からヒロインであった3人(なぎさ・はつみ・さゆり)は分量が多く,かつかなり多めにシナリオが追加されている。一方,新規ヒロインの3人(やすこ・あみ・まゆき)は分量が少なく,上記3人の半分もない。攻略順としては,物語の中核にかかわってくるまゆき,及び他の全員をクリアしていないとそもそもルートに入れないはつみの2人を最後に回すべき,という以外は自由である。個人的には,さゆりのシナリオが一番出来が良かった。点数としては75点強。
  
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2012年08月01日

彼女と彼女と私の七日 レビュー

先に書いておくと,端的に言って名作である。百合ゲーでフリーゲーム,という非常に特殊なゲームである。フリーなので公式HPからダウンロード可能であるが,夏コミにサントラ付のパッケージ版が発売されるので,今からプレイするならそっちを買うことをお勧めする。ショップ委託もあるそうである。


公式HPを見てくれればわかる通り,まずCGのクオリティが高い。また,実際にやってみるとわかるが音楽とテキスト・シナリオの質も悪くない。しかもフルボイスである。短いには短いが,普通にプレイして6〜7時間ほど,読むのが早ければ5時間ほどはかかる程度にボリュームがあり,低価格路線の商業作品程度には作品規模がある。これでフリーというのは驚異でしかない。あとがきで作者たち自身が「こうしたものの安売りは業界の価格破壊につながる」ということを述べているが,にもかかわらずフリーである。

それでもフリーにした理由そのものが,本作の高品質のために犠牲となったものであるとも言える。すなわち,金銭がかかわることで3人のチームワークが崩れてしまうのを避けたことと,それぞれの本業優先で制作したため,ボリュームと比較すればあまりにも長い制作期間がかかったことだ。2chで「同人ゲーム 作 ら な い か」が立ったのがなんと2008年5月,やっとメンバーがそろったのが2009年4月,そこから公式HPが開設され作品公開の目処が立ったのが2010年7月,そして2011年3月にやっと完成した。丸3年近くかかっており,どこの大作だという話なのだが,声優さんやスペシャルサンクス,名無しのスレ民たちを除けば主要スタッフが3人だけなのだから仕方がない。ちなみに,3人だから絵・シナリオ・音楽かとおもいきや,絵とシナリオが同一人物で,3人目はスクリプトだったりする。

やる気と時間(と能力)をかければ高品質なものはできるという点では,まさに同人の醍醐味であるだろう。一方で,きちんとお金をかければ大概良い物ができる,という対義語もある程度正しいのではあるのだけれど。


さて,一方。評価に「低価格であることorフリーであること」を考慮するべきか否かというのは常に我々レビュアーに立ちはだかる問題である。個人的には価格を考慮してもよいと思う。というよりも,価格によらず,全ての外的事情を外して作品そのものを評価するというのは非常に困難で,究極的には内的感想と外的要因の分離は不可能である。繰り返していうが,これは価格に限った話ではない。バグの量やその修正過程,特典の種類や質・量,パッケ絵(その意味ではパッケ版かDL版かということ自体),さらにはその人のプレイ環境等々,感想に影響を与える外的要因というのは無数にあり,”純粋な感想”というものは幻ではないかと思う。

しかし,これだけの作品をフリーで配布されるのは,それはそれで気が引ける話であって,むしろそのことが作品評価に影響しかねない。今からプレイするならばパッケ版を勧めるのはそうした理由もある。いずれにせよ,私はフリーで遊ばせてもらったこと自体を評価したい。点数をつけるなら,85点弱。


百合ゲーとして見るなら,やや異色の作品ではあるかもしれない。それこそ,同人らしい作者のエゴが存分に出ている。受け攻めのリバはしない,貝合わせとかない,ふたなり色は薄い(出ないわけではない),そもそも18禁である点自体等。私自身の好みで言えばド直球でもなく外れているわけでもなくという感じだが,十分に実用的であった,とは言っておく。

シナリオについて。凝った設定の割に短く綺麗にまとめたのはすごいと思うが,そもそもあれだけ凝った設定にする必要があったのかどうかはやや疑わしい。その辺の自信の無さはジャンル名「エセ魔法学園でエセオカルトな18禁ガチ百合ノベル」にも現れている。確かにエセオカルト……ではあるかな。一応,魔法が科学となってしまった世界におけるオカルトの存在意義,という話ではあるので。(ネタバレ:ぶっちゃけて言えば型月の魔術と魔法の違いではあるので,斬新さはない。)一方で発展の余地はあり,あの凝った設定が続編の伏線なのであれば,それは大いに期待したいところだが。
  
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2012年07月01日

魔法使いの夜 レビュー

『DDD』やらなんやらを追っておらず,竹箒の同人誌も買っていないので,実にhollow以来という久しぶりに読んだ奈須きのこの文章。それも彼が学生時代に書いたものをクリーンナップしたものという触れ込みの文章であったが,やはりこの人は魅せるのがうまいなと思った。どちらかと言えば,こんなに読ませる文章だったかなと見なおしてしまった。

さらに言えば,今回は非18禁=一般向けの作品であり,作中の恋愛できちんと実ったものは一つもない。単純に片思いと,恋と自覚されていない恋しかない作品であるのだが,Hシーンを入れなければならないという制約が無かったせいか,恋愛描写がきちんと書かれている。特に,青子と有珠の草十郎に対する感情が変化していく様子やその対比などが明確で,なかなかニヤニヤさせられることがしばしば。こいつら魔術師のくせして青春送ってるじゃないかと思うのだが,それもこれも主人公が草十郎だから成立した話であり,これが鳶丸だったら無理であった。ここにおいて有珠の配置は際立っており,草十郎と青子が一対一であればこれだけの恋愛描写は難しかったであろう。文章の妙もあるが,配役の妙もある。ジュブナイル小説としては十分な成功を収めた。

こう言ってはなんだが,なんだ奈須きのこ恋愛書けるんじゃん,と。これは純粋な作品評ではないものの,私的に大きなインパクトであった。思い返せば『Fate/stay night』は有耶無耶のうちにフラグ立ってるし,『月姫』は少なくとも遠野家側は大体幼少期フラグで処理されており,『月姫』の残りと『歌月』もちゃんとした恋愛描写として濃かったかと言われると疑問である。

ただし,賛否両論分かれるところではあろうが,私はそろそろ類型から脱したキャラ造型も見たい。いや,奈須きのこが書けないと言っているわけではないし,そもそも私は奈須きのこの作品を全て追っているという熱心なファンというわけでもない。しかし,ここに挙げた主要作品『Fate/stay night』『月姫』『魔法使いの夜』に,『空の境界』まで加えても良いが,主要登場人物の造型は,まあ似通っていると言ってもさして反論は受けまい。静希草十郎―黒桐幹也―遠野志貴―衛宮士郎はそれぞれ差異がありつつも,基本的な性格(と口調)はおおよそ近い。正義感が強く,偏見を持たない,振り回される系主人公である。青子の系譜については明確すぎて言うまでもない。きのこさん,強気お嬢様が好きなんだろうなぁと。もっともこの点は,あと2作続くであろう(よね?),『魔法使いの夜』には期待できない。なので,『月姫2』の主人公お二人とアルトルージュ様(予定)に期待しておこう。


それ以外の点について。と言いつつまずは文章から指摘していくのだが,序盤は割りと冗長であった。伏線を張る時間帯というのはわかるのだが,中盤のいわゆる「遊園地」のシーンが始まるまではテンポが悪い。そこからはさすがにおもしろかったが,草十郎がいかに世間離れしているかの描写や魔術の説明,有珠の最初の戦闘などカットもしくは短縮できる部分は多かったように思う。ゲーム展開のちょうど中盤に「遊園地」を置きたかったのはわかるのだが,それで逆にバランスを欠いたのではないか。それに伴って,演出は確かにすばらしかったのだが,文章表示を最速にすると消えてしまうため,事実上文章表示速度は固定されてしまっていた。普段は完全にノーウェイトで読んでいるので,慣れるまではフラストレーションが溜まったのも,序盤退屈に感じた原因かもしれない。

その演出については,前述の不満を横においておくならば絶賛するしか無い。エンディングスタッフロールに酒井伸和の名前があったが,某人(@oratorio765)の言っていた通り「minoriやlittle witchのFFDが目指しているもの」に一歩近づいたんじゃないだろうか。文章(地の文)を消さずに,いかに画面を動かすか。完全なアニメになっては意味が無いのである。この点今回の演出は良かったと言っておこう。この演出で『月姫』がリメイクされたら鼻血吹くと思う。絵は文句なし。音楽も基本的に良かったのだが,クラシックの多用は良し悪しかもしれない。『月の光』や『ジムノペティ』あたりはエロゲだけでも使い古されているおり,よほどうまいこと使わないと印象に残らない。


ボリュームについてはちらちらと不満を聞くが,今時フルプライスで15〜20時間なら普通である。もっとも,ノーウェイト読法が封じられているので,縮めれば12時間くらいかもしれないが,それくらいのエロゲであっても「短い!」という不満が大きい作品はあまり見られない。ちょっと不当じゃないかと思う。一方,完結していないという点については私も擁護できないしする気もない。このへんは『オルタ』あたりと全く同じ現象で,続編ありきの構成なら,それはそれで発売前の広報で言っておいてくれれば妙な不満を持たずに済んだのだが。おそらく,単品でも成立するということを強調して置かなければセールスに影響するという判断から発売後の発表という形を取ったのだと思うが,実際にはそれほど影響しなかったのではないかと思う。TYPE-MOONの懐事情を知らないので無責任な発言にはなるが。

それに関連して,話の展開自体はおもしろかったものの,一作完結ではない弊害も大きかった。これもoratorioが言っていたことだが,「◯◯が出てきた時点で型月信者は話の落ちが完全に読める」。ついでに言えば,『まほよ』は『月姫』冒頭につながる話というのが自明なので,その意味では◯◯が出てこなくても話の落ちに想像はつく。ゆえに,あとの期待はむしろ設定の開陳に移っていく事になる。これがさっぱり明かされないもんだから肩透かしである。第五魔法関連は手がかりを出してくれたがまだ良かったが,草十郎関連については放り投げた伏線が多すぎるし,それ以外にもあれやこれやと,むしろ疑問点は増えてしまった。この肩透かし感だけで評価を相当下げた人も多かったのではないか。(ただし,私自身はちょっと時間が経ってから,それも周囲から情報を仕入れた上でプレイし始めたため,草十郎の過去などが明らかにならない点は知った上で読んでいたのでそれほど大きな不満点にはならなかった。その意味では,やはり広報の戦略ミスで,完結しないことがわかっていれば「肩透かし感」は少なかったのではないだろうか。おそらく私自身,発売日直後にやっていたらイラッと来ていただろう。)


もろもろを美点欠点をひっくるめて,80点以上はあげられる良作である。以下ネタバレは短く。

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2012年04月04日

ネブプラス レビュー

巷の評判はそれほどよくないが,さもありなん。悪くはないのだけれど,いかんせん短すぎるし中身も薄い。ただ,宣伝通りの作品ではあるので正面切ってもあまりdisれない。

本作は人気投票の末に『SHUFFLE!』より八重桜,『俺たちに翼はない』より渡来明日香,『世界征服彼女』より棟本椿子が選ばれて作られたミニファンディスクである。彼女をdisるつもりは全くないのだが,残りの二人に比べて八重桜ってそんなに圧倒的な人気だったか……?てっきり楓が来るものだと思っていたのだが。もっとも私には『Essence+』も『Love Rainbow』もやっていないので,彼女については『Really?Really!』の知識しかないから,判断しようがないといえばそうなる。残りの二人は以前にやった人気投票でもそれぞれ強かったので,予想とおりである。

本作で最も批判されているのはその短さで,実際私がやったところ,バッキーがやや長かったがそれでも2時間弱,明日香は選択肢で細かく分岐するもののEDまでの単純な時間は1時間ほど,桜もおおよそ同じくらいで,CG埋めの時間を含めても4〜5時間あればコンプリートできてしまうだろう。ただし,Hシーンをすっ飛ばし気味に読んでいるので,そこもちゃんと読めば+1時間くらいにはなるかと思う。

もっとも,中身もやや肩透かし気味ではあり,これが長くてもなという気もする。延々とイチャラブが続くというのは事前の宣伝通りではあるのだけどもう一つ何かあるだろうと期待させるのがNavelブランド,というところで大体の人には伝わると思う。イチャラブとしてはクオリティが高いので,そちらに文句はない。明日香は明日香らしいし,バッキーは相変わらずトチ狂っている。ただ,絵に目を向けてみると西又御大はもはや明日香や桜など描き忘れていたか,いつもにもまして1枚絵がなんかおかしいが。

閑話休題,バッキーが多少なりとも長いのは一応イチャラブ以外にも物語的な要素があるからである。ただのイチャラブではなく,バッキーと征人が同棲するという本編にはなかった変化が加わる上に,桜子が出てきてちょっと読ませる文章が出てくる。正直に言えば,見たかったのはこれなわけで。桜と明日香のシナリオも,2時間くらいの分量と中身があれば,批判は少なかったのかもしれない。しかし,制作費の切り詰めなのか知らないが,登場する声優が4人,明日香とバッキーがかぶってるとしても5人しか女性キャラが登場しないのに,話を広げようがない。Navelのふところが心配になるが,その意味では定価が買ってあげたかいがあったと言えるかもしれない。

総じて3作品ともの熱心なファンでなければ定価の4800円で買う必要はほとんどない。が,この間ソフマップで見たところ2980円まで下がっていたので,その値段まで下がっているのなら,まあそれほど損とは感じないかなと。普通のメーカーならファンクラブ限定通販で1000円だろとか,ねこねこソフトなら無料の規模だろとか,思わなくもないけども。
  
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2012年03月29日

World Wide Love! 〜世界征服彼女FD〜  レビュー

まあ普通のファンディスクである。短すぎるという話も聞くが,ゆっくりやって10時間弱くらいはかかったのでこんなもんだろう。ファンディスクの傾向としては補完というよりも延長戦というたぐいのもので,セカジョの世界にもう少し浸っていたい以外の理由でやることはお勧めしないし,その意味で必須の作品ではない。この辺はファンディスクに求める物次第ではある。

うまいこと補完になっているのは桜子編だが,これはむしろ「その内容は本編でやれ」というもので,ある意味あって当然と言えるかもしれない。本編のレビューののネタバレゾーンで,「もうちょっとなんとかなっただろう」と書いたところがなんとかなっていた。特に百式との会話は秀逸で,あそこの選択肢は4つ全て選ぶ必要があろう。菜子編も考えようによっては補完になっていると言えなくもない。バッキー・亜子様・夢子についてはイチャラブしてるだけに近い。もっとも,夢子はともかく,残りの2人は本編でやりきってしまったためもはや書きようがないという事情はあるだろう。そして今回追加されたヒロインの良子様は,悪くはないしやりたいこともわかるのだけど,やはり強引だったかな感はある。

あとはネタバレゾーンでちまちまと。
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2012年03月20日

無限煉姦 レビュー

ややネタバレ的ではあるが核心的ではないので,あえて隠さずに書いてしまうが,『サガフロンティア』のアセルス編が本作の第一印象であった。この印象はクリアした今でもおおよそ間違っていないと思う。無論エロゲーなのでそれに付随する様々な要素はあるが,少なくとも大筋はアセルス編の通りに物語が展開する。しかし,ぐぐってみても同じ指摘をしている人がかなり少ないのだが,プレイヤー層が全く重なっていないということなのだろうか。「私はアセルス!道を開けよ!」で感動した人にとっては,とても気持ちのいいシナリオになっている。

