クドリャフカの順番―「十文字」事件


 神山高校の古典部の学生がミステリの謎解きをするシリーズは、これまで『氷菓』と『愚者のエンドロール』の2作が文庫化されているが、これは2005年6月にハードカバーで出版された第3作目だ。
 前2作でたびたび言及されていた、延べ三日間にわたる神山高校文化祭(通称カンヤ祭)が、この『クドリャフカの順番』の舞台だ。
 古典部の面々は、カンヤ祭を前に大きな問題を抱えていた。文集『氷菓』の編集・発注などを彼らは伊原摩耶花に任せきりにしていたのだが、彼女のちょっとした手違いから古典部の部室(地学教室)には文集『氷菓』が山積みとなっているのだ。
 これを三日間で売り切る秘策を、お馴染みの面々は考え出さなくてはならない。

 悪戦苦闘する彼らだったが、カンヤ祭では不思議な連続盗難事件が起き始めていた。古典部のメンバーたちは、怪盗『十文字』を捕らえ、文集『氷菓』を売り切ることができるのだろうか。

 ノリが軽いので読みやすいが、逆に緊迫感に欠け、事件そのものもいかにも作り物めいた感じが拭えない。それが米澤穂信さんの小説の特徴だ。
 今回はけっこう分厚い本で、返却期限が迫っていたぼくは、読まずに図書館に返してしまおうか、と一度は考えた。
 読んでよかった。
 これまでで最高の出来映えだ。
 文集『氷菓』を売り切ろうと、千反田が慣れない営業をするのが笑わせるし、里志も摩耶花も大活躍する場が与えられている。折木奉太郎は例によって店番で「省エネ」を決め込んでいるが、お決まりで最後にしっかり活躍する。
 前2作はこれを読ませるための前座だったのか…、というくらいおもしろい。

 いかにも楽しそうな文化祭は、読者を「自分も高校時代にもどってみたい」という気にさせるかも知れない。