DJ Mizuta:衣食住音

DJ MIZUTA : 衣食住音

10年後に読んでも面白い音楽ブログ。「10年経ってみないと全てを語れない」の気持ちを込めた“10年レビュー”など。全ての音楽は絶妙な関係性を持って存在しているのです。

2016年04月02日

3月 26日 “NOON” Renewal Party の様子がSPACESHOWER NEWSで公開されています

3月26日は中崎町NOONのリニューアルパーティーでした。

改装された店内、DJ/バンドも素晴らしかったけど、敢えて言います、お客さんが最高でした! 

この日のフライヤーにはDJの格好良い(?)アー写も載っていません。ゲストDJもいません。書かれているのは店の未来を表すイラストと、風営法に対する疑問。この打ち出しの時点でNOONは、自らが目指すリニューアルパーティーのスタイルを明確にプロデュースしていたと思うんです。それは音楽を楽しむ事に対してとびきり純粋で敏感な人達が集まるパーティーです。しかもそれは凄い人数でした。 

そんなお客さんのエネルギーは本当に凄くて、DJミキサーのつまみをちょっと動かしたり、細かいサンプリングをカットインするだけで、テンションがぐいぐい上がっていくのを感じました。僕の指先とお客さんの身体が繋がっている感覚、、、、こんな凄いのはなかなか無いですよ!  古くからのDJ仲間、法律家の先生方、映画監督、バンドマン、、、、沢山の人が集まっていましたが、ここでは職業や立場は関係ありません。それがクラブの醍醐味である事を確認できた、最高のパーティーでした。

当日の様子はSPACESHOWER NEWSで公開されています。NOONがオールナイト営業再開に踏み切った経緯や、改正風営法の問題点にも触れられています。ところでこの動画の雰囲気、どこか馴染みがありませんか? 実は映画「SAVE THE CLUB NOON」の宮本杜朗、佐伯慎亮の両氏が撮影しているんですよ。さすが当日の熱い雰囲気を捉えています。



2016年03月24日

3月 26日(土) “NOON” Renewal Party のお知らせ

3月26日(土)に開催されるNOONオールナイト営業復活イベントの出演メンバーが公開されました。
なんと入場無料。

もちろん僕もプレイします!

 “NOON” Renewal Party
http://noon-cafe.com/event/noon-renewal-party/

2016年02月28日

【決定】 大阪府下でクラブ等のダンス営業が朝まで可能な地域

2016年6月に施行される改正風営法に向けて「大阪府下における特定遊興飲食店営業の営業所設置許容地域」が公布されました。分かりやすく言えば、記事タイトルの通りで、改正風営法が施行される6月23日以降は、ここに記された地域のみでクラブを含むの特定遊興飲食店の終夜営業が可能になります。ただし、この地域全ての店舗で可能になるのではなく、事前の申請が必要で、客室面積や照度の要件をクリアした場合のみ、許可が下りることになります。

営業所設置許容地域を地図にまとめてみました。
ソースはこちらです。→ 風営法のハテナ

↓キタ地区
許可地域_キタ

↓ミナミ地区
許可地域_ミナミ

お気づきの方もおられるかもしれませんが、この地図は昨年10月の記事で公開したものと全く同じです。以降、大阪府警ではパブリックコメントを募集し、府条例の審議に入ったわけですが、地域の見直しは一切行われませんでした。僕も意見書を提出していたので、これは非常に残念な結果です。敢えてここでは特定の店名に触れませんが、ここ数ヶ月で閉店をアナウンスしたいくつかのクラブが、この地域の外側にある事も分かるはずです。


*依然残されたままの問題点と課題

・今回公布された営業所設置許容地域は、現行風営法の「営業延長許容地域」をそのままスライドさせた物。つまり、改正風営法では「クラブは風俗営業のカテゴリーから外れる」という事になっていたはずなのですが、この枠内でのみ深夜営業を許可するのなら、営業可能時間が延びた事を除けば、根本的には風俗営業扱いと変わらないという事になります。

・改正風営法では、規制の対象が「特定遊興」という、良く分からない基準で拡大された。これは、クラブのみならず、ライヴハウス等のエンターテインメント産業全体が規制される危険性を孕んでいます。そもそも「遊興」の定義が曖昧なまま罰則規定を設けた今回の改正風営法は、憲法で謳われている表現の自由、営業の自由、刑罰法規の明確性に違反している可能性があります。またクラブ等のダンス営業に関しては、NOON裁判の判決文において、風営法の規制対象は「男女の享楽的なダンス」のみで、所謂クラブでのダンスはそれには当たらないとの見解が既に示されています。それを無視して罰則規定を設けた今回の「遊興」の大雑把な運用に、業界関係者は危機感を持つべきです。

