てらすの念力……というかアニメが見たい、という怨念によって、てらすのアンテナを仲介して受信できるようになった高天原TV。
そこに、福岡県在住・本名は伏せるものの『家紋は梅鉢』という読者的には大惨事が待っていました。
いえ……想像はしていたんです。ちょうど祟り神になって祀られてから大体1000年ちょっと経ってるし、藤木先生も福岡県民ですから、出るんじゃないかなぁ……って。
まさか本当に出ちゃうとは
という訳で……紹介します――ご先祖です。
ちょうど受験シーズンと重なることもあって、御利益求めて年末年始の参拝者数において全国有数の集客数を誇る、学問と天災と祟りの神です。
とりあえず、ちょっとまずい弄り方したなぁ、と思ったら「くわばらくわばら」とでも呟いてみてください。雷落とすことは勘弁してくれるはずですよ?くわばらくわばら。
ですが、そんなご先祖も……修行場のインストラクターであるタヂカラヲ先生には勝てないらしく……
ご先祖、貧弱なボウヤ扱い
嘘宣伝に手を貸してしまいました。
ちょっ……ご先祖……ご先祖ー!?
ちくしょうこの偽ホリエモン。遠景では黄村っぽいシルエットだから油断してたのに、ウチのご先祖になんてことをさせてやがる。
俺的にはおいしいのでもうちょっとやってくれ。今週のサンデーでは一番衝撃的だったし。
……くわばらくわばら。
と、祟りが怖い子孫はいいとしますが、コーヘイにとってはTVの内容以上の不満がありました。
転がり込んで二週間、ニートがまるで働かないのです。
ニートにとっては働くことは負けであり、それそのものが罪悪ですが、生活と就業が一体化している自営業である平井家にとって、日なが一日ネットとTVで過ごすだけのてらすという存在はまさに横たわるモラルハザード。
住む場所を世話してもらう代わりに手伝いをしてくれているヤタさんとは大違い。だからヤタさん結婚してくださいと求愛混じりにこぼすコーヘイの不満の言葉に構うことなく、てらすは就労を拒否するのですが――。
最高神、煽り耐性0
この二週間で、コーヘイはてらすの性格を把握していました。
ただでさえ気に食わなければ祟ればいい、という日本の神の中でも最高神なだけあって高いプライドを誇るてらすに投げかけた言葉は「できないんだな?」
できないんだったら仕方ない。期待した俺が馬鹿だっただけだ。でも、最高神ともあろうお方がこの程度のこともできないんだったら、神になっても大したことなんてできやしないなぁ。
ふっざけんなよこの野郎。できないんじゃなくってやらないだけなんだ。やってやるからほえ面かくな?
ちょっとニュアンスを盛っては見ましたが、まさに売り言葉に買い言葉。
言質を取ったことをほくそ笑むコーヘイに気付くことなく、深き者どもをうっかり打ち上げつつも波をバックに宣言するてらすでしたが――ヤタさんは珍しく発生したてらすの勤労意欲に、隕石でも降るのではないかと口走ってしまうのです。
ですが、てらすの勤労は想像よりも甘いものではありませんでした。
厨房:芋の皮むきを行おうとした結果、芋と包丁によって厨房中破。
とりあえず工具楽我聞(10)にレクチャー受けろ。
浴場清掃:デッキブラシの扱いに5分でへばり、小動物の助けを得ようとした結果、くま牧場から野良熊召喚。
たしか……かつて阿蘇熊牧場だったカドリードミニオンって……閉鎖されたよな?中津のわんわん王国も潰れて久しいし……動物系テーマパークって難しいなぁ。
おつかい:あふれるオーラに導かれたお年寄りの群れに囲まれて動けず。
むしろ、この人気を見たことで拝観料を徴収する方向に走らないコーヘイやじじいの良識が全てだと思われます。
これら三つの内容を見た結果、コーヘイは結論を下します。
てらすはやっぱりポンコツだったと。
たまたま失敗しただけでポンコツ扱いされたてらすも黙ってはおれず、コーヘイと形と器の小ささを責め立てるのですが、軒先で始まった、周囲を省みることなくエスカレートの一途をたどる口喧嘩にじじいの取る手段というか足技は一つでした。
結果、繰り出された踵落としによっててらすとともに屍を晒したコーヘイでしたが、復活したコーヘイが玄関先のホールで目の当たりにしたのは、ホールでつけっぱなしにされていたTVから流れてきた、地球に向けて飛来している巨大な隕石群が北半球に落着するから、もうやけになってセクハラブチかます、というアナウンサーの醜態。
