2005年09月10日

郵政民営化と財政再建(4)-財政再建の為に郵政民営化は効果があるのか?-

郵政民営化と財政再建(3)-財投債は誰が購入?- 2005年9月7日の続きです。財政再建の為に郵政民営化は効果があるのか?結局、この問いに対して答えられるかどうかがポイントという気がします。
<財政再建の為に果たすべき役割>
郵政三事業の改革が財政再建の為に果たすべき役割は次の3つが挙げられます。

1.特殊法人への財源(財政投融資)を減らす。
2.郵政民営化後の会社株式の売却益を得る。
3.民営化もしくは改革後に利益をあげて、税金を収める

1の財投については、郵政民営化と財政再建(3)-財投債は誰が購入?-の中で、財投債を郵貯に保有させると、世間がうるさいので、代わりに国債を購入させたのではないか?と推測しました。つまり、財投がなくなっても、国債により財政が悪化したのでは意味がありません。よって、郵政改革の条件としては、国債購入を義務化しないことが必要です。民営化後の株売却益や税金を払うというのも当然の話ですよね。

郵政民営化の基本方針(2004/9/10 閣議決定)によれば、基本的視点として次のように述べています。

(以下抜粋)
4機能(※窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が、民営化を通じてそれぞれの市場に吸収統合され、市場原理の下で自立することが重要。そのための必要条件は以下の通り。

  (1) 経営の自由度の拡大
・ 民営化した後、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、郵政公社法による業務内容、経営権に対する制限を緩和する。
・ 最終的な民営化においては、民間企業として自由な経営を可能とする。
(2) 民間とのイコールフッティングの確保
・ 民間企業と競争条件を対等にする。
・ 民営化に伴って設立される各会社は、民間企業と同様の納税義務を負う。

・ 郵貯と簡保の民営化前の契約(以下、「旧契約」と言う。)と民営化後の契約(以下、「新契約」と言う。)を分離した上で、新契約については、政府保証を廃止し、預金保険、生命保険契約者保護機構に加入する。(通常貯金については、すべて新契約とする。)
(3) 事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底
・ 各機能が市場で自立できるようにし、その点が確認できるよう事業毎の損益を明確化する。
・ 金融システムの安定性の観点から、他事業における経営上の困難が金融部門に波及しないようにするなど、事業間のリスク遮断を徹底する。

(以下省略)

この説明を見ると、民間企業と競争条件は同じで、税金も払うということですね。

<郵貯の民営化=銀行になるということ>
郵政三事業の中でも郵貯の問題が飛びぬけてウェイトが大きいので、郵貯についてさらに考えて見ます。気になるのはこれまでの郵貯の扱いです。郵政民営化の基本方針を再度みてみます。

(以下抜粋)
2.  最終的な民営化時点における組織形態の枠組み
(4) 公社承継法人 ・ 郵貯と簡保の旧契約とそれに見合う資産勘定(以下、「公社勘定」と言う。)を保有する法人を、郵政公社を承継する法人として設立する。
・ 公社勘定の資産・負債の管理・運用は、郵便貯金会社及び郵便保険会社に委託する。

(以下省略)
つまり、これまでの郵貯・簡保の旧契約分は「郵政公社を承継する法人」が管理し、それを新しく出来る郵貯・簡保会社がそれぞれ管理・運用するということですね。しかも、旧契約は政府保証がそのまま付き、新契約は政府保証がなく、新しい事業体および預金保険、生命保険契約者保護機構が保証する形にするわけです。要は、新郵貯は銀行になるということ。



<疑問・問題点>
ここまでで浮かぶ疑問点を列挙してみます。
1.「郵貯・簡保の旧契約分を郵貯・簡保会社が管理・運用する」という点において、競争が存在しない。民間企業との競争条件が既に対等ではない。
2.郵貯・簡保の旧契約分を管理するだけの「郵政公社を承継する法人」が残る。しかも、この法人は管理・運用は新郵貯・簡保に丸投げするだけの存在。果たしてこんなものは必要なのか?
3.新郵貯・簡保には政府保証が付かないのに、新しく契約する人がいるのか?
4.209兆円もの巨額資金を運用する方法・手段を新郵貯はあるのか?(簡保については後日調べます)。
郵貯資金の運用状況(平成17年7月末)
5.新郵貯は銀行になるということは、銀行の果たすべき役割(運用、預金取扱い業務、決済)を果たさないといけない。それらを新郵貯は果たすことができそうもない(特に運用)。

冒頭でも書きましたが、現在の郵貯は国債を多量に購入しています。仮に国債しか運用手段を持たないのであれば、全く存在価値はありません。理由は郵貯経由で国債を買う(貯金をしている人が国債を購入するつもりがなくても、運用者は勝手に国債を購入している)ぐらいであれば、直接証券会社から個人が国債を購入した方がコストは安くつく。つまり、現状では郵貯は国債のサヤ抜きをしているだけの存在です。

<恐怖のシナリオ>
最悪のシナリオというのはやはり国債が暴落した場合です。つまり、

国債価格の暴落・下落→国債の購入者が含み損を抱える→国債購入者の経済的破綻

では誰が国債を購入しているのか?ということが問題になります。これは郵貯・簡保だけでなく、銀行、生保、日銀など。さらに去年当たりからしきりに宣伝している「個人向け国債」を購入した個人。結局、国債が暴落すれば、これらの企業・個人は完全に経済的に破綻します。

つまり、新郵貯が国債以外の運用・資金貸し出し(企業や個人など)が出来ない限り、破綻しそうな銀行と同じで非常に危険ということになります。では、新郵貯は運用をしたり、資金の貸し出しの審査など出来るのでしょうか?おそらくできないでしょう。ということは、民間企業との対等競争になった場合に勝てる可能性はほぼゼロ。民間と勝負して勝てないのに、民営化するというのもおかしな話です。

郵貯に対しては縮小・廃止する方向で進めるのが正しいのでは?(実際、郵貯残高は自然に縮小している)

<追記>下記サイトも参考にしてください。
皆さん読んだ方がいい「海外メディアが伝えた小泉・郵政解散劇の評判」 2005年8月21日
郵政民営化についてのおさらい 2005年9月6日 この記事が参考になったらクリックお願いします。

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<参考>
郵政民営化と財政再建(3) 2005年9月7日
郵政民営化と財政再建(2) 2005年9月6日
郵政民営化と財政再建(1) 2005年9月5日
増税と財政再建(1) 2005年7月17日
サラリーマン増税(2) 2005年6月23日
サラリーマン増税 2005年6月10日
大増税時代到来 2004年12月02日
谷垣財務相消費税発言は無責任 2004年10月28日
増税について 2004年10月8日
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1. 衆議院議員選挙  [ 禁煙・減煙・喫煙 ]   2005年09月11日 07:44
いよいよ明日は衆議院議員選挙ですね。郵政民営化、改革、刺客、ホリエモン、年金問題などなど、いろいろな言葉が氾濫しています。キーワードだけが先走り、中身がさっぱり見えなかっ

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