その他,シナリオ面で褒めるべき点は大いにあるのだが,ネタバレ無しにはどうにも語れないため下段にて。一つだけ言えば,『EXTRAVAGANZA』を先にプレイしておくことを勧める。本作とは大きく関連性がある。


というわけで,シナリオ面以外で触れられることとして。テキストはいつものバンヤー節。淡々とした事実描写が逆に空恐ろしい,というおそらくエロゲー以外で探したほうが類型が多い文体。氏の作品では『EXTRAVAGANZA』に続く女性主人公で,『闇の声』シリーズにも女性主人公がいるし,『MDB』でもしばしば悠香視点に切り替わった。この文体でこのシナリオ傾向ならば,女性主人公のほうがやりやすいのだろう。陵辱シーンも女性主人公のほうが心理描写をしやすい。その点,陵辱する側に感情移入したい人には今ひとつ使いづらいテキストかもしれない。ついでにHシーンの傾向について書いておくと,基本的にはいつものバンヤーな感じの陵辱だが,今回はやや直接的な暴力描写が多かった。大概なんでもおいしくいただける私だが,これとスカだけはいまだもって受け入れられないので少々苦しかった。

グラフィックは立ち絵すばらしい,一枚絵はもう少しがんばれ,といった感じになるだろうか。立ち絵は種類がやや少ないものの必要最低限は満たしており,純粋に高品質。一方,一枚絵は枚数が多く基本的に品質的にもそれほど不満がないのだが,ちょっとわかりづらい構図が多かった他,決定的なこととしてアヘ顔系の表情を描き慣れていないらしき違和感がどうにもぬぐえない。その関係もあって,むしろHシーン以外のCGのほうがよくできてるという……。

音楽は種類が少ないものの一曲一曲は好印象。特にタイトル曲はなぜか荘厳で,始まった当初は違和感があるのだが,シナリオにスケールがあるので,終わってみると結果的には似合っている。ボーカル曲はない。声優さんはまぁ,毎度ながらよく叫んでたなとw。主人公の声については,彼女の精神的な成長の過程でそれぞれ少しずつ声が変わっていたのがとても良かった。演出は普通で可も不可もない。けっこうバトルシーンがあるが,『Fate/stay night』以降一般的になったあの感じ,といえばおおよそ想像はつくだろう。

最後に,タイトルについて。『無限煉姦』はとても良いのだが(本作は煉獄であり連関である),サブタイトルがどうにもセンスに欠ける。これなら無い方が良かった。ついでに書けば,そもそもこの企画がなぜLiquidで立ち上がり,和泉万夜にシナリオのお鉢が回ってきたのかがよくわからない。このシナリオライターだからこそプレイした層はおそらく多い。しかし,私は割りと早めに気づいたのでその宣伝過程も割りと追ってきたつもりだが,宣伝もそこで強調・工夫したところはあまりなく,ただ「うちには珍しい大ボリュームでこの作品にかけている」という雰囲気を漂わせているという感じがした。タイトルとサブタイトルのミスマッチ感といい,コンセプトの段階でやや迷走したか,こうした作品の売り方にLiquidの側が慣れてなかったか,という邪推をどうしてもしてしまう。


以下ネタバレ。
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2012年02月25日

世界征服彼女 レビュー

今現在『World Wide Love』をプレイ中なので(『ネブプラス』も予約済),そっちをクリアしてから書くべきかは迷ったところであったが,ファンディスクも単体でレビューを書いたほうがよいという結論に至り分けることにした。

本作は幼馴染の夢子が,天才科学者としてスーパーロボットを作り上げ,世界征服に乗り出したことで起こるドタバタ劇である。この設定から大体わかる通り,徹頭徹尾幼馴染(夢子)ゲーであると言って差し支えない。が,他のヒロインの存在価値が無いというわけではなく,むしろすべてのシナリオが主人公と夢子,そして攻略ヒロインの三角関係で推移する。そして,攻略されたヒロインと夢子の関係性の違いによって,個別ルートの内容が微妙に違ってくるという点が,本作で最もおもしろい点と言えるだろう。実際のところ,主人公と夢子の強固な幼馴染関係に,第三者がいかに食い込んでいったかという話でもあり,物語の筋はどのルートでも大きな違いはない。あくまで微妙に違うだけなので,一見して単調であり,3人目に取り掛った頃には少々だれてくるのも否定しがたい。しかし一方で,この微妙な違いこそ語るべきところなのではないかと思う。最後の選択肢の場面を考えるに,展開を似せたのはわざとであろう。これについてはどうしてもネタバレとなるため,後で詳述する。

本作は,内容の要約をしてもレビューにはならないということでばっさり1行で説明してしまったが,非常に基礎設定がしっかりしている。そのため,これだけぶっとんだ設定であるにもかかわらず,物語の進行にほとんど不自然さがない。特に幼馴染ヒロインにとっては必須であり中核となる要素である,夢子と主人公の過去についてはかなり綿密に設定され,その作中での説明にも配慮が見られる。夢子が科学者になった理由(無論主人公が大きくかかわっている)や,夢子と主人公が親しくなった理由など,幼馴染ヒロインとしてのアドバンテージをフルに活用しており,夢子というメインヒロインを魅力豊かなものにしている。ここでこけていたら本作はどうしようもない駄作になっていただろうが,設定を作り込むことで,ありきたりになりかねない「幼馴染」という要素をむしろ突飛な特徴に作り替えてしまった。これだけ強烈な幼馴染ヒロインが作品全体をしょって立つエロゲというと,多分『マブラヴ』くらいしかない。


とまあ,ギャグゲーかキャラゲーという感じで,私の友人が楽しそうにプレイしていたのをtwitterで横目で眺めていて購入を決めたわけだが,やってみると案外と語れるシナリオということに気づいてしまった。ただし,本作はギャグゲー・キャラゲーとしても割りと優秀であり,特にギャグについてはなんだろう,Navelの伝統なんだろうか,あごバリア・王雀孫の系統でキレを見せている。東ノ助氏には今後も期待が持てる。パロディは比較的少なめ。ただし,聖地巡礼でも狙っているのか,舞台となる小田原市ネタは非常に多い。すでに聖地巡礼を果たした方は何人かいるが,背景については現地まんまである。また,冒頭に書いた通り夢子の作った世界征服兵器がスーパーロボットであるため,スーパーヒーロータイム系のお約束ネタは満載に詰め込まれている。ただし,某キャラが右翼系ヒロインという斬新な設定であるため(公式のキャラ紹介では「旧時代系大和撫子」とぼかしてある),ごく一部ではあるが「ワロタwww……わろた……」的なものはいくつかあった(街宣車ネタとか)。

キャラゲーとしてはハズレがなく,見事に全員かわいい。キャラの立ってない子はいない。個人的な話をすると,普段の属性から言えば菜子になるのだが,本作ではどうしても夢子が一番かわいかったとしか言いようがない。シナリオの都合上,愛着がわかないわけにはいかず,そうして言動を見ていると本作の作りこみ具合に改めて気づくと同時にまた愛着がわくのである。何より,声優の籐野らんが怖いくらいはまり役で,この人うまいなと再確認した。

音楽や演出には文句がないし,絵については西又御大ですんで。なんで脱がすと魅力なくなるんだろうなとか,相変わらず私服のデザインぶっ飛んでるよなとかは思うけど,立ち絵に関してはとてつもなくかわいい。もう彼女はひたすら立ち絵のバリエーション作ってればいいと思う。総じて私の本作の評価はかなり高い。85点近くはつけられるだろう。


以下ネタバレ。『マブラヴ』も(致命的な)ネタバレ有り。割りと長いが,本作は単なるキャラゲーと見られてあまり語られないきらいがある。そこで,かなり単純なところから論点を書きだしてみたつもりであり,その結果長くなったということは一応書いておく。
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2012年01月24日

WORLD END ECONOMiCA Episode.1 レビュー

昨年の夏コミで発売された同人ゲー。シナリオライターに『狼と香辛料』の支倉凍砂を据えた作品で,やはり話のタネは経済・金融である。ただし,金融の話に特化するために,かなり独自の世界設定を用意している。作中の冒頭で説明され,また公式HPにも簡単に書いてあるものの,ここでも軽く説明すると,まず人類は軌道エレベーターの建設と月への本格的な進出に成功しており,月面都市は人口規模こそ数十万人で小さいものの,18世紀後半のアメリカ13植民地のごとく,地球とは半ば独立した自治的な環境を獲得していた。そこはフロンティアとしての役割は勿論,地球のしがらみにとらわれない,自由な経済活動の保障された都市として整備されたため,むしろ金融都市としての発展が色濃くなっていった。

そうしてとうとう,純粋な開拓民ではなく,自由自活をモットーとする月生まれ月育ちの世代が勃興してくる。本作の主人公は,そんな月生まれの少年である。ゆえに,10代半ばにしてすでに学校へ通わず,デイトレーダーとして生計を立てていることに,本人は何の気兼ねもない。ストーリーもいろいろ横道に逸れつつも,基本的には彼のデイトレーダーとしての生活と成長が主眼になる。横道としては,前半は世界観とキャラクターの紹介,後半はメインヒロインのハガナとの交流ということになるだろうか。というわけで,『狼と香辛料』が中世〜近世初期な分,本作が近未来ということで現代に近い株式市場が再現されている。株の知識は若干必要かもしれないが,まあ我々の世代はリーマン・ショックやらなんやらを幸か不幸か体験しているので,それほど苦もなく読める方が多いのではないかと思う。

ストーリーやテキストは,非常に支倉凍砂らしいと思う一方で,こういうのも書けるのか,と思わせられ,両方の面があった。具体的に言えば,テキスト(というか文体)は全く『狼と香辛料』と変わらないし,人間関係の描写やストーリーはいつも通り,といった感じがする。ただし,これは一長一短で,ラノベのノリでビジュアルノベルを書かれると若干齟齬を感じる,という本作に限らない現象は起きてしまっているように思う。とかく,こうしたゲームでは3〜4行ずつしかプレイヤーが読むことが出来ず,それが小説とは違う一種独特のリズムになっている,ということは気遣われるべきであろう……とは言い古された批評であるが,まあ書いておく。なお,メインヒロインのハガナちゃんはとてもかわいいので,そこは安心していい。ツンデレ好きから無口好きまで広くフォロー(ry

で,『狼と香辛料』と違うなと思わせられたのは,経済周りで,特に後半某キャラが出てきてから。こればっかりはどう書いてもネタバレになるのでやってみてのお楽しみ,としか言いようがない。しかし,この某キャラの特異性は際立っていて,登場した途端に物語が大きくうねり始めるのを感じるだろう。この意外性のおかげで,Ep.2が俄然楽しみになってきた。本作は借りてプレイしたのだが,次からはちゃんと買ってプレイしたい。

プレイ時間はちゃんと測ってないのであてにならないかもしれないが,適当な体感時間で7〜8時間程度。ボイスが無いのと,前述の通り株式の知識の有無で,相当読む速度が変わってくるのではないかと思う。
  
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2012年01月20日

White 〜blanche comme la lune〜 レビュー

尿は伏線。(迫真)


さて,ねこねこソフトのwhiteをクリアしたのでレビューを書こうかとぼちぼちネット上のレビューを探していたのだが,おおよそ論点は同じであるため私もそれに乗っかって2点に絞って話をする。

・サブルートのダメさ具合
本作は実質的にブリジット→ほたる(妹)→(ミサ→)カナン→???→マリカで固定であり,担当したライターも共通部分とマリカが片岡とも本人,カナンが海富一,それ以外がサブライターということがわかっている。しかし,設定がやや複雑だったせいか,片岡ともと海富一以外のシナリオが散々なことになっており(ミサルートはまだ叩きが少ない),サブライターは無論,片岡ともの監督責任も問われる事態になっている。これについては,私もその通りとしか言いようがないと思う。ブリジットとほたるの2ルートはなくても良いような出来であり,ブリジットはまだテキストがへたってただけでシナリオ自体はもう少しすっきりさせれば再生できなくはないと思う。ミサルートはそもそも最初からおまけであり,本筋と全く関係ない話として読めば評価はできなくとも叩くような材料ではない。

が,ほたるルートは本当にどうしようもない。「妹キャラなのに主人公が血縁のないショタキャラに交代する」「そのことが公式HPや説明書に明示されておらずルートに入って初めて判明する」「さらにおまけパートで実妹好きプレイヤーに喧嘩を売った」と三拍子そろったために2chを中心に大いに叩かれて「ヨスガにソラってろ」騒動と言われた。本ルートのダメさ具合の核心は直接そこではないし,主人公が交代した理由もなんとなくわかる。おそらく片岡ともの最初の構想では,ほたるは唯一非日常に全く関連のない日常を象徴するキャラであったはずである。そのルートでは,非日常から日常に回帰するキャラとしてのレンとくっつけることで成立させようとしたのではないか。しかし,シナリオは明後日の方向に飛んでいき,日常も非日常もクソもないどころかなんかもういろいろぶち壊した。ほたるが非常に良いキャラをしており,単調でも平坦でも普通のシナリオならねこねこソフトの人気妹キャラの一団に加われたはずだ。それだけに惜しい。

複数ライター制自体がダメとは言わないが,片岡ともの場合は表現したいものが非常に独特なので,相当綿密に打ち合わせて欲しい。もしくは,気心の知れている人だけで固まってやってほしい。今回だって,海富一はしっかり書けていた。カナンルートの終盤の展開は,ねこねこソフトの系譜のライターじゃないと書けないシナリオと演出だろう。あとは木緒なちや秋津環がいる。


・「無垢」まわりの話
私は『仏蘭西少女』のレビューにて「純白(純粋)」について語っており,結局純粋無垢などというものは存在しないのだと論じた。「純粋」と「無垢」は厳密には別物かもしれないが,本作のタイトルが『white』である以上,本作では同じ意味の言葉として扱われていると考えてよいだろう。『仏蘭西少女』とはフランス語で白を示す"blanc"という言葉を用いている点で共通しているが,確かにドイツ語のweissは硬いし,イタリア語やスペイン語のblancoはさしてフランス語と変わらないから,第3の白色表現を探すとblancしかなくなるんだと思う。

で,本作の「無垢」はどうだったのかと言えば,これはなかなかおもしろい。結局「純粋無垢」というものは自然なものではないという点では『仏蘭西少女』と共通するものの,本作はむしろその不自然を無理やり生み出した歪みはどう現れるのかということに直球で挑んだ作品であると思う。この直球具合や,本作の「無垢」に対する解釈はとても好きだ。「純粋無垢」という難しい概念に対して,こうして独自の角度から切り込めるのが片岡ともだと思うし,本作もそれをじっくりと見させてもらった。これがあるからこそ,本作はいかに他の個別ルートがダメだろうと,ばっさりと酷評することができない。


一枚絵は非常に多い。大きく気になるような崩れもないし,ビジュアル面は高水準と言ってよい。システムも使いづらいところはないが,起動の毎回にディスクチェックが入るのは勘弁して欲しい。おかげでここ最近ずっとディスクドライブを占領されていた。音楽も良い。特にボーカル曲はどれも良いが,タイトルと同名の「white」はクリアした後にじっくり歌詞を聞くととても切なくなる。演出はいつものねこねこ,という感じ。これにシナリオとテキストの出来を加味して,まあ70点ちょうど。ほたるシナリオで5点ほど引いたことは明記しておく。よくある「改善点をちゃんと直せば80点になりそうな」もったいない作品。

