▼BOOK

2007年03月27日

カワハギの肝



旧い、旧すぎるよ。
だって30年前の本なのだ。
会社の寿命30年也とも言われている現在に、この本を開けば

《温暖化が進んだ30年後の未来の子供が
絶滅したシロクマのビデオ映像を眺めている気分》
に近いものがあるかもしれない。

なんせ「野外食い歩きの記」という章で紹介される食べ物が
「氷」「椿の花」である。

この本を読んだきっかけは、
私の作った大根は、ほんと辛かった〜
と、読書家である友人に話したせいである。
即座に、辛味大根の真髄を知りたければ
この本を 読むよう命ぜられたのである。

「わたしは、他人や八百屋を当てにしていては、
一年じゅううまい大根おろしを食べることができないと悟った」
著者は辛い大根が食べたいばかりに農業を始めた人らしい。
口が曲がるほど辛い大根でいいのだ
とポンと肩を叩かれた気がした。

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2006年04月24日

人生を歩け!




町田康&いしいしんじの対談集だが、
二人が過去に住んだ土地それぞれを移動しながらの
テープ起こしの記録であるので、ライブの味わいが強い分、楽しめた

二人の作家が住んだ過去の街は四章に分かれ、
「成増」「武蔵関・上石神井」「浅草」「三崎」である
私はどの地にも住んだことはないのだが
パンクを引き寄せる街「成増」が
こんな恐ろしい磁場を持っているとは、
この書を開くまで、思ってもいなかった

町田康が語るところによれば
彼のアパート(この対談で訪れたときにちょうど壊され造成中であった)
のそばの都営住宅の住民が、他の更地を勝手に畑にしていたのだそうで
耕運機まで持ち出し、タラの芽まで栽培していた

うーーむ
私も場所がないなどと言い訳せず、
黙々と他人の所有する更地を耕していればよかったのだろうか

タラの木の芽の種が町田康のアパートのトイレの脇に飛んできたのだが
トゲトゲのシルエットに邪悪なオーラを感じた彼は
ナイフで切り刻み、踏んづけ、小便までかけたのだという
(タラの木と知って彼はあとで後悔する)
タラの木の芽よ アーメン

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2006年04月05日

ザ・パインハウスデッド

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」第二部
新潮社の月刊文芸雑誌「新潮」用の書き下ろしであるにもかかわらず
メフィスト賞や講談社ノベルスがやたら登場しまくる
反則技だが、笑える

(ちなみに「メフィスト」は休刊→リニュ→新創刊なのだとか
私がゼゼを出して購入していなかったせいなのか
すまん)

「ザ・パインハウスデッド」をここで紹介する理由
名探偵の過去のかかわった事件として、なんと!!
「郡ダイコンと東寺カブの下に死体が埋められていた事件」
が登場したせいである

この二種類の京野菜は絶滅した種なのだが
群大根は青味大根
東寺カブは大内カブ
と間違えられていたという見事なオチつき
実際、青味ダイコンは郡ダイコンの変種であることまで
よく調べてある

農作物をテーマにした貴重なミステリーということで
(実は全然メインの事件とは関係ない)
ここに記しておく

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2006年03月08日

救荒植物としての死人花「名笛秘曲」



bk1にある東雅夫氏の出版情報サイトからの更新によれば
このシリーズの最初の「日本怪奇小説傑作集1」は
既に第5刷だそうで、
私は「日本怪奇小説傑作集3」から読みはじめた

で恐怖小説のアンソロジーと畑 いったい何が関係するかというと
荒木良一著「名笛秘曲」に出てきた
救荒植物としての曼珠沙華こと彼岸花の存在なのだ
(死人花などとホラーチックな別名まで持っている)

「農薬に頼らない家庭菜園 コンパニオンプランツ」でも
彼岸花は、「小動物を撃退する植物」の項目にしっかり登場しており
モグたんや野ネズミが、花の塊茎にあるアルカロイドを嫌い
忌避すると解説されていた