なお、僕が把握している範囲では、京都府と東京都は、更に地域規制が厳しいようです。都道府県によっては一切の終夜営業ができない所もあります。

2016年02月14日

The Chemical Brothersのセットリストの凄さを数学的に分析する

僕が敬愛するThe Chemical Brothers(以下、ケミカル)の凄い所のひとつに、20年以上のキャリアを持ちながら、一貫した世界観を保ち続けている事が挙げられます。細かい部分で言えば、初期のヒップホップやロック色の濃い音から、中期のプログレッシヴハウス路線、近年のエレクトロ/サイケ路線と細かな変化がありますが、それは彼等なりの新しさへの挑戦であり、根底を裏切るものではありません。ライヴ・パフォーマンスでも、20年以上のキャリアの中からまんべんなくピックアップした曲構成を披露しているにも関わらず、ギクシャクした印象は一切ありません。

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では、具体的に彼らのセットリストの振り幅がどのぐらい広いのか、2015年のグラストンベリー・フェステバル(イギリス)およびサマーソニック(日本)でのセットリストを例に、各曲のリリース年から数学的に分析してみたいと思います。「数学的」という形容は半分シャレですから、念のため(笑)

※以下、実際に演奏された曲順を並べ、そのリリース年の差異を算出したもの

Hey Boy Hey Girl(1999) - EML Ritual(2015) = -16年

Do It Again(2007) - Go(2015) = -8年

Swoon(2010) - Star Guitar(2002) = 8年

Star Guitar(2002) - Sometimes I Feel So Deserted(2015) = -13年

Sometimes I Feel So Deserted(2015) - Chemical Beats(1993) = 22年

Elektrobank(1997) - I'll See You There(2015) = -18年

I'll See You There(2015) - Believe(2005) = 10年

これはあくまで一部ですが、リリース年が10年以上開いているような曲を並べてミックスしていく構成は、かなり大胆。これも彼らの揺るぎ無い世界観があってこそ成立するものなのだと思います。

そして、もうひとつ。ライヴ時の彼らの真ん前にドーンと設置されたミキサーの存在も大きいでしょうね。曲調だけではなく、音質の流行も激しいテクノの世界。それを違和感無くミックスする為にはミキサーでの音色の微調整が不可欠です。そこの技術力も、ケミカルの大きな持ち味なのだと思います。

僕はミキサーをタイムマシーンだと捉えています。時空を超えた音楽の旅を実現するための最新テクノロジー。まず技術ありきではなく、ケミカルのようにしっかり構築された世界観があり、大胆かつ緻密に見せる確固たるスタイルがあってこそ、それを実現するための技術が意味を成す。そんな風に考えています。


■関連記事
・【最新版】 The Chemical Brothersの元ネタから辿るルーツの旅 (2015年08月22日)

2016年02月09日

広告物における死や戦争の表現について

wall of sound*フライヤーから戦闘機の画像を削除した経験

僕の25年のDJキャリアで、数えきれないぐらいのフライヤー・デザインを依頼してきましたが、その中で一度上がってきたデザインにダメ出しをした事が何度かあります。その中で最も記憶に残っているのが、1998年4月の「喜怒哀楽」です。

その最終稿が左の画像です。実はこの前の段階で、キューピー人形の箇所に戦闘機の画像が入っていたのですが「攻撃的な表現が、イベントや、出演するDJに相応しくない」という理由で、デザイナーに削除を依頼しました。テクノやロックのイベントでは、戦闘機等の戦争をイメージするデザインは数え切れないほどありますが、道徳的な理由等ではなく、単純に、それが「自分達に似合わない」という事が気になったのです。所詮クラブ・カルチャーが持つカウンターとしての性質は十分理解していますし、僕達にもその自覚がありましたが、それを破壊行為ではなく音楽で実現させていく事が、僕達にとって重要であり相応しいという強い気持ちがあり、削除してもらう事にしました。