それほど書くことはないが,一応ネタバレゾーン。
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2011年12月11日

群青の空を越えて レビュー

本作に対する私の評価を一言で言えば,V字型の盛り上がりであった。より正確に言えば,最初の若菜・加奈子ルートはおもしろく,最後のグランドルートもある程度持ち直したが,間の3ルートがどうにも評価しづらい,という。

エロゲ批評空間では「オールクリアに価値あり」POVに投票が入っているが,個人的には正反対で,前半と後半があまりにも別ゲーすぎ,つながっている雰囲気が感じられなかった。おそらく『かにしの』程度には別ゲーに感じた。本作はいわゆる架空戦記ではあるのだが,6ルートあるうち,前半と後半で大きく毛色が異なる。前半3ルートは軍事メインの話が続き,これらをクリアしたところで新たに2ルートが解放され,最後にグランドルートが解放される。後半3ルートは政治中心の話になる。この舞台としての軍事と政治に衝突があったのではないか。

どうしてこうなったのか,大きく原因を2つ挙げてみる。まず,本作のメインテーマは「人の生き方と社会・政治のかかわり」であり,主人公はそれぞれのルートにおいて周囲からの影響を受け,戦争観や人生観・死生観を変えていく。これがスムーズに変わっていけばよかったのだが,なかなかそうは感じられなかった。これは,単純に特定の個別ルートの失敗に原因があるのではないか,というのが1つ目になる。本来であれば,主人公が戦争の大義について葛藤する様子を描く間の3ルート(美樹・夕紀・圭子)が,軍事ルートから政治ルートへの橋渡しになる予定だったのだろうが,これが今ひとつ機能しなかったのではないか。短すぎて不十分だったのではないか。

もう一つは,基礎設定についてである。メインテーマとは別に本作の主要部分にあたり,おそらくライターが最もやりたかったと思われるところは「関東と関西が対立していて,かつ関東が劣勢で,主人公は関東側の人間」という設定であろう。この設定を立てるための理論付けとしてならば,「円経済圏理論」は十分に有効であった。この引き起こしたい目標の現象そのものについてはぶっ飛んでるとしか言いようがないが,これを実現するために持ち込んだ円経済圏理論やそれに付随する歴史改変は非常によくねられており,少なくとも前半3ルート=軍事パートを遊ぶ上では破綻が見えなかった(もしくは,気にならなかった)。

しかし,政治ルートに入ると軍事ルートでは目立たなかった基礎設定の無理がどうにも浮上してくる,というのが2つ目の原因である。一つ具体的な例を挙げると,政治的分裂に全く執着のない中国なんてものは相当大きな歴史改変を行わないと不自然であるが,本作では枝葉末節として流されている。これで思いっきり矛盾でもしていればおもいっきり批判できるところなのだが,比較的幸いなことに「円経済圏理論」そのものはかなりしっくり組み上げられているがために,そこまで悪くもないのである。結果として,無理してる感・不自然感は終始漂っているものの,ルート一つ一つが短く物語が急速に動くため,具体的・抽象的な有象無象の疑問がなんとなく頭の中にひっかかったまま流されてしまった。そして,物語に乗れないままグランドルートまで行き着き,そのグランドルートにもそのまま突っ切られてしまったため,不完全燃焼で後半3ルートが終わってしまった。

無論,メインテーマである「人の生き方と政治・社会のかかわり」を描くために後半3ルートが必要で,つまり軍事から政治への舞台の転換が必要だったことは理解されうる。しかし,ではその橋渡しのための真ん中3ルートほどの描き方が十分だったかという点と,円経済圏理論がそれだけの説得力を持ち得たかという2つの根本的原因に戻ってきてしまう。そもそも,このメインテーマと,明らかに軍事趣味的事情で設定された「関東劣勢」の特殊な日本分裂舞台設定がマッチしていたか,という点で,本作は疑問である。このことをtwitterでつぶやいたら「あの作品は筑波でグリペン飛ばしたかっただけじゃね?」という揶揄が入ったが,それはそれで円経済圏理論なんて壮大な設定を組む必要性があったのかという別種の問題が浮上する。


とかまあ文句はつけてしまったが,若菜・加奈子ルートはおもしろかったし,グランドルートもそれなりに持ちなおしてくれたし,総合的な印象としては悪くない。及第点的に75点くらいはあげられるだろう。なお,専門知識や歴史知識が必要なエロゲーに挙げられているが,むしろ必要なのは史実が改変されている箇所についての知識で,たとえば史実よりも大和朝廷による統一が遅れ,結果史実よりも弥生人と縄文人の違いがくっきりできてしまったこと。最終的に日本の統一は江戸幕府までかかり,よって明治政府は史実よりも「日本人」意識を作るのに苦労していること等々。逆に言って,「本作を不自然なく成立させるためには,本作で語られていない部分については,史実とどのような違いがなければならないか」という妄想をするのは,それなりに楽しい。これも一つ本作の楽しみとして上げてよかろう。

以下ネタバレ。
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2011年11月10日

素晴らしき日々―不連続存在― レビュー

(11/14ネタバレゾーンに追記有。)非常に評判の良い2010年の傑作。SCA自本人は下敷きにしただけと言っているが,実質的には『終ノ空』のリメイクである。ただし,ある大きな設定の変更が行われており,それに伴う部分の物語が改変されているほか,『終ノ空』にはなかった5・6章が追加され,変更された部分の設定が掘り下げられている。結果的に,物語全体として共通している部分は3〜4割ほどになるかと思う。

追加された設定自体はよくあるものなので,『終ノ空』との相違点を探しながらプレーすれば,4章冒頭でネタばらしされるまでにあっさり気づくと思う(私自身は2章中盤で気づいた)。その後は「ああ,設定がこう変わったから,ストーリー展開をこう変えざるをえなかったのか」,「ここは無理してでも残したっぽいなw」というのを探す観点で進めていくと,これはこれでなかなか楽しめる。たとえば三角木馬のシーンが『終ノ空』から引き継がれているわけだが,絶対に要らないだろと思っていたらうまいこと使ってて感心させられた。無論,『終ノ空』未プレイのほうが新鮮な気持ちで楽しめると思う。

ついでに言えば,全く同じトリックが使われた某作品も未プレイなら尚更楽しめるかなと思う。正直に言えば,トリックの使い方としてはあちらのほうが一枚上手だった。使い方がちょっと違うので,比較自体が不毛とも言えるが……本作は優れた作品であるため,すでに多くの論評・考察がなされている。その中では,案外となされていないのが某作品との比較なのかなと思うので,ちょっとだけ考えてみた。詳しくはネタバレ隔離の下で比較しているのでそちらへ。


先にネタバレしない範囲で感じたことを。SCA自は物勧めるのとキャラを描写するのは本当にうまくなった。キャラの描写としては特に,『H2O』のいじめ描写を踏まえているからこそ,2・3章は特に光ったというレビューを読んで,なるほどその通りだろうと納得した。間宮卓司にしろ高島ざくろにしろ橘希実香にしろ,いじめられる側の心理が非常に秀逸で欝になる事この上ない。あまりにも陰惨なので,これが原因でギブアップする人もいるんじゃないだろうか。

物の方も。本作も相変わらずシナリオとはあまり関係ないSCA自の衒学趣味満載で,これも『H2O』ではあまりにも脈絡なさすぎてちょっとげんなりしたが,『終ノ空』やあれに比べれば格段の進歩である。特に『シラノ・ド・ベルジュラック』は本当に読みたくなった。で,東大図書館に『シラノ』を借りに行ったら『猫とともに去りぬ』と一緒に借りられてたわけだが,明らかに動機が同じである。怒らないから出てきなさい今度飲みましょう。ついでに,ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』はかなり昔に読んだことがあるが,当時は何を言っているのかさっぱりわからなかった。クザーヌスの『学識ある無知について』も部分的に読んだことあるが,感想としては由岐と同じで,とにかくこの人はがんばって三位一体を論証したかったんだな,という程度である。

あとは,クラシック好きとして一言だけ言わせてもらうと,「主よ,人の望みの喜びよ」を印象的に使ったエロゲは,『しろくまベルスターズ』以来2作目。にもかかわらず印象が違いすぎる。『しろくま』は素直で,単純に神への感謝の念が感じられ,思わず「ハッピーホリデーズ!」と叫びたくなる。これに対し,『素晴らしき日々』の使い方は卑怯,もしくは皮肉が効き過ぎと表することができよう。無慈悲な神なんていなくていい,というのは本作のテーマに沿ってるし,こうした使い方をしても似合うほどこの曲は深い情念をたたえているのは確かなのだが,やはり私としてはこの曲はあくまで神への賛歌であってほしいものだ。素直に聞けなくなったら恨む(笑)んだぜ。(曲と,ついでに引用文献のまとめはこちらに。


さて,以下は某作品との比較について。困ったことに某作品の名前を出した瞬間,どちらか片方をプレイしてない人に対して完全なるネタバレになるので,以下は必ず最低限『すば日々』をクリアしていること,かつ比較される某作品の見当がある程度ついている人のみ推奨,ということにしたい。万が一,それでもネタバレを踏んでしまった場合は大変申し訳ないが,がんばって見なかったことにしてください。
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2011年11月09日

仏蘭西少女 レビュー

本作を最も特徴付けているのは,その長大さと難易度である。8月の頭に開始して最初は1日1時間弱ずつちまちま進めていたが,20時間以上経過してまだ終わらないことに焦りを抱き,夏コミ明けてからは倍速でプレイして,何とか仕事が忙しくなる9月の上旬には終わらせた,という感じ。少なくとも60時間以上はかかっているし,80時間に到達しているかもしれない。『Fate/stay night』でも『CLANNAD』でも『マブラヴオルタネイティヴ』でもこれほどかかってないはずなので,おそらく人生最長のエロゲと言える。そのあとは,『クドわふたー』のレビューとともに2ヶ月ほど放置された。

難易度のほうはもっとずば抜けていて,実はそれだけやってもエンディングがやっと埋まり,シーンとCGについてはとうとう諦めた。今まで途中でギブアップしたエロゲがほとんどなく,手をつけたエロゲは可能なかぎりコンプしてきた私だが,エンディングが埋まった所で満足し,CGとシーン回想は断念させられたのは本作が初めてである。なんとかCGはあと5枚まで来たが(総数165枚),シーン回想は22も空いている(総数114)。そもそもエンディング数が48もあり,ボリュームだけは誰か点数をつけても満点以外はつくまい。エンディングに関しては,公式配布されているパッチver1.20を適用すると,それぞれにヒントや正解のルート(選択肢一覧)が表示されるため,最悪これに沿っていけば全部見れる(というよりもバグが多いため,このver1.20を当てないとゲーム自体が成立しない)。しかし,このヒントも案外と当てにならず,表示されるルートも必ずしも最も効率的な手順が示されているわけではないため,公式ヒントに乗っていくとさらに時間を食うというジレンマがある。

これほど難易度を高くしている理由は明白で,選択肢が無数に用意されており,それでいて不要選択肢がほとんど存在しないという点だ。選択肢の文自体はわかりやすく,どの選択肢を選べば誰の好感度がどう変動するかは明白なので,その点に困難はない。しかし,そのパラメータの変動が細かく,しかもキャラ別好感度以外の隠しパラメータが存在し,それらのパラメータの状況で判定される分岐点がいくつもあるため,ルートの選定が異常な困難さとなっている。歴戦のエロゲーマーほど驚くと思われるが,他の多くのエロゲと異なってささいな選択肢1つ変えただけですぐに未読の文章に突入するし,場合によってはパラメータが微細に違うだけで別のエンディングが表示される。無論,プレイヤーからはパラメータが見えないし,どこの選択肢がフラグになってそのエンディングになったのか,あまり判然としないので,最終的には気の遠くなるような虱潰し戦法しかない。公式がヒントを出してくれなかったらぞっとする難易度である。それでもエンディングに関しては公式のヒントと,かなり充実した攻略サイトがあるため,なんとかコンプリートできる。単純な選択肢のみで分岐するノベル形式のエロゲとしては,『MinDeaDBlooD』や『Extravaganza』を超えた究極の難易度と言え,エロゲ史上最高難易度と言えるかもしれない。あんなわかりにくい公式ヒントを出すくらいなら,『MinDeaDBlooD』のように重要パラメータを視認できるようにするか,『アカイイト』方式にフローチャートをつけてくれたほうがよほど楽であった。


で,この長大さと難易度が大きく足を引っ張っている,むしろ癌と言えるのが本作である。絵も音楽も良く,シナリオもテキストも一癖も二癖もあって,多くの人には受け入れられなくとも一部の人には確実に受ける作風であるのにもかかわらず,長さと難易度がすべてをぶち壊している。長い原因はシナリオにもテキストにもある。まずテキストの方は明らかな装飾過多で,作品のコンセプト・雰囲気からすると仕方のない部分もあるのだが,それにしても無駄が多い。わずかに文言が違うだけで未読扱いになるため度々スキップが止まり,いちいち覚えてもいないのでどこが変わったのか全くわからないからさらにイライラさせられる。表題の通りフランスを「仏蘭西」にするなど,大正時代の雰囲気を出すため漢字・漢語表現が多く,読みづらいとまでは言わないものの読む速度には影響を与えているだろう。もういいから……いいから先のシナリオを読ませてくれ,と何度も思ったものである。

シナリオのほうは,そんなにエンディング数が必要だったのかということを問いたい。『Extravaganza』や『アカイイト』もエンディング数が無数にあるゲームとして挙げられるが,この両作品は『Fate/stay night』のごとく単純な即死エンドが多く,そうでないものはかなり作りこまれていた。『仏蘭西少女』の場合,分岐してからエンディングまでが長く,かつ内容が似通っているため達成感が薄く,エンディングに到達したことで公開される真相に近づくための情報量も少ない。完全に埋めるための作業であり,その作業が煩雑だから不満がたまるわけである。すっきりとまとめれば半分の25,がんばれば20くらいで済みそうな気がする。同様に選択肢もあんなにいらない。同じ高難易度でも少ない選択肢で明確に分岐させた『Extravaganza』を見習って欲しい。

ここで,「だったら途中でコンプを諦めればよかったじゃないか」という反論が聞こえてきそうだが,これについてはマルセルさんが本作の構造に引っ掛けて超長文で論証しているので,めんどうでなければそちらをお読みいただきたい。一言で言えば「なんだかんだ言って20くらいは真っ当なエンディングがあるので,物語の全貌把握のためには結局コンプするしかないし,コンプしないと批判もしづらい」ということになる。

その割に,必要なところにあるべき選択肢がない。主人公の矢木澤政重は巷で「鳴海孝之や伊藤誠,ロメオさんに並ぶ逸材」と称されているそうだ。彼の場合は単純なダメ主人公というよりは清く正しい太宰治のご先祖様であり,ダメであること自体は批判できるものではない。しかし,より正確に言えば彼は少女の購入により完全な堕落が始まるため,それ以前の段階で錯乱しているのはおかしいはずである。たとえば,最初に「遺産を受け取らない」選択肢や,少女に関する契約書にサインするときに「値段を聞いた上でサインしない」選択肢でも作っておけば相当主人公及び物語に対する評価は違ったはずである。まあ,そうしたプレイヤーのガス抜きをあえて用意しなかったのは制作側の判断なんだろうけど,賛同できない。これらの選択肢がないせいで,主人公を真人間に更生させようとして選択肢を選んでいくと,結局ろくでもないエンディングにしか到達しないからである。「空中文明」や「夏旅」など,必要ないエンディングの最たるものだ。(ついでに言えば,香純玩具ルートはルートごと要らないと思う。)