この小説は凶作にみまわれた貧しい山村が舞台となっており
救荒植物群の描写が、詳細にわたって、実にいきいきと描かれている

曼珠沙華の調理方法も
よく煮てあく出しして、川に晒して毒を取り去り、
澱粉だけを抽出して 挽いて餅にすべし
とおもわず試してみたくなるほど、親切(?)に書かれている

荒木良一氏は
植物にまつわるエッセイも多く手がけられていたそうなので
こんなに詳しかったのだろう

これからの日本において
救荒植物に頼らずにすむ時代が
ずっと続くとは限らない

そちらのほうが、よほど、恐怖であるかもしれないけれども

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2006年03月05日

農薬に頼らない家庭菜園 コンパニオンプランツ



出版社:家の光協会
木嶋利男著「農薬に頼らない家庭菜園 コンパニオンプランツ」
を読む

これはいいね
畑単位ではなく、ベランダ菜園されている方にも
おおいに活用できることだろう
コンパニオンプランツの組み合わせと育て方が
野菜+野菜/野菜+穀物/野菜+雑草/野菜+花/
野菜+ハーブ/果樹類+草・ハーブと紹介されている。
チンゲンサイ+シュンギクなんて去年、それとは知らずに
植えてた組み合わせである
(春菊の硝酸濃度の低下とチンゲンサイの害虫を抑える効果がある)

でジャガイモは何だろーと調べてみる
タデ科ギシギシとある
ギシギシって何だ?と見れば雑草なのであった
ジャガイモに寄生するテントウムシダマがギシギシの方を
食害してくれるので、ジャガイモには寄生しないのだそうです
またギシギシが土壌微生物相を豊かにすることで、
そうか病の抑制もしてくれる

なんて、考えもしないパーティーを
たくさんみつけることができる一冊なのであった

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2006年03月03日

自然流 家庭菜園のつくり方




徳野 雅仁著「自然流 家庭菜園のつくり方」を読む
無肥料・無耕転・無除草で作り上げたユートピア
5坪の畑写真が挨拶の頁に載せられている

野菜作りについては
いろんなやり方 いろんな情報が氾濫しているが
結局、どれが一番自分にしっくりくるかという問題だと思う

私は人の手が入らなくなり、半年以上、放置された区画が
ふかふかの土になっていた感触を忘れられない
背丈ほどのさまざまな雑草に覆われたにもかかわらず
こぼれ種で増えたシソが元気に育っていた

ハーブというと虫にすぐやられてしまい
鉢植えでないと上手に育てられない気がしていた
それが、この本では
「ハーブは、たいへん丈夫な植物です。
土壌環境に無理がなく自然であれば、病虫害は
まったくないといえるでしょう」
と書かれてある

春まき24種、秋まき30種が
それぞれのステージ毎の写真つきで丁寧に解説されている

相性のいいもの同士を組み合わせることで
多くの作物を同時につくることができる
「絵ときカレンダー」も参考になった

自然農法地の土では1.5メートルの支柱が片手で
根元までささるのだ、という

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2006年01月31日

日本の野菜 青葉高著作選



以前、図書館で借りた本であるが、全部読み終えてはいない
青葉高農学博士は農林水産省に働きかけ
地場野菜の種の保存に奔走された方であるらしい

1999年1月31日に没せられたということで、7周忌である
本日たまたまつけたTV番組で青葉博士の業績がとりあげられていた

読み終えていないのは、辞書のような読み方をしているせいである
現在の自分の関心のある野菜のみ、目次で選んで読み進めている
とりあげられている図説や史料も、とても面白い

起源・伝播・渡来・栽培・品種・食味とそれぞれが深すぎて
ひよっ子には、未だ消化しきれておりません

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2006年01月25日

マメな豆の話



昨年初めて、農業関係の書物を読んで、
衝撃を受けたのが「マメ科」の根粒菌の存在だった
根粒菌は「マメ科」の植物の根っこに寄生している微生物で
(豆から炭酸同化作用で作った糖質を供給してもらう代わりに)
空中にある窒素を集め、窒素肥料を供給する役目をしている
マメ科の植物を植えれば、自然、畑の生産力も向上されていくだなんて
やるじゃん!!

