灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉


 石田衣良さんは、世相をとらえるのが上手い。
 池袋ウエストゲートパークの『灰色のピーターパン』の第6巻は表題作『灰色のピーターパン』から始まるが、冒頭の3ページは練りに練られてすばらしい。いつになく著者の入れ込みが感じられて、ぼくの期待は高まった。

 『灰色のピーターパン』で駆け込んでくるのは小学生だ。大人相手に盗撮写真を売り込んだりして金儲けしているのを、高校生に知られて強請られ、マコトに助けを求めてくる。子ども相手なら簡単とマコトは安請け合いしたが、解決は彼が思ったほどには簡単ではなかった。
 『野獣とリユニオン』もいまの世相を反映した力作だ。弟の人生を狂わせた犯人が出所してきた。あんな刑では気が済まないと、マコトの元へ若い女性がやってくる。加害者の権利が守られるばかりで被害者の気持ちは晴れない。その不公平を批判する意見は大きいが、この問題をマコトはどう解決するだろうか。
 これは読者を泣かせるくらいのよい作品だ。
 『駅前無認可ガーデン』は力作の後の軽い息抜きだが、心温まる作品。
 最後の『池袋フェニックス計画』はスケールが大きい。切れ者の政治家が警察の上層部を動かして池袋の浄化作戦を始めた。それが徹底しすぎて池袋は閑散とした街になってしまう。そんな中で、なぜか関西系暴力団系列の企業が始めた新商売のデリヘルだけが快調だ。そんな折、姉がホストバーに入れ込んで借金を返せなくなり、デリヘルに売られたので助けてほしい、と若いピアニストが駆け込んでくる。
 最後にスケールの大きい長めの作品をもってきて、交響曲の4楽章構成を思わせる。第2楽章が泣けるアダージョ、第3楽章がスケルツォなら、これでどうだ、と大スケールで締めくくった感じだ。

 池袋ウエストゲートパークのシリーズは、既存のキャラの使い回しというか、武力行使にはGポーイズ、暴力団がらみにはサルを頼み、ネットのプロが必要ならゼロワンと、最初から安易に他人を頼りすぎるようになってきた。それではテレビのトレンディ・ドラマのようで、流行りの世相をなぞるだけの浅薄な作品となりやすく、マンネリ化の雰囲気も漂ってくる。
 第6短編集『灰色のピーターパン』のマコトはちょっと違う。4作とも、まず自分で知恵を絞り、なんとか困難を乗り切って解決しようとする。ハートが熱い。その熱さが伝わってきて、とてもよい短編集になっている。