と,ぼっこぼこに叩いてしまったが,悲しいことに素材と設定は間違いなく良いのである。「人として最低であることを自覚しつつ,さらに堕落していく過程」の描写は抜群で,そのために設置された舞台も完璧であった。そこにファム・ファタル要素やサスペンス・ミステリー要素も盛り込んで,それほど破綻なく一つの作品にまとめ上げた点はすばらしいと思う。本来であれば,このコンセプトに加えてTonyの原画,丸谷のテキストの組み合わせで,完全勝利が約束されていたはずの作品であった。繰り返して言うが,それを完全にぶち壊したのは,長大さと難易度である。どれだけすばらしい文でも絵でも,繰り返し見せられれば飽きるし,時間あたりの価値は減じていく。どうしてこうなった……というプレイヤーの嘆息が聞こえてくる作品であった。70点以上はあげたくない。

最後に,本作は抜きゲーとして見ることができるか,という点について。バリエーション豊富で絵もテキストも良いので使えるとは思うけど,回収のために60時間超を投資できますか?という一点において,ノーである。


(追記)以下,ネタバレ。
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2011年11月08日

クドわふたー レビュー

評価そのものは割と早期に固まったが書くまでの踏ん切りがつかず,クリアからレビューまで4ヶ月も放置してしまった。端的に言って,一般に言われているよりも良い作品であると感じたが,そう褒めるほどの印象もなく,凡作と良作の間という評価になる。65点くらいかな。

そうは見えないかもしれないが,「襲いかかる不条理」に対して人間がせいいっぱいの努力をした結果,奇跡が起きるというKEY特有の構造は,本作でも一応維持されている。ただし,本作はFDらしく小さな作りであるためか,具体的なシステムを用意している分量的余裕がなく,かと言ってリトバス本体から流用するわけにもいかず(本編は終了している),結果的に一つの特殊なシステムを構築しているわけではない。そこにあるのは,「正体不明だが確実に起きる奇跡」ではなく,天文学的確率で起きる一般的な奇跡であり,その点ではリトバス本体やその他KEY作品と一線を画すだろう。これを革新的と見る向きも可能と言えば可能だが,どちらかというと,中途半端にKEY作品の構造をずらしたせいで,奇跡がより陳腐化してしまった感もなくはなく(ただでさえKEYの奇跡は陳腐化しやすいのに),「だったらKEYである必要がない」と,ファンディスクであるにもかかわらず思わせられてしまった。

短くまとまってたのは確かで,前半はペットボトルロケット大会とクドとのいちゃラブ,後半は宇宙飛行士になるという夢を掲げたクドのがんばりと,とある事件の顛末について。ペットボトルロケット制作は正直眠かったので,「終始飽きさせないように」とはいかずとも,まあ無駄なく詰め込んだかなとは思う。しいて削るならペットボトルロケット制作しかないが,あそこはライターが一番書きたかった空気を感じるしな……後半の宇宙に関する話も含めて,ライターの趣味が大きく出たんだろう。クドといちゃいちゃしてた時間よりも,ペットボトル切ってた時間のほうが,体感時間的に長かった。『リトバス』本編のクドシナリオからしてそんな空気を感じていた。眠かったのは,私がそこらへんに全く興味がないからというのもないわけではない。興味をひかれるほど,テキストがうまかったわけでもない。

クドが好きならもちろんやるべきだろうが,そうでなくとも宇宙関係に興味があるなら,いろいろクドに共感できるところがあるかもしれないので,やってもよいだろう。注意点として,『リトバス』とはほぼ完全に分離しており,恭介も謙吾も真人も鈴も全く出てこない。というか,佳奈多以外のキャラはほぼ『リトバス』から引き継いでいないと思ってよいし,佳奈多にしても葉留佳との和解が済んでいるのか,それとも葉留佳もなかったことにされてるかいずれかの設定だと脳内補完しておくと良い。クド以外とのキャラの存在は相当ぼかされていて,どこかで公開されているのかもしれないが,少なくとも作中ではあいまいなまま話が進む。そのくらい『リトバス』からは分離した作品であるということは,先に頭に入れておかないといろいろ混乱すると思う。  
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2011年06月08日

G線上の魔王 レビュー

『車輪』の反省がいろいろと見られるが,そのせいで惜しいことになっている作品。なんだかんだで同人版の『A profile』もやってるのでるーすぼーいはこれで三作やっているが,彼は本当にヒューマンドラマを描きたいんだなと,本作までやってようやく確信した。しかし,るーすぼーいが世間的に評価されているのは,ヒューマンドラマよりも「飛び道具」的な仕掛けのおもしろさのほうが大きいはずである。実際私もそうだと思う。特に『車輪』は,ヒューマンドラマとしてはやや陳腐で,しかも飛び道具のための諸設定のアクが強すぎて,シナリオの側が随分振り回されていた。結果的に,仕掛け以外はあまり評価したくない作品であった。一章はかなり評判良かったが,私はあまり感動しなかった。(なお,『A profile』は飛び道具の仕掛けが弱く,やはりありがちなシナリオではあったがバランスは取れていたし,後の片鱗を感じ取れる作品ではあった。嫌いな作品ではない。)

それに比べると『G線』は,飛び道具が幾分後退し,ヒューマンドラマをうまく成立させようとしている努力は見られた。そして,それはある程度成功していたように思う。確かに人間の感情を主眼に置いた描き方であり,テキストも乗っていたし,椿姫・花音のシナリオはおもしろかった。ここは素直に評価したい。しかし,いかんせん飛び道具が作品全体を牽引している構造にはなっており,この飛び道具が弱かったため,終盤のインパクトを欠く作品となってしまっている。これはるーすぼーいがライターとして抱えるジレンマであり,しかも非常に解消しがたいものではないかと思う。

こう書くと「『車輪』と比較するから良くないのではないか」,「『G線』に期待するものが間違っていたのではないか」と言われるかもしれないが,それは間違いである。私は出来さえ良ければ,全く飛び道具のないヒューマンドラマでも評価したし,その意味で『G線』には何も期待していなかった。しかし,ふたを開けてみれば結局仕掛け頼りの構造にしたのはるーすぼーいの側である。ならば,作品論・作家論として「るーすぼーいはこの構造でなければヒューマンドラマを書きづらく,結果としてドラマと設定が飛び道具に振り回されるジレンマを持つ」と言うことは可能だろう。


それ以外では,聞いてよかったのか聞かずにいるべきだったのかが微妙なのだが,魔王の正体が遡及的過去形成だというのは正直な話,減点要素である。前から言っているように,確かに私はKanon問題において決定論犠牲説をとっているが,それは『Kanon』限定の話であり,そもそもKanon問題は生じる作品個々において判断されるべきだ,というのが私の正確な主張である。この観点から言って,『G線』も『Kanon』同様に,そこそこはぼかしておくべきだったのだ。作品内で匂わせてしまっている,かつ確定させたのはファンブック内での発言とはいえ,遡及的過去形成であることをライターの側が明言すべきではなかった。その上「ある章ではライターのほうでも決めてない」と言われてしまっては,飛び道具がずばり「魔王の正体」そのものであるだけに,こちらとしては仕掛けも何もあったもんじゃないだろこのゲーム,という感情を抱いてしまう。どうせそこまで考えてなかったのなら尚更,「あとは皆さんの想像にお願いします」にしておけば良かったのに。

これに関連して。本作の作品分岐は『Stein's Gate』及び『穢翼のユースティア』と同じで,メインヒロインへの一本道の途中各章から個別ルートが分岐し,サブヒロインのルートは短く終わるという,擬似的な一本道構造をとっている(『ユースティア』についてはそちらで書いた)。本作を遡及的過去形成で確定させたのは,この構造が関係あると思う。ぶっちゃけて言えば『ユースティア』も『シュタゲ』もこの構造のせいで個別ルートは半ばバッドエンドになるが,『G線』では魔王の正体が変わるおかげで,十全とは言えないにしても一応ハッピーエンドと言えるようにはなっている。これを踏まえれば,確かに遡及的過去形成を採用した意味が生きてくるので,必ずしもマイナス効果だけではなかったと言える。

しかし,それならそれで作中で,個別ルート内で魔王の正体をはっきりと明示させてしまい,「良かった……あのかわいそうな人は救済されたんだね」としておけば,何も問題なかった。それが出来なかった理由は割と明白で,仕掛けに不備があるので下手に作中で正体を確定させると思わぬ矛盾が生じる可能性があり,管理しきれなくなってやめたのだろう。これはこれで一つの英断だとは思う。だが,「魔王の正体」という飛び道具があまり強くなかった上に,正体が判明してからの,肝心のメインルートであるハルシナリオが終盤超展開の嵐なので,そこまでぶん投げたならいっそのこと『車輪』並の仕掛けでも良かったんじゃないのか?という疑問さえ浮上した。このシナリオと仕掛け(主に飛び道具)と設定と分岐構造のちぐはぐさが,ヒューマンドラマとしてはそれなりに悪くなかったのをぶち壊していると思う。結局,飛び道具を弱くした程度ではジレンマは脱却できなかった,という三段落前の話に戻ってしまう。るーすぼーい作品をやることはおそらく二度と無いと思うが,彼は次,ジレンマ脱却のためにまったく飛び道具なしで書いてみるべきだと思った。


じゃあメッタメタにけなして終わりかというと,クラシック好きとしてBGMの使い方は評価しておきたい。確かにアレンジの出来はピンきりだったり原曲ブレイクしすぎていているのもある(第九のアレンジであれはないだろと思っている)。が,選曲そのものとアレンジの方向性,またそのBGMが流れる場面とその原曲が持つ意味合いなどの兼ね合いは素晴らしく,この観点では概ね賞賛できる。たとえば,朝の曲がペール・ギュントのあれなど基本を踏まえる一方,ハチャトゥリアンの剣の舞がふぬけ風のアレンジになっていて気の抜ける場面での起用,小フーガト短調が「交錯」など。この点は考えられた配置をしていると思う。原曲の一覧へのリンクを張っておく。参照されたし。あとはアレンジさえ良ければこの点は文句なく満点だった。余談にはなるが,本作のタイトル画面は章が進むごとに変わり,タイトル画面曲の『G線上のアリア』が次第に楽器が増えて豪華になっていく。この仕掛けは他作品だと『月陽炎』では見たことがあったが,割と好きな仕掛けである。


今回はネタバレゾーン無し。点数としてはクラシックで下駄をはかせて75点弱くらい。下駄はかせなければもうちょっと低いし,ぶっちゃけて言えば椿姫・花音のほうが評価高いので,ハルシナリオだけ考えるならもうさらに低い。
  
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2011年05月15日

穢翼のユースティア レビュー

今,クロニクルのカール・セーガンの言葉を読むと,なるほどな,とか。さて,あまりネタバレしない範囲で語れることとしては2つ。

1つ目は本作におけるオーガストの方向転換について。がらっと作風を変えたように見えて,作品内で語られている人間観(哲学と言い換えてもよい)はまったく変わってない。ただ,これまでの八月であれば,独特の人間観+ワールド展開+明るい世界でずっとやってきていて,このパターンは『明け瑠璃』の時点で完成してしまった。『フォアテリ』は次のステップに向かうため,ワールド展開薄めにしたら,作品全体も薄くなってしまった。だったらいっそのこと,というマンネリ打破の意図で,ダークな世界を提示した上で,今まで培ってきた要素から拾えるものだけ拾ってみた,というのが本作だと思う。ゆえに,本作をもってシナリオゲーメーカーへ転身しただとかいうのは間違いである。

また一方で,本作で突然ダークな世界を用意したと思われているのであればそれは誤りで,ワールド展開のために,そして人間観描写のために,暗い世界の裏事情を設定することは『はにはに』以降の作品において共通した特徴であり,本作はこれを最初から前面に押し出したに過ぎない。だから,作品の世界やストーリー展開はびっくりするほど陰惨だったが,なんだかんだ言って陵辱シーンもないし,決定的な羽目は外してない。そこら辺はまあオーガストらしい配慮かとも思うし,限界でもある。設定だけ虚淵か瀬戸口に投げてシナリオ書かせたら,『鬼哭街』か『SWAN SONG』か,それ以上にとんでもないものが帰ってきそうな。


もう一つが作品の構成について。本作はティアルートを本筋とし,他のヒロインは本筋でいわゆる「トラウマの解消」的な部分は済ませてしまい,章の最後の選択肢で本筋に戻るか,恋人同士になって個別ルートに進んでいくかが決定される。この方式ではすでにトラウマの解消が済んでいるため,個別ルートはかなり短い。しかも本作の個別ルートについては,本筋のテーマである「世界の謎に挑む」が放棄される上に,本作においては基本的にヒロインが主人公に依存し,トラウマの解消をも半ば放棄する形で個別ルートに分岐するため,批判も根強い。しかし,私はこの個別ルートがけっこう好きである。依存はそこまで悪いことだろうか?その解答自体がエリスのシナリオに埋めこまれているのがまたおもしろい。私には,キャラルートと本筋で,ヒロインのトラウマ解決方法が異なり,どちらも非とはしていないように思う。これは最終章のシナリオ展開を見てさらに確信した。

加えて本作はこの構造を非常にうまく生かしている。本作の各ヒロインが抱えるトラウマは関連性がまったくないように見えて,主人公を接点にすることで関連付けられている(そして本作のテキストはそのことについて明示的である)。主人公にもトラウマはいろいろあるのだが,序盤はそれが伏せられた状態で進み,ヒロインのトラウマを解消する過程で次第に解きほぐされていき,その根本は最終章になってようやく明らかになる。主人公とヒロインの悩みがほぼ同段階にあるがゆえに,キャラルートに入った場合は受け皿が主人公になる。これは,今までになかなか無かった珍しい構成をしていると思う。

本作の構造と極めて近いのが『Stein's Gate』だが,それはキャラルートが半ばバッドエンドに近いという点でも共通しているからだと思う。というよりも,両作品の個別ルートをバッドエンドと呼ぶか否かは,『沙耶の唄』の正規ルートをバッドエンドと呼ぶか否かという問題に近く,セカイ系的な問題でもある。なお,前言をひるがえすようだが,『ユースティア』の個別ルートにおいて,本筋である「世界の謎」は放棄されている……と断言するのは実は困難であり,本作がこれをどう解決しているかについてはネタバレゾーンで再度取り上げたい。私はこの巧妙な解決のために最終章はあのようなシナリオにしたのではないか,とさえ考えている。もう一つ同じような構造をしているとして比較されるのが『G線上の魔王』だが,こちらは私が現在プレイ中につき,クリアしたらそちらのレビューで語りたい。


ここまでの語りでもわかる通り,私は本作を極めて高く評価している。CGも音楽もシステムも最高だった。背景に至っては美麗すぎてべっかんこうの立ち絵が浮いているような状況であるが,この美しさだからこそ,この陰惨な世界がリアルに描写できていたのではないかと思う。また,今回のテキストは非常にセンスあった。睡眠導入剤と呼ばれていた『はにはに』以前から見ても隔世の感があるが,『明け瑠璃』から見てさえも進化している。

