2006年04月08日

コルテス征略史

モーリス・コリス 金森誠也・訳 「コルテス征略誌」アステカ王国の滅亡 [講談社学術文庫]

先日、ヴィヴァルディのオペラ「モテズーマ」を聞いたこともあって、
アステカ王国のことをもっと知りたくなり、この本を読んでみた。
アステカと言う言葉は後にスペイン人が言った言葉で、正しくは現地語でメキシカというそうだ。
オペラでは「モテズーマ」だが、この本で表記されている「モンテスーマ」や、
「モンテズマ」が一般的な呼び方で、「モテズーマ」はイタリア風呼び方なのかも知れない。
 
モンテスーマは、かつて追放されたケツアルコアトルという神が、
彼らの暦のある定められた年に、東方から帰ってくるという、
そんな予言と、奇跡的と言っていいほどそっくりそのままに現れたコルテスを、
疑いつつもついにその神自身と信じ、そのためにコルテスを攻めたり、
ましてや殺すことが出来ず、逆にコルテスに軟禁されたり、
コルテスが反コルテス派に攻められた時にその仲立ちをしようとして、
その時に民衆が投げつけた石によって死んでしまう。
 
コルテスのイメージは、黄金目当てにメキシコにやってきた、
ただの盗賊程度の人物かと思っていたけれど、
野心家ではあるけれど紳士的であり、当時の良識からするとそれなりに良識派だったようだ。
彼自身は無茶な簒奪や虐殺は行わず、アステカの滅びたあとは復興に努めたようだ。
 
メキシコ人たちは、自然の摂理を維持するためには、
人身御供が不可欠と信じていて、毎日のように生け贄を捧げる。
そういった文化は、とうていスペイン人に受け入れられず、
彼らの文化遺産は徹底的に破壊されたようだ。
古代と言わず近年まで裏の文化としてどこの国でもあった人身御供の習慣。
中国の商の時代では、生け贄を確保するために周囲の民族を攻めていたというのと、
そっくりなこのメキシコの習慣。彼らからするとこれをしないと自然の摂理が崩れ、
世界が滅んでしまうと信じていて、彼らにとっては純然とした正義で行われていた。
キリスト教徒からすると悪魔そのものの神々を信じ、
その教えの中にあった神と信じられてしまったコルテス。
この符合は、実に不思議というしかない。


dido21 at 20:31コメント(2) この記事をクリップ!
歴史小説 ヨーロッパ、ほか 

コメント一覧

1. Posted by まつもと   2006年04月08日 23:07
一つの偶然に過ぎない事柄のはずが、済んでみればあたかも必然であったかのように固定される。
アステカの滅亡も、そんな歴史の一つなんでしょうね。ホント、あまりに出来すぎた符合である、と思います。
冷静に見れば、征服などできるはずのない物量差であったと聞いています。
人間を支配する"物語の力"の強さを、実感させられます。
2. Posted by Hokurajin   2006年04月09日 19:39
歴史上の出来事は、出来過ぎた話の小説よりも出来過ぎることがあり、
その逆にチョツトしたきっかけのせいなのか、
理解しがたい不可解な結末を迎えることもあり、
これが歴史の面白さかも知れません。

アステカの次はと言うことで、こんどはインカの記録ものを読んでいます。
記録ものは翻訳のせいか原典そのものが分かりにくいのか、
なかなか読みづらいところがありますが、
かつて読んだ、ペロポネソス戦争を記録したトゥキディデスの「戦史」の、
まるで生中継のようなリアルさに感動して以来、
こういった機会があれば読もうと思っているジャンルです。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字
 
 
ぺっと
かうんとなど
ぷろふぃーる
Hokurajin
少年時代を過ごした、あるところから名前を拝借しました。

過去・現在・未来、そして世界中の、
あらゆるところに気持ちを向けているのですが、
現実の世界ではとてもできないので、
せめてここでさまざまな世界を巡ってみたいと思っています。'05.8.14
QRコード
QRコード