
2014年度最後の横浜バロック室内合奏団の定期公演(2015.2.20)は、下記のプログラムだった。
1. J.C.バッハ 五重奏曲ニ長調 OP11-6
2. J.C.バッハ ヴィオラ協奏曲 ハ短調(じつはアンリ・カザドシュによる偽作)
3. モーツァルト 弦楽五重奏曲第6番 変ホ長調 K614
4. モーツァルト フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K299
1は独奏がフルート、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1、チェンバロの組み合わせ。典雅だが、まあ、ただそれだけの曲。
2はなかなか味わい深い曲で、河野理恵子さんの演奏もすばらしかった。東京室内管弦楽団の首席奏者だそうだ。横浜バロック室内合奏団団長の小笠原伸子さんは東京室内管弦楽団のコンサートマスターに就任したそうで、今後横浜バロック室内合奏団との交流が深まりそうな気配だ。
3はこれまであまり聴き込んだ記憶がない。第1楽章の流れに、「ああ、モーツァルトにはまだこのような曲があったのか」と感動した。第一ヴァイオリンが軽やかに高みにのぼっていき、どうだ,といわんばかりになるが、まだ一段その上の高みにのぼる。その見せ場(聞かせどころ)が3回用意されていて、思わず快感にぞくっとする。
このとき、小笠原さんのヴァイオリンの音色が、高い音程でもじつに柔らかく軽やかに響くことに気が付く。いつのまにこんなに美しい音になったのか。楽器が変わったこともあるのかも知れない。
そう言えば、チェロのテクニシャン・村中俊之 さんも楽器が変わっている。より深みのある響きを出すようになった。全体に埋もれがちだったヴィオラも、きょうの河野理恵子さんは音が違う。
4は、モーツァルトとしてはさほど深みを感じさせる曲ではない。ただ、天才のきらめきがあり、聞かせどころ満載の美しい曲で人気がある。響きの美しさをこれでもかというほど追求して作曲した印象だ。
独奏の高野成之さんは、横浜バロック室内合奏団としては数少ない管楽器奏者の団員だ。この人のフルートは響きがまろやかでうつくしい。
きょうはあきれたことに楽器の左右が逆になっている。演奏後の本人のトークによると、特別に製作してもらった楽器で、世界に3本しかなく、モーツァルトのこの曲をフルートを左に構えて演奏したのはおそらく世界で初めてだろう、とのこと。
フルートとハープの組み合わせ、もっとあってもよさそうに思うが、ぼくはモーツァルトのこの曲しか知らない。双方の楽器にそれぞれ聞かせどころをつくり、全体の合奏と独奏楽器のアンサンブルの配分がじつに巧み。カデンツァも合奏の響きも心地よい。
今晩は、ただただ美しい響きを楽しんでください、というプログラムだった。
年に4回、みなとみらい小ホールにくるたびに、室内楽の響きの美しさに酔いしれる。贅沢な楽しみであるが、ずっと続けていきたい、と思っている。