点数としては90点をつけておく。個人的にはオーガスト最高傑作で,ユースティア>明け瑠璃>FAという評価になる。しかし,世間的な評価である明け瑠璃>ユースティア>FAというのにも理解を示す。というのも本作はおそらく比較的好き嫌いの分かれる展開が多く,特に最終章は意見が分かれるところだと思われる。生理的に『明け瑠璃』よりも上の評価は出来ない,また『明け瑠璃』と比較して完成度も低いと感じた人も多かったのではないか。事実,『明け瑠璃』のほうがオーガストらしさに溢れており,意欲作らしい荒削りも感じられる本作に比べると,綺麗な仕上がりをしているのはあちらではないかと,私自身思う。しかし,それでも私は本作への愛着を隠せないので,あえて『明け瑠璃』よりも高い評価とした。多少なりとも私の評価を見てプレイするかどうかを考えている人は,この点を留意してもらいたい。


以下はネタバレ。各章ごとの感想と最終章について。
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Posted by dg_law at 00:35Comments(13)

2011年04月15日

Stein's Gate レビュー

シュタゲのレビュー。神ゲーだとされつつ回避し続けたのはまず箱○もを持っていないこと。次にバグだらけで進めないという発売直後の声を聞いたこと。さらに『俺つば』『DEARDROPS』を優先させ,クリアした信頼できる友人からは「別に神ゲーじゃなかったよ」と聞かされ,トドメに仕事が忙しく「リアル大事に」が発動されたこと。これらが全て重なり,手元には9月にはあったにもかかわらず延々と放置されたわけである。修正パッチを考えれば放置したのは正解だったのだが,修正パッチを当てて1.20にしてもバグが消えきっておらず,既読スキップの判定が恣意的,クイックセーブは事実上使用不可能など,システム面では大きく減点せざるをえない作品であった。非常にもったいない。箱○を持っているならそちらでやったほうが断然良いだろう。

肝心の作品評価では,「確かにおもしろかったが神ゲーではない」という友人の評価は正しい。個人的な採点では85点弱といったところで,特に古参はあまり神ゲーとは評しないのではないかと思う。この辺は個人の感覚にも大きく左右されるのであまり断言はできないが,やはり過去の作品がいくつかちらつくわけで,新しい要素が無いとは言えないが,神ゲーと評価している層はおそらく割と新しく,もしくはライトな層なのではないかと思った。まあ独自性がなかったわけではないが,アレとかアレとかやってると展開に想像がつきすぎるし,それを覆すほど突出して何かがあったとはあまり思えなかった。

そういう先入観なしに楽しみたかったゲームではあり,新鮮な気持ちで楽しめたライト層がうらやましくもある。しかし一方,その友人(komeと言えば古参nix読者はわかるか)は「古参は語りたくなるゲーム」と言っていたがそれも正しかろう。古参としてはアレとかアレがあったから,こういう筋書きにして,こういうトゥットゥルーエンドにしたのかなと思える節があり,そう考えるとこのエロゲー業界の積み重ねも無駄ではなく,それを追ってきた我々のプレー経験も無駄ではなかったのかなと思える。その意味では,一転して玄人向きのゲームかもしれない。その人のプレイ遍歴によらず楽しませるという意味で,非常に間口が広い。実は万人向けなのだろう。

さりげなく褒めておきたいのがジャンル名。『Chaos Head』未プレイのためこのシリーズ共通のことなのかはわからないが,「想定科学ADV」とはその通りだと思った。確かにSFでもなく,「理論は完全に科学だけどその実現方法は説明されない」。結局登場した発明品の原理はおおよそ説明はされたものの,それはまさに「原理」の段階であって,あの通りの材料を持ってきてあの通り作っても現実的にはああならない。「理屈の上ではこうなるはず」=想定科学,というのが非常にしっくりと来た。普通にSFを名乗られてたらちょっとだけ評価を下げていたかもしれない。

システムについて。バグだらけというのはおいといて,フォーントリガーシステムは工夫すればおもしろいと思う。おそらくまだ試作段階なのであまり文句を言うのもアレなんだが,やはり使いづらさが目立った。二周目以降は電話をかけるタイミングが表示されるようになったが,一周目から表示させておけばよいと思う。一応「自分で気づくおもしろさ」を目指したのだとは思うが,相当地の文を工夫されても気付けない。これに加えて,よりによって既読スキップとクイックセーブ周りにバグが集中したのは,相当プレイアビリティを落としている。

以下ネタバレ含む。大したことは書いてない。

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2011年03月28日

DEARDROPS レビュー

本作は私のプレイ歴の中では最も不遇な存在である。新作で買ったのでインストールしたのは発売直後,つまり昨年6月の下旬。にもかかわらず仕事の多忙と他作品優先(『俺つば』『俺つばAS』『そらいろ』『ねこFD3』『うみねこEP7・8』『祝祭のカンパネラ』)の結果,共通ルートが終わったのが9月下旬,一人目(かなで)クリアが12月下旬,二人目(りむ)クリアが2月上旬,コンプリートはやっとのことで3月上旬である。なんと半年かかった。これは私のエロゲ人生で初めてのことだ。しかし,レビュー書くのが難しい作品で,そこからレビューを書くためにさらに二十日も放置された。私は大体クリア2,3日後くらいにレビューを書いているので,これもまた新記録である。

プレイが進まなかったのは前述のように仕事が忙しかったこと,優先すべき他作品が多かったことが主要因であるが,本作が抜群に面白ければそれらは要因になりえなかったであろう。その意味で本作のクオリティの低さがプレイの遅さに現れたと言える。特に上述の通り二人目のクリアまでが異常に遅く,りむのクリアからコンプリートまでは逆にたった1ヶ月弱しかかかっていない。この進行状況の通り,共通ルートはつまらないし,かなでルートはげんなりする出来で冗長,りむルートは話がありきたりな上に異様に短く,ここまでは散々であった。ただし,弥生ルートと律穂ルートはおもしろかったので進みも早かったし評価もかなり挽回した。


総評として。『キラ☆キラ』や『BECK』と比較する気はプレイヤーの側になくとも,感想は必然的に「薄い」とならざるを得ない。何がって音楽やロックというものの描写や理解が。結果として本作で一番輝かないといけないキャラは本来権田であるはずなのだが,彼にスポットライトが当たるのは律穂ルートのみであり,共通ルートでの軽薄さと言ったらあんた何がしたいんだと。練習シーンやライブの文章も毎回同じで,音楽に造詣のある人が書いたのか?そしてbamboo本人はこれチェックしてたんだろうか,という疑問を抱く。

『キラ☆キラ』とは作品の雰囲気も目指してる方向も違うんだという擁護を目にするが,音楽やロックという基盤は同じはずだ。その基盤が崩れているのだから,その言い訳はかなり苦しい。キャラゲーとして評価するのであればまだわかる。シナリオのつまらなさに比べるとキャラは立っている。かなでが典型的な幼なじみキャラである以外,テンプレ的な性格付けは少なく,この点は素直に評価できる。批評空間に「たとえばサッカー小説がやはりサッカーに全く興味がないと楽しめなかったり、筆者のサッカー論と考えが合わなければ楽しめなくなってしまうように、音楽の好みによってこのゲームの好みが左右されると思う。」という意見があった。それには割と同意するが,しかしそれでも本作は凡作でしかない。

一つ,他の人のレビューでおもしろいと思ったのがとりくずかごさんのもので,確かにアンチ本質主義,音楽を象徴(あるいは芸術)として用いないための「軽薄さ」として描かれているのであれば,本作は納得がいく。そういう視点で評価することもありだと思う。でもって,アンチ実存主義な私が本作を気に入らないのも当然であろう。(それにしては律穂ルートはテンプレ表現であるにせよ神と戦っているような気はするので中途半端だし,前述の通り理解自体が薄すぎることへの疑惑はぬぐえない。後述のように,全シナリオで弥生ルートのような方向性にしておけば,「軽いが深い」を表現できたかもしれない。)


音楽はよく聞いてみると悪くないんだけど,音圧の設定をミスってるのかしらないが(音量を上げても解決しない),ボーカル曲がすごく聞きづらい。65〜70点くらい。以下,個別ルート評ネタバレ。
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2011年01月20日

うみねこのなく頃に EP8 Twilight of the golden witch レビュー

手品に決まってんだろそんなもん。


もしくは,別の方のレビューにあったが「愛があっても見えない。」という言葉がふさわしいゲームであった。まさかこのような事態になるとは,発売前に予想できていたプレイヤーは少数派であろう。今,本作の周辺は賛否両論で済めばよいが,名高きシリーズの最終作としてはあまりにも「否」とする声が大きい。実のところ,私自身本作には落第点(35点)をつけざるをえない。世間で本作が「否」とされる理由は,おおよそ以下の3点である。


1.事件の真相が明かされなかった。各種EPの各トリックの種明かしが具体的になされなかったことも不満点ではあるが,これはある程度EP7で解決されている。しかし,各EPとは基本的に"偽書"であり,事件そのものの真相ではないこともまた明らかである。であるのならば,作者は事件の真相を明かすべきであった。
2.読者をあまりにもバカにした態度であった。曰く,探偵のように(あるいは野次馬のごとく)事件の真相に至ろうとする態度は無粋であり,知的強姦者であるという。逆に真相に至らなければよい,好きに妄想させてもらう,という態度は魔女に屈したものであるという。そして推理も妄想もパスし,従順にストーリーと文章だけを楽しんでいる読者は,与えられたものを喜んでいるだけの思考停止した豚なのだそうだ。これでは読者に逃げ場がない。
3.EP8のストーリーがつまらない。前からその傾向はあったが,今回は特に何言ってるのかわからない,ちゃぶ台を返しているというよりもちゃぶ台をぶん投げている。メッセージが前に出すぎていて展開が適当である。それでもひぐらしは祭囃し編がしっかりしていたので信用しようと思いがんばったが,今回はどうしようもなかった。


私自身,1〜3のすべての点において,納得がいかない。が,やはり最も納得がいかないのは1だ。その前には2と3など大した話ではない。

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2010年11月06日

祝祭のカンパネラ レビュー

幸せな気持ちになったという点では,看板に偽りの無いファンディスクであった。『祝福のカンパネラ』のほうのレビューはこちら。余談のほうもどうぞ。


カンパネラの世界観は非常に簡明で,それがきちんと貫かれている。じっくり考えた結果は,なんであれ尊い。この思想が貫かれてるのがカンパネラの世界であるからだ。現実世界では,善意から生じる悪夢もあれば,沈思が直感に劣ることもある。でもここは理想世界だから,そうしたことは排除される。これを単なる理想世界だと,たとえゲームであってもそんな理想郷はありえない,と一蹴するのは簡単だが,まずは,そんなケツの穴の小さいことを言う男にはなりたくないなぁ,俺は。

レスターさんのすごいところは,朴念仁なイケメンなんじゃなくて,本当に精神的にもイケメンなこと。全員の好意を気付き,かつ受け止めて,それを受け流せるところ。受け流せるところが罪作りなわけだけどw,それは朴念仁なのとは決定的に違っていて。朴念仁はエロゲにあふれていて飽きてるから,レスターは新鮮である。ただ,その受け流し方はやはり「一見胡散臭く」軽薄に見えるわけで,エルタリア外から来た登場人物はその胡散臭さを感じ取る描写がちゃんとなされている。「祝福」のほうだと初期のアニエスがそうだし,本FDではリトスの過去が語られるわけだが,リトスは実はエルタリア到着直後,レスターを非常に警戒していたことが明かされた。

こういった気配りは登場人物たちの心情描写にリアルさを生む。ただまあ世間のレビューを見ていると,これに付いていけないプレーヤーも多数いるだろうし,下手したら朴念仁なのと区別のつかないプレーヤーもいるだろう。それは非常にもったいないことである。

しいて本作に文句を付けるなら,なぜハーレムルートが無かった,と。『はぴねす』にはあったわけですよ。レスターさんなら尚更それは許されたはず。正妻はどう考えてもカリーナだろうけど,それは他のヒロインたちも納得するところだろうし。あとは,文句というよりもやっぱりねという感じだが,ガーネットにHシーンはなかった。声優の関係だろうからなぁ,仕方が無い。その意味では,『はぴねす りらっくす!』に比べてフィオーレさんやシェリーママが攻略できなかったという点で,相当おとなしいFDになってしまった,とは思う。とはいえ,オカズとしてはこ〜ちゃ絵が好きならば十分すぎるほど活用できるかと思われます。BGMや歌も全部良い。

カンパネラ,というよりもういんどみるのゲームで一つ褒めておきたいのは,登場キャラの私服のセンスに大きな外れが無い。本作で言えば「祝福」のほうのチェルシーの私服だけどうかと思っていたが,FDでは見事に修正してきた。これは予想外に良かった。これは大きく原画家の差ではあるので(脚本やディレクターのほうから修正指示が入ることもあるだろうけど),こ〜ちゃのセンスということか。私服論については今度また別個に語るかもしれない。



ガーネットクエストについて。クイズゲームだが,誰でも分かるものからガチで難しいものまで。ラスト付近は本当に難しく,ノーパートナーノーコンでクリアできた人は,ぜひミリオネアなりタイムショックなりに出場してくださいというレベル。さくさくとクリアしたければ,まず一人のヒロインを徹底的に攻略し,ヒロインストーリーを出現させること。ヒロインストーリーは5問出題され,1問正解で1万pts,2問で2万pts,3問で4万pts,4問で7万pts,全問正解なら10万ptsが入る。内容はそのヒロイン及びカンパネラ本編についての出題なので,きちんと「祝福」のイベント内容を覚えていれば2〜3問は正解可能だろう。

膨大なポイントを得たらコンティニューを10個ほど生産し,余ったポイントは他のヒロインの好感度を上げるアイテムを作る。このゲームはパートナーの性能が非常に重要で,特に「選択肢−1」や「答えなおし」を持つヒロインが重要になる。終盤はパートナーを二人使えるようになるため,これらを用いて実質二択の状態に持っていけば,相当な難問でも突破できるようになるだろう。……実はラスボスが異常な難問を出してくるので,それでも何度かはコンティニューするだろうけど。

「選択肢−1」……カリーナ,アニエス,サルサ,リトス
「答えなおし」……チェルシー,ニナ,アヴリル

注意点として,ショートストーリーは概ね全て終盤回収できるが,2つだけタイミングを調整しないと取れないものがある。1つは409番で,これは紅水晶4つ目までの段階でしか取れない。もう1つが508番で,409を見た状態でかつ紅水晶5つ目の段階でなければ見られない。コンプリートするなら気をつけよう。


以下はネタバレ。攻略順。

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2010年10月29日

俺たちに翼はないAfterStory レビュー

FDにもその内容によっていろいろ種類があるが,これは確かにアフターストーリーであって,本編の補完的内容であった。それはいちゃラブという点でもその通りだが,本編に入れるべきであったがどうにも入らなかったエピソードをちゃんとやってくれたという点においてむしろ強調されるべきであり,評価されるべきであろう。特に,「選ばれなかったヒロインがその後どうなったのか」というのは本作品の性質上非常に重要であった。全体としては,本編のノリは全く変わっておらず,相変わらずテキストが楽しいため質としては全く問題が無い。本編が好きなら普通に楽しめるだろう。