「マメな豆の話」を読み、
未だ見たこともないマメ科植物の万華鏡を覗くこととなった
果物として食べられる豆、
メキシコのパカエ(アイスクリームビーン)だとか、
梨のようなシャリッとした歯ざわりのイモを持つシンカマス

ポップコーンのようにはぜるアンデスのヌーニャス、
蛋白質や油脂含量がダイズに匹敵するほど高いので
「第二のダイズ」となりうるタルウィー
日本には世界の食材が全て入っているように錯覚しがちだけれど
1万8千種類もの植物群を擁するマメ科は、そんな甘くはなかったのだ

マメ科の植物たちの新たに知ることができた特性を自分のためにメモっておこう
・穀類に不足している必須アミノ酸を持っていること
・体に有害な成分(シアン配糖体・サポニン・フラボノイド・アルカロイド等)
があるので、これらを除去するさまざまな調理法が世界的規模で発達した
・豆の種類によって、それぞれ、花、イモとしての根、莢・豆・若芽と
いろんな部分を食べることができる

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2006年01月23日

謎の哲学者ピュタゴラス



ピュタゴラスの定理(三平方の定理)を発見した人、
ピュタゴラスである
が、あまり大昔すぎて、三平方の定理が、
本当にこの人の発見だったかは怪しいらしい
じゃ 何をした人かというと、イタリア半島の南端で
ピュタゴラス教団の教祖となり(魂の清めに学問を採用していた)
最後は豆畑で死んだらしいということだ
しかも 気の毒なほど、お間抜けな死である

(以下、引用)
「ディオゲネスの伝えるところによれば、
「彼が弟子たちとともに集会を開いていたとき、
入門を拒否された人々のうちのあるものが嫉妬に駆られて火をつけた。
逃げ出そうとしたピュタゴラスは、行く手が豆畑なのに気がつき、
『豆を踏みつけるよりつかまるほうがいい』
と言ってそこで立ち止まり、追っ手につかまってしまい、
のどを掻ききられて殺されたのである。」
ピュタゴラスにとって、豆に触れることは、
命懸けで避けなくてはいけないタブーだったのだ
(以上、引用終わり)

この教団には変な戒律が山盛り、決められていたのだが
特に現在では笑い話になりそうな気配が濃厚なものが
この「豆」についての戒律だった
豆畑で豆を食べている雄牛に
ピュタゴラスが注意を与え、
以降、きっぱり豆畑に近寄らなかったこの牛は
ヘラの神殿で聖なる牛になった
などというポルピュリオスの与太話まである

太宰治の「走れ メロス」のモトネタも
ピュタゴラス派の友情の厚さを示すものとして残っている
「メロス」と違うのは
この友情に感動したシケリアの僭主ディオニュシオスが
仲間に入れてくれ、と嘆願しても
ピュタゴラス派の二人からは冷たく断られた
という箇所である
こういう部外者に対する心の狭さも
ピュタゴラスの死の一因となったわけだが笑かしてもらった

吉田よし子「マメな豆の話」では
ピュタゴラスが豆アレルギーではなかったか、
という説が書かれていたのだが
(生のソラマメを食べたり、花粉を吸い込んだ時に
溶血性貧血やヘモグロビン尿症、黄疸を起こすファビズムは
地中海地方にみられる遺伝的な病気である)
私の畑が現在、ほぼ豆畑であるのは
決して、ピュタゴラスを嫌っているわけではないのである

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2006年01月12日

大麦・ライ麦・ビール麦

大麦ライ麦

緑の相談窓口を兼ねた小さな植物園が地元にあって
菜園を始めてから、見にいくようになった

プランター栽培されている大麦・ライ麦・ビール麦を眺める
麦の苗を、カテゴリー「珍しい植物」に入れるのも、お叱りを受けそうであるが
名札がなければ、私にはとてもいい当てられそうにない

おかあさんが、家の前の小さな畑に麦を播いているときは、
二人はみちにむしろをしいてすわって、ブリキかんで蘭の花を煮たりしました。
するとこんどは、もういろいろの鳥が、二人のぱさぱさした頭の上を、
まるで挨拶するように鳴きながらざあざあざあざあ通りすぎるのでした。
宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」

ビール麦


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