November 01, 2011

18世紀〜19世紀におけるスーツへの変遷

スーツの起源を遡ると、18世紀フランスで起こったアビの変化から劇的な変化が見られます。恐らく産業革やフランス革命の影響による生産性の向上、民主化で服飾に対する価値観が変化したのではないでしょうか。メンズからグラン・ダビ(宮廷衣裳)が消滅しモードが消え、イギリス風の流行からシルク、ビロード(ヴェルヴェット)からラシャ(紡毛織物)素材でシンプルなアビが標準化しました。アビとはジュストコール(上に着る衣服)、ヴェスト(その下に着る)、キュロット(脚を膝まで覆う)の三枚から成る組み合わせですが、時代が下るとジュストコール単体がアビと見做されました。
 やがて乗馬用やスポーツ服薄地のジュストコール派生したフラックが登場し現在で用いられる礼服(モーニング・コート、イブニング・コート)の原型となりますが、イートン校の学生だった頃からジョージ4世に見出されていたジョージ・ブランメル(ボー・ブランメル)や彼のテーラーだったメイヤーで、「ダンディ」の概念を完成させます。彼の装いは垂れ部の下がった地味な色合いのアビ、ボタン留めジレ、鹿皮のキュロット、ドイツ風長靴の上に長ズボン or 鹿皮のキュロットに折り返し付き長靴といったもので、詩人のジョージ・ゴードン・バイロン男爵(バイロン卿)曰く「服装に関してある種の洗練された端正さ」であったそうです。19世紀初頭までブランメルのダンディ路線は続き、1820~1821年以降はフラックをイギリス的に構築したフロック・コートがフランスにも逆輸入され、1809年以降の大衆化に伴い1830年にキュロットからパンツに変更、薄手のラシャ、ジャージーの価格を吊り上げ革のキュロット長靴のモードが再び流行しましたがイギリス人はくるぶし上でボタン留め、脚の形にぴったり添った長ズボンを「スマート」、この頃は未だトラウザーズを野暮と見做していました。

October 14, 2011

ジーンズの起源

 ジーンズの原型はアメリカのネバダ州レノのテーラーだったJacob Davisという人物が彼の顧客のためにサックス生地、ポケットにリベット付き、ボタンフライのパンツを製作したものでした。この商品が大変評判となったので彼は特許出願を考えますがその為の費用捻出が難しく、1873年5月30日に取引先であった生地問屋のLeivi Strauss社と共同で特許を取得しました。1906年のサンフランシスコ大地震で資料が焼失してしまい詳細は不明のままですが、サンフランシスコに2つの工場を設立し生地をAmoskeag社(1915年以降はCone mills社)から仕入れ、生地もインディゴ染めのコットンサージ(デニム)に改め、Leivi Strauss社は世界初のジーンズメーカーとなりました。


参考資料
http://www.levistrauss.com/sites/default/files/librarydocument/2010/4/History-Invention%20of%20blue%20jeans.pdf



October 13, 2011

ジーンズとスーツスタイル

 ジーンズ普及の変遷に関しては前述しましたが、ラグジュアリー化しているにも関わらずジーンズのフォーマル性に関しては未だあまり認められていないのが現状です。例えばカジュアルウェアで出勤オーケーの企業でもチノの着用が許されてジーンズはなぜか禁止されたり、一着20,000円のスーツはよくてジーンズでの入店は禁止の飲食店などが当たり前に存在しています。これはジーンズに対する化石化した固定観念のせい、特に50代以上の方は「ジーンズ=不良」だとか「ジーンズ=若者文化」のイメージを延々と引きずっているからでしょう。

ジーンズの起源

 作業着が企業や店舗の格式を破壊すると見做すなら「ビジネスシューズ」という名の作業靴やシャツの中に着るアンダーウェアが許される理由が分かりません。元を正すならパンツ自体がイギリスのチャールズ1世統治時を除いたフランス革命以前は品格が一段低い衣料とされ、メダリオンの入ったブローグシューズも雨天での作業時に水はけ用として施された細工です。
 ジーンズの地位向上に関しても時代を待つしかないかも知れませんが、それにしても問題は有形無実となった「スーツスタイル」の概念です。アメリカはBoocks Brothersが世界で初めて既製服の大量生産を行ったようにファッション産業の合理化を常にリードしていましたが、第二次世界大戦以前は単なる「作業着」であったジーンズをもファッションスタイルの一部に構築しました。1950年代にアメリカのプレパラトリー・スクール(寄宿制私立高校)の学生がアイビー・リーガーを真似てRalph RaurenやJ・Press等を取り入れると同時にボトムスはジーンズを選び、1960年代にはアメリカ人画家のAndy WarholがRalph RaurenやBerlutiと共にLevi’sのブラックジーンズを愛用し「ジーンズスタイルのセミフォーマル化」が成立します。つまりスーツスタイルの伝統や意義をあえて崩し工業化させたのもアメリカですが、同時にジーンズの社会的位置付けを押し上げたのもアメリカです。それなのに一方では未だ認められず、一方では退廃といっても過言では無い程に発展してしまっている矛盾を抱えている現状はさすがに「おかしい」と言わざるを得ません。

 蛇足ですが、根本的にそうではなく「色落ち」や「ダメージ加工」がいけないと考える事も出来ますが、では経年劣化を佳しと考え新品のツイードをわざと雨ざらしにしたり、ジャケットやシューズを世代間で引き継ぎカシミアの光沢落ちやレザーの変色を「品がある」と考える文化はどうなのか、という問題を提起せざるを得ません。
 そうでなくても現実問題、スーツを下品に着こなす事も簡単ですがエレガントにジーンズを履きこなす事も可能です。世の中のあらゆる事に当てはまる話ですが、様式ばかりを見て本質を見失った観念は必ず崩壊します。自分の頭で考えずメンツばかり気にしているメーカーは業績が落ちるのは当たり前。決して不景気のせいではありません。

October 12, 2011

スーツのフォーマル性

 冠婚葬祭等で「何を着て行けば良いのか」と迷う事があります。大抵の場合それは「非日常」で、一部の業界の方を除き着馴れている人もそうそういないのだから当たり前ですが。そこでハウツーものの書籍や雑誌の特集記事等を読んだとすると非常に分かり易い「正解」が書かれています。しかしスーツの意味を理解し正しく着ようと思うのなら、本質的な意味で「正解」は存在しません。
  "Black Tie"等と書かれた招待状が届かない限り(貴族の方は例外として)一般に礼装を身に付ける機会は滅多にありません。そもそもスーツは「正装」であり「礼装」」ではありません。スーツの起源は乗馬服から貴族の執事の執務着、フロックコートから「くつろぎ着」を意味するラウンジスーツから現在に至り、ビジネスや(身内に限定された式典を含め)プライベートの為の衣料なのです。貴族的階層的な存在意義を持つ「モーニングコート」「イブニングコート」等々とは発想がまず違います。例えば「3Bと2Bのどちらがフォーマルか」あるいは「ベントはセンターかサイドか」というのは愚問であり、恐らくそのような議論が生まれるのは「冠婚葬祭用」で顧客に新調させたい衣料メーカーの販売戦略でしょう。そんなものに踊らされる必要は全くありません。
 では具体的に何を着れば良いのか。それは他人任せにせず、シチュエーションに応じ自分で考える事がスーツを着る上で最善の方法です。例えば知人が亡くなりお通夜に出席したいと思ったなら「今日はお洒落に目立つ格好をして行こう!」と考える人はいません。だからといって黒無地のスーツにネクタイ、白無地シャツに黒のストレートチップで出掛けるのも、まるで亡くなるのを待っていたかのように見えます。ならば手持ちの服の中で何を着るべきか自ずと決まる筈です。

 しかしただ「考えましょう」だけでは身も蓋もないので、少しですが基礎知識を。結婚式に最も適しているのはブロードクロスの白シャツです。逆に、それ以外はなかなか使い道がありません。白シャツ自体が汚れ易く、「ホワイトカラー」と呼ばれる上流階級しか着られなかった、特にブロードクロスは艶があり美しい半面番手が高く強度が弱い高級生地であった事からビジネスには全く相応しくありません。ルールとして思い付くのはそれ位ですが、万が一他にもしあればご指摘お願い致します。

April 09, 2011

Vゾーンの見せ方

スーツスタイルで最も目を引くのは顔の真下にあるVゾーンであり、スーツの顔はネクタイです。ネクタイを引き立たせるにはシャツとスーツとの調和が必要となり、その為には色、柄、生地、ディテール等の要因に考慮が必要です。

具体的には、色に関してはドミナントトーンやトーンイントーン、フォカマイユ配色等の色彩調和がありますが、これに関しては次回触れようと思います。基本的にはシャツとタイの色を同系色にすると良いと言われています。

柄は織り柄を除き、スーツ、シャツ、タイ共に同じ柄を用いる事は基本的に間違いとされ、見え方も煩雑になってしまいます。但し最近ではストライプのスーツにストライプのタイを身に付けるのも一般的になっており、よりシャープに見せようとする傾向があります。

そして忘れがちでありますが、生地感も重要なものの一つです。ここでは特に生地の光沢感と使用される生地について触れます。

光沢に関してですが、例えば同系色の無地であったとしても生地の光沢で強弱を付ける事によって見え方は大きく異なります。最近はエステル混等でシャイニーなスーツもビジネスシーンで定着していますが、通常はシルク製のタイのほうが光沢があるので、もし奢侈な装いに厳しい勤め先でも光沢の強いタイを選ぶ事でお洒落さを出す事が出来ます。逆に柄を多用するのであれば、光沢を用いるのは目立ち過ぎてしまい下品になってしまいます。

そして生地は紡毛と梳毛、番手、中にはチンツー加工で糸を潰し光沢を出したもの等様々なものがあり、これ等も無視できません。最も単純に考えるなら、タイとスーツを合わせるのが調和が取れて無難でしょう。しかしバリエーションが余りに多いので、これといった原則はありません。実際に合わせてみて確認しましょう。

逆に、ディテールに関しては法則があります。スーツのラペルの太さとシャツのカラー、タイの幅です。ラペルの細いものには襟高4cm程度のレギュラーカラー、タイ幅は8cm程度、逆にラペルが太ければ値が上昇します。最近は細いラペルが流行しているのでタイ幅7.8cm等もよく見ます。

そして最後に、アイテムをテーブルの上に並べて検証してみるのもいいですが、実際に着てみると印象が変わります。顔立ちや体格の影響が加わるからです。着て外に出てみると、鏡の前で見た印象と変わります。これは職場や出先の雰囲気、景観の影響です。出来れば失敗を恐れず、色々なコーディネートを試してみて下さい。