値段とボリュームに文句が出るのは当然である。あまりこの点について書かない私だが,本作については書かざるをえない。アクティベート起動にされると中古で買い取り拒否になるので,事実上の値段が上がることまで踏まえると,この量でフルプライスは明らかに高い。まあ,半分はお布施と考えるほか無い。


以下,ネタバレ。主に二つの場面についてだけ詳しく書く。

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2010年10月28日

俺たちに翼はない レビュー

抜群におもしろかった。今年やったエロゲでは『しろくまベルスターズ』とベストエロゲ1位の座を争っている。

物語は,渋谷:池袋=3:1で混ぜたような大都市,ギバラこと柳木原を舞台に繰り広げられる一見して群像劇なのだが,実は……という話。目新しいものの,これがエロゲで初めての試みというわけではない。歴戦のプレイヤーなら○○と××足して二で割るとこうなるな……などと考えながらプレーしたのではないだろうか。また,その核心を特に隠す気は無いようで,勘の良い人なら第2章(つまり二人目の話)で,悪い人でも3章の途中までには気付くだろう(今回私は悪い人だったので,ガチでわかんなかった)。また,3章末には早くもネタバレしてしまっている。それだけシナリオに自信があるということだと思うし,実際におもしろかった。6章まであるが,核心が一応伏せてある3章までとそれ以降では,まるでゲームが異なる。シナリオのオチとしては,この類ならばエロゲ以外を見てもよくある話で,珍しいものではない。前半のテンションの高さの割に超展開オチを期待すると拍子抜けすることになるだろう。


シナリオのぶっ飛びっぷりに目がかすみがちだが,テキストも抜群によく,非常に滑らかである。シリアスにもギャグにも大活躍で,眠くなることはまずないだろう。また,音楽や背景CGも美麗でかつ随所にネタが仕込んであり,飽きさせない。演出も凝っている部類と言っていい。キャラは大体全員立っている。攻略不可能キャラも含めて悪い子は基本的にいない。プレイ中は「なんだよこいつうぜーな」と思っても,終盤までには大体嫌いじゃなくなっている。その意味で,実は一番しんどいのが第1章で,ここを切り抜ければあとは途中で投げ出すことはそうないと思われる。コンプリート前提のゲームでもあるので,時間はかかるが一気にやり通してしまいたい。伏線の張り方が細かく,特に群像劇らしく日付が重要になってくるので,短期間でやらないと張られた伏線をスルーしたままクリアしてしまうことにもなりかねない。私はたっぷりねっちり一ヶ月かけてのんびりクリアしたらわけがわからないことになった。


以下は比較的どうでもいい指摘を二つほどする。まず,ギバラの街,すなわち本作の背景について。都民ならツッコミどころありすぎだろう。渋谷・新宿ユーザーなら気がつくものは非常に多い。スペイン坂(と思しき場所)なんてある意味地元ネタすぎて笑ってしまった(どのくらいまんまかというと,このエロゲについて全く知らない友達が見てもわかるレベル)。もういくつか例を挙げると,アルバトロス正面からドコモタワーらしきものが見えているわけだが,渋谷のセンター街からドコモタワーは見えないはずである。方角的にもおかしい。どうでもいいが,あのドコモタワーをネタにしたエロゲも,本作が初出ではない。某「森」もそうである。

また,タカシの通学路になっている歩道橋はまんま渋谷駅東口出たところの大歩道橋だが,現実で真上を通っているのは電車ではなく首都高である。同様に,隼人の工事現場らしき風景も,渋谷駅から東口を出て首都高沿い(青山学院方向)に歩いていくと見えてくる。というよりも,都内ではよく見る風景すぎて首都高の真下なら大概ある(六本木にもこんな風景ある)。加えて,パル姐さんがクレープ屋を開いている平和通りだが,平和通りという地名は日本全国どこにも存在するものの,山手線圏内で存在するのは新宿と池袋である。池袋のほうはなんてことない商店街だが,新宿のほうは西部新宿駅を出てコマ劇のほうに歩いていったあたり……ということでいろいろ察して欲しい。パル姐さん,そんなところでクレープ屋は確かにみ○じ○料要りますわな,等々。都民なのに見落としてた人はぜひ,3章を再プレイしてほしい。


さて,西又の絵にも触れておくが,正直違和感はあったもののいたる絵と々でプレイしているうちに気にならなくなる。立ち絵にいたっては良い出来と言ってよい。よく見ると一つの服装につき腕と顔しか動いておらず厳密には種類が少ないが,そんなことは気にならないほど表情差分が多く,手を抜いている感は全く感じない。ただし,私服のセンスの飛び方は正直擁護が難しく,京と鳴はまあわざととしても他はなぁ……日和子がああいう設定なのは,ひょっとして雀孫からの配慮なのか,とか要らぬ邪推をした。正直,鳴も逃げただろうとしか思えない。小鳩はシリアスなシーンであの服装は吹くので勘弁して欲しかった。ああでもコーダインはそれなりに良かったか。ひょっとして彼女の人気の一因はそれか。まあ,立ち絵は良いとして,一枚絵のほうの擁護はする気にもならない。パース崩れすぎやろ……。あとこれは立ち絵にも若干いえることだが,基本的に顔の角度と身体の角度のズレがおかしい。もう全部正面絵で書け。

散々文句を言ったが,シナリオに調和する絵ではあって,そこには満足した。実際,エロゲにとって一番大事なことはそこである。絵だけ見たければ画集でいいわけで,文章,音楽,演出といかに相乗効果を発揮するかという点において,失点は無かった。御大,長年やっているだけはあると思う。


90点弱。時間としては共通ルートが長く,ここで20時間弱かかるが個別は短い。フルコンプまで約30時間くらいか。読むのが早いと相当縮まるかもしれない。システム回りは非常に快適で,スキップは文章スキップもあるし,章ごとスキップする機能もある。以下,各ルートネタバレ。
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2010年08月24日

うみねこのなく頃に EP7 Requiem of the golden witch レビュー

久々に,ゲームクリア直後に放心してしまった。端的に言って大変おもしろかった。完全ネタ晴らしシナリオ。8〜9割方の謎は解明されたと思う。そこそこ短くまとまりだれるところもなかった。EP6のレビューでも書いたが,これだけのストーリーを謎の奇病・東京なしにまとめあげたという点において,本作は「ひぐらし」よりも高く評価しても良いだろう。(ただし,エンタメ作品としては向こうのほうが上だったが。)残りの謎に関してはEP8待ち,ということになるが,もはや何の心配もしていない。

さりげなく私の高評価の理由の一つとして,うみねこwikiでの推理がほとんど当たっていたということにある。EP4か5くらいまでの推理の複合で正解が導き出せているのだ。その意味で,今回の戦いはニンゲン(プレイヤー)の勝利と言えるだろう。しかし一方で,我々は,EP4・5まででちゃんと解けるようにヒントを小出しにした,魔女(GM=竜騎士)の手のひらで踊っていただけとも言える。解かれることがベアトの望みであった,という設定もあるわけで。この絶妙な布石は「ひぐらし」に足りなかったものでもあり,EP6・7は今までまじめに推理してきた人にとっては最高のプレゼントになったのではないか。

ツイッターでもつぶやいたが,一応もう一度書いておく。「確かにEP1〜4までのヒントで全部解けます。自分の推理も部分的にですが正解でした。今回はひぐらしの「東京」のような逃げは(完全に無いとはいえないけど)ほぼありません。これからEP1からやる気のある人は安心してどうぞ。」EP7単体としては90点。EP1-7通しての点数としては80点強。EP8の出来次第だが,名作認定しても問題ない。


以下,ネタばれ。感想というよりも単なる情報の整理。
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2010年08月04日

ねこねこFD3 レビュー

あんまりFDのレビューは書かないつもりだったが,よく考えたら『明け瑠璃MC』の時点で書いていた。『キラ☆キラ カーテンコール』も書いていた。

よく考えたら性質上ねたばれでしか書けないのでいきなり格納。ついでに,おかえしディスク7のことも多少書いておく。点数はつけない。というかつけようがない。

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2010年08月01日

そらいろ レビュー

ねこねこソフト復活作。渾身の力作であった『Scarlett』で華々しく休止したことに比べると,随分こぢんまりとした復活作となった。おそらく急ごしらえな上に,HP上やスタッフルームで片岡とも本人が語っていたように「お手伝いを中心にして作れる範囲で作る」のが新生ねこねこソフトのコンセプトではあるため,今後もこのような作品が増えていくのではないだろうか。

日常路線の作品としては『White』『みずいろ』『ラムネ』に続く作品となる。というよりも本作は『ラムネ』の約20年後が舞台であり,ぽんこつ(つばめ)の母親はぽんこつ(七海)という大変わかりやすいつながりが明示されている。『ラムネ』の正史として,主人公は七海とくっついたらしい。背景CGもほぼ『ラムネ』と同じで,むしろ20年の歳月さえ感じさせない。その他,旅館の女将として多恵先輩が登場。ジャージ先輩は結局家業を継いだようだ。多恵先輩の姪っ子は主人公たちの先輩(バレー部キャプテン)として登場し,CVはもちろんまきいづみである。『ラムネ』要素を感じさせるものとしてはこんなもんで,鈴夏とひかりは出てこない。おそらく二人はあの町を離れているものと思われる。また,OPムービーもほぼ『ラムネ』と同じ構成となっている。

ただし,ヒロインの設定としては『ラムネ』よりも『みずいろ』に近く,というよりもほとんど酷似している。ぽんこつレベルは上がり,七海を超えて日和に近くなった。妹は再び家事万能になり,(ねたばれ注意)挙句「私嫌な子だね」とか言い出す始末,さすがにあのシーンはギャグにしか思えなかった。幼馴染は過去編の選択肢によりやかま・おとなの性格分岐が生じる。残念ながらお餅先輩とサテライトキャノンは存在しないが,中核3人はまるで同じ設定である。


作品の評価としては,私はねこねこソフトの日常路線最高傑作は『ラムネ』だと考えており,それに比べると本作品はやはり何段か落ちるという結論となった。本作の最大の特色と言えば独特の分岐システムである。過去編で分岐してメインヒロインが確定するところまでは通常のエロゲと一緒だが,現代編でさらに分岐しその時空のサブヒロインまで攻略可能になったという点にある。つまり,大概のエロゲではAというヒロインの個別シナリオに入ったらそこからBやCは攻略できないところを,できるようにしてしまったのが本作である。ヒロイン数は3人であるから,単純な3ルートではなく,3×3のルートが用意されていた。

このことは比較的革新的で,既存の枠組みを打破しうるおもしろい試みだと思われた。しかし,その有用性を本作は発揮しきったとはとても思えない。なぜなら本作は結局のところ3×3ではなく,個別ルートが9つあったに過ぎないからだ。せっかくメインヒロインが確定しているところでサブヒロインに浮気するのだから,三角関係展開にはならずとも本来のメインヒロインとは何かしらの絡みがあってしかるべきであり,メインヒロインではなくサブヒロインが選ばれるだけだけの強い動機や事件がシナリオに登場すべきであろう。が,そういったものはまるでなく,それが本来誰のルートであったのかを忘れさせるようにシナリオは進行する。ネタばれになるので具体的には後述するが,この画期的なシステムの意味があったシナリオは少なかった。

さてそうなるとこのシステムは,共通ルートが3倍になっただけでさしたる意味を持たない。いかにおもしろい共通ルートといえど3回もやれば飽きてくる。この点は弊害だと言えよう。個別ルートの出来は複数ライターの弊害から非常にマチマチで,片岡とものシナリオは出来が良い分逆に浮いて見えた。加えて言えば,『そらいろ』は『ラムネ』ほど夏という感じがしない。夏のモチーフの使い方が丁寧ではないと思う。たとえば,せっかく七海畑を引き継いでいるのだから,畑のCGは欲しかった(『ラムネ』にはあった)。文章でも,『AIR』ではやたらと往人さんがへたばっていたイメージがあるが,その意味で本作の主人公には季節感を感じさせない。まあクーラー引きこもりになるシナリオはあったが……個人的にはこういったところは積極的に減点対象としたい。


絵に関しては特にケチのつけどころがない。複数原画でも違和感がないねこねこソフト原画陣の統一性及びCG陣の努力はさすがである。いや,単純に秋乃武彦スクールというべきなのかもしれないが。特にあんころもちの幼女立ち絵の出来が異常,なぜこのまま攻略できない。音楽に関してはこのシナリオにもったいないくらい一級品で,特に主題歌「そらいろ」は,Elements Gardenと佐藤裕美の鉄板コンビの持つ破壊力を感じさせる。システムも不備はなく,この辺りはさすがに復活した老舗といったところか。「緊急回避」機能は今回も実装され,いつも通りの野望2009,じゃじゃ馬(超短いけど),X-fileが盛り込まれていた。あとはポートピアと片瀬健三郎があれば完璧だったがそこまでは望むまい。

点数としては70点未満65点以上。3×3がうまく機能していれば80点以上もありえただろう。思い入れの割には点数を与えられない・他人には勧められないゲームの典型。好きなことは好きなんだけど。

以下,ネタばれ。
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2010年03月11日

しろくまベルスターズ レビュー

いいんですよ、クリスマスイヴだから奇蹟の一つや二つくらい起きる。


PULLTOP藤原々々ラインのゲーム。そしてその系譜を見事に受け継いでいる。雰囲気の良さもキャラの良さも、そしてシナリオのテーマさえも。絵も音楽もクオリティが高く安定している。また、シナリオがちょっと中だるみするという受け継がなくていい欠点まで受け継いでいる。逆に主人公像は新しい。『かにしの』の本校編は根本的に違うので例外中の例外としても、その他を見渡してもちょっといないタイプのような気がする(一部ルートでは草津拓也化するが)。まっすぐだけどおバカすぎず賢すぎず、仕事(と酒)への情熱を持った青年。けっこう真っ当にかっこいい。

個人的な感想としては、シナリオの出来としてななみ>きらら>硯>りりか。ななみルートは09年エロゲー史に残してもいいくらい出来が良い。なぜ当時もっと騒がれなかったのだろうと思うくらい。PULLTOP信者の間でしか話題にならなかったせいで見えなかった、とかそういうことなのだろうか。キャラの好みとしては、硯に尽きる。ただの「人見知り系清純派」のキャラで終わらせず、なかなか起伏のあるキャラとして描けていたのが実に良かった。よだれかわいいよよだれ。その他、個別ルートに関してはネタバレなしには書けない部分が多いので、格納後に。

クリア後、ざっと他人のレビューを読んで思ったのは、確かにサンタ専門用語をあえて説明せずにシナリオを突っ切ったのは英断だったが、英断すぎて「わかんねーよ」「これって深く考えたら負けってことだよね」というレビューが非常に多かった。いやいや、ちゃんと設定されてるんですよ、あえて説明してないだけで)(元ネタ集(1)参照のこと)。これだけ反発を食らうなら、共通ルートで説明すべきだっただろうな、とはいろんなレビュー読み終わってから思った。