*主催者とデザイナーの衝突が、イベントの個性を育んでいく

イベント主催者である僕とMamezukaがダメ出しをした事で、デザインを手掛けていたStereotype Produktsも当初は不満を感じたかもしれません(彼らはかなりの売れっ子デザイナーです)。しかし、長い目で見ればこの出来事がイベントの個性を育む事になったと思っています。戦闘機の代わりに配置されたキューピー人形に始まり、Stereotype Produktsは、以降も、便座の画像、大手企業広告のパロディー、イベント当日のフロアの様子等、当時のテクノイベントのフライヤーでは扱われないようなモチーフを使い、ユーモア溢れるデザインを毎月送り出してきました。またVJとしてもイベント当日に参加していたので、ミーティングをする習慣が生まれ、このイベント(チーム)ならではのグルーヴのようなものが生まれていったのです(イベント翌日の昼頃までミーティングした事もありました)。安直に「あー、いい感じ!」と受け取るのではなく、気になる部分があればそれをデザイナーにぶつける。なかなか出来ない事ですが、これはとても重要な事だと、今でも思っています。


*表現物における、生死や戦争の扱い方について

今回の記事を書くきっかけは、1月29日に公開されたきゃりーぱみゅぱみゅの告知動画でした。映っているのは、救急車で手術室に運ばれるきゃりーぱみゅぱみゅの姿。「きゃりーぱみゅぱみゅ 緊急手術!? 入院!? 搬送!?」というタイトルも衝撃的で、アクセスして欲しい、再生してほしい、今後の展開に注目して欲しいという、アーティスト側の欲が露骨に出ていて、物凄い嫌悪感を感じました。

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医療現場や戦争は生と死に関わる場所で、そこを表現の題材として扱う際には細心の注意が必要、、、、いや、これは義務とか規制という事ではなくて、センスが表れる部分だと思うのです。僕達が子供の時に見た医療コントを思い出して欲しいのですが、そこで医者を演じる志村けんやビートたけしは、髪がアホみたいに爆発していたり、牛乳瓶の底のような眼鏡を掛けたりして、それがコントである事をひと目で分かるようにしていたはずです。それは彼らの配慮であったと思います。しかし、このきゃりーぱみゅぱみゅの動画にはそうした配慮が無い(例えば、救護隊の衣装をポップな色にするだけで、随分印象が変わったと思います)。要するに、いかにリアルにするか? いかに騙して注目を集めるか?しか考えていないから、こういう動画になったのだと思うのです。


*イベントや作品での表現と、広告物での表現の違い

これが例えば、ライヴ内や写真集での演出なら、それは表現の一部として尊重されるべきで、好き嫌いはあるでしょうが、僕もこうして記事に取り上げなかったと思います。しかし、この動画は、2日後に控えた緊急生配信を告知する広告物という位置付けで公開された物です。ファン以外の人も見るだろうし、そういう人達にも見て欲しいから動画を作っているわけでしょ? そこで描く絵として、これはちょっと趣味が悪過ぎませんか? 「オオカミと少年」という寓話がありますが、こうやって乱暴に人目を引く事ばかり考えていると、いつか愛想を尽かされますよ。

先に書いたフライヤーの話に戻します。言うまでもなく、クラブにおける広告の最たる物がフライヤーです(異論もあるかと思いますが、細かいニュアンスはここでの議論から外れるため敢えて省きます)。僕達はイベント「喜怒哀楽」をクラブ入門の場所として打ち出す事に重点を置いていたので、フライヤー上の日本語表現や会場地図のレイアウトには細心の注意を払っていました。冒頭に「攻撃的な表現がイベントや、出演するDJに相応しくない」と書きましたが、今考えてみれば、それを広告物であるフライヤーで描く事でいたずらにクラブのイメージをマニアックな方向で固定化したくなかったというのも大きかったのだと思います。当日のイベント内では過激な表現も含めて、勢いのある所を見せればいいと思いますが、広告物であるフライヤーでは事情が違います。所詮1イベントでしかありませんが、気持ちとしてはシーン全体を引っ張っていくぐらいの気持ちを持っていたし、街に出回るフライヤーの集積がクラブに対するイメージを形成しているのも事実です。

「喜怒哀楽」は回を重ねる毎に、若いお客さんが増えていきました。今でも「初めて遊びに行ったクラブイベントは喜怒哀楽でした」という声を聞く事があります。彼らがクラブに対して悪いイメージを抱かず、15年経った今も遊び続けている。フライヤーでの表現に拘ってきた僕は、それが何よりも嬉しいのです。

↓ダメ出しと試行錯誤の末に生まれた「喜怒哀楽」のフライヤー
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