トップニュースでもなく、かと言って臨時ニュースでもない時点で、やる気あんのかてめぇら、とツッコミが入れたくなりますが、それ以上にTRPG畑の読者としては、誰だディングレイ呼んだ馬鹿は、としか言いようがありません、
とはいえ、ナイトウィザードについては生活圏的な問題が存在するアニメは勿論、リプレイやルールブックも見たことがないであろうコーヘイはディングレイなどというボケをカマすこともできるはずもなく、ただただ絶句するより他ありません。
まぁ、もしかすると、読者参加企画とかPCゲームについては見たことがあるかも知れませんが……まぁ……ウチ、全年齢対象のサイトだし、詳しくは伏せておきます。
コーヘイも……ほら、17歳だし。建前上は、うん。
ちょくちょく足を踏み外している読者についてはさて置きますが、いきなり訪れた地球存亡の危機に停止した脳を奮い立たせて外へと駆け出すと、そこには既にヤタさんが。
急な階段の下に佇んで、階段の上にいる特徴的なアンテナの持ち主を待っている彼女に、先程の不穏なニュースを告げたコーヘイでしたが、
「あ、そうですねー 隕石が落ちるとか!」
いくらなんでも能天気にも程がある返しで応じるヤタさんは、コーヘイの言葉にも全く動じることはなく、階段の上から声を掛けるてらすに前方の安全を伝えます。
地球の滅亡も近いというのに、一体何をやっているのか――理解出来ないコーヘイに、事も無げにヤタさんは言うのです。
「神様のお仕事です」
疫病神とか貧乏神とかひだる神とか旧世界の邪神とか
この国を守ることが最高神であるてらすの仕事。
日がな一日食っちゃ寝しつつ、ネットとアニメで過ごす生活が板についたただのニートではない。だから、あんなぽんこつでも神としてやっていけている――そう悪気なくヤタさんに言葉責めされますが、反論する時間はありません。
「コーヘイ、宿はいったん休憩だ。ちょっと隕石壊してくる」
事も無げに言うと、石段を駆け降りる勢いを借りて力強く踏み込むと音速の壁を越え、第一宇宙速度に達するてらす。
どうやら、藤木世界のニートは本気を出したら音速を超えるようです。
神ならぬエーコでも軽々と短距離弾道移動が可能なだけに、最高神となれば衛星軌道上に届くことも容易いこと。
青山広美先生の自摸音「ゴッ」
ましてや、隕石というかカ・ディンギルによる一撃によって破壊された月の欠片だろこれ、というレベルの巨大な隕石を粉砕することなど朝飯前。
あ、俺、アニメ版のシンフォギアは見たことないっす。
ワイルドアームズ関連のネタが満載……というか、むしろWAを元ネタにした作品だからってことで、コミカライズ版を見ただけです。
元ネタのWAも、あれくらい人気が出てくれれば続編もあり得たんだろうけど……まぁ、死んだ子の歳を数えるのはやめにします。あれだけギャルギャルしぃアニソン重点作品になったら、正直おっさんにはついていけないし。
ともあれ、絶望していたNASAの皆さんを驚愕の末に集団白昼夢を見ていた、と結論付けさせるとともに、「なかったことにする」でも結局はヅラのキャスターが公開セクハラを行ったということはなかったことに出来なかったという、記憶については当事者性の方が優先される、というルールを提示したてらすの行動によって、コーヘイは己の右足と左手に備わることになった神の力に惹きつけられるのです。
が、それを阻止したのは、てらすがアンテナによって受信した、天界のジムの悪夢というより他ない光景。
……ウチのご先祖(の惨状)がお役に立てたようで何よりです。
しかし、コーヘイが「絶対に神になんかなってたまるか」という決意を固める一助となったことを知らないてらすは自らの優秀さとダラダラする権利を主張するために軌道上から帰還を試み――
冬のロシアに太陽は乏しい
地球の自転や丸みを考えなかった結果、てらすは冬のシベリアに落着したのでした。
結局、日本に帰還するために密航……そして、露見の末に芋の皮剥きを学んで帰国したてらす……てらすは貨物船で正しいナイフの使い方を教えてくれた工具楽我聞(10・仮名)に感謝するがよかろうなのでした。
しかし、弾道軌道を飛んで移動せずに密航という手段を選んだ辺り、てらすの力が及ぶ場所は日本国内やその上空に限られている可能性が高いと思われます。
国の最高神、というのも意外に不便なものかもしれません。