『かにしの』とほぼ同様の出来として、87点。世間的な評価はここからもう5点ほど低いようだが、前述の通り「サンタのシステムがわからなかったから深く読むことを放棄した結果」だとしたら、それは悲しいことである。なお、中だるみと書いたが眠くなるほどのものでもないので、そこはご安心願いたい。しかし、長いことは間違いなく、共通で4時間ほど、個別も1ルート5〜6時間は優にかかるので、じっくり読んでコンプしようとすると20時間は軽く越えるだろう。実は『うみねこ』EP6を除けば、85点を超える点数を付けたのは08年の夏にプレイした『ジャンゴ』『キラキラ』以来で1年7ヵ月振りということが発覚した。ここ2年はけっこう割と大当たりを引いてなかったということにさっき気付いた。

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2010年02月15日

うみねこのなく頃に EP6 Dawn of the golden witch レビュー

私がこのEPで最も不安だったのは、いい加減きちんとした解答が出るかどうかという一点であった。その解答というのは完全解ではなく、少なくともひぐらしのEP6にあたる罪滅し編くらいには真相が解明されないと、さすがにおもしろみが薄れてくる。そして実際にプレイしてみると、予想以上に今回でネタ晴らししてくれた。あと本気でわからないのは碑文とベアトの真の正体くらい?これはネタばらしすぎてEP7でやることがなくなり、EP7がつまらなくなるフラグかと思えたほど。しかしどうやらEP7は完全ネタ晴らしで、EP8がハッピーエンドという、ほぼひぐらしと同じ閉め方をするということらしい。しかし、それにしても推理スレとうみねこWikiはたいしたもんだ。けっこう当たっていて、事前にEP5分まで読んでおいてよかったと思う。

そういわけで、今までで一番おもしろかった。個人的には、EP6>EP3>EP1>>EP5>EP4>>>EP2、という感じ。最初ゼパルとフルフルが出てきたときはまた魔法側で新キャラかよと思ったし、中盤の魔法バトルはやっぱり多少だれたものの、終盤の怒涛の展開は見事。やはり竜騎士は、シナリオの精度とか整合性とかを度返しすれば、盛り上げ方におけるシナリオ展開とテキストのうまさは業界有数だと思う。まあそれもこれも全て、ちゃんとネタ晴らしをしてるから評価できることなんだけど。85点。

しかし、竜ちゃん開き直ってるなぁ。確かにこのオチはどうなの。ミステリー的には相当ずっこけたけど、エロ助で他の人も書いていた通り、このしてやられた感は『車輪』以来か、または『ネコっかわいがり!』以来の快挙。とりあえず、今からEP1〜5以前を未プレイの人は、あきらめずに、推理しながらたどり着いてほしい。EP4までじっくりとりかかれば、意外と見えてくるような気がする。少なくとも、うみねこWikiにはEP3の時点でかなり核心をついている意見がちらほらあった。まあ、それもまだ大正解とは限らなくて、EP7でひっくり返される可能性は残ってるけど、まず無いでしょう。ここから変にひっくり返したら、もう盤面がめちゃくちゃになって収拾つかなくなるだろうから、EP7はすごく素直な内容になってくると思うし、それで楽しめると思う。



以下、ネタバレ。  続きを読む
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2010年01月31日

うみねこの鳴く頃に EP5 End of the golden witch レビュー

評判が中途半端だったので不安だったが、その不安を吹き飛ばすようなおもしろさだった。というよりも、うみねこという作品はEP2が全くの無駄、EP3でようやくバトラがリング脇に来て、EP4でレフリーの説明が始まり、そしてようやく、EP5で殴り合いが始まった。むしろ、「本番」なしでよくも出題編全部済ませたと思うし、前から言っているが、EP4の内容をEP2でやってしまえば、EP5でEP3の内容が出来た。もっとはっきりと言ってしまえば、EP3でドラノールを出現させておけば、後ろがこんな詰め詰めの進行にならずに済んだし、同じ場所で似たような問題をぐるぐる回っているだけ、という状態は避けられたはずだ。

それに、EP5も手放しで褒められるわけではない。エリカの推論は随所で穴があり、しかもそれを誰も指摘しない。別にミステリーに詳しいわけでもない私に指摘されているようじゃダメだろう。問題編ならば後から補修するなりまだ開示していない真実があると思わせるなり、なんとでもなっただろうが、すでに解答編に入っている以上、これは致命的である。まあ、なんか竜騎士本人は「解答編というよりも展開編」とかよくわからないことを言っていたが。内容からすれば、むしろ"目明し"よりもよほど解答しているわけで、"展開編"という言葉自体がすでに言い訳じみている、とは糾弾のしすぎであろうか。

まあしかし、五作目にしてようやくまともな、言葉遊びの水準を抜けた議論の応酬が見れたし、それは『ひぐらし』ばりに熱くておもしろかった。今回、バトラがベアトの味方をしていたことについてもけっこう不評が出ているようだが、それはEP4の時点でベアトとバトラには浅からぬ縁があることは示されているので、別に不思議ではないだろう。むしろ、バトラ以外に魔女幻想が破壊されるくらいならベアトの味方をするというのは(バトラというキャラクターの思考からして)妥当な判断である。

エンジェも救ってベアトも救う、両方やらなくちゃいけないところがバトラの辛いところだな。覚悟はできてるか?俺はできてる。エリカ?性悪かわいいよ性悪。EP6でいなくなるとか聞いちゃったけどね!80点。


以下、ネタバレ。
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2009年10月30日

うみねこの鳴く頃に 推理というよりは整理

以下、『うみねこ』ネタバレOKな方、追ってないけど何かしら情報を仕入れておきたい方はどうぞ。

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うみねこの鳴く頃に EP4 Allience of the golden witch レビュー

今回も、まあおもしろかったと判じても良いだろう。EP3ほどの疾走感が無かったのは、前半の12年後の話をうだうだとやりすぎたせいだ。正直に言って、EP3で魔法の正体が完全に暴かれている以上、もう一度その話を蒸し返してもおもしろいところはない。あのパートで重要なことは、

・12年後の世界がどうなっているのかということの本格的な展開
・エンジェのスタンス
・ローザとマリアの本質的な関係

この程度であり、あの半分の容量でまとめることは可能であった。「話のつまらなさを竜騎士の文章で無理にテンション上げた感じ」というレビューがあったが、同感である。ついでにどうでも良いことを言うと、自分はけっこうローザに同情的である。体罰や玩具損壊については擁護しようがないものの……マリアの聞き分けの無さも異常な領域。また、再婚や会社の経営に関係があったとするなら、旅行による長期の不在はそうそう責められない。ローザ自身が男性に対し疑心暗鬼過ぎるところもあるが、それも右代宮の実家での教育や1986年の社会の視線というものを考えれば、妙に納得しうるところである。1986年というのが妙にリアルな年代設定で、シングルマザーに対する視線の厳しさは想像されうる。「男遊び」と言われても仕方がないことだろう。少なくとも、本当にマリアをほっぱらかして「男遊び」のために札幌まで蟹食いに行った、という解釈は、自分にはできない。EP2,3の奮闘も考慮に入れれば、尚更である。


後半、本格的に1986年の六軒島連続怪死事件に入ってからはEP3並の出来だったと言える。ただし、難易度に関してはEP1-3に比べて格段に下がる。というのも様々な説明がひどく懇切丁寧だったからで、よほどEP2の不評がこたえたのだろうか、と邪推したくなる。むしろ説明がくどすぎて減点せざるをえないくらい。バトラアホの子がすぎる。

EP4はさしずめ、前半は『ひぐらし』の暇つぶし、後半は祟殺し編だったと言う事もできるだろう。両方を無理やりやった挙句、エンジェをうまく立ち回らせようとした結果、おかしな詰め込み方をせざるを得なくなったのではないだろうか、と推測できる。EPを区切るべきだったのだろうが、『うみねこ』をEP8で終わらせようと考えた結果、もうEPが足りないことが判明したのではないだろうか。返す返すもEP2の無駄遣いが惜しまれる。

さて、これで宣言通り卒論提出完了までエロゲ・ギャルゲの類は封印する。というよりも、戦略SLGも含めてゲーム類は1月上旬までプレイしない。しかし、冬コミにはしっかり参加するので、年明け最初のゲームはEP5,6ということになるのではないだろうか。せいぜい、推理でもしながらそれを待つこととしよう。EP1には点をつけてEP2,3の記事ではつけてなかったが、出題編が終わったのでまとめてつけることにする。EP1が80点、EP2が60点、EP3が85点、EP4が75点で、出題編は75点前後としておく。『ひぐらし』には及ばないが、まあ追いかける価値はあるだろう。



続きにあった推理っぽいものは、後で自分で見直すことを考えて別記事に切り離した。読みたい方はそちらへ。  
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2009年10月23日

うみねこの鳴く頃に EP3 Banquet of the golden witch レビュー

なるほど、EP2から評価が回復するというものだ。しかし、それはEP3そのものがおもしろかったから、というわけではない。EP3にて、ようやくこのゲームの楽しみ方というものを提示してきたからだ。だが、それがこのタイミングで正解だったのかは疑問が残る。EP2のラストか、できればEP2の中盤がベストのタイミングだったのではないか。EP2があの出来じゃ、アンチを大幅に増やしただけだろう。

一度だけ、某友人(DiL)に、私は本格ミステリーは読まない、それはなぜか、ということについて話したことがあるが、まさにうみねこEP3はその点を突いたと言える。名作といわれて、中高の頃にいくつか読んだミステリ小説もあるが、何読んでも「いや……それは証拠の後出しってやつなんじゃ」「で、その証拠は信用できるのか?」「その推理はねーよ……詭弁じゃないの。しかも犯人納得すんの?ないわ」以外の結論が、自分の中では出なかった。つい最近まで"後期クイーン問題"なんて言葉は知らなかったんだが、これで溜飲が下がった。これだけでも、EP3をやった価値があった。

2chやミステリ好きからは、EP3以後に発覚してからさらに竜騎士叩きが激化していたようで、それは悪魔の証明の使い方だとか、竜騎士本人の詭弁の弄し方に由来するものであるが、くだらないことである。平たく言えば、私は本格ミステリーが後期クイーン問題を解決する日は、本質的に永久にありえないと思っている。少なくとも私は「作家は"後期クイーン問題"について意識していない、よって問題にならない」なんて逃げ道は認めないし、「探偵はメタ世界的に作者から正解や証拠を示されている」という抜け道は実質的に『うみねこ』の赤字システムと同レベルだし、「真相を論理によって到達するものと考えない」ってそりゃ別のジャンルだろう、もはや。


ただし、じゃあ竜騎士に全面賛同しているかというとそうではなくて、いまだに不信感がぬぐえないのも確かである。たとえば、『ひぐらし』は謎の奇病ことノドカキムシールは納得できた。komeも言っていたが現実にトキソプラズマなんて存在するわけで、謎の病原体なりに説明はされていたように思う。いや、あれも生物学上医学上十分にありえないんだけど。しかし、どうせ未知の奇病なんだから、「現代医学では解明不可能という設定」で押し切れなくも無い範囲だった。実際、祟殺し編あたりでこの結論にたどり着いてた人はけっこういた。

だが、羽生の存在とあの足音だけはいまだに全く納得していない。「羽生は非科学的存在だけど物理的に検知は可能」という設定だったら、ノドカキムシールと同様の扱いができた。しかし、彼女は完全にその存在が確認できない存在であった、にもかかわらずその「足音」は出題編において非常に大きな要素であった。あれは作品ぶち壊したなーと思う。(ついでに言えば、山狗(笑)と東京(笑)にも当然納得がいっていないが、これらは『ひぐらし』の推理パートとは直接関係がないという点で看過はできる。)

で、今回もどうやらノドカキムシール程度にとどまらず、「羽生」的存在が出現してしまう可能性は否定しきれておらず、「アンチミステリVSアンチファンタジーの予定でしたが引き分けでござるの巻」とか煙に巻いた終わり方をされることも想定されうるわけである。というか、EP3が終わった直後の最大の疑念がこれで、とりあえずベアトは存在しちゃってるだろうどうにも。今から詭弁重ねた程度で否定できるもんなの?詭弁重ねた程度、というのもすごい言葉だけど。EP2のレビューのほうに「もはや『うみねこ』には東京(笑)以上のオチは期待していない」と書いたのは、そういう理由である。


とりあえず、EP4までやったら一旦エロゲ打ち止めで。二度目の卒論(笑)を提出するまでは復帰しません。

  
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2009年10月19日

うみねこの鳴く頃に EP2 Turn of the golden witch レビュー

発売当時、大変評判の悪かったうみねこEP2だが、EP3で盛り返し、順調にEP5が発売され、ひぐらしほどの評判や盛り上がりにはならないものの、アニメ化してそこそこ話題にもなり、同人界隈でも二次創作をみかけるようになった。ゆえに、やるならこのタイミングしかないかなと思った次第。

評判の悪かった理由は大いに理解できた。「この連続殺人事件は人間による犯行か、それとも魔女による超常現象か」をテーマに掲げているのに、突然魔法バトルが始まるし、完全密室はどんどん出てくるし、おまけに魔女ベアトリーチェ本人がゲーム中に顕現するし。やりたい放題ってレベルじゃねーぞ。後追い組からしてみると、ぶっちゃけて言えば嘉音ブレード(笑)くらい風の噂で聞いてたので驚きもしなかったが、そりゃひぐらしのリベンジだと思って再び真っ当に推理してた人たちはぶちぎれるだろう。

ただし、「魔女の語る言葉のうち、赤字は真理」という、通称赤字システムに関しては評価できる。なぜなら前作『ひぐらし』から考えるに、登場人物が多分に嘘を言っていたり、ゲーム中での出来事が実は登場人物たちの妄想だったりということは、この『うみねこ』でも大いに行われているということは、『うみねこ』EP1をプレイした人間なら誰だって想像がつく。ましてや「No Nox.No Van dine」を宣言しているゲームなのだから、そこは真っ先に疑うべきポイントになってくるだろう。

そこでこの赤字システムである。たとえば、赤字で「この部屋は完全密室で隠し扉等は一切存在しない」と宣言してくれれば、我々プレイヤーは一々ゲーム中の言葉尻を疑うという七面倒な作業はしなくて済む。これは『ひぐらし』の不満点をうまく処理できた画期的なシステムといえるだろう。もっとも、この赤字システムもEP2ですでに自縄自縛になりつつあるところがあって、「妾の力をもってすればどのような密室も生み出せる」はアウトだろう。それは、超常現象が実在していることを証言しているに近いのでは……竜ちゃん及びベアト様には、もう少し慎重なシステムの運用を期待します。


まあ、うみねこが「東京」(笑)になるか、それ以下のオチになるかは、完結してみないとわからないと思う。まあ、当面は付き合ってみます。「東京」以上に納得できるオチはすでに期待してもないが。EP3のレビューも今やってるので、すぐに書けると思う。密度が濃くて短いのは、時間がない身にとってはありがたい。あと、なんだかんだ言って盛り上げ上手なのは認めざるを得ないところかな、と。
  
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2009年09月30日

GA2 永劫回帰の刻 レビュー

前作のレビューに「GWまでには終わっているだろう。」なんて書いた結果がこれだよ!

友達に返す事情で超音速で1ルートだけクリアしたので、実はあんまりストーリー覚えてないが、長い割にだれなかった点については褒められる。SLGパートもおもしろかった。今まではミッションがめんどくさいか単調かどちらかだったが、今回はちゃんと難易度的にも初見でクリアできなくはないが工夫は必要という程度になっていたので、これは飽きないのではないかと思う。でも、ジェノサイドボンバーとゼフィルスランページ、そしてフォトンダイバーがバランスブレイカーすぎて、嫁を誰にするかによって難易度が全く違うのではないかと思う。正直嫁のはずのリィちゃんは活躍しませんでした。

しかし、いかんせん共通ルートが長すぎる。しかも、これでも共通ルートには必要なものを全部詰め込んだ結果であって、「無限」が長い割に可も不可もないストーリーすぎたツケをここで全部払わされた。そりゃ個別をたった一章にでもしないと1ルートのボリュームとして厳しい領域になろう。それでも、11章中9章までは楽しめた。それだけ展開は熱かったし、風呂敷はこれ以上ないほど広げきった状態と言っても過言ではなかった。

だが、決定的な過ちはやはり最後の二章であろう。圧倒的な勢いに飲まれればむしろ幸せだったのだろうが、残念ながら私の頭はそこそこ固いもので、ひどい超展開の連続で、そりゃないよ水野良さん、と。やる気が減退したのと時間があまりにも無かったのでリリィさん1ルートだけやって返したが、伏線未回収率がエロゲでもちょっと無いレベル。しかもストーリー自体は未完結というわけではなく、しっかり完結しているという。

今までのGA6作品だと、フルコンプしてもおまけCGやEXモードはあってもグランドエンディングは無かったので、これひょっとして伏線未回収のまま終わるの?と思っていたら、今作に限ってなんとグランドエンディングがあるらしい。しかし、ぐぐってみたところ、そこでもほとんど伏線は未回収のまま放置のようで……もう二重三重におかしい。

だが、何よりもプレイが遅れたのは、6作品の最後の最後を飾る作品でこの作品だけ原画変えるという暴挙が、どうにも許しがたかったからだ。KANAN先生も、これでチェック通さないでくださいよ。

キャラ的に言えば、ノア株だけ急上昇した。この子こんなにかわいかったっけ?GA1の無印だとむしろきもかったはずなのに……いやー、これでGA6作品の締めかと思うと寂しい限りで。


以下、一応ネタバレ。  続きを読む
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2009年08月12日

キラ☆キラカーテンコール レビュー

このライターは瀬戸口の後釜としては必要最低限で、最も必要である仕事はした。かと言って高評価できるというわけではない。それはどういうことか。つまり、この作品は紛れもなく『キラ☆キラ』のファンディスクである。『キラ☆キラ』の雰囲気、本質的なところでの精神性、ロックに対する考え方や情熱は本編と何ら変わるところなく伝わってきたからだ。それが最も必要な仕事である。ある種象徴的だったのは、前島祐子がまぎれもなく女鹿之助だったということ。ああ、こんなやつだったよ確かに。(じゃあその本質って具体的には、という話は本編のほうのレビューで。

エロゲ業界においてライターの引継ぎや複数ライター制は全く珍しいことではないが、これが出来ていない作品が非常に多い。『リトバス』ですらそうであったし、『かにしの』のような例は極めて奇跡的であった。これはもちろんライターの功績だが、一応原案ということになっている瀬戸口本人や、bambooが相当気を使ったのかもしれない。なんにせよ、一本筋が通っていたのはいいことだ。むしろこれで本質が変わっていたら、じゃあロックってなんだったんだよって話にもなりかねないだけに、本作ではとりわけ致命傷になっていたかもしれない。

しかし、じゃあなぜこれが最低限の仕事かといえば、にもかかわらず文章で全くノれないからだ。肉体たるテキストが伴っていない。瀬戸口と比較するほうがかわいそう、という話ではあるが、エロゲ批評でするべきは相対的評価ではない。絶対的評価である、と考えるならば、これは不当な判断基準とは言えないだろう。ストーリーの起伏も薄かったが、この際それはどうでもよい。問題はあくまでテキストのテンポの悪さに絞りたい。

シナリオについて少し言うなら(この段落ややネタバレ注意)、第一部も第二部も短すぎた。第一部は、言うまでもなく結衣に関する描写が少なすぎたし、第二部だと、もっと村上が何故悩んだかは描けたはずだ(これに関してはまさに最低限は描いたという感じ)。ミルとの関係は最後までと言わずとももう少し先までは見たかったし、可能だったと思う。最後の最後もなぁ……『キラ☆キラ』を全員で歌うというのは、悪くはなかったけど安直なオチだったような。てっきりライブシーンがずらっと続いて終わるものだと。スタジェネの曲とか期待してた。ネタバレ終わり。

絵と音楽については文句なし。個人的なことを言うなら、誉田君の歌声はあまり好きじゃない。うーん、まあ70点弱。あ、ライブDVDは別評価ということで。あれを含めるといやがおうにも高評価せざるをえなくなるでしょう。
  
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2009年07月23日

さくらシュトラッセ レビュー

冒頭からいきなりルーデルさんが急降下して主人公が死ぬ新感覚恋愛ADV。いや、冒頭がそんなんなだけであって、内容は軽めの普通の恋愛ADVである。「ジエータイだし、撃ってこないと思う」とか口走るキャラも登場するが、断じて戦争物ではなく、壮絶な出オチでもバカゲーでもなく、至って普通のエロゲである。


本作のシナリオライター、NYAONの描くキャラは、独特である。私は本作以外では『もしらば』でしか知らないが、これは断言してもいいだろう。文章が独特であるのではない。描かれたキャラの内部での葛藤や論理展開が、他の人とは異なる。それゆえに、一癖も二癖もあるキャラが誕生し、しかもその癖は紋切り型の言葉で落とし込められないものであり、「こんなやついねーよ」と「いや、エロゲなら許容されるのか?」の境界線上をさまよっている。だからこそ、強烈な魅力と拒絶反応の両方をもたらすことになるのだ。

というわけで、本作は『もしらば』からは大きく離れて単純な萌えゲー、キャラゲーの体裁をとってはいるが、その独特の論理展開においては『もしらば』となんら変わることはない。単純な萌えゲーであってシナリオゲーではないのは確実だが、しかし前者には不必要なほどの癖を持ち、むしろシナリオゲーマー御用達なのではないかという感覚がする。とりわけ本作なら、マリーとかりんのキャラ付けとシナリオに対し、不快に感じたプレーヤーはさぞ多かったのではないだろうか。とりわけ、批評空間のレビューでは自分の予想よりも大きくかりんのキャラが叩かれていてた。その一方で、本作のシナリオは実にエロゲらしい甘さ、ラブラブいちゃいちゃ(死語)をも内包している。実に、不思議である。

くすくすの絵に関しては、本作の出来ならば現状のエロゲ界において最高に近い評価を与えてもいいだろう。少なくとも自分の中ではべっかんこう、こ〜ちゃに次ぐ(みやま零やカーネリアンはやや評価軸が違うので除外とするなら)。音楽は思った以上に良かった。OPの橋本みゆき、EDのWHITE-LIPSにしろ鉄板だが、BGMも非常に良かった。プログラムも軽いし、戯画システムと比較さえしなければ使いやすい部類に入る。


さて、やや冒頭のネタバレになるが、体験版部分である上に本作の重要部分であるのでこちらに書く。本作は過労で倒れた母親に代わり、実家のドイツ料理レストランを経営するためにシェフ見習いの主人公が帰郷するところから始まる。ところが、彼は故郷の海岸沿いを歩いていると自衛隊の戦闘機が墜落してきて生死をさまよう重傷を負う。その原因は魔法使いマリー・ルーデルが日本領空に不法侵入し自衛隊に追っかけまわされていたので、彼女が振り切るつもりで曲芸飛行した結果、自衛隊戦闘機が急降下に失敗して墜落したためである。

事故に気付いたマリーはとっさに主人公に治療の魔法を施すが完璧ではなく、責任を感じて主人公のレストランで働くようになる。元々主人公の技量が彼の母親に遠く及ばないためレストランから客足は遠のいていたが、マリーの料理が非常においしかったため評判は上々であった。自分の才能や努力の至らなさを悔やむ主人公だったが、ある日マリーの料理は「魔法」によるもので、だからこそ絶品の料理になっていたのだということを知ってしまい、激怒する。二度と厨房で魔法を使うな、と。結果的にマリーは厨房では魔法を決して使わないと約束し、その翌日から主人公とマリーの未熟なシェフ二人で、レストランは再開することになる。


なぜこのように長々と冒頭の展開を書いたかと言うと、私は、このマリーが魔法使って料理を作ってたのが発覚したときの、主人公の気持ちを理解しうるかどうか、で本作品の評価は大きく変わってくるのではないかと思うからだ。この設定はおもしろい。真剣に何かに打ち込んだことがあって、しかもそのことでリアルチートとしか思えない同僚や先輩がいて、強い敗北感や挫折を味わったことがある人は、何かしらの強い感情が生まれるのではないだろうか。

少なくとも私は主人公にかなり共感した。オチ自体は予想がついたが、マリーさんそりゃないよ、と。この主人公を器の小さい人物だと思ってはいけない。裏では理不尽な怒りや仕打ちをマリーにしてしまっていることを悔やんでいるし、基本的に素直に謝ったり改めたり出来る子である。しかし、人間には侵してはならない聖域というものも、やはりある。


他の特記事項として、二つほど。ルゥリィの破壊力がとてつもない。本作のヒロインの中では比較的まともな言動の持ち主(あれで?w)ということもあり、通常のエロゲのロリ枠と比べても随分とルゥリィに人気が集中しすぎているような気もするが、ともかくルゥリィはかわいい。攻略中、ブログのサブタイトルを「今日からここはルゥリィを愛でるブログになりました」に変えようか思ったけどとどまったくらい。なんだろうな、古参エロゲーマーにとっては、黒猫ででっかいリボンは遺伝子レベルで刻まれているんだろうか。抵抗は無意味だ。

もう一つ。自分はまったく知らない業界なので気にならなかったが、飲食業に従事している人間から見たら設定が崩壊しているらしい。言われてみれば、設定上けっこう大きいレストランなのに、従業員が3〜5名というのは……ラーメン屋やファーストフードだってもうちょっと人数が要るのでは? まあ、リアリティを犠牲にして物語としてのコンパクトさを取ったということか。無駄にキャラの数を増やしても煩雑になるだけだしね。専門家がエロゲに関してぶちぎれていた例で一番記憶に残ってるのは、『そして明日の世界より―』でボーリングの描写がおかしいってレビュー。これほどのレアケースは、多分あんまりない。

総合して、75点前後かなぁ。キャラに癖がなければ80点枠という、通常のエロゲとは逆パターンな欠点を持つ作品であった。


以下、ネタバレ。攻略順。
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2009年06月17日

祝福のカンパネラ 余談

以下は比較的本編とは関係の無い妄想。長くなりすぎたのでレビュー本体から分離。

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祝福のカンパネラ レビュー

さて、どう書いたものか。「甘かったです、ごちそうさま」が第一声としてふさわしいだろうか。

個人的に比較対象としたいのは『こいびとどうしですることぜんぶ』である。あっちはあっちで悪くなかったのだが、どうにもこうにも人間味に欠けた部分が気にかかって、あっちのレビューで評した人口甘味料がけっこう自分なりにうまい表現だったりした。じゃあ『カンパネラ』はどうだったかというと、わざとらしい部分がなかったかと言えばそういうわけではないものの、随分とごまかしている。これはかなり自然な、くどくない甘みに近い。

シナリオはザ・ご都合主義&王道。気にしたら負けである。しかし一つ注文をつけると、それならそれで妙な理屈はこねないで、こまけぇことはいいんだよ!にしてしまったほうがすっきりとした流れになったのではないだろうか。設定を複雑にするなと言っているわけではない。エール関連に関してはよくこれだけ練ったもんだと思う。別の、もっとシリアスなゲームに転用できそうだ。

しかし、それとオチの付け方というのは全く別物であって、ミネットやチェルシーのシナリオは「なんとかする」ための弁解が過ぎたかなーと。そのために随分とシナリオが間延びしており、これは眠いと言われても、言い訳できない。しかも所詮ご都合主義のための弁解に過ぎない文章であるため、読んでて大して楽しくないという。その分、ご都合主義には違いないにしても、アニエスやカリーナのシナリオはまだ多少はすっきりしていた。王道という面でも少し文句が出る。別に王道そのものは悪くないんだけども、表現がどうにも古臭いというか、もうちょっとひねられなかったのか。青臭すぎてちょっと笑ってしまった。一人ずつ集合とかどこのロマサガ3だよ。それをエロゲでやられても。

シナリオ面において最も重要なのは、レスターさんのキャラクター。レスターさんイケメンすぎ爆発しろ、の一言で済ませてしまってもなんら問題はないのだが、一応いろいろ言おうとしてみると、シェリーさんが「自分好みに育てた」という設定がけっこう言い訳としてうまく機能しているなぁと。くどいくらい「よく考えて行動しろ」と言われるわけだが、単純に繰り返しているわけではなくて、本当にレスターさんがしっかり考えてから行動しているように見える。その結果はまあご都合主義であるにせよ、レスターさんがしっかり考えてからの行動が、結果に結びついているのはよかった。もっとも、結びつけるための超展開もいくつかあって、若干本末転倒気味には見えたのだけれど。とりあえず、私はレスターさん大好きです。この主人公像は良い。

このように数々の文句はありつつも、文章は非常に丁寧に書かれたものだと思う。結果が全てと言いつつも、そういった努力が見える文章だから、そんなに叩く気が起きないんだよなぁ。レビュアーとしては良くないのかもしれないけど。


ビジュアル、音楽は文句なし。特に、立ち絵の破壊力がとんでもない。まさに外れがない。決めポーズ的な立ち絵は用意されていてしかるべきで、パースが崩れているものなんぞ一枚絵以上に論外なわけだが、本作の立ち絵は全弾勝負と言っても過言ではない。それもサブキャラやゴーレムに至るまで。こ〜ちゃはロリ得意で年上苦手と言っていて、確かにチェルシー、シェリー辺りはやや苦手そうに見える。だが、カリーナは悪くない。この辺りの年齢層が境界線ということか。まあ、ガーネットやミネットが一番しっかり描けている辺りやっぱり、ロリコン乙。

逆に不必要だったものは、あの3Dの戦闘。あれ自体が悪かったというよりも、全く盛り上がらない。ほのぼのしていること自体は悪くない。ゲームの雰囲気上、そうせざるをえない。しかしエフェクトの平凡さが最大の戦犯だろうか、シリアスシーンでもあの戦闘方法というのは緊張に欠ける上に単純なインパクトとしても大分弱い。あれだけは本当に必要なかった。


総じて、『はぴねす!』からの進化と停滞の両方を感じさせてくれる作品。進化という面では、オーガストの『はにはに』から『明け瑠璃』や、Navelの『シャッフル』から『リアリーリアリー』への進化を彷彿とさせる。が、『明け瑠璃』が一応シナリオゲーとしても成立しえたことや、『リアリーリアリー』がネタ方向に突っ切ってしまっているのに比べると、まだまだ中途半端さが否めず、まさにこの中途半端さが『はぴねす!』から抜け出せなかった、ういんどみるの弱点であり、ある種の人にはまだ凡百のエロゲ扱いされてしまう原因ではないだろうか。79点。プレイ時間はけっこうかかった。おまけまで含めて、30時間くらい?

さて、こうなると次の一手が楽しみだ。がんばれ、萌えゲーメーカー諸氏。シナリオゲーにはない、独特の味わいがあるというところを見せて欲しい。


以下、ネタバレぞーん。クリア順に。
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Posted by dg_law at 14:38Comments(0)TrackBack(0)