11月20日から12月3日まで、フィンランドから日本に一時帰国していました。
日野晃先生構成・演出のリアル・コンタクトプロジェクト(RealContact Project)「マクベス、再び(Macbeth, Again) 」に出演させていただくことになったからです。

この日野先生は、ざっくりした肩書きは「武道研究家」のようですが、このブログではとても書ききれぬほどの多種多様な経歴をお持ちの、もの凄い人なのです。日野先生の身体理論は、文化を越えた普遍的なものとして、いわゆる一般の人たちから、世界中の身体のエキスパートたち(武道家、アスリート、格闘家、医者、ダンサー、俳優、等々)に影響、というより衝撃を与えています。(詳しくは先生のウェブサイトから直接体験してください。<日野武道研究所>)

まだ日本に住んでいた数年前、ひょんなことから日野先生の教える大阪教室に通い始めたのが、すべてのきっかけでした。海外に渡ってからは、英語が或る程度話せる私なので、先生の外国の方たちとのメールのやり取りの翻訳や、先生がフィンランド近辺にワークショップでいらっしゃった時には、そこでの通訳もやらせてもらいました。この記事の表題からそれてしまうので、突っ込んだことは書きませんが、これらの経験は武道教室で習っていた頃よりもはるかに密度の濃い人生勉強になりました。そして、ますます日野先生の凄さを痛感することになったわけです。

さて、今回は公演に関する私の個人的な所感をつらつらと綴ってみようかと思います。


-憧れ

RealContact Projectは、日野先生が3年前から年に数回の頻度で始められた自主公演です。日野先生の提唱する身体理論、哲学の実践として、舞台という究極の表現の場を選ばれた。私が初めてその公演を観させていただいたのは、確か2011年の神戸でだったと思う。先生のワークショップや教室に通うダンサーさん達と俳優の平岡秀幸さん、そして日野先生ご自身も出演されていた舞台でした。

その頃の私は、長い海外での演劇活動をひとまず終えて、日本での舞台とは無縁の生活に困惑、苛立ちすら覚えている状態だったのです。それもあって、神戸で先生たちが舞台を所せましと暴れまわっているのを見た時、胸が締め付けられるほど羨ましくなった。心を揺り動かし、観る者の血を沸かせる、舞台の熱みたいなものが、すごく恋しくなったんですね。

「私もRealContactに出たい。」とその時、そんな身の程知らずの欲求は出ませんでした。私は、ダンサーのように動けないし、平岡さんのような年季の入ったベテラン役者でもない。日野先生の「世界で一番厳しい舞台」に、自分は立てるのか、、、そんな疑問をぼんやりと、しかしながら深刻に考え始めたんです。

シビアな憧れです。

それからフィンランドに渡って、演劇活動を再開したのですが、憧れから生まれた、自分に対する疑問は膨らみ、ますます深まるばかり。今もそれは変わっていません。

そんな私ですから、今年9月の半ばに日野先生から、RealContactへの出演依頼が来た時の驚きは大変なものでした。もちろん、嬉しいのですが、それ以上に、「日野先生は人生の賭け師やなぁ。」と感嘆せずにはおれなかったのです。いわゆる日本では無名の役者の私。そして日野先生は一度も私が舞台で演技をしているのを見たことがない。だのに、公演の主要パフォーマーの一人に私を選んでくださったのです。
すべて直感で型破り。
やっぱり先生は凄い。

憧れます。



― 「マクベス」

シェイクスピアの戯曲の中でも代表的な悲劇。狂気劇といった方がいいのかもしれません。人間の最も暗黒な部分を深く突き差しえぐり出す。心臓が破裂しそうになるほどのパワーを秘めた傑作です。

マクベスは個人的に思い出深い劇なんです。アメリカで演劇を学び始めてしばらくたった頃、とあるシェイクスピアの野外劇場で脇役と前座で働かせてもらった時期がありました。脇役といっても、台詞なしです。まだその頃はシェイクスピアの英語を理解し話せるほど英語力がなかったため。舞台袖でベテラン役者さんたちの流暢かつ情熱溢れた台詞まわしを聴きながら、胸を熱くしたのを覚えています。
その劇場がある年に「マクベス」を上演しました。その時の演出家さんが、私の演技の先生でもあって、なんと私に、マクベス夫人の侍女役をくれました。かなりの脇役ですが、初めてシェイクスピアの台詞を舞台で語れる機会をいただいたのです。量にして、10行にも満たない台詞でしたが、まるで違う言語を学んでいるような感覚でした。緊張したし、難しかった。
でも、それからはシェイクスピアの魅力に惹きつけられ続けています。

今回の公演の土台が「マクベス」になったのも、私にとっては、偶然のようで、必然だったのかも、と感じずにはおれません。



その2に続く。 

(またも半年以上もほったらかしにしてしまった、この日本語のブログサイト。 フェイスブックなどで、英語で記事を書くことの方が多く、母国語はいつも後回し。 しかし、やはりこっちの方も折に触れて更新しておかなければ、と最近思うようになった。 がんばろう。)DSC03328_original - コピー