2011年04月28日

「魔法少女まどか☆マギカ」最終話雑感

 開けてはいけない箱からあらゆる災厄が飛び出した後には、唯一希望が残っていた……というパンドラの箱の寓話は有名だ。
 一見いい話に見えるが、これは希望こそが最大の災厄だとする解釈がある。根拠の希薄な希望にすがり続ける限り、人は絶望することすらできず永劫の苦痛に苛まれるのだという。

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら
私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます
きっといつまでも言い張れます

(11話次回予告より)

 それまでの王道的展開を3話で見事にひっくり返し、8話・9話で臨界達する絶望の物語は、10話のほむらのエピソードで見事に希望に満ち溢れた物語となった。
 しかし11話アバンタイトルのキュゥべえの言葉で、物語は三たび転回する。ほむらの行動こそが事態を悪化させていたという皮肉。なんと一筋縄ではいかない筋立てであることか。

 希望を持つ限り救われない。
 この絶望のスパイラルを再度ひっくり返したまどかの決断には震えた。
 よくある展開ならば、魔女とインキュベーターのシステムをまるごとなかった事にし、「みんな仲良く幸せに暮らしました」といった結末を迎えるところだろう。

 しかし、まどかは違った。

 そして、「魔法少女モノ」という類型を解体し、全く異なる文脈のもとに再構成したと誰もが思っていた「まどか☆マギカ」の物語は、”希望”を高らかに歌う「本来の魔法少女モノ」へと回帰した。

 このラストがハッピーエンドか否かで議論になっているところもあるようだが、まあ断じてハッピーエンドとは言えないだろう。何しろ失われたものが多すぎる。そして大きすぎる。
 ほむらは目的を果たすことは叶わなかった。さやかは大切なものを諦めざるを得ず、杏子も「友達」を失った。上条や仁美もそれぞれに後味の悪い思いを味わったことだろう。まどかの家族に至っては、始めからまどかが存在しないことになってしまった。
 果たしてこの物語の中で幸せになれた者はいるのだろうか。見方によっては消化不良なラストと受け取る向きがあるのは仕方ないだろう。

 しかしこういったところからくる「ざわつき」が、いまの自分にとっては何故か逆に心地よい。あかほりさとる的ご都合主義エンドでも、トミノ的全滅エンドでもない。できることの限られている中で最大限にがんばって、決してベストではないけど、それでも守るべきものはちゃんと守ったよ、というこの結末が自分は好きなのである。
 昨年の「けいおん!!」のラストが、自分の期待していた「別れを通じてみんな一歩オトナになる」という展開から程遠かったため、その反動というのはあるかも知れない(笑)学園祭のエピソードの感動を台無しにしやがっ(ry

 ああ、まだ自分の中で整理がついていないのだな。あの結末についてもっといろいろ言いたいことがあるはずなのに、うまくまとまらない。


 あとは枝葉末節をつついてみる。


 ほむらのエピソードについて。
 10話のほむらのエピソードには、ストーリー上の謎解き以上に重要な意味がある。それは、「視聴者をほむらと同じ視点に引きずり込む」というものだ。
 ほむらはまどかを救う、ただそれだけのために何度も同じ時間を繰り返してきた。それ故に物語の本筋から遊離した存在となっている。全てを客観的に見渡すことの出来る立場は、視聴者と同じものだ。
 以前怪獣映画をネタに、観るものを引きずりこむ演出について書いたが、10話の演出は多分にこれを意識していると思う。10話の気合の入った演出のおかげで、我々はほむらと同じ視点に立ち、彼女が味わったであろうワルプルギス戦での絶望や、まどかが去った後の喪失感を共有することが出来るのである。

 声優の演技について。
 出演声優の演技もなかなかに凄い。8話ラストのキタエリの涙声はそりゃもう震えるレベルだったし、斎藤千和の振り絞るような声も胸を突く。
 しかし何と言っても、最終話アバンタイトルでキュゥべえに契約を迫る(!)まどかの肝の座った声は凄い。並の作品なら声高に叫んだところではないかと思うが、あえて抑制を効かせるあたりがなんとも。演技指導によるものか悠木碧の解釈によるものかは不明だが、凄い演技を目の当たりにしたものだと思う。

 あと、リボンが絆の象徴という演出はいいよね。うん。
din_gir at 22:39│Comments(2)アニメ 

この記事へのコメント

1. Posted by るりゅー   2011年04月28日 23:35
ホントあの最終回には震えましたよね。
まさか9話でQBが言ったとおりに本当に宇宙の法則をねじ曲げちゃうとは・・・。

あと、ラストで「すげー!」と思ったのはQBと共生してる所なんですよね。
普通あそこまで行ったらQBを倒して終わり、みたいな感じになるけど、まどかの改変のおかげで人類とQBの利害が一致して、QBが協力者になるなんて。
これって実は長い目で見たら、人類にとっても希望になるんじゃないかって感じにも思えますもん。
魔法少女に救いを与えるだけじゃなくて、種としての人類にも希望を与えたとしたのなら・・・。

だからこの最終回は震えるんでしょうね。
2. Posted by DIN-GIR   2011年04月29日 23:49
> まさか9話でQBが言ったとおりに本当に宇宙の法則をねじ曲げちゃうとは・・・。
 まさかマジで神になっちゃうとは仰天ですよ。
 たぶんあのラストの後、ほむほむはちゃんとまどかと再会できたのでしょうね。
 そのかわり消えちゃうのでしょうけど……

> あと、ラストで「すげー!」と思ったのはQBと共生してる所なんですよね。
 QBも人類との共存が当たり前みたいな顔してますしね。
 今さらマスコットキャラ面されても違和感ありまくりですけどw

 それはともかく、魔法少女に救いを与えるために絶対の善をなす存在になるとなれば、やはりそういう部分も含めて世界に干渉せざるを得ないのでしょう。
 QBの属する種族の目的…というか目的を果たすための手段が変わらない限り、魔法少女には呪いがついてまわりますからね。

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