どくしょ。るーむ。

話題の小説、おすすめの文庫本など、感想とあらすじを書きとめた読書日記です

作家(な行):貫井徳朗

新月譚

著者:貫井 徳郎

感想:
『新月譚』は貫井徳郎さんの初の恋愛小説。
8年前に絶筆した人気作家が語った半生とは?というストーリー。
一見薄っぺらい恋愛サクセスストーリー。それほど起伏のある展開でもありません。
けれどその巧みな女性心理と、ほどよく抑制が効いた偏愛ぶりに惹きこまれ、ついつい先を読まされてしまいました。
主人公の行動や選択は愚かしいと思うものの、「恋人に認められたい」という思いは切なくて痛ましいです。
「美人作家が隠し通した半生とは?」と本の帯で煽られているほどの謎はなかったものの、今までの貫井作品とは違った良さがあり、きれい目な恋愛小説が苦手な私には面白かったです。
貫井作品なので重い作風だと覚悟していたのですが、意外と読み易かったのにも驚きました。

オススメ度:☆☆☆
ポイント:読み易さと心理描写の巧みさで読まされてしまう恋愛小説。ミステリ要素は期待しない方が良いです。

あらすじ:
8年前に絶筆した作家・咲良怜花は、編集者の熱心な復活のアプローチに、自らの半生を語り始める。明かされたのは、ある男性との凄絶な恋愛の顛末で……。

新月譚
新月譚

灰色の虹

著者:貫井 徳郎

感想:
貫井徳郎さんの『灰色の虹』を読みました。
『灰色の虹』は先日ドラマ化されたものを観て曖昧な点がいくつかあって、気になったのが原作を読むきっかけになりました。
七年前、冤罪によって人生を狂わされた江木雅史が、その事件担当者に復讐を始める、という話。
七年前の事件担当者の人柄が描かれ、それと交差しながら冤罪事件の経緯も明らかになります。
「威圧こそが自白を引き出す最も有効な手段だ」と豪語する刑事。「自分とは頭の出来が違うのだ」と犯罪者を見下す検事。暴力団をクライアントに持つ弁護士。
ドラマでの裁判官の不可解な行動にも納得。その他の事情もわかって良かったです。ただすごいボリュームで少し疲れました(笑)

オススメ度:☆☆☆
ポイント:冤罪の恐怖を描いたミステリ。ドラマ以上に捜査側への怒りが増幅されます。

あらすじ:
冤罪で人生の全てを失った男は復讐を決意した。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。7年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。次に狙われるのは……。

乱反射

著者:貫井 徳郎
出版社:朝日新聞出版

感想:
貫井徳郎さんの作品に「被害者は誰」というコミカルなタッチのミステリがありますが、「乱反射」は「加害者は誰?」とシリアスに問うような作品。
一人の子供の死を巡る、悪意のないエゴイズムの連鎖。現代人のモラルのなさがギュッと凝縮されて悲劇を呼びます。
一見事件とは関係なく見える登場人物たちのエピソードを集め、事故までの経過を追っていくという構成。悲劇をカウントダウンするように、章の番号が逆順になっているのも特徴的です。
登場人物が微細に描かれていて、苛立ちながらも身近にこんな人がいてもおかしくないと思わされる臨場感があります。
ラストで唯一責任を感じていた市役所職員の存在だけが救いでした。

オススメ度:☆☆☆

あらすじ:
ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。
街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか?

プリズム

著者:貫井 徳郎
出版社:創元推理文庫

感想:
古典的名作「チョコレート殺人事件」をベースに書かれたというこの作品。
「プリズム」は、小学校教師が自宅で死亡しているところから幕が開きます。果たして自殺なのか、他殺なのか?犯人は誰なのか?
4つの章から成り、各章の主人公が事件を調査・推理していくのですが、次の章ではその推論が全て覆され、全く違うものが浮かび上がってきます。
プリズムのように光の角度によって屈折していく物語。
明確な答えは得られませんが、読めば読むほど迷宮に迷い込んでいくのが読みどころ。
人間心理の光と影が面白い、異色のミステリです。

オススメ度:☆☆☆

あらすじ:
小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。ガラス切りを使って外された窓の鍵、睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが。

慟哭

著者:貫井 徳朗
出版社:創元推理文庫

紹介文:
このブログでも驚き系ミステリー(そんな系列は無いですけど)を、いくつか紹介してきました。
そして、そういう作品が得意な作家さんと言えば、この貫井徳朗さん。普通なら一冊くらいしか書かないこの手のミステリを、あれこれ切り口を変えて楽しませてくれます。
この「慟哭」は犯罪被害者家族の悲劇を描いた、デビュー作とは思えない精密で重厚な作品。
トリッキーさもさることながら、単なる驚きのミステリではなく、質の高い人間ドラマも読みどころ。
後の「症候群シリーズ」に繋がっていったと思われる社会派的な一面を見せる問題意識の高い感動的な作品です。

あらすじ:
キャリアであり、身内が上層部にいるため昇進できたと揶揄される捜査一課長・佐伯。連続する幼女殺害事件の捜査が混迷する中、警察内部からの風当たりも強くなってきた。
一方、怪しげな新興宗教に心引かれる男がいた……。

殺人症候群

著者:貫井 徳朗
出版:双葉文庫

紹介文:
今回もハードボイルドもどきの作品です。本当はミステリーに分類すべきなんだろうと思いつつ、帯にハードボイルドとあったので。
「殺人症候群」は「誘拐症候群」「失踪症候群」と続く症候群シリーズの最終章。
イジメによるリンチ殺人で子供の命を奪われた遺族の事件を中心に、もう一つの犯罪や、特殊チームの分裂なども絡んできて、読み応えたっぷりです。
デビュー作「慟哭」を思わせるエピソードもチラリと出てくるのもファンには嬉しいところ。
ちなみにこのシリーズは貫井版の『必殺』『ハングマン』などとと呼ばれているそうですね。
特殊チームのリーダーである環さんの素性は最後まで明かされませんでしたが、もう続編や番外編は出ないんでしょうか?

あらすじ:
一見何の関係も無い事故死や殺人事件には、ある共通点があった。
事件の真相を探るため、リーダーの環によって、特殊チームの3人が招集されるが、倉持だけは何故かその依頼を断る。
一方、看護婦の和子は息子の為、次々と"標的"の命を奪